赤城の初陣から数日後、鎮守府内では、彼女が地上の深海棲艦を倒した事、その時の姿が話題になりつつも、赤城が新型艤装の第一号に選ばれた事で、新たに発足された第一地上隊の隊長になった事が優先的に発表された。
昼の甘味処間宮にて加賀は椅子に座り、俯き一点だけを見つめていた。
「こんにちは!加賀君!」
「いいえ」
「やっぱり君は美人だなぁ!赤城君が可愛い寄りなら加賀君は綺麗ってところかな?」
「いいえ」
「おまけに実力者!」
「いいえ」
「赤城君と共に!」
「赤城さんは強いので大丈夫です」
口数を極力減らし、関わりを必死に断とうとしているのは、正規空母の加賀。
そして、この男、自称、博士。
今、何をしているのかというと、加賀を二人目の装着者にするべく、契約を促す生物の如く必死の勧誘を行っている。
「あ、加賀さん。って、博士もまだ勧誘しているんですか?」
そこへ、赤城が現れる。
「赤城さん、助けて頂戴」
「博士……、まだ、加賀さんに頼んでいるのですか?」
「だって、君と波長合うの彼女しかいないし、それに、折角一緒に作った作った、二番機が使われないなんて……、嫌だ!」
「加賀さんも無理矢理は嫌だと思いますが」
博士の熱弁に引きつつも話を聞く赤城は、ここで話題を変えだした。
「そういえば、もうすぐ性能テストの時間ですが、準備の方はどうですか?」
「え、……あぁー!忘れてたぁぁ!」
そう叫ぶと、席から飛び上がり、走って、甘味処を飛び出す。
「済まない、すぐに準備を終わらせて来る!そこで、ゆっくりしていてくれ!」
赤城は、空いた加賀の隣の席に座った。
「赤城さん、ありがとうございます」
「いえ、それほどでも……、でも、どうして博士を嫌うのですか?」
「……そんな風に見えたのかしら?」
赤城の疑問を疑問で返すも、彼女は胸の内を語った。
「あの人は、どこか胡散臭く、とてもじゃないけど信用出来ないわ。赤城さんこそ、なぜそこまで信頼できるの?」
赤城はそれに対して、申し訳なさそうにしつつ言う。
「実は……、私も博士を完全に信じている訳ではありません」
「えっ、じゃあ……」
加賀が言いかけると同時に博士が駆け付けた。
「赤城君!準備が出来たから来てくれ!」
「はい!」
「あっ……」
赤城は席を立つと加賀に軽く頭を下げ言う。
「すいません加賀さん、時間が出来たら聞きますから」
「赤城さん……」
「どうか、よろしくお願いします」
街にて、二人組に深々と頭を下げ、頼み込む女性。
二人組の一人は、茶髪の癖っ毛混じりのショートヘア、もう一人は青みがかった髪、豊満な胸囲を持つ女性二人だった。
今は、仕事が休みからか普段着で過ごしている所を頼まれた。
「はい、我々にお任せください!」
女性に自信満々に返すと二人組はその場を離れた。
「で、どこを探すの?」
「まずは、街全体?」
「だね!」
「蒼龍は南側をよろしく。1時間半後にここに集合で!」
そんなやり取りの後、二人は別れて行動を始めた。
赤城、博士は艤装の性能を見るため訓練場にいた。
二人以外にも、黒のロングヘアに眼鏡の艦娘、大淀もいる。
「では、準備はよろしいですか?」
「はい、問題ありません」
すでに、変身を終えた赤城はサンドバッグの前に立ち言う。
「では……、始め!」
合図と同時に赤城はサンドバッグをひたすら殴り始めた。
更に、そのスピード、パワーはすさまじく、サンドバッグはただ、殴られ、大きく揺れるしかなかった。
テストも半ばまで来た所で、訓練場に一人の影が現れる。
サイドテールに青の弓道着の加賀だ。
「赤城君、調子は?」
「大丈夫です。まだ、できます」
この時、赤城は普段とは違い真剣な眼差しをしていた。
当然、遠くから様子を伺う加賀には、表情が見えない。しかし、彼女はそれを雰囲気だけで感じていた。
「……加賀?」
突如、後ろから声を掛けられて、体を揺らすとすぐに後ろを向く。
そこには、提督。
驚いた加賀は、一瞬、テストをしている面子の方を向くと、すぐ、提督と目を合わせて。
「し、失礼します」
と、去って行った。
訓練場のすぐ外、加賀は壁にもたれていた。
「加賀」
再び現れた提督に対して深々と頭を下げて言った。
「先ほどは、失礼いたしました」
「いやいい。それよりも、何で遠くから見てたんだ?」
「その……、邪魔をする訳にもいけませんし……、あの人がいましたし……」
「らしいな。博士はまぁ……、気持ちは分からなくともないかな」
「え?」
「加賀に装備して欲しいって、頼まれたんだが、俺も加賀が相応しいと思う」
提督の台詞に思わず加賀は、強気な口調で言った。
「でしたら、なぜ命令等を出さなかったのですか?聞けば、答えていました」
「無理矢理やらせるわけにいかないだろ」
「赤城さんと同じ事言ってる……」
俯き呟く加賀に対して、提督は続ける。
「折角だから、赤城の昔話でも聞くか?」
「赤城さんの?」
「ああ、昔、面接あっただろ?」
「ええ、私もやりました」
「周りは海のため、国のため、と似たり寄ったり言ってる中、赤城はこんな事言ったんだ」
提督は一呼吸置き言った。
「理由は思いつきません。しかし!人々が困っている所は見たくありません!だから、守るために艦娘になりたいんです!ってな」
真面目で大人しい赤城がそんな青臭い事を言っていた事に驚きと疑問を隠せない加賀。
その時、赤城が訓練場から飛び出してきた。
「赤城さん!」
叫ぶ加賀に対し提督は言う。
「気になるのなら今から、聞いてみたらどうなんだ?今日は休みだろ?」
そう言うと、訓練場に入っていった。
「提督……」
人気の全くない廃工場、赤城はここで深海棲艦を目撃したという通報を聞きやって来ていた。
「た、助けて!」
声の方を向くと、雷巡チ級が子供に主砲を突きつけ、重巡リ級がそれを眺めていた。
「やめなさい!」
赤城は叫びながらチ級に突進し、さらに近くにいたリ級も殴る。
「逃げて!」
子供はすかさず入り口へ駆ける。
「赤城さん!」
そこへ、加賀も駆けつける。
リ級はニヤリと笑うと入り口にいる加賀、子供へ向けて主砲を向ける。
「危ない!」
二人の前に飛び出すと同時に砲弾が放たれ赤城に直撃した。
「あぁ!」
「!」
激しい爆風と轟音、煙が晴れると負傷した赤城の姿が。
「加賀さん……、その子を……」
「はい……、必ず戻りますから……!」
そう言って、加賀は子を抱えて、工場を飛び出した。
工場から少し離れた所、二人組が加賀を見つけ叫ぶ。
「加賀さん!ってその子は!?」
「飛龍!蒼龍!」
声を掛けてきたショートヘア、飛龍と一緒にいる蒼龍。
「この子、どこにいたんですか!?」
「近くの廃工場よ。でも、ちょうどいいわ。この子をお願い」
「え?」
加賀は子供を蒼龍に渡すと二人に背を向ける。
「よーしよし。お姉ちゃんがついているからね~」
「加賀さん、どこに行くんですか?」
「赤城さん……!」
「えっ!?赤城さんがいった……」
加賀は、飛龍が言い終える前に去ってしまった。
「きゃああああああ!」
一方赤城は深海棲艦に追い詰められ、吹き飛ばされた衝撃で腕に付けた装置が外れ、離れたところまで飛び、赤城の体が一瞬光ると元の姿に戻ったしまった。
「う、うぅぅぅ……」
悶える赤城、勝利を確信した二体。
そこへ、一人、装置を拾い、装着する者がいた。
加賀は左手を頭の左側に持って行きもう片方の手で腕に巻かれた装置を起動させる。
三味線の軽快の音色が響く。
突然の音に嫌悪感を出し、怯む深海棲艦。
「加賀さん……」
「私が、戦います」
加賀は左手を頭の右側にまで持って行き、右手も装置に添える。
「変身」
その台詞を言うと、ボタンを押し、薙ぎ払う様に大きく左腕を振り左に水平に大きく伸ばす。
目の前には、青く輝く半透明のドレス、加賀の方へ動き、装着される。
加賀の姿は、赤城の恰好を青にしたもので、サイドテールの髪留めも派手な青のリボンになっていた。
左腕を腰に、右手を前に出し名乗る。
「一航戦加賀、いざ」
手負いのリ級、手負いのチ級向かって歩き出すと、チ級も加賀に向かって走り出す。
リ級が目の前まで来ると加賀は、右手を伸ばし、相手の胴体を切るように大きく振った。
「……っふ!」
その掛け声と共に、チ級の体は大きく裂け、地面に伏すと爆発、消滅した。
リ級も主砲を撃とうするがそれよりも速く加賀が目の前に現れ、青白く光る手刀で切り付ける。
体を大きくのけぞると加賀は、大きく踏み込み肩から斜めにリ級を二つに裂いた。
そして、爆破、跡形もなく消えた。
「加賀さん……」
倒れたまま呟く赤城。
「赤城さん、私は覚悟を決めました。一緒に戦って下さい」
「……いいんですか?」
赤城を抱きかかえつつ加賀は続けて言う。
「人のためとは何か知りたいんです。それに、赤城さんに全てを押し付けるわけにはいけません」
それに対し赤城は。
「ありがとうございます……」
二人は気づくことはなかった人影が一人呟く。
「加賀さん、あんな格好するんだ……」
【艦娘】
深海棲艦に唯一対抗できる存在。
艤装を装着できる素質のある者が選ばれると、艦の名前を模したコードネームを与えられて、全国に点在する鎮守府に配属される。
コードネームは、たとえ血縁者同士であってもそれで呼ばなければいけない。
素質は生まれつき、手術等で得ることが可能。
ちなみに、一部では、公務員並みに安定した職業とも言われている。
この様に、今後は、あとがきで本作の独自の設定をまとめますので、良ければ目を通して下さると幸いです。