提督が鎮守府に着任···あれ?   作:征嵐

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 先に言っておきますが、主はけっこうロシア好きですよ? 外交問題はさておき。


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 その音が聞こえた瞬間、ユニオンと北連の代表、アイリス代表のリシュリューと、ヴィシア代表のダンケルクを除いた各国代表とその護衛·補佐官達が取った行動は、綺麗に統一されていた。

 

 まず、椅子から身を投げてその場に伏せる。耳を塞ぎ、目を閉じ、口を開け、来る衝撃に備えて全身を硬直させた。

 

 「何を···?」

 

 ダンケルクが怪訝そうに、隣に座っていた、今は床に寝そべっているロイヤル代表の男性を見やる。

 

 「貴女も早く真似たほうがいい。でないと──」

 

 

 雷轟。

 

 

 空間を制圧する致死の電流は、過たず『アンノウン』代表者の為だけに用意された、唯一無地の椅子へと吸い込まれた。

 

 何の準備もしていなかったカーディナル·グレイが頭を押さえて悶絶し、リシュリューとダンケルクが即座に武装を展開し照準する。ついでに、会話するために耳の防護を解いていたロイヤル代表の男性も、床を転がって悶絶していた。

 

 「これは──っ!?」

 

 ホワイトアウトしていた視界が回復し、ダンケルクの目に見慣れた顔が飛び込んでくる。

 

 「ジャン·バール!? 何してるの!?」

 「···後で話す。変われ。」

 「分かったけど···」

 

 粗野な言葉遣いと、公の場には向いていないと自分でも言うほど好戦的な性格のせいで、ダンケルクに国家代表を押し付けていたジャン·バール。どういう訳か、秘密会談に行った筈の彼女が、会談相手の『アンノウン』指揮官と一緒に、やたら攻撃的に入場してきた。

 

 「···久しぶりだな、()()()?」

 「······。」

 

 ジャン·バールが話しかけた相手は、彼女と同規格の戦艦であり、ネームシップであるリシュリューだ。だが彼女の目は、ただ一人に向けられていた。

 

 無地の椅子に深く腰掛け、肘掛けに両腕を置いた、『アンノウン』の指揮官だ。

 

 

 ◇

 

 

 お前なに言ってんの?

 

 国連の会議室の自分の椅子に仕掛けた盗聴機越しに、代表たちの──というか、カーディナル·グレイの言っていることを聞いた俺は、まずそう思った。

 

 ついでに言うと、こうも思った。

 

 ──この国、要る? 滅ぼそうぜ?

 

 嘘が下手とか顔に出るタイプとか、元いた世界ではそんなことを言われ続けてきた顔面が、ばっちり憎悪を反映する。暗くなっていく視界で、ジャンバールが怪訝そうに顔を顰めるのが分かった。

 

 「何か、マズイことを言ったか?」

 「──いや、ジャンバール。なんでもない。それで、同盟の話だが」

 「同盟じゃない。」

 

 明度を半分ほどまで落とした、応接室の風景。豪奢な飾り付けとベルファストが淹れてくれた紅茶の入った、精緻な装飾のされたティーセット。第一印象からすると、この空間には合わないワイルドな装いのジャンバールだが、彼女はこの空間を見事に支配していた。

 

 「なんだと?」

 

 少なくとも、こちらの立場が上で、こちらのホームでの対談で、主導権を握らせない程度には。

 

 ···まぁ、俺の交渉スキルがカスなだけかもしれないけど。

 

 「オレたちヴィシアは、お前たちアンノウンの軍門に──指揮下に入りたい。」

 「俺に忠誠を誓うと?」

 「そうだ。」

 

 即答された。冗談半分で言ったんだけど···というか、ジャンバールさんや。

 

 「お前の率いる国家──『ヴィシア聖座』が、アンノウン傘下に入ると?」

 「ご主人様、よろしいですか?」

 

 俺の掛けたソファーの後ろ、ニューカッスルと並んで控えていたベルファストが口を開く。仮にも国家代表同士の──いや俺たちは別に国家じゃないが──会話に、メイドが口を挟むのは間違っている。分を弁えろと言われても仕方ない行為だが、ジャンバールは無言で目を閉じた。待つという意思表示だと受け取り、背もたれに深く背中を預ける。革張りのクッションに半ば埋まりながら、ベルファストが背後から囁く言葉に耳を傾けた。

 

 「我々は、いまはこの基地と周辺数海里──通常兵器の射程程度しか防衛圏として主張していません。これは、単純に他の国家との領土問題を引き起こさないという意味もありました。ですが、ここで旧フランス共和国領の半分を──鉄血領と隣接する領域を、いきなり所有するのは不味いかと。」

 「それはそう。···じゃあ、どうすべきかな?」

 「我々の傘下に──ご主人様の下に傅くというのであれば、領土を放棄すべきでしょう。ですが、領土と主権は放棄出来ても、そこに住まう国民はそうはいきません。」

 「それもそう。···あ、いや、待てよ?」

 

 ヴィシアとアイリス、両方ともコッチ側に来たいんだったよな? なら、いっそ俺たちがフランスへ移住するってのはどうか。形式としては、アンノウン陣営が旧フランスsの傘下に入るって感じで。···神か? 妙案過ぎるだろ。 これで、俺という個人が馬鹿げた力を持つという状況が消える。流石にロシア···じゃなかった、北連も、フランス級の他国に向けては核も撃てまい。へっへー、ざまぁ。

 

 ──まぁ、どうするにせよ、あいつらには滅んでもらうんだけど。

 

 「落ち着いてください、ご主人様。先ほどから、随分怖いお顔をされていますよ?」

 「···そうか?」

 「はい。ニューカッスルも怯えていますし···」

 「···悪かった。それで、ちょっとジャンバールにも聞いてほしい事があるんだが」

 

 俺氏考案のウルトラスーパーな妙案を語って聞かせたところ、なんと、返ってきた反応は異口同音に、それぞれマイルドだったり直球だったりしたが、意訳すれば、こうだ。

 

 

 『は? アホかお前?』

 

 

 「···ご主人様、相手は既に核攻撃をしています。この期に及んで、相手が正式な国家かどうかは関係ありません。」

 「国際社会からのバッシングだって、今よりは厳しくなるだろうが、武力制裁には至らないぞ? 核保有国同士の戦争は、セイレーンのせいで人類がヤバい現状じゃあ決定打になり得る。人類滅亡のな。」

 「貴方様のプランでは、北連は鉄血と衝突するのを嫌ってミサイル攻撃などはしないでしょうが···それでも、旧ポーランド領域やバルト海からの航空攻撃は免れません。核爆弾による爆撃だって、もしかすると。」

 「···あ、うん。おっけ。わかった。」

 

 じゃあ、うん。対内的なポーズもこれぐらいでいいだろう。

 

 元より、戦争を回避するつもりなんてないんだ。

 

 「じゃあ──ジャンバール。俺の傘下に入れ。」

 「ごしゅ──」

 「国は持ってていい。だが、そこの統治に関して、俺たちは関知しない。それから、俺たち『アンノウン』は──」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 以前は気絶した、エルドリッジのワープ移動。なるほど、こりゃあすごい。としか言い様のない攻撃性移動手段だ。採用。何にとは──まぁ、言わずともそのうち分かる。

 

 それはさておき。

 

 「あー、ミスター·コネリー。大丈夫ですか?」

 

 床を転げ回って悶絶する、ロイヤル代表の男性。流石に罪悪感を覚えないでもない。

 

 「あばばば···あぁ、アンノウン指揮官殿か、大丈夫だ気にしないでくれ。あばば···」

 「いや、どう見ても大丈夫じゃ···おい、この人を医務室か、何処か休憩出来る場所へ。この場のことは、どうせ録音なりされてるんだろ?」

 

 後で見せてやれ。そういう意図を込めて、ロイヤルの護衛団に言う。意外にも、彼らは言われた通り、ミスターコネリーを担いで出ていった。後には、補佐官と思しき男性だけが残った。

 

 「さて、では、皆さんお揃い···じゃないじゃん。いま一人居なくなったじゃん。締まらねぇなぁ···まぁいいや。」

 

 ぶつぶつ言っていると、北連代表の男性──カーディナル·グレイも復帰し、椅子に座り直していた。まだ頭を振ったりしているから、完全回復という訳ではないらしい。

 

 「えー、本日、私がここに来たのは、国際法に基づいた宣言と勧告をするためです。あ、あと報告も。」

 

 ふざけた喋り方だと自分でも思うが、軽く構えてないといろいろ暴発しそうなので仕方ない。それに、こんな話し方でも、誰も口を挟んでこない。

 

 厳粛な円卓の間に、火種を順番に投下していこう。

 

 「まず、報告を。我々『アンノウン』は、こちらのミス·ジャンバール率いる『ヴィシア聖座』と同盟を結びました。内容は、追って書面で。」

 

 ダンケルクに変わってヴィシアのマークが描かれた椅子に座ったジャンバールを指して言うと、少しのざわめきが円卓の間に満ちる。だが、それも一瞬で沈静化した。舞い落ちた静寂に火をつけるように、一番言いたいことを舌に乗せよう。

 

 「そして、我々──『アンノウン』は、先日の北連の核攻撃を重く受け止めています。具体的には──"宣戦"として。」

 

 円卓の間が、静寂を保ったまま、緊張を一気に増す。重みを持った空気が、次第に呼吸すら圧迫する重圧を帯びる。誰一人、呼吸の音すら漏らさない。心音や瞬きの音すら聞こえそうな空間で、ニッコリ笑って一言。これを言うために来たと言っても過言ではない。

 

 

 

 

 

 「というか、さ。───戦争がしたいなら、そう言えや。」

 

 

 

 

 

 

 

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