「···誰だ?」
無人の私室に向けて、俺は囁くように誰何した。
手には名銃と名高いコルトM1911。狭い室内では取り回し難い消音器を外し、警報器の役割を果たせるようにしておく。
大鳳のときとは違う、明確な違和感──いや、差異。
部屋が荒らされている訳でも、何かが無くなっている訳でもない。ただ──「分かる」のだ。
「···ヤンデレ、いや、メイド隊か?」
ベルファスト率いる、ロイヤルメイド隊。俺の部屋に踏み入ることが許されているのは、掃除を担当してくれている彼女たちくらいのものだ。
「っ、誰か──」
だが彼女たちは強力な陣営バフをもつクイーン·エリザベスと共に哨戒に出ているはず。
大鳳のときは味方──というか、好感度が高い状態で現れたが、今回もそうとは限らない。それに、新規艦ではなく侵入者という可能性も無いではない。···悪意ある侵入者にしては、行動が謎過ぎるが。
「御前に。何か御用でしょうか、誇らしきご主人様。」
「うん、取り敢えず俺の護衛と部屋の安全確認を···誰だよお前!?」
「はい、ロイヤルメイド隊が一、シリアスでございます。誇らしきご主人様。」
背後に現れたのは、銀髪をボブカットにした改造メイド服の少女(巨乳)だった。かっこの中身は特に重要。でも一番重要なのはかっこの外。メイド服ってところだ。
「ロイヤルメイド隊···新参か?」
「はい。SPとして私が、側付として──」
「私たちが侍らせて頂きます、ご主人様。ロイヤルメイド隊が一、軽巡キュラソー」
「並びに軽巡カーリュー」
「「着任致しました」」
紺色のロング丈ワンピースに、白いエプロン。
これが、これこそがメイド服だ。
いやベルやシリアスのような目の保y···露出の多いメイド服は勿論それはそれで良いものだけれど、だがそれは「改造メイド服」であって、ベルのメイド精神や奉仕精神があってこそ、きちんとした従者足り得るもので···ただ着るだけなら痴女いコスプレにしかならないのだ。
だが彼女たちの着ているそれは明確に家事用戦闘用として考えられたデザインの「メイド服」であって、奉仕精神のないただの女性が着たとしても「かなり出来の良いコスプレ」になり得るだろう。そして、キュラソーとカーリューからはベルに勝るとも劣らない気品とオーラが漂っている。かなり出来るメイドと見た。というか。
「好き···」
ぽろっと本音が漏れた。
慌てて取り繕おうと口を開くが、その前に目に入ったものがある。
頬を染めた、色気に満ちたキュラソーの顔。
同じく頬を染めた、照れの多いカーリューの顔。
愛おしさか、或いは即物的な獣欲か。高鳴る心臓の鼓動に身を委ね、一歩を踏み出す。二人が動こうともせず、シリアスもまた動かないのを良いことに二歩目を進め──
「ご主人様、どうかなさいましたか?」
さっき上げた声を聞いて来たベルと目が合った。
「──!! ···?」
「ベルファスト、今は貴女がメイド長なのよね。妹共々、よろしくね。」
「キュラソー? と、カーリューにシリアス?」
声にならない声を上げながら飛び退くと、ベルが怪訝そうに入ってきた。が、俺の心情は怪訝どころでは済まない。
「な、なぁベル。それ···なに?」
「お好きかと思いまして。」
ベルが着ていたのは、いつものメイド服ともいつぞやのウェディングドレスとも違う、大胆なスリットから瑞々しい太ももの覗くデザインのチャイナドレスだった。
「···ご覧になりますか?」
スリットから覗く脚の付け根から太もも、白いストッキングまでの晒された肌をガン見していると、ベルが悪戯っぽく笑ってそう言った。
が。そこで頷くのは素人か風流心──否、人の心を持ち合わせないサイコパスだ。
脚、特に絶対領域は「絶対領域」であることに意味がある。スリットから覗く白い肌!! その瑞々しさと張りは、太もも特有の肉感的な感触を容易に想像させる。だがそこで満足するなかれ。実際は想像より柔らかく、そして固いのだ。ベルに限らず、程よく鍛えられ引き締まった脚は、膝枕の時などの気を緩めているときには柔らかく、不意に触られた時などの緊張状態では固くなる。硬直した筋肉の絶妙な固さも、それを覆うほどよい脂肪も、触れる前も、触れて尚も、俺を魅了して止まない。
それがフトモモの魅力。そこに許されるのは純粋な脚線美のみだ。下着を添える? はっ、これだから女を見るや即座に盛る猿共は···。フトモモ延いては脚とは、それそのものが独立した「美」を持つ。肉欲も情欲も全てを食らいつくすほど圧倒的な「美」が!! なれば肉欲も情欲もそれは不純物に過ぎないのだ!!
理解出来ない? なら君は人間じゃない。
「や、ベルさえ良ければそのままで。」
ちなみに俺は変態だ。多分人間じゃない。
「そうですか?」
「うん。よく似合ってるというか···綺麗だ。好き、死ぬ···」
ぽろっと本音が漏れた。もう遅いような気がするが。というか情報量が多すぎて脳が処理落ちしてるんだが···
◇
「で?」
「で、と、仰いますと?」
「いや色々あるけど···取り敢えず、どうやって入って来た?」
侵入者(メイド三名)と、メイド長(チャイナドレス)。あとフトモモ。情報量が多すぎるんだよなぁ?
「不明点が多すぎるんだよ。整理しろ。あとベルのそのドレスなに。」
何度だって言うが、ここは軍事基地だ。本職のアサシンでも侵入に難儀するレベルのセキュリティを持つ。メイド風情がそう易々と侵入出来てたまるか。まぁ艦船なら可能かもしれんけど。 というか、だからこそ不安なのだ。もしシリアス以下新参ズが大鳳のように「神」からのプレゼントではなく、ロイヤル陣営が開発した艦船で、スパイとして送り込まれた敵だったら? いくらベルが最精鋭とはいえ、俺を守り切れるかどうか怪しいところだ。そもそもベルは火力──攻撃寄りのステータスだし。
「どう、と仰られましても。私たち艦船が生まれ落ちる場所は、一つしかありません。」
代表してシリアスが答え、キュラソーとカーリューが窓際へ向かう。
「ドッグにて建造されました。他ならぬ、我が誇らしきご主人様、貴方様に。」
メイド二人がカーテンを引き開け、かつて吹き飛んだことから防弾仕様になった──まぁこれでもサンディエゴの砲撃を防げるとは思えないが──窓が露になる。
差し込む陽光の奥、窓の端に、金属質の輝きが目に入った。
本来は海だったはずの場所に、もともとそこにありましたよ? とばかり堂々と居座る巨大な建造物。
「こ、工厰だと!?」
このよくわからない世界に基地を持ってくる時点で置き去りにされた、『アズールレーン』におけるガチャ要素。『幸運』を最もダイレクトに発揮出来る要素でもあるそれが、漸くこの世界に持ち込まれた。
そういえば報告がひとつ。
今まで「アプリに課金とかww 愚者ww どうせいつか終わるのにww」とか言ってた愚者···筆者ですが。
ベルの衣装に課金しました()
だが後悔はしていない。というかベルの衣装に課金するのはむしろ賢しい行い。愚かなのは石を貯めておかなかったこと。