変身空母 赤城   作:作者アアアア

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十六話 加賀、再会する

 夕暮れ時、一台の車が道を行く。

 

「見えてきましたね」

 

 車に揺られつつ、窓から見える景色に感想を呟く加賀、翔鶴もまた、横須賀鎮守府が目に入り、呟く。

 

「……はい」

 

 昨日と出発前に三人としたやり取りを思い返しつつ二人を乗せた車は滞りなく横須賀鎮守府へと入っていった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 昨日、提督に加賀と共に横須賀へ向かう様、命令を受けた翔鶴、しかし、心労、リエの言葉、加賀の態度から彼女への不信感が強くなっていた。

 

「翔鶴、さっきから俯いているけど大丈夫なの?」

「え、ええ……」

 

 赤城加賀の共同部屋で翔鶴のケアも兼ねて、今後の計画の会議を行う事になった五人。

 提督は確かに加賀と翔鶴を抜擢したが、加賀はそれを蹴ろうとしていたそれを気にした蒼龍は疑問を投げかける。

 

「加賀さん、どうしてあの時断ろうとしたの?」

「私がここを離れたら誰が鎮守府周辺を守るんですか?」

「それだけですか?」

「……わざわざ二人で迎えに行くまでもないでしょう……」

 

 飛龍の問いかけには、目を逸らしつつ答える加賀。

 赤城は、過去に瑞鶴と森の中で戦った事について聞いた。

 

「私からも良いですか?」

「赤城さん? どうぞ」

「何故、あの時、瑞鶴を蹴ろうとしたんですか?」

「それは……」

「瑞鶴が邪魔だったから」

 

 加賀の代わりに答えたのは閉口していた翔鶴。

 

「瑞鶴が気に入らないからその為に……!」

「翔鶴!?」

「あの子は……あの子は貴方に殺されたようなものです!」

「翔鶴!」

 

 翔鶴の突然の罵倒に驚きを隠せない、三人。更に翔鶴は続けて言う。

 

「以前、貴方は瑞鶴に協調性が無いと言いましたよね? でも、本当に無いのは加賀さんの方ではないですか?」

「翔鶴! 熱くなりすぎ!」

「落ち着いて!」

「……」

「何か言ったらどうですか!」

 

 憤る翔鶴に無表情で聞く加賀、そして言った。

 

「……彼女を放っておけば被害が拡大する恐れがあった……私は最善の選択をしたつもりです」

「!」

 

 その台詞を聞いた瞬間、翔鶴は、立ち上がり、凄まじい剣幕で加賀の胸倉を掴み、壁に叩き付ける。

 しかし、加賀は全く抵抗しない。

 

「翔鶴!」

「……だ……!」

「……せいで……!」

「貴方のせいで瑞鶴はぁぁぁぁぁ!」

 

 二航戦の制止を無視し、叫び、右手を大きく上げる翔鶴。しかし、翔鶴のビンタは加賀には届かなかった。

 彼女の手を止めたのは赤城だった。

 

「翔鶴! いい加減にしなさい!」

 

 普段では出さないであろう赤城の怒鳴り声に動きが止まる四人。

 

「あ……あああぁぁぁ……!」

 

 自分がした事に気づき、加賀から手を放して仰向けに倒れると、両手で顔を押さえて泣き出した。

 

「ごめんなさい……私……私は……」

「……」

「……」

 

 何も言わず、背中をさする赤城、何も言わないだけの加賀。

 

「すいません。蒼龍、飛龍、加賀さんを別室に連れて行ってくれませんか?」

「わ、分かりました」

「すいません加賀さん、こちらへ」

「はい」

 

 加賀を連れ二人は外へ連れて行った。

 

「うぅ……うぅぅぅぅ……!」

 

 赤城は翔鶴が大人しくなるまで手を握り、さすり続けた。

 

 

 

 一方、加賀は蒼龍、飛龍の共同部屋にいた。二人の部屋も一航戦同様、畳の敷かれた和風のものとなっている。

 

「加賀さん、どうしてあんなことを……」

「……私は、思った事を言っただけよ」

「思った事って……」

「……艦娘として、人を守る。だから私は、あの状況で一番の行動をとりました」

「それ、本当ですか?」

「何ですって……」

 

 飛龍の問い詰めに淡々と答える加賀、しかし、蒼龍が口を開く。

 

「加賀さん……それって嘘ですよね……?」

 

 蒼龍は加賀を睨みつけながら言った。

 

「それが加賀さんの本心だったら……私、あなたを心の底から軽蔑します」

「加賀さん、私達が貴方を嫌う前に答えてください」

「本心の……訳……ないでしょう……!」

 

 蒼龍に嘘を見破られ、飛龍に追い詰められ、加賀は本心を少し漏らす。だが、それを聞いた蒼龍は睨むのを止め微笑む。

 

「……良かった。加賀さんは加賀さんだ」

「何故、私が嘘だと分かったの?」

「私達も赤城さんほどではないけど、長い付き合いじゃないですか!」

「加賀さんって、理屈っぽいよね」

「だよね!」

「どういう事かしら?」

「時には、感情に身を任せるのも大事って事!」

「感情論ですか?」

 

 蒼龍の最後の一言に首を傾げる加賀。飛龍はそれを無視して聞く。

 

「じゃあ、加賀さんの隠し事、教えてもらおうかな?」

 

 

 

「落ち着きました?」

「……はい」

 

 嗚咽を吐きながらも、落ち着きを取り戻した翔鶴。

 

「先ほどはすいませんでした」

「赤城さん?」

「貴方の前で、瑞鶴の話をしてしまって……」

「そんな、元はと言えば、自制が出来ていない私に責任があります!」

「翔鶴、貴方もしかして、謝り癖がついている?」

「す、すいません……」

「やっぱり……それは、早くに直した方がいいですね」

「すいませ……あっ」

「ふふっ」

 

 謝罪からの談笑となった二人の空気。そんな中、翔鶴は、恐る恐る聞く。

 

「赤城さんは、もし、大切な人を失ったらどうするんですか?」

「大丈夫ですよ」

 

 赤城は、微笑みながら言う。

 

「私の大事な人は簡単に負けたりしない。私はそう信じています」

「でも、もし負けてしまったら……!」

「私が救い、守ります!」

「赤城さん……」

「瑞鶴は強い。私に頼らなくても乗り越える。そう信じています」

「私も強くなれますか?」

「なれます! その気持ちと優しさ、自信を失わない限り!」

 

 赤城の根拠はないが、安心感を与えてくれる言葉に勇気づけられる翔鶴だった。

 

 

 

 翌日の昼、加賀、翔鶴は三人に見送られ、送迎車に艤装を詰め込め乗ると、横須賀へ向かった。

 鎮守府からはかなり距離があり、着くころには既に日も暮れ始めてた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 車から降りた二人は、待っていた艦娘に連れられ、横須賀鎮守府の執務室に入った。

 

「ほぉ、お前達があいつの送った艦娘か」

 

 机に両足を置きふんぞり返る、白の軍服を両肩にかけているタンクトップの男。その人の前で、起立の姿勢を崩さない二人。

 

「俺様はここ、横須賀を担当している者だ。短い付き合いになるかもしれないがよろしく頼む」

「航空母艦、一航戦加賀、短期間ですがよろしくお願いします」

「同じく航空母艦、五航戦翔鶴、よろしくお願いします」

「翔鶴……あいつは確か、姉をよこすとか言っていたなお前か」

「はい! 瑞鶴は何処に!?」

「独房だ。それと今の奴を見る覚悟はあるか?」

「……はい……!」

 

 

 

 横須賀提督と共に、独房へやって来た。横須賀提督は一番奥の扉の前で足を止めると言う。

 

「ここだ」

「瑞鶴……」

 

 扉の窓から中を覗く翔鶴は手で口を押さえ息を飲んだ。

 ベッドで横たわっている彼女は、今、深緑色だった髪は漆黒に染まり、瞳も真紅に輝き、肌も深海棲艦の様に色白になっていた。

 その時、翔鶴と目が合った瑞鶴が叫ぶ。

 

「翔カク姉ェェェ!」

「瑞鶴!?」

「だあああ、来るな来るな来るな来るな来るな!」

「瑞鶴!? しっかりして!」

 

 ただ事ではないと見た加賀もまた、窓を覗くその時。

 

「加ガさアアアアアア!」

「!?」

 

 思わず、扉から距離を取る二人、瑞鶴は扉を蹴破ろうと何度も蹴りを入れる。

 

「とんでもない反応だ……!」

 

 提督は二人の前に立ち、警戒した。

 その時、提督の方へ一人の艦娘が走ってき、耳打ちをする。

 

「分かった」

 

 彼女の話を聞くと、二人の方を向き言う。

 

「近くで、地上棲艦が現れたらしい、腕も見たい。行ってくれるか?」

「分かりました。翔鶴、行きましょう」

「はい……」

 

 加賀に言われて独房を離れようとする二人、翔鶴は去り際に呟いた。

 

「瑞鶴……すぐに戻るからね……!」

 

 

 

 横須賀鎮守府周辺、現れた大量の地上棲艦を討つべく、駆け付けた二人は変身し姿を変えると奴らに立ち向かった。

 着実に数を減らしていっている中、彼女が現れた。

 銀の髪、ツインテール、眼鏡、左腕に巻かれた試作型の艤装、黒の衣装に褐色肌の武人。

 

「ここか」

「貴方は!?」

「相棒から話は聞いた、武蔵参る!」

 

 武蔵はそのまま相手の目の前に現れ、右ストレートを放つ、地上棲艦は数メートル飛ばされると、大爆発を起こし消滅した。

 

「一撃で!?」

 

 加賀と翔鶴の驚きを無視して、変身せず、生身で地上棲艦を葬り、そのまま残りの数体の地上棲艦を消す。

 武蔵は、唖然とする二人に近づき自己紹介を始めた。

 

「大和型二番艦、戦艦武蔵だ。よろしく頼む」

「航空母艦、加賀です」

「お、同じく翔鶴です」

 

 その時、一人の男性が息を切らしつつ走ってきた。

 

「貴方は……!」

「武蔵君! 艤装の調整が終わってないのに……勝手に……出るなんて……」

「すまない。彼女らにも色々、見せたくてな。だが、艤装は使わずに済んだぞ」

「生身で倒したの!? って彼女ら……?」

 

 そう言って顔を上げる、そこには見慣れた顔が一人。

 

「……加賀君」

「お久しぶりです。博士」

「知り合いですか?」

「艤装の開発者よ」

「……何故、君がここに?」

「私は、持てる技術をもって貴方を調べました。しかし、大きな結果は得られませんでした。私がここに来たのは貴方の過去を直接聞きだすためです」

「加賀君……」

「部下の死の遠因を作りかけている貴方に……!」

「遠因……?」

「以前、リエさんから、貴方の過去の実験を聞きました。そして、一度、瑞鶴の艤装が壊れました。その日からよ、彼女が変わったのは」

「そんな事が……」

「さぁ、教えてもらいましょうか。全てを」

 

 加賀は博士を睨みつつ言った。




次回もお楽しみに
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