変身空母 赤城   作:作者アアアア

17 / 26
最近、赤城の扱いがぞんざいになっている気がする……


十七話 加賀、過去を知る

「ここだ、入ってくれ」

「失礼します」

 

 キョロキョロと首を動かす翔鶴を最後尾に加賀は、博士について行き横須賀鎮守府の研究室へと入った。

 自身の鎮守府では中々、見られないような機器が並んでいる。

 

「少し待ってくれ」

 

 そう言って博士は机の上に散らばった、機械、資料全てを一気に隅に寄せ、椅子を三つ用意した。

 

「まぁ、座って」

「失礼します」

 

 翔鶴もお辞儀をすると、加賀と同じように礼儀正しく座った。

 

「それでは、まずは何を聞きたい?」

「それでは、過去に行った実験について、教えてもらいます」

「……分かった」

 

 一呼吸置くと博士は、口を開く。

 

「昔、二つの研究が進められていた。一つは今、君たちの着けている艤装、まあ言い換えれば持ち主の肉体強化。もう一つは、過去の人物の意識、記憶を取り込み、心身共に強化する研究だ。私は前者を大きく推したのだが、乗ってくれる人が少なくてね……」

「もう一つの方には参加されなかったのですか?」

「いや、知識の共有という形で、時々呼ばれていたね」

「当時の写真とかは……」

「あるよ。ほら」

 

 そう言って、博士は二枚の写真を取り出し、二人に見せた。

 

「これが、当時の私だ」

 

 一枚の写真内に、数人の中央に立つ男性に指を指す博士。

 

「……本当に人がいなかったのね」

「まぁ、もう片方の研究が人気だったからね」

 

 博士がもう一枚に目線を動かすと、それに合わせて二人の目線も動く。その時、翔鶴はもう一枚の写真の中央に立つ、目が虚ろな女性を見ると目を見開き強く言った。

 

「こ……この人です!」

「え?」

「加賀さん。以前、私と瑞鶴は、目の前で人が姫になって襲い掛かってきた事がありますよね」

「ええ……私と赤城さんが駆け付けると、逃げる様に消えていったわ」

「姫になった人……間違いありません。この人です!」

「それは本当なの?」

「この顔……忘れるはずがありません!」

「まさか!?彼女はあの事件で亡くなったはず!遺体だって出た!」

「あの事件……?」

 

 二人だけで話を進めている途中、衝撃的な事を言う博士、翔鶴も反論する。

 

「そんな!じゃあ私が見たのは……!」

「待って頂戴。あの事件というものをまだ、聞いてないわ」

「……そうだった。では、話そう」

 

 博士はゆっくりと口を開き、全てを話し始めた。

 

「私が携わった研究、艤装班は、問題の研究、精神班と対立していたんだ」

「対立?何故?」

「上層部の予算が原因だね、資金も無限じゃないからどちらに投資するか……ってね」

「そもそも何故、新しく研究を行う必要があったんですか?」

「確かに、艤装の種類はかなりありますよね」

「艦娘になれる人は限られてくるからね。少しでも、増やせる可能性を上げたかった……と私は思っている」

 

 博士は上を向いて一言漏らす。

 

「この時、精神班班長、西谷里惠はとても焦っていたな……」

「西谷里惠……先程の女性ですか?」

「ああ、そして私が艤装班班長だった」

「里惠とリエ……名前が同じね」

 

 加賀は誰にも聞こえない小さな声で呟く。

 

「結果を急いだ彼女は深海棲艦を生け捕りにして、奴らの意識を取り込むという計画を企画してしまったんだ」

「何ですって……!」

「これは聞いただけの話だが、最初の内は何人かの研究員が志願して、自らが実験体になったらしい」

「そ、それでその方たちは?」

「ほぼ全員が失踪したらしい」

「そうですか……」

「それで、計画はどうなったの?」

「ある日、研究所の爆発が起きた。私も憲兵と共に駆け付けると、中は荒らされ、研究員の惨殺体と綺麗な遺体、はっきりと言えるのは、生きた人間はいなかった」

 

 俯き、写真を見つつ言った。

 

「残された資料と結果を調べてみると、彼女は死刑囚や犯罪者も研究材料にしていた事が分かった。彼女の人間性等、以上の事から、この研究の凍結が決まった。」

「すみません。私達はそのような話は聞いてないのだけど?」

「それに、人体実験をしていたあたりで、かなり危険だと思いますが……誰も気づかなかったんですか?」

「大本営で完全黒な実験していた事を公にするわけないだろう。後は、提出された論文と比較すると、全く異なっていた」

「隠蔽と虚偽の報告……ね」

「それから暫くして、地上にも深海棲艦が現れるようになった。そのおかげか、上は予算を艤装班に一気に投資してきたよ」

 

 乾いた笑いをするこぼす博士。

 

「これが、私の知る全てだ。ほかに、質問はないかい?」

「瑞鶴は……瑞鶴は助かるんですか?」

「本物の論文には、成功した人、元に戻った者は、誰一人いなかったらしい……」

「そんな……!」

「……他は?」

「……そうね。どうやって意識や記憶を取り込んだのか、知っている範囲で教えて頂戴」

「確か、最後に行われた実験ではそれらをデータ化させて、機器を通して入れる。というものだったね」

「でーた?」

「……記録の事ですよ」

 

 翔鶴に耳打ちされる加賀。軽く咳き込み、普段の毅然とした態度になる。

 

「……そう」

「二人共、ほかには?」

「いえ、特には……」

「……」

 

 そう言った所で、突如ドアが開き、武蔵が入ってきた。

 

「加賀と翔鶴はいるか?」

「武蔵君?」

「こちらにいますが……?」

 

 突然の訪問に驚きを隠せない二人、それを無視して話を続ける武蔵。

 

「瑞鶴に会いに行かないか?」

「!分かりました……!」

「待って、私達が行けばまた刺激しかねないわ」

「心配するな。今度は私が監視に付く」

「……分かりました。しかし、彼女に何かあったら……」

「言ったろう。心配するな」

「……では、失礼します」

 

 一礼すると立ち上がり、武蔵の方へ行く加賀、翔鶴もまた、頭を下げると、武蔵の方へとついて行った。

 

 

 

 三人は廊下で話をしながら、独房へ向かっていた。

 

「あの……」

「どうした?」

「瑞鶴とは、どの様な関係何ですか?」

「ああ、元は川内、うちにいる艦娘が、近所で行き倒れていた所を保護して、医務室で寝かしたまでは良かったんだが、目を覚ました途端、暴れだしたんだ。それを私が沈めた事で、瑞鶴……いや、あいつは私の言う事は聞くようになった事から監視役になったんだ」

「すいません……」

「何故謝る?」

「私の不注意で瑞鶴が迷惑をかけて……」

「お前も彼女も悪くないだろう……それに、瑞鶴から二つの気配感じるんだ」

「二つ……?」

「彼女と深海……いや地上棲艦か、今は、棲艦の方が勝っているみたいだな。だが、完全に支配されたわけではなさそうだ」

「気合で自我を保っていると言う事?」

「まあ、そうだろうな」

 

 そんな話をしている内に、独房入口前に立つ三人。

 

「よし、行くぞ」

「すいません武蔵さん、加賀さんと二人きりで話をしたいので、先に行っていてもらえませんか?」

「……早め……いや、少し長めでもいいぞ」

 

 武蔵は少し考えると、言いかけた言葉をすかさず訂正して言うと、独房へ入っていった。

 

「それで、何かしら?」

「加賀さんは……瑞鶴を信じていますか?」

「あの子が戻ってくる事?」

「はい」

「……彼女次第、ね」

「瑞鶴は強いと思いますか?」

「それも彼女次第ね」

「瑞鶴は、加賀さんの大切な人に入っていますか?もし、いなくなったら……」

「何を言い出すの?」

「答えてください!」

「……そうよ」

 

 目を逸らしつつ、話す加賀。そこへ、翔鶴は最後の質問を放った。

 

「加賀さんはどうして、瑞鶴を蹴ろうとしたのですか……」

「……」

 

 加賀は何も言わず、ドアノブを握る。

 

「加賀さん!」

 

 加賀はそのまま、独房へと入っていく。

 

 

 

 翔鶴に頼まれ一足早く入室した武蔵はドア越しから、瑞鶴と話を始めた。

 

「調子はどうだ?」

「……最悪ですよ……」

 

 簡易ベッドに横たわる瑞鶴。

 

「そうか、それよりも二人が来たぞ」

「武蔵さん」

「どうした?」

「私、もう加賀さんにも翔鶴姉にも会えないよ……」

「何故だ?」

「……こんな体で、暴れまわって……散々迷惑かけて……加賀さんにも蹴られそうにって……」

「縁でも切られたとでも思っているのか?」

 

 溜息をこぼす武蔵は優し気に論し始めた。

 

「加賀は簡単に見捨てる奴には見えないし、翔鶴は肉親のはずだろ?第一、ここまで来ないしな」

「でも……」

「よし、良い事を教えてやろう。整理がつかない時には、深呼吸をして全神経を集中して耳を澄ませ、そうすれば道は見えるはずだ」

「耳を澄ます……」

「試してみると良い」

 

 話をしていると、加賀と翔鶴が独房へと入ってくる。

 

「瑞鶴!」

「!……翔鶴姉……!」

「久しぶりね」

「加賀さん……」

 

 翔鶴は言葉を選びながら、慎重に言った。

 

「瑞鶴……その……大丈夫?私に何かできる事はない?」

「……」

「……何か言ったらどうなの?」

「……何でここまで来たんですか?」

「姉だからよ!それ以外に何があると思っているの!?」

「私は、上司として、それだけよ」

「二人共……」

「言いたい事は今のうちに言った方がいいのではないか?」

「何ですって……?」

 

 武蔵の一言に、反応する加賀。

 

「いや、説得力が薄く感じられてな」

「……敵わないわね」

 

 加賀は目を瞑り、意を決した様に、告白した。

 

「私がここに来たのは、貴方に謝るためです」

「謝る?」

「先日、貴方を傷つけようとした事です。本当にごめんなさい」

 

 そう言って深々と頭を下げる加賀。

 

「加賀さん……」

「そして、私の勝手で知らないうちに傷つけていた事を今になって知りました」

「勝手?」

「はい、これは先代の五航戦の話なのですが……」

 

 その時、武蔵の携帯電話から着信音がなりそれに出る。

 

「私だ……そうか、人数は?……分かった」

「どうかしたのですか?」

「奴らがまた来た。来てくれるか?」

「……分かりました」

「……瑞鶴、また来るからね」

「しかし、奴ら波状攻撃のつもりか?」

 

 それぞれ、色々言いつつ独房を出た。

 

 

 

 三人が部屋を出てからそれなりに立つわね。はぁ~、長かった……本当に……。

 

「!また!」

 

 久しぶり。

 私だって、考えているのよ?

 

「もう、出てこないで!」

 

 分かっているんでしょう。もう長くないって。

 

「そ、そんな事はない!」

 

 見栄ね。あんたはこれから私と成り代わる。

 

「嫌よ!そん……んぐぅ……あぁ!」

 

 頭を押さえて悶えても無駄。これからは、私が瑞鶴として戦ってあげるわよ。

 

「嫌だ……嫌だ……」

 

 深海棲艦になってね!

 

「嫌あああああああああ!」

 

 叫ぶと彼女は糸が切れたように倒れる、体は……よし動かせる。

 

「ヤッタ!ヤッタゾ!」

 

 私は飛び跳ねると、扉を蹴飛ばす。蹴り一回でドアは見事にひしゃげて、そこから脱走する。

 

「コレガ、艦娘ト深海棲艦ノチカラカァ……」

 

 私は、自分の体を見つつ言った。




次回もお楽しみに
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。