「···は?」
目が覚めた。待て待て。ちょーっと待て。目に入る風景は、完全に執務室のそれだった。カレンダーと時計を確認。うん。何も問題はない。寝落ちしていたが故の夢オチという展開ではなさそうだ。なさそうだが。
「神ィー!! 神ィーー!!」
「はーい、呼ばれて飛び出てー。」
体が硬直し、世界が停止する。椅子の背後からは、馴染みとなった中性的な声がする。
「これ、なに?」
「これって?」
なんで、俺が、執務室にいるの?
確か、国連の前線基地に攻撃を仕掛けに行ってたよね? それがなんで執務室に···?
「あー、メンテだね。アプデ入ったんだよ。ほら、メンテ入った時って、出撃状況がリセットされるでしょ?」
「えぇ···(困惑)」
確かに『アズールレーン』ならそうだったかもしれないが、ここは現実世界だぞ? あ、いや、平行世界なのか? なんでもいいが、世界のメンテってなんだよ。世界のアプデってなんだよ!! 神のつもりか!! ──いや、相手は神だったわ。
「丁度いいし、追加要素の説明するね?」
「あ、うん。よろしくー。」
ついにコラボか?
「えーっとねー、今回のアップデートでは、新しく『認識覚醒』というシステムが追加されましたー。いぇーい。」
「いえー、どんどんぱふぱふー。」
止まった時の中で合いの手を入れる。気を良くしたのか、背後の声が少しだけ上機嫌に聞こえてきた。
「はーい、どうもー。えー、認識覚醒っていうのはですねー、まぁ、所謂限界突破だね。」
むん? 限界突破とな?
『アズールレーン』では、同一のキャラクターを所持している場合か、或いは専用のキャラクターを所持している場合、レベルの上限を上げられる。ベルファストやイラストリアスのようなレアキャラにつぎ込む為に素材キャラを集めまくるためにウィークリーミッションをクリアするためにデイリーミッションをこなしまくったのは、いい思い出だ。(白目) 閑話休題。 レベルの上限はレアリティに関わらず100レベル。それ以上の強化は、各ステータスを個別に強化し、それも上限になれば、あとは装備で引き上げるしかなかった。
「そう。それが、レベルの上限が100を超え、なんと110になりましたー!! 120まで上がる予定だよ!!」
「おぉー!!」
で、どうやんの?
「はい。こちらのメンタルユニットを使用しまーす。」
「おぉー!!」
で、どこで手に入れんの?
「海域ドロップにしちゃうと、"こっち"の世界の人間に渡っちゃうかもしれないからね。ショップ限定にしておいたよ。」
「ふむ···ふむ?」
ドロップだったら幸運に任せて乱獲出来たんだけど···ちっ。
「···で、本題なんだけど。」
「あ、うん。なにかな?」
いや、うん。確かにすごいシステムだけど。そんなことよりですよ。
「今、どういう状況なんだ?」
確か、基地が空爆されそうになって、反撃して、カウンターアタックに出たらメンテだったよね。うん。で?
「あぁ、敵がどういう状況かって?」
「うん。」
「さぁ?」
ははっ。fxxk. こいつが知らない訳がない。知った上で愉悦してやがる。くたばれ。
「片手間にでも、クトゥグア召喚の方法を調べておこう。」
「あっいやえっとあのその」
「お? どうした? 何か思い出したか?」
「あ、はい。国連の基地を壊滅させて、ベルファストが交渉を終わらせて、みんなが帰ってきたところでアップデートが来たような気がします。はい。」
「おう。そうか。ご苦労。」
「あ、はい。失礼します。」
世界が、動き出した。
「ふぅ···ちょっと真剣にウザくなってきたな。」
「指揮官?」
「うわぁぁぁぁっ!?」
急に隣で声が上がり、椅子から転げ落ちる。椅子の右側に立っていたのは、SSレアの駆逐艦「エルドリッジ」だった。フィラデルフィア計画に使われたという逸話を持っているからか、瞬間移動に等しい超回避を見せてくれるロリーtゲフンゲフン幼女だ。···ちなみに、可憐な見た目からは想像も付かないが、「フィラデルフィア計画」はやばい。とにかくやばい。興味があるならggってみてネ。
「え、エルドリッジか。驚かせないでくれ···。」
「大丈夫?」
「うん···。」
小首を傾げて安否を問われ、是と返す。安堵の雰囲気を漂わせたエルドリッジが小さく跳躍した。
「指揮官、だっこして。」
「えっ」
オゾンの匂いとタンパクの焦げる匂いを残し、視界が暗転した。
◇ ◇ ◇
ミクロネシア前線基地が
「これは、どういうことか。説明して頂けますね?」
ユニオン代表の男──メイト○クス大佐に似ている──が、まず口を開く。続々と追従の声が上がる中で、ロイヤル代表の紳士だけが口を閉ざしている。
「先程も申し上げた通り、当方の指揮官とは連絡が取れない状況にあります。また、このような場で私の憶測を述べるのは不適切かと。」
ベルファストが淡々と答える。向こうが何を言おうと、こちらの答えが全て"真実"なのだから。たとえ、事実と違っていたとしても。
だが、そんな悠長なことを言っていられるのは、彼女が「強い側」だからだ。武力でも立場でも「弱い側」である国連としては、この国連本部や各国の国土にまで反攻されるのが怖いのだろう。語調は強くなる一方だった。
それでも流石は各国の代表。激昂したりはしない。
「今回の襲撃は、あくまでも一部の人間が行ったことです。それは、貴女の指揮官殿にもご理解頂けましたか?」
「さぁ? 先ほどから申し上げているように、当方の指揮官とは連絡が取れない状況にあります。通信が復旧次第、連絡を入れてはみますが···もしかすると、彼がここに来る方が、早いかもしれませんね?」
微かに微笑むベルファストに向けて、ロイヤル代表の金髪をオールバックに固めた紳士が微笑み返す。
(それはありえないよ、ベルファスト殿。ここは対セイレーン戦争が始まってから作られた、川からも海からも遠い要塞だ。核シェルターとしても機能する防壁に、周囲の山には複数の高射砲陣地を敷かせ、ここに至る道路は装甲車とMBTで徹底封鎖·検問を行っている。まず部外者は立ち入れないよ。)
かつて、彼の母国であったイギリスを守護する盾であり、敵を打ち払う剣でもあった軍艦、軽巡洋艦ベルファスト。その名を受け継ぐ彼女に、この場で最も敬意をもつ彼は、彼女の知らない情報を思い浮かべ、そして、目だけで周囲を確認する。
各国の代表は、その多少に差はあれど、みな一様に侮蔑の視線を向けていた。
(彼らをここに連れてきた輸送機の窓から見えた映像は、全てがダミー。気付かれていませんでしたか。)
(ここは特定のIDを持つ者の端末を除き、偽の位置情報を流している。流石に監視衛星には映るが、奴らは海のモノ。)
(おまえの言う「電波障害」は、我々が発しているジャミングの影響に過ぎん。セイレーンもどきの技術力もたかが知れる。)
(この要塞は防壁を起動すれば、たとえ核ミサイルの直撃にでも耐えられる。少し強いだけの艦砲など、取るに足らん。)
(((( その程度か、『アンノウン』!! ))))
──ばちっ。と、火花の散る音がした。
もっと感想とか評価とかお気に入りとか、増えてもいいのよ?(強欲)