提督が鎮守府に着任···あれ?   作:征嵐

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 うたわれコラボはマジで草。


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 「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 トラック泊地の、俺の私室。そこに、くぐもった叫び声がもたらされた。発したのは、無論俺だ。何故かって?

 

 ···ホントに何故か疑問なのか? じゃあ聞くけど、君ら、国家レベルで重要な会議の場で、「···戦争がしたいなら、そう言えや(キリッ)」とか言って平然としてられるのか!? 俺は無理!! 黒歴史この上無いよ!! ベッドの上で枕に顔押し付けて叫ぶに止めてる精神力をむしろ褒めろ!!

 

 「指揮官様!? 大丈夫ですか!?」

 

 開けっ放し──というか、吹っ飛んだガラス窓から声が漏れていたのか、隣の執務室に残っているらしいイラストリアスがすっ飛んで来た。

 

 「だ、大丈夫···それより、編成終わったか?」

 「は、はい。後程、ご確認頂けますか?」

 「うん、おっけ。···あー、いいや、今持ってきてくれる?」

 「畏まりました。紅茶もお持ちしましょうか?」

 

 チラッと時計を見ると、もう日付が変わりそうだった。深夜テンションであんなこと言って帰ってきて、しかもこれから戦争だというのに眠れる気もしないが、カフェインを摂るのには抵抗があった。

 

 「···いや、水でお願い。読んだら寝るから。」

 「ここでお休みになられるのですか?」

 「あー···、まぁ、そうなるのか。ちょっとサンディエゴ呼んで貰える?」

 「畏まりました。取り敢えず、お水と作戦企画書をお持ち致しますね。」

 

 イラストリアスが一礼して出ていく。さーて、サンディエゴをボコボコに···いや、でも、アイツのおかげで核ミサイルを撃墜出来たんだよな。なら、このくらいは許してやるべき···というか、むしろ褒めて然るべきなのでは? ···ほめてしかるべきって言うと、どっちなのかハッキリしろって感じで面白いな。どうでもいいけど。

 

 「指揮官様、イラストリアスです。入ってよろしいですか?」

 「ん、いいぞ。」

 

 水を持ってきてくれるとの事だったので、ドアを開けてやる。案の定と言うべきか、お盆を持ったイラストリアスが少し驚いた顔をしてから微笑んだ。

 

 「ありがとうございます、指揮官様。」

 「どういたしまして。お盆ごと貰うよ?」

 「はい、どうぞ。では、サンディエゴちゃんを呼んできますね?」

 「ん、頼むよ。」

 

 お盆を持ってベッドへ戻る。今度は突っ伏さず、腰掛けて端末を起動する。

 

 「えーっと、編成画面は···ん? なんだこれ?」

 

 ローテーション出撃にして、艦船たちの健康管理やら何やらを秘書艦に任せて久しい。久々に触った指揮用端末の、久々に見た編成画面。そこに、見慣れない文字があった。

 

 「···潜水艦隊?」

 

 潜水艦。『アズールレーン』には無かった要素、存在しなかった艦種だ。というか、『アズールレーン』のキャラクター達は、艦種にもよるが、主砲、副砲、対空砲、魚雷、追加兵装──レーダーや増設バルジなど──しか装備出来なかった。対潜爆雷やソナーの類いを持たない彼女たちにとって、潜水艦はアンタッチャブルだ。出会えば、如何に超常の戦力である艦船少女たちとはいえ、勝ち目は薄い。──負けの目が高い訳ではないあたり、やはり怪物じみているが。

 

 「誰が編成出来るんだよ。持ってないぞ、潜水艦なんて。」

 

 言いつつ、編成スロットをタップする。この世界で俺に従う──この基地に存在する艦船少女は、俺が『アズールレーン』で所有していたキャラだけだ。

 

 つい先日までは、そう思っていた。だが、大鳳という例外が存在する以上、他の『例外』が存在しても、別におかしくはない。というかむしろ──

 

 「なんでメンバーチェックをしなかったんだ、クソ。」

 

 大鳳が現れて、北連に襲撃されて、ヴィシアと会談して。そんな暇が無かったというのもある。だが、対外的な──その気になれば鏖殺できる程度の存在に拘らっていたせいで、内部のことを、何を賭してでも守り存続させるべきもののことを蔑ろにしていた。

 

 「指揮官失格か? 俺は。」

 「──いいえ、指揮官様。」

 

 悲哀を孕んだ声に驚き、聞こえた方に顔を向ける。いつの間にか、ドアの前にイラストリアスが立っていた。隣にはサンディエゴを従えている。

 

 「あぁ、イラストリアス。編成はこれでいい。それから、明朝0650──作戦開始十分前に、全艦を広場に集めろ。」

 「点呼を取るのですか? それなら、もっと早めに──」

 「いや、違う。」

 

 編成画面には、誰も表示されていない。無機質なゴシック体で、ただ『編成可能な艦が存在しません』とだけ映し出されている。

 

 当然──ではないが、良かった。

 

 「まぁ、明日のお楽しみだ。それからサンディエゴ、ちょっと頼みがあるんだが、いいか?」

 「へ? 頼み?」

 

 サンディエゴは怒られるとでも思っていたのか、きょとんとした顔を見せる。

 

 「一晩だけ部屋交換しようぜ!」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 風の吹き込まない、ちょっと良い匂いのする部屋で快眠し、翌朝。

 

 学園エリアの広場に、この基地に詰める艦船少女の全てが集っていた。彼女達を前に、朝礼台に登る。気分は校長先生だ。

 

 「ははは、壮観だな。」

 

 小さな呟きを、マイクが拾う。スピーカーによって拡声された感想が全員に行き渡り、押し殺した笑いが伝播した。恥ずかし。

 

 「ご主人様、陣営別ソート、完了致しました。」

 「お疲れ様、ベルファスト。」

 

 ベルファストは一礼して、列とは別に台の斜め前に控えた。纏められた銀髪と、一点の汚れもないホワイトブリムを一瞥して、前を向く。

 

 「えー、皆さん、おはようございます。」

 

 小学校の校長先生クオリティの切り出しに、艦船少女たちが苦笑しつつ挨拶を返してくれる。テンプレート的に「声が小さいですね。もう一度。」とやっても良いが、流石にこれ以上は緊張が解れ過ぎて気が緩む。というか、あのテンプレは小中高とやってきてもウザさに慣れなかったからね。殺意すら持ってた。

 

 表情を引き締めると、それを敏感に感じ取った艦船少女たちも緊張した面持ちで傾注するのが分かった。集中する視線の圧力に負けないよう、腹に力を込める。

 

 「さて、と。みんなもう知ってるとは思うが、十分後、我々『アンノウン』は、北連からの宣戦布告に対する受理通告を国際社会に発信する予定だ。それに際して、聞きたいことがある。みんな──戦争、したいか?」

 

 困惑の空気が満ちる。それでも沈黙が保たれるあたり、流石の統率だ。軍人ではなく軍艦であるが故に、人間的な動きを排除できる。ヒューマンエラーというものも起こり得ない。北連という大勢力と戦争しても、少ない消耗で勝ちを得られるだろう。

 だが──彼女たちの無敵性は、絶対ではない。敵にしてみれば、彼女たちのように被弾面積が小さく、回避能力が高い相手には、有効ではあるが高価な対艦ミサイルを使いまくる訳にはいかない。だが、この基地のように密集している場所に向けてミサイル弾幕を使われれば何人かは食らうだろうし、前回のように核兵器を使われるかもしれない。

 そうなれば、大量破壊兵器はその効果を十分以上に発揮し、彼女達を戦闘不能に追い遣るだろう。もしかすると、殺すかもしれない。神は、「この世界に轟沈(キャラロスト)はない」と言っていたが、信憑性は低い。

 

 「俺は、みんなに死んでほしくない。傷つくだけでも嫌だ。それに──もしみんなが、「人々を守るもの」としての兵器であるみんなが、その庇護すべき対象である人間を殺すのが嫌なら、俺は受理通告をしない。和解を申し込んでもいい。」

 

 戦争開始の十分前。全員の士気が高まりきった時間に、水を差すような言葉を投げた。指揮官としての器量が疑われる行為だし、彼女たちが戦争をすると決意していたら、それを鈍らせる行為だ。戦争になったとき、その鈍りは刃の鈍りになる。そして、刃の鈍りは、簡単に自分の命を落とす引き金になる。

 

 俺は、彼女たちの命を削った。自分の手で。何より庇護すべき彼女たちの背中を、死へ向けて押した。戦争という目に見える死から遠ざけたい一心で、彼女たちの首を締めた。

 

 そう気付いたのは、全て言い終えてからだった。

 

 「···ぁ、」

 

 犯した失敗の大きさに震え、息が上手く吸えない。足先から背筋、頭頂まで、内側から湧き出す寒さに震えている。卒倒しないように堪えるので、精一杯だった。

 

 「────指揮官、一つだけ質問してもいいだろうか?」

 

 こみ上げてきた、溢れないように必死に堪えている涙で曇った視界に、控えめに手を上げた艦船少女の姿が映る。重桜に所属する艦船少女を統括する、三笠だった。

 

 「どうした?」

 

 辛うじて鼻声にならなかった声が、微かにすら震えていないことに安堵する。

 

 「どうして今、そんなことを?」

 「···それは」

 

 今まで平気な顔をして戦場へ送り出してきて、どうしていきなりこんなことを言い出したのか。敵が人間だから? それは違う。今までだって、人間を相手取ったことはあった。こんなに怯えたのは、転移してから二度目だろうか。初めの一回は、この世界に来てからの初戦。みんなのスキルやステータスがどうなっているのか分からないまま戦地へ送り出してしまった、あの時だ。

 

 なら、結局俺は、みんなが傷付くことを恐れているのだろう。あるかどうかも分からない、生命ならばあってしかるべき、死を。恐れているのだろう。

 

 「死ぬかもしれないから、かな。」

 

 通常兵器だけなら、死ぬことはない。対艦兵器は、少し危うい。だが、核兵器なら──ほぼ確実に死ぬ。一部、核実験の的になっても生き残るような子もいるが。

 

 「なるほど、やはりな。」

 「···?」

 

 苦笑の雰囲気が、居並ぶ艦船少女たちに蔓延する。困惑していると、三笠がさらに言葉を続けた。

 

 「指揮官は、私たちが避けられるのは点攻撃──あるいは、点の集合としての面攻撃だけだと思っているのだろう?」

 「···なに?」

 

 違うのか? 含まれたそのニュアンスを感じ取った艦船少女たちは、「侮られている」と感じたのだろう。少しだけ、不満そうな空気になる。

 

 「まぁ、見ているといい。我らの戦闘を、我らの蹂躙を、貴方の艦船がもたらす、破壊と殺戮を。」

 「──ご主人様、お時間です。ご決断を。」

 

 こちらを見上げて、ベルファストが言う。

 

 自信満々といった表情の、三笠を筆頭とした艦船たち。その顔に引き上げられて、心配がいくらか薄れる。

 

 「···受理通告を。」

 「畏まり──」

 「ただし」

 

 だが不安が薄れたからといって、心を埋め尽くしていた不安が残した、薄ら寒い感じは取れない。払拭するには、同じだけの安心感が要る。故に──

 

 「慢心はしない。初めから全力で、戦いの幕ごと敵を切り捨てろ。手始めに──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「──クレムリンを頂く。」

 

 

 

 

 

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