お時間があれば、是非そちらも見て下さい。
「んん……」
赤城は何処かの和室で目を覚ました。
「ここは?」
上体を起こして周囲を見渡す。周りには畳まれた複数の布団が重ねてあるだけ、赤城は布団を畳むと出入り口にあるスリッパを履き外へ出る。
「赤城さん!?」
部屋を出てすぐに、廊下にいた明石が驚きの声を出し、すかさず、松葉杖を床に突きつつ近づいて来た。
「赤城さん、体調は大丈夫ですか!?」
「え!?ええ、まあ。それよりもここは……?それに、加賀さん達は?」
「……ここの事、現状については提督が詳しく説明してくれます。来てくれませんか?」
「……分かりました」
移動中赤城は、明石の頬に貼られた湿布、頭と左足の包帯を見て呟く。
「酷い怪我……ごめんなさい……」
「……皆さんと比べればこんなの軽い方ですよ!」
「え?」
「赤城さん……気づいてないんですか?」
そう言われ、赤城は自分の体を確認するため見て、触り始める。頭、両腕、両足には包帯が巻かれ、更に、道着をたくし上げて見ると、腹部にも包帯が巻かれていた。
「あ、あれ、これって……」
「全身を噛まれて軽傷だなんて……お医者様も相当運が良かったと仰ってましたよ」
「……!皆さんは!?」
「無事ですよ。今は会えませんが」
やり取りをしていると別室に着き、明石はノックをした。
「提督。明石です。入室よろしいでしょうか」
「ああ、入ってくれ」
ドアを開けて部屋に入っていく明石。赤城もその後について行く。室内には、八つの長机で円卓を作り、それに合わせてパイプ椅子が置かれており、その一つに提督が座っている。
「提督。赤城さんが目を覚ましたよ!」
「赤城!良かった……本当に……」
「提督……何が起きているんですか?」
「傷を癒す時間も必要だろう、ゆっくりしていけ」
提督の台詞の後に沈黙が起きる。その後、再び口を開く。
「と、言いたい所だが、そんな訳にもいかないんだ」
「はい。私も眠っている訳にもいきませんから」
「ではまず、何を聞きたい?」
「ここは何処ですか?」
「街にある公民館だ。町長が避難をしてきた我々を受け入れてくれたんだ。ちなみに、襲撃から五日は経っている」
「私、そんなに眠っていたんですね……」
赤城は己の不甲斐なさを呪うと、また質問を投げかけた。
「現状は?」
「かなり悪い。我が鎮守府の艦娘全員が例の艤装をローテーションで使っているが、資材も艤装も避難の際に、僅かに持ち出せただけで、もうすぐで底をつく。その上、地上棲艦の街への侵攻は日に日に増していってる。おまけに、避難民もそれに合わせて増えている。奴ら本気で街ごと俺達を消すつもりだ」
「加賀さん達は?」
「既に目を覚ましている。最も、現在計画している鎮守府奪還とリエ撃破作戦の為に、事務職だけさせているが……」
「作戦……ですか……」
「……後で話そう。今は皆に会ってやれ」
「……分かりました」
「明石、案内をしてやってくれ」
「分かりました」
明石と共に執務室の代用である会議室を出て廊下を進む。赤城が連れてこられた場所は、体育館だった。
「これは……」
館内の光景で言葉を失う。床全体にビニールシートを敷き、その上で、辛そうな顔をする人々、慌ただしく動き回る人、額にタオルを乗せて眠る人、多くの市民が苦しんでいる。赤城は、慌ただしく動く人をよく見ると知り合いだと気づき、走って近づく。
「加賀さん!」
「館内では静かにしてください」
「あ……すいません」
「赤城さん!?」
「貴方もよ」
「あ……すいません」
加賀に論されいる所に翔鶴が近づくと彼女も論された。
「二人共、怪我は……」
二人の姿を見て、恐る恐る聞く。加賀は両頬に湿布、額に包帯を、翔鶴は右腕全体に包帯を巻き、片足を引きずっていた。
「私は問題ありません」
「私も、最近歩けるようになって……あと少しで、また本調子になれると思います」
「少なくとも二人は無事……飛龍達は?」
「工蔽……いえ、倉庫にいます」
「私がご案内します」
「大丈夫なの?」
翔鶴が名乗り出たのに対して加賀は心配をする。しかし、本人は笑顔で返す。
「はい、リハビリも兼ねてですから」
「ありがとうございます」
「では赤城さん、こちらへ」
翔鶴に連れられ赤城は倉庫の前に立つ。翔鶴はドアの前に立ちノックをする。
「博士、翔鶴です」
「ああ、翔鶴君か、入りたまえ」
「失礼します」
倉庫の内部は一部の艤装と機材が置かれており、室内には博士の指示の元、蒼龍が記録、飛龍、瑞鶴が開発を行っていた。
「赤城君、久しぶりだね」
「こちらも、お久しぶりです。今は何を?」
「残された艤装の調整だね、後は……切り札の開発か……」
「切り札?それよりも資材は?」
「……戦える者が外に出た際に、見つけたらなるべく持って帰るように言っているのだが、あまり収穫できていないな……」
「そうですか……」
赤城が俯ていると三人が寄ってくる。
「赤城さん、目を覚ましたんですね!」
「すいません!私が力不足なばかりに……!」
「赤城さん!怪我は大丈夫なの?」
「はい、大丈夫ですよ」
蒼龍、飛龍、瑞鶴に心配されるも笑顔で対応していた時、遠くから大勢の人の怒鳴り声が聞こえてくる。
「すいません。見に行ってきます」
気になった赤城は皆を置いて声の方へ向かった。来た先には、複数の男性が会議室に押し入り、提督らを問い詰めていた。
「被害に日に日に増すばかり、どう責任取るんだ!」
「提督だったら、とっととアイツらを殲滅させろよ!」
「何の為の艦娘だ!」
「皆さん落ち着て下さい!」
「我々にも考えがありますから!」
「何をしているんですか!?」
赤城はその光景に思わず叫ぶと、男性の何人かが迫って来る。
「お前艦娘か!?働けよ!」
「税金泥棒が!誰のせいで俺達の生活が壊れたと思ってるんだ!?」
「おかげで俺の街も心もボロボロだ!」
「……すいません」
「悪いと思っているなら、死んででも、奴ら皆殺しにしろ!」
「……すいません」
「謝るぐらいなら……!」
「待って!」
俯き、謝るだけの赤城と憤る市民の間に入るように声が響く。そこには赤城が過去に助けた少女がいた。
「赤城は何か考えがあるんでしょ!」
「考え……?」
「貴方は……!」
少女との再会に驚きを隠せない赤城に少女が近づき耳打ちをする。
「そうでしょ?」
「提督が先程……」
「だったら、お得意の感情論で黙らせなさいよ」
それだけ言うと、少女が離れる。赤城は思い切って言った。
「皆さん、我々は近日、地上棲艦を討ち、鎮守府を奪還する計画を進めております」
「本当か!?」
赤城がそういうと全員の視線が提督に集まる。
「はい、しかし、彼女らの体調、準備を考慮して二日後に敢行を予定しています」
「今すぐにでもやれ!」
「止めなさい」
男が怒鳴ると一人の老人が現れる。
「怒りの矛先は、彼女ではなく、異形に向けるべきではなでしょうか?」
「し、しかしこのままでは……」
「我々にも出来る事はあるでしょう」
「奴らと戦えと言うのですか!?」
「違います」
「じゃ、じゃあ……?」
老人は間を開けて叫んだ。
「提督殿とお嬢さんを信じて大人しく待ってろ!」
「は、はぃぃ!」
老人の気迫に押され、男達は撤退。提督はすかさず感謝した。
「ありがとうございます、町長。助かりました」
「いえ、私からも謝らせてくれ。皆、気が立ってるんだ」
「はい、必ず成功させます」
「そちらのお嬢さんは?」
町長は赤城に向き聞く。
「はい!お任せください!」
それから、二日後、作戦の決行日が訪れ、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴の六人は憲兵の運転する車の中で作戦の最終確認を行っていた。
「作戦はシンプルに敵地に乗り込んで親玉を倒す……か」
「あのー……もし失敗でもしたら……」
「私達に明日は無い。これだけは確実よ」
「あー、すいません……」
会話が弾まない車内、しかし、それを変えたのは赤城だった。
「……皆さん、絶対勝ちましょう」
「……はい」
「絶対に勝ちましょう!いえ、勝ちます!」
「あ、赤城さん?」
「私達は何物にも負けない!」
「赤城さん?」
「屈しない!」
「ちょ、赤城さん?」
「復唱とかどうでしょうか?」
赤城の自己暗示に引いている中、憲兵が呟く。
「必ず守る!」
「……必ず守る」
「加賀さん!?」
加賀の復唱を皮切りに全員が復唱会が始まった。そして、車は鎮守府の門前で止まる。降りる六人の瞳には、闘志が宿っていた。
「いい顔だ……皆さん!ご健闘を祈ります!」
憲兵は、それだけ言うと、走り去って行った。地上棲艦が六人に気づき睨む。
六人は一列に並ぶ、艤装取り出しそれをを左腕に当てる。すると勢い良くベルトが飛び出し、彼女らの腕にガッチリと固定される。そして叫ぶ。
「変身!」
たった六人で百以上の軍勢に立ち向かう為に赤城は再び叫んだ。
「全員、突撃!」
彼女の台詞を開戦の合図と見たのか、地上棲艦と六人が走り出し激突し始めた。
「赤城さん、どうしますか!?」
「ここで体力を使う訳にはいきません。このまま突っ切ります!」
「短期決戦って事ね!」
「でしたら、ここは私が!」
赤城の指示にすかさず翔鶴が前に出る。地上棲艦の先頭を走っていたリ級の腕を掴むと、鎮守府の入り口の方へ投げる。何体かを倒せたがそれでも、行くことはできず赤城は叫ぶ。
「翔鶴の支援、もしくは道を作って下さい!」
赤城が言うと、早速、赤城は翔鶴に迫って来ているイ級に弓を構えて引き金を引く。すると、赤の光弾が飛び出し、直撃すると吹き飛び爆散。
「赤城さん!後ろ!」
蒼龍に言われ、後ろを向きつつ弓に付いた刃でチ級を切り裂いた。
「いいよ!進んでいる!」
飛龍の鼓舞で士気を上げつつ六人は入り口の前に立つ。そんな中赤城は周囲を見て、叫んだ。
「挟撃をします!加賀さん、蒼龍、翔鶴は二階へ飛んで下さい!」
「挟撃?どうやって?」
「……分かりました」
赤城の読みを見たのか素直に従う加賀は二人を連れ、二階まで高くジャンプすると、外から手刀で近く窓際を彷徨っていた地上棲艦を切り裂く。奇襲に動揺している中、赤城ら三人が、階段、踊り場、廊下にいる大量の地上棲艦を薙ぎ払いながら階段を上がって来た。
「あー……確かに挟み撃ち」
赤城の意味を知った蒼龍は一人呟く。そんな蒼龍を置いて、五人は三階へ向かう。
「あ!?ちょっと待って!」
六人は三階に上がり、赤城はすぐ左に走り出す。
「赤城さん!どちらへ!?」
「執務室です!恐らく彼女はそこにいるはずです!」
「……行ってみましょう……!」
赤城の案に乗り、一行は提督のいた執務室へ飛び込む。内部には、我が物顔で提督の机に腰を下ろしているリエがいるだけだった。
「ハーイ」
「リエ……!」
「来てくれて嬉しいなぁ……街を壊すのは私も嫌で嫌で……」
わざとらしく涙を拭う動きをするリエに瑞鶴は怒鳴る。
「白々しいわよ!」
「ほんっと、五月蠅い鶴ね。お姉さんの教育が悪いのかしら?」
「貴方は、瑞鶴を殺そうとして……妹をこれ以上愚弄しないで!」
「そっちの二人もそう。馬鹿な回答を披露してくれた飛龍さんに、提督さんの雑魚ドラゴン。相手を見極める頭も無いの?」
「アンタ!調子に乗ってんじゃないわよ!」
「この……!」
リエの煽りに憤る四人を抑え、加賀も煽りで返す。
「口を開けばそればかりですね。口先のみ鍛えて強くなったつもりですか?」
「……そんな訳ないでしょうが!」
そう叫ぶと、執務室の出入り口に壁が現れ七人は閉じ込められる。
「アンタらも進化を受け入れなさい!それとも、人を辞めたくないっていうの!?」
リエの問いかけに瑞鶴、翔鶴が言う。
「アンタらみたいになったら、破壊をするだけになるんでしょ!?死んでもお断り!」
「私は、この子の為にも、皆さんの為にも……貴方を倒します!」
続いて、蒼龍、飛龍。
「弱くないよ!あ、でも、リエが私に負けたら、雑魚にも勝てないって事になるんだよね……よ~し!」
「今ここで倒して、アンタの言う進化っていう考えを壊して見せる!」
最後は加賀、赤城が叫んだ。
「リエ、貴方は大きな間違いを語っています。深海棲艦は人類の進化ではなく、殺戮兵器に退化しているに過ぎません」
「はい。そして、私は……艦娘は、守護の存在……!私の後ろに人々がいるのなら、必ず貴方を討ち果たします!」
語りを聞いたリエは鼻で笑いながら反する。
「ハッ!馬鹿を言うもの大概にしなさいよ!」
腕を大きく開き、禍々しい気を放つ。リエの気迫に押されても赤城は叫ぶ。
「皆さん!行きましょう!!」
「はいッ!!」
赤城の鼓舞に五人は大声で、力強く答えると一斉にリエに向かって走り出す。
「あっはははははははは!!」
「だああああああああ!!」
一体の笑い声と六人の咆哮が鎮守府を越えて、街にまで響いた。
次回、最終回