「ただいま戻りました」
執務室に加賀の声が響く。
「ああ、おかえり。何か成果は出たか?」
「ええ、おかげ様で」
「それは良かった」
「後は相手を黙らせる。確実な証拠か発言があれば……」
「……何を言っているんだ?」
「提督、私の推理では、この艤装に関わった人物が、地上棲艦の現象を引き起こした黒幕だと視ております」
「……聞かせてもらおう」
机を挟んで加賀は自身の推理を提督に披露した。
「ただいま戻りました」
今度は工蔽で加賀の声が響く。
「お帰りなさい!加賀さん」
「ええ」
赤城に迎えられ微笑む。その後ろには二航戦、五航戦の四人が立つ。
「いきなりで申し訳ありませんが、お願いがあるんです」
「何かしら?」
「先ほど、量産型の艤装が届いたんです」
「はい!これです!」
加賀は、蒼龍が差し出した艤装を手に取ってまじまじと眺める。赤城が口を開いた。
「ようやく届いたのね」
「そこで、また面接を行おうと思うのですが……」
「私にも、参加してほしいと。分かりました」
「ありがとうございます」
加賀は赤城の依頼を快諾した。
「では、今回の対象は?」
「一人はもう決まりましたから……駆逐艦の娘を五名です」
「分かりました」
「他に人は……」
「私達だけで大丈夫でしょう。二航戦はあまり当てになりませんし、五航戦は今は人を見る目が無いでしょう」
「まぁ、五航戦の抜擢は、実質二人がやっちゃった様なもんだしね」
「見る目が無……!いや、確かにそうだけどさ……」
飛龍は頭を掻きつつ言い、瑞鶴は例のごとく突っかかろうとしたが、言葉を抑える。
「貴方……服装といい、台詞といい、私がいないうちに何かありましたか?」
「私が作りました」
「そう。赤城さん、ほかの物は?」
「それでしたら、こちらに」
得意げに言う翔鶴を軽く流し、工蔽の奥に消えた。
「全員、せいれーつ!」
数日後、赤城不在時の教育係に選ばれた飛龍は七人を並べる。
「各自、名前を言えー!」
「嵐だ!」
「萩風です」
「響だよ」
「睦月です!」
「如月よ」
「卯月ぴょん!」
「五航戦、瑞鶴!」
「よーし!」
名前を言わせた後、腕を組み、眺める。
「飛龍さん、どうして瑞鶴さんがいるんですか?」
「うーん、瑞鶴君は特別訓練を受けてもらうためかな」
「そういう事。よろしく」
「はい」
如月の疑問に答える飛龍。彼女は瑞鶴に近づき、耳打ちをする。
「蒼龍突き落とした恨み忘れてないから」
「あはは、すいません……」
ニヤつきながら、瑞鶴の耳元で囁いた。
「よーし!今日から、艤装を付けての訓練を始める!」
「まずは……」
「変身!オープンアップ!」
飛龍の指示を無視して、睦月が変身、それを皮切りに五人も姿を変える。
「皆、何やってるの!?」
瑞鶴の困惑の声も無視して、それぞれ好き勝手を始めてしまった。
「ちょ、ちょっとちょっと!」
「ぴょん、うーちゃん可愛いぴょん?」
「うふふ、可愛い可愛い」
「へぇ、変わった格好だね」
「睦月パーンチ!睦月ィィィクーッ!」
「俺が相手してやるぜ!」
「ああもう!言う事を聞けーーー!」
訓練所に飛龍の叫びが木霊した。
「はぁ、赤城さん……どうすれば良いんですか?」
夜、間宮亭でテーブルに伏し、愚痴をこぼす飛龍。
「ふふ、育成って、案外大変だと分かりましたか?」
「そりゃあもう……翔鶴も瑞鶴もスゴイ物分かりのいい子だったんだなって……」
「飛龍ってもしかしたら……あの子達になめられてるのかも……」
「嘘!?」
赤城のあんまりな結論に驚きを隠せず起き上がり、どうすれば良いのか聞いた。
「え!?それじゃあ最悪、一生言う事聞いてくれないって事じゃん!どうすればいいんですか!?」
「一生は流石に……でも、親身に接したり、大きい所を見せつければいいんじゃないでしょうか」
「大きい……」
飛龍はそう呟き、自分の体や、裏で乳牛と言われている蒼龍ほどではないが、それなりにはある胸を見つめる。
「あ、いえそういう意味ではないです」
「あはは、ですよねー」
飛龍は、苦笑いをしつつ両手を頭の後ろに回す。それに対して、赤城は優しく答える。
「とにかく、行動、台詞を選んでいくだけでも評価は少しずつでも上がりますよ」
続けて赤城は言う。
「後は、石の上にも三年。チャンスは必ず巡ってきます。それを見逃さなければ、必ず!」
「んー、やってみます」
更に数日後、飛龍のグダグダな教育はある程度進んでいたがそれでも皆を戦場に出せる程ではなかった。
そんな中、飛龍と瑞鶴の艤装から連絡が入る。
「はい。飛龍です」
『大淀です。地上棲艦が現れました。場所は、廃工場と森の方です』
「分かりました。私は廃工場、瑞鶴には、森の方に向かわせます」
『了解しました』
通信を終えると、飛龍は六人の方を向き叫ぶ。
「真面目に訓練しててよ!絶対、動かないでよ!」
飛龍は六人に釘を刺すと瑞鶴と共に、出撃した。
廃工場に現れた地上棲艦と一人、交戦する飛龍に六つの影が現れる。
「へぇ、やるわね」
「そろそろ、俺達の力を見せつけてやらないとな」
「そうだね」
睦月達は飛龍の警告を無視して来てしまっていた。
「睦月の力、見るにゃしい!」
睦月は変身し、がむしゃらに腕を振り回しながら、突進していくが一瞬で吹き飛ばされてしまう。
「睦月!?」
飛龍は驚きの声を出すと同時に、ほかのメンバーが来ていることに気が付いた。
「ああもう!」
そう言いつつ、一行を守りながら、戦い始めた。
何とか、最後の一体まで減らしたが、その相手はレ級、苦戦を強いられ、遂には変身が解けてしまった。そして、止めと言わんばかりに高く飛ぶと、飛龍に向けてキックを放った。
「飛龍さぁぁん!」
「はぁぁぁぁぁ!」
その時、睦月の叫びと同時に、赤城のキックが迫っていた地上棲艦に直撃し怯ませる。また、蒼龍も駆けつけてきた。
「赤城さん!」
「飛龍!」
「ごめんなさい。遅れてしまいました」
「いえ。大丈夫です!」
飛龍は、怯んだ地上棲艦を睨みつつ言う。
「蒼龍!赤城さん!よろしく!」
「うん!」
「はい!」
飛龍はが叫ぶと、両脇に並んだ二人も叫ぶ。それぞれ、艤装を腕に巻き付けるとポーズを取り叫んだ。
「変身!」
艤装を起動させると、姿を変える。
「もう、カッコ悪い所は見せられないね!」
飛龍は、相手に一気に迫り連続パンチをお見舞いする。しかし、レ級はそれを軽々と躱すが後ろから迫って来ていた赤城には気づかなかった。赤城の脳天目掛けたパンチを初撃に、連続で攻撃を入れてダメージを与えていく。更に、飛龍が、強力な蹴りを入れ弱らせる。
「飛龍!」
二人が叫ぶと、相手にデンプシーロールをひたすらに打ち込んでいく。十発入れた頃には、立つのもやっとな程なっており、飛龍も息を切らしながらレ級に近づきアッパーを打ちながら叫んだ。
「ドラゴンアッパー!」
レ級は三メートル程飛ばされると、爆散、消滅した。
「はぁ……はぁ……」
口呼吸するほど体力を消耗した飛龍に駆逐艦達が近づく。
「すごいすごい!」
「うーちゃんにも、やり方教えて!」
「ハラショー、私も知りたいな」
「えっ、よ、よーし!良いけど厳しいよ?」
「はい!」
二人は、ニヤけつつ色々言う飛龍を見つめる。
「もう、大丈夫そうですね」
「そうですね」
駆逐艦の娘達から慕われる飛龍を見つめつつ語り合う赤城と蒼龍だった。