突如として現れ、海を支配した異形、深海棲艦。
本来ならば、海にしか現れない奴らが地上に進出した。
地上での戦闘の隊長に抜擢された赤城は仲間達と共に新たなる脅威に立ち向かう。
すれ違い、裏切り、様々な困難を越え、そして真相に辿り着いた。
残された敵は後一人。彼女達の運命は……
「はぁぁぁ!」
赤城と飛龍の渾身のキックを受けた、地上棲艦は爆散、消滅した。
「はぁ……はぁ……」
息を切らす赤城と飛龍。そこへ、非情にも連絡が入る。
『……地上棲艦出現。場所は、海岸、廃工場、高架下。どうしますか?』
「ここからだと……分かりました、海岸から向かいます」
『……赤城さん、昨日から連戦じゃないですか、そろそろ休んだら……』
「そうだよ!このままだと過労死しちゃうって!」
「いえ、ここで休んだらもう起き上がれないような気がするんです」
「働きすぎて二度と起きれなくなったら意味ないでしょ!」
「……それでも!」
「赤城さん!」
事の始まりは、一週間前に戻る。
地上棲艦の生みの親が、全ての元凶がリエである事を特定した一行。しかし、連行の際に脱走、憲兵と協力して周囲の捜索を行ったが結局、彼女は見つからなかった。神妙な顔で工蔽に戻った四人は今後の方針、リエの動向について考えていた。最初に言ったの蒼龍。それに返したのは翔鶴だった。
「それで、これからどうするの?」
「そうですね……あの人は正体を知られた以上、なりふり構わず襲ってくるかもしれません……」
「うん、だとしたら気を付けないとね」
四人が頭を抱えている中、赤城と加賀が入って来た。
「横須賀鎮守府と経由して大本営からリエの今後が決まったわ」
「あれ、通信機の機能は?」
「提督が個人用の電話で伝えてくださいました」
「提督が横須賀の方と親交がある方で助かったわ」
「それで、どうだったんですか!?」
「西谷里惠は戦犯に認定され、リエさんは、深海棲艦という扱いになった事で、撃破要請が上がりました」
「深海棲艦扱い……」
二航戦の疑問に答え、深海棲艦扱いという言葉に他人事では無いからか暗い顔をする瑞鶴。
「貴方達は何を話していたの?」
「ああ、今後はどうしようかなって話してました」
「私からは……」
赤城は五人に指示を出した。
「今は様子見。これまでと同じように、地上棲艦を倒していきましょう」
しかし、翌日から、全国での地上棲艦の出現頻度が減少した。だが同時に赤城らの鎮守府での遭遇率が大きく跳ね上る。それから、時は現在に戻る。
何とか、地上棲艦を全て倒して、鎮守府に帰って来た二人は満身創痍だった。
「飛龍!赤城さん!」
待機していた蒼龍と加賀に迎えられると同時に赤城は倒れた。
「赤城さん!」
同時に声を出すと物音を聞き加賀と明石が駆け付けると、脈を確認する。
「……大丈夫。眠っているだけみたい」
「びっくりした~」
「……無茶ばかりして……!」
加賀の怒り混じりの安堵の声を漏らす。彼女もまた地上棲艦の猛攻に疲弊していた。それは、二人だけではなくこの場にいる十二人の艦娘全員である。
「もう疲れたー!」
「うーちゃん辛いぴょん!」
「睦月ちゃん、卯月ちゃん、皆そうだから言っちゃダメよ」
「はぎぃ、無事か?」
「私はね、それより皆さんはどうですか?」
響に至ってはハンカチで顔を覆い椅子に座ったまま眠っている。
「……あっ!」
暫くして赤城はソファの上で目を覚ますと、明石に必死に聞く。
「明石さん!地上棲艦は!?」
「……今は大丈夫ですよ。でも教えてください」
「何をですか?」
「何故、そこまで必死になっているんですか?」
「艦娘だからです」
「そんな事務的な……」
「私が救える人は私が救う。その為に艦娘になったんです!」
「……でも、無理だけはしないで下さい。赤城さんは一人で戦っている訳ではないのですから……」
「……善処します」
『頑張ってる~奴隷諸君』
突然の通信に反応しモニターを見ると、リエがニヤつきながら声を掛けていた。リエの声を聞き空母ら五人も寄って来て最初に瑞鶴が叫んだ。
「リエ!」
『後悔してる?力を失った事』
「そんな訳ないでしょうが!」
「リエ、貴方にはまだ聞いて無い事があります」
『何ですか~』
「何故、地上棲艦を生み出したの?」
『……深海棲艦ってなんだと思う?』
「そんなの、人類の敵でしょ!」
「えっ……あっははははははは!!」
飛龍の回答を聞くとリエは大爆笑する。
『バ~カっじゃないの?あれはね、進化なのよ!』
「……進化?」
蒼龍は疑問を浮かべつつ言う。
『そ。彼女達の様になれば人類は水を克服し更に力も手に入る、最高でしょ?おまけに私が水陸両用にした。これで無敵よ』
「そんな事……ありえません!」
『まあ、あんた達は新しい世界にはいらないのだけど』
「何をするつもりですか!?」
『これから分かるよ。それじゃ』
通信が切れると同時にレーダーが反応する。
「地上棲艦出現!場所は……!?」
「どうしたの!?」
明石が黙り込んだ事を気にした瑞鶴達はモニターを見る。その光景を見て一同は明石同様、言葉を失う。何故なら、地上棲艦が姫を筆頭に五百体ほどの大群を引き連れて鎮守府を囲む様に進軍していた。
「明石さん!」
「!はい!」
赤城に叫ばれ、我を取り戻した明石は早速、提督にこの情報を見せる。
『マズイな……』
「提督!ご決断を!」
『……鎮守府を捨てる!総員!撤退準備をしろ!戦える者は残って撤退の支援をしろ!』
戦える者……それは、これまで何度も死線を越えたが疲弊した空母部隊と地上に配属されて日も浅い駆逐隊の計十二人の事を指していた。それでも、彼女達はそれぞれの想いを胸に叫ぶ。
「了解!」
「皆さん……」
「明石さんも、急いで……!」
「いえ!ギリギリまでここに残って、皆さんのサポートをさせてもらいます!」
赤城は明石に避難を促すが彼女の熱い眼差しに押され言う。
「……分かりました。その代わり、死なないで下さい」
「大丈夫ですよ!腕っぷしには自信ありますし、それに赤城さんが守ってくれるんでしょう?」
「はい!」
明石にそれを言うと十一人の方に振り返る。
「皆さん。この戦いは、見ての通り生きて帰れるか分かりません。戦えない方は今すぐ避難をしてください。もし、私に付いてきてくれるのなら……死なないで。それが命令です」
頭を下げる赤城に加賀は優しく答える。
「愚問ですね。赤城さん」
「加賀さん?」
「この子達の目を見て頂戴」
頭を上げると、空母達の瞳には、守護と闘志を宿し、駆逐達の瞳には少しの恐怖心を混じらせつつも、闘志が宿っていた。
「誰も赤城さんを一人にするつもりは無いようですね。それに、私も逃げも隠れもしません」
「皆さん……ありがとう……」
全員が残ると言う答えに思わず涙ぐむ赤城に加賀は彼女の心を煽る。
「さぁ赤城さん、時間がありません。指示を!」
「……それぞれ二人一組で行動!二航戦、駆逐隊は移動用の車の護衛、五航戦は逃げ遅れた方の捜索、私と加賀さんは執務室に行きます!」
「了解!」
敬礼を取ると、工蔽を飛び出し、艤装を取り出し、腕に巻き付ける。艤装を装備すると叫んだ。
「変身!」
六着の衣装が現れそれぞれの体に装着される。駆逐隊も負けじと叫ぶ。睦月は右手で顔を隠しつつ腕でLの字を作って叫んだ。
「変身!オープンアップ!」
如月は右手を腰に左腕でVの字を作って叫ぶ。
「変身!」
嵐は艤装の起動と同時に両手を顔の前に持って行くと印を組み呟く。
「変身……!」
響は左腕に巻かれた艤装を額に近付ける。
「……」
卯月は起動させると両手を開きすかさず、左手を前に右手を胸に置いて叫ぶ。
「ラビット変身!ぴょん」
萩風は、右手を前に突き出し、左手を腰に添えると、左手を顔の前に出し、艤装を起動させ、両方の手の平と平を合わせると叫ぶ。
「変身」
赤城は全員が変身したのを確認すると叫んだ。
「皆さん……行きましょう!」
「皆!乗れ、乗れ!」
「慌てない、押さない、走らないを忘れないで!」
「如月ちゃん!そっちは!?」
「定員よ!発進させて!」
「皆!騒がないで!全員乗る分はあるから!」
車の護衛に回った六人はそれぞれ励ましつつ艦娘、非戦闘員達を車に乗せていく。そんな中、響が呟く。
「赤城達は大丈夫か?」
一方、一航戦は執務室に来ていた。
「提督!」
「二人共!」
「ここは危険です。お逃げ下さい」
「断る。俺はここの提督として最後まで残る義務がある」
「でしたら、私達と一緒に動いてください」
「分かった」
提督を説得させると微かにだが声が聞こえる。
「……ん」
「ん?」
微かな声に気づいた赤城は執務室を出て外を眺める。視線の先には飛龍が手を振っていた。それを見た提督は執務室に戻っていく。
「飛龍!」
「赤城!これを使え!」
戻って来た提督は赤城に拡声器を渡す。
「拡声器?分かりました!」
電源を上げると叫ぶ。
「飛龍!全員の避難は終わりましたか!?」
それに対して、飛龍は、両手で丸を作る。
「終わっているそうです、行きましょう」
「ああ」
執務室があるのは鎮守府本館の三階、三人は階段を下りていく。二階に着いた時外からまたしても声が聞こえた。
「四人共!?ぐっ……!」
「四人!?」
「……明石さん……!」
一階に着くと、姫が両手に飛龍と明石を掴み壁を破って侵入してきた。
「元気ですかー?」
「リエ……!」
「赤城さん……加賀さん……ごめん……負けちゃった……」
「飛龍!」
姫は既に意識の無い明石と飛龍を捨てるように三人の前に投げると、部下達に顎を使う。地上棲艦達は、同じく敗北した蒼龍、翔鶴、瑞鶴も投げ捨てる。
「なんて事を……!」
「折角だから、私と戦いなさい。そしたら一人を除いて助けてあげるわ」
「……私が行きます」
「赤城!」
罠と分かっていても、全員を救う為に挑発に乗る赤城。しかし、前以上に強くなっておりパンチ一発で、吹き飛ばされてしまう。
「がっはぁ!?」
吹き飛ばされた衝撃で変身が解けてしまう。赤城は再び変身しようと艤装を起動させるが反応しなかった。
「そんな……!?」
「壊れたの?かわいそーに」
「……まだ……戦える!」
そう言うと、赤城は大量の地上棲艦を押しのけて、落ちている鉄パイプを拾うとがむしゃらに振り回す。しかし、生身では地上棲艦の腕力には敵わず数体を叩いたが大きなダメージを与えられず、取り押さえられてリエ、もとい姫の前に突き飛ばさる。その姿を見た姫は口角を上げると言う。
「死ね」
イ級が腹部に噛みつくと赤城は顔を痛みで歪める。
「ぐっ……!」
「赤城さん!」
それに乗るように、大量のロ級、ハ級が彼女を取り囲み腕、足にも噛みつき赤城は叫んだ。
「うわああああああああああああああ!」
「赤城!」
「赤城さああああああああああああん!!」
蹂躙される赤城を前に叫ぶ加賀。その時、一台の大型車が飛び込んできた。
「赤城君!」
「博士!?」
「響もいるよ」
加賀の驚きの声と同時に響は車内から手に持ったボールを投げる。ボールは高音を発しながら爆発すると、煙幕を起こす。高音に驚き、イロハの三種が赤城から口を放す。その隙に、提督、加賀、博士が意識の無い人を抱えると、車に飛び乗り、鎮守府を脱出した。
「助かりました」
「即席とはいえ、役に立って良かった」
「提督……これからはどうするんですか?」
「響、避難は出来たのか?」
「うん。犠牲者もいないし、皆、街に着いているはずだよ」
「……街に行こう。反撃の用意をしないとな……」
加賀は傷だらけで眠る赤城の頭を撫でながら、今後の事を聞いていた。