「それじゃあ、二人共準備はいい?」
「あの……、本当に掛け声は必要なのでしょうか……?」
「いるって!」
「嘘だ……、絶対楽しんでる……」
演習場にて、明石達三人の指示を聞き、五航戦の二人は、左腕に巻かれた装置の電源を上げ、自身の足元に向ける。
すると、装置から、ピアノの美しい音色とエレキギターの激しい音が響きだした。
装置を起動させると、二人の前に二着の衣装が現れ、それぞれのポーズを取り始めた。
翔鶴は、かかととかかとを合わせて、目を瞑り、両手をゆっくりと広げる。
「変身」
両手が、腰の高さにまで到達した時、そう言って拳を握る。
それと同時に、衣装が翔鶴の方へ迫り、装着され、ゆっくりと目を開けた。
「五航戦、翔鶴。……こんな感じでしょうか?」
瑞鶴もまた、ポーズをとっていた。
「変身!」
起動と同時に、すかさず、右手を左前に突き出す。
「ふっ!」
直ぐに、右手を引き、左手を右前に出す。
「せいっ!」
そして、腕を交差させたまま、頭上に揚げて叫んだ。
「はぁっー!」
それと同時に、両手を腰まで戻して、装着された。
「五航戦、瑞鶴。とりあえず、変身完了っと」
二人の姿は、白を基調として、所々に赤が使用されているシンプルなものだった。
「結構シンプルだね」
「それじゃ、私達も紹介するかな!」
「蒼龍、飛龍あまり無茶させないようにね」
「分かってるって!」
そう言って、明石のそばにいた装置を巻いた二航戦が五航戦の前に立ち、構えをとり同時に叫ぶ。
「変身!」
手早くポーズをとり、装着する。
「では……、始め!」
明石の開始の合図と共に、二対二の実技による鍛錬が始まった。
先日、一航戦で、メンバーの隊長でもある赤城と、同僚の加賀に目を付けられた事で、五航戦も地上での戦いにも参戦する事になってしまった。
姉の翔鶴は、元々真面目な性格と言う事もあってか、周りの言葉を素直に聞き、確実に力を付けていた。
しかし、妹の瑞鶴は、技術には問題はなくとも、一つだけ大きな不満があった。
「そこまで!」
明石の声を聴き、手を止める四人。
「瑞鶴って、力とか結構ある?パンチが少し重かったんだけど……」
「そりゃ、鍛えたんだもの!」
「はぁ……はぁ……」
「大丈夫?」
「は、はい……、蒼龍さん、どうでしたか?」
「翔鶴は……、力が足りないって感じかなぁ?」
五航戦の戦い方を評価する二航戦、そんな中、飛龍が言う。
「それよりも、瑞鶴が素直で良かったよ」
「ん?それって……」
「いや~、加賀さんが、碌に言う事を聞かないかもしれないって言うもんだからちょっと不安で……」
「あの人、そんな事を……」
瑞鶴の大きな不満、それは、加賀の存在であった。
「瑞鶴、もしかして加賀さんが……」
蒼龍が言いかけると、瑞鶴も言い出した。
「嫌いよ!ここに配属が決まる少し前にも因縁を吹っ掛けられたし……」
「ず、瑞鶴……」
「今だから言えるけど、あの人、人を褒めることが出来ないのよ。それに……」
「瑞鶴!」
翔鶴に怒鳴られ、口を閉ざす瑞鶴、怒声混じりに話し続けた。
「過酷なのは分かるけど、それが相手を罵倒していい理由にはならないでしょう?」
妹を窘める姿を見て、蒼龍は飛龍に耳打ちをする。
「いいお姉ちゃんだよね」
「分かる」
一方、赤城と加賀は、工蔽で博士の話を聞いていた。
「博士、本日はどの様な理由でこちらに?」
「まず、君達に言わなければならない事がある」
「なんでしょうか?」
「つい先日大本営に呼び出されてね、当分の間、顔を出せそうにないんだ」
申し訳なさそうにしている博士はそのまま話を続ける。
「そこで、私の助手をここに置かせて欲しい、装置の修理が出来る人は、限られるからね」
赤城はそれに笑顔で答える。
「ええ、構いませんよ。博士の関係者でしたら尚更協力します」
「赤城さん……いいんですか?」
「はい、いざという時には、私が責任を取ります」
「ああ……ありがとう、近いうちに来るから受け入れてくれ。それじゃあ……」
博士は、俯き工蔽を去って行った。
「博士……寂しそうでしたね」
「私には、研究結果を間近で見れなくて悲しんでいるようにしか見えなかったわ」
そんな会話をしつつ赤城はこれから来るであろう博士の助手について考えていた。