幻想郷を一方通行に   作:ポスター

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『絶望』が、

『最悪』が、

ヒシヒシと平和だった幻想郷に迫る。



「さあ、楽しい楽しい"悲劇"を味わうといい幻想郷」


計画(プラン)名"目覚め(リバース)"始動。









絶対、誤字があります。
ですが発見した場合、面倒だったら無視してくれて構いません。
お暇なお方や心優しいお方は出来たらで良いので誤字やそれ以外のミスを見つけたらこんなダメな私に報告してくれると非常に助かります。
それと、もうひとつ。
私の小説を読んでいて『ここはこういう表現の方が良いよ』っと、思ったらできたらで良いので気軽にコメントしてくれると嬉しいです。










6話

空は青く広がり、白い大きな雲は優雅に流れる。

ここは、独自の文化を築いた

 

自然豊かな幻想郷。

 

種族関係なしに、多くの者達が伸び伸び生活できる世界だ。

確かに、異変などが起きるがそれは心配要らない。

異変解決のスペシャリストが居るからだ。

 

 

そして、時刻は9時24分。

朝である。

こんな時間なら、鳥の囀りに耳をすましたり新たな一日の始まりに準備運動したりなど、

色々なことをする者達がいるだろう。

 

しかし、だった。

 

 

霊夢「最ッ低!!!!」

 

軽蔑と怒りが込められたそんな声が博麗神社の中から聞こえた。

 

外見は神社だが、中を覗けば普通の家のような設計の博麗神社のある一室。

そこで博麗霊夢、霧雨魔理沙、一方通行の三人はひとつの机を囲んでいた。

 

霊夢「アンタ絶対忘れなさいよ!!いや、あの事件を忘れたら殺す!!!」

 

魔理沙「言ってることが滅茶苦茶だぜ。でも、ま。霊夢の言ってることは分かるぜ。一方通行、二度と"あんな"事すんなよ?」

 

一方通行「だァから悪かったって言ってンだろォが」

 

 

 

 

何故、こうなってしまったのか。

説明するためにも時を遡ろう。

 

あれは……………………………、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

里の、とある場所にある一人で住むには大きな一軒家。

 

そこに、たった一人で住んで居るのは白色が特徴の幻想郷最強の能力者・一方通行。

彼は突然幻想郷に無理やり飛ばされ、ここでは珍しい幻想郷入りした人物である。

 

ならば、帰ったら良いだろうと思う者も居るだろう。

しかしそれが不可能なのだ。

 

その理由は『呪い』である。

 

白い怪物を幻想郷入りさせた張本人。紅白の巫女・博麗霊夢。

彼女が無意識に掛けてしまった呪いとは幻想郷に彼を縛り付けて一生をかけてこの世界を救わせるという強制的に性格も変えて超善人なヒーローにしてしまうものだった。

 

だが一方通行の有する能力、ベクトル操作に備わっている『自動反射』によりその呪いの一部分は『反射』出来た。

しかし、幻想郷に縛り付けるという呪い効果だけはどうにもできなかったのだ。

 

でも、もしも。その呪いが解けたとしても彼は幻想郷に居続けるだろう。

 

それは…………この世界に魅了されたからだ。

元、居た学園都市からしたらこの世界は『異世界』。

 

この世界に触れることなく、一生を終える人生を歩んだかもしれない。

だが、今の彼はそんな人生を歩むのはゴメンと言うだろうか。

 

幻想郷は、彼女達は、

 

その身を血に染めたどうしようもない怪物を

どんな戦いも一撃で終らせる強大な能力を持つ一方通行を、

 

『そんなのはどうでも良い』と受け入れてくれて、もう見ることは出来ないと思っていた"光"に導いてくれたのだ。

だから、だ。

もしかしたら彼が魅了されたのは、この幻想郷ではなく

 

彼女達………………かもしれない?

まあ、その真実は一方通行自身しか知り得ないことだ。

もしかしたら違うかもしれない。

 

 

 

 

話を戻すが彼は人間の里にある、大きな家に住まう。

そして今の時刻は8時ジャストだ。

 

こんな時間なら若い者は起きてて当然だろうが一方通行は違う。

 

 

吐息を立てて、寝室で敷かれた布団で寝ていたのだ。

だが、であった。

 

両脇になにか、違和感を感じて目を覚ます。

すると、自分のじゃない寝息が左右から聞こえた。

 

それを確認するため、首を左右に動かした。

 

そしたら…………………、、、、

 

一方通行「………………………………は?」

 

 

自分の布団に紅白の巫女・博麗霊夢と、白と黒の魔女・霧雨魔理沙が何故か知らないが入っていて、すやすや寝ていやがった。

 

一方通行「こりゃどォいうことだ?」

 

 

あの最強様ですら頭を悩ます事が起きている。

しかし、理由を聞かなくては話が始まらない。

 

なら、と。

 

布団から出て、二人を起こしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢と魔理沙を起こし、

そして、あれからである。

 

一方通行、霊夢、魔理沙は山の中を歩いていた。

 

一方通行「…………チッ。さっさと終わらせて帰りてェ」

 

霊夢「それは私もよ。こんな朝早く仕事しなきゃいけないなんて。あー、面倒だわ」

 

魔理沙「二人とも、ちゃんとしてくれよな。今から行うのは妖怪退治なんだぜ?一つの油断が命の危険に繋がるぞ」

 

一方通行「しっかしよォ………良くもまァ、人が寝てる間に布団に勝手に入って寝やがったよな。オマエら」

 

ポケットに手を突っ込みながら、心底面倒な表情をしながら横目で彼女達を見る。

 

霊夢「いやー、ホントはアンタを叩き起こして6時ぐらいからこの妖怪退治に行きたかったのよ?でもアンタがあまりにも気持ち良さそうに寝ていたから眠気が移っちゃってね。一緒に寝ちゃったわ」

 

魔理沙「あれは凄いぜ。『誰でも眠くさせる程度の能力』とでも言って良いぐらいだ」

 

ハハハハッ!!!

と口を大きく開いて笑う魔理沙。

その隣の霊夢は『確かにそうね』と言って微笑むのであった。

そんな彼女達に一方通行は舌打ちを一つ打った。

 

 

そして、それから

 

霊夢「……………、そろそろ情報にあった場所に着くわ。お喋りは終わりにして仕事に移るわよ」

 

魔理沙「………ああ。私は空から妖怪達を襲撃する。二人は地上から頼むぜ」

 

一方通行「………お片付けの時間か。さっさと済ませるぞ、まだ朝食も食ってねェンだ」

 

霊夢は、縦長の四角い白い紙に赤い色の漢字が書かれた護符とお祓い棒を片方片方で持って構えた。

そして、魔理沙は片手に持っていた箒に股がり、空を自由に飛翔して、一方通行は地面を強く蹴り気配がする場所へ駆けて行った。

 

 

さあ、

 

さあ、

 

 

里の者を困らせた愚かな妖怪どもよ、粛清の時だ。

 

 

君達は、あの三人から逃れることができるかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「……………これで終わりだ」

 

ブシャッ!!!!

っと、白い五本の指で首を掴まれ地面に足を付くことを許されず、一方通行に片手で持ち上げられてる不気味な容姿の妖怪が体の内側から弾けた。

そしてその汚い血肉は周りの自然を汚す。

が、しかし。

白い怪物は白いままであった。

 

 

だが?

 

一方通行「…………あ?」

 

 

仕事が終わり帰ったらコーヒーでも飲もうかと次に考えた瞬間、なにか視線を感じその方向に首を向ける。

するとそこには先程弾けた妖怪の血が体にビッシャリ付着した霊夢と魔理沙が居たのだ。

 

ああ、妖怪の血が赤で良かった。

もしも、妖怪の血の色が白でドロドロとしていたら非常に不味い絵面になっていただろう………………………。

 

 

 

霊夢「オイッ!!このサイコ野郎!!良くもやってくれたわねッ!!前から言ってるでしょ!?血肉爆破は止めてって!!お陰で服が汚れちゃったじゃないどうしてくれるのッ!!!」

 

魔理沙「はあ……………、服が血でベトベトだぜ」

 

一方通行「あァ。オマエら居たのか、悪りィ悪りィ」

 

霊夢「悪いと思ってんなら早くこの血を落としてよ!!アンタの能力ならできるでしょ!!」

 

自分でしてしまったことだが一方通行は舌打ちをして二人の肩に手を乗せる。

そして、ベクトル操作によって服に付いた血を弾く。

 

そう、いくらどんなにしつこい汚れだろうと彼の能力を使えば簡単に汚れは落ちる。

 

が、しかしだった。

 

 

これで一件落着かと思ったら、

 

一方通行「あ」

 

っと、口をパカッと開いていた。

 

その事に霊夢と魔理沙は、なぜ一方通行がそのような顔をしているのか疑問に思ったら次の瞬間、

 

 

一方通行「____________ベクトルの演算ミスった」

 

 

刹那。

 

 

____________バリバリビリビリビリッ!!!!!

と、霊夢と魔理沙が纏っている布全てが木っ端微塵に粉砕した。

 

 

 

「「キャァァァアアアアアアあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!?!?!?」」

 

そして、だ。

突然服が粉々に飛び散った魔理沙と霊夢は大事な部分を隠すように腕で生まれたままの、女性らしい綺麗な肌を露にしている体を出来るだけ隠し、絶叫しながらしゃがみ込む。

その時、二人の顔は真っ赤に染まっていた。

 

一方通行「はァ………。昨日は結局、紫のクソ女に付き合ってあのまま夜遅くまで酒を飲ンだし、今日は昼まで寝てればこの疲れが取れる予定だったンだがなァ。やっぱり、疲れてる状態で能力は使うのは危険だよなァ」

 

ため息を吐いて、一応目を閉じた。

能力、力では神を超越した存在だが彼の体はこれからも人間だ。

だから疲れていれば小さな失敗、大きな失敗はするのだ。

 

 

そんな、大きな失敗をした一方通行に、

 

 

霊夢「良いから私達を神社に帰せぇぇぇえええええええええええええええッッ!!」

 

魔理沙「こっちを見るなよこの変態ッッ!!!!」

 

そして、それから。

一方通行は博麗神社に繋がるスキマを二人の前に開き、無事に建物の中に入れた二人であった。

 

 

その後、一方通行は一人で依頼人から金を受け取りそれを博麗神社に持っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時は戻る。

 

 

一方通行「チッ…………」

 

霊夢、魔理沙の服を粉々にしてしまったがここは博麗神社。

霊夢の巫女の服はある。

だが魔理沙の服は無いため、一方通行が能力で彼女の着ていた服を複製した。

勿論、帽子もだ。

 

だが、ここは室内。

白と黒の魔女はその帽子は自分の隣に置いていた。

 

 

霊夢「……………ったく。これ以上文句を言うと止まらなくなるからちゃっちゃと朝食作ってくるわね」

 

そう言って霊夢は立ち上がり、台所へ向かう。

しかしその途中、一方通行の横を通った時だった、

 

一方通行「オイ、霊夢」

 

霊夢「ん?なに?」

 

一方通行「オマエ血の匂いがするぞ。怪我したのか?それともまだクソ妖怪の血が体に付いているのか?」

 

霊夢「え?___________________あっ………………」

 

なんのことだろうか。

そう、思ったが"アレ"の事だと気付いた霊夢は人差し指の先を顎に当てて口を開く。

 

霊夢「あー…………コレは大丈夫な出血よ。気にしないで」

 

一方通行「あン?血が出てンなら大丈夫じゃねェだろ。見せろ、止血してやる」

 

霊夢「えぇっ!?見せる!?嫌よ大丈夫だから!!」///

 

顔を赤くして全力で断っていた。

そんな霊夢の反応を見て、魔理沙は『あー、アレか』と心の中で呟き解ったのだった。

 

一方通行「チッ、しょうがねェな」

 

魔理沙「ちょっと待て一方通行。まさか解析するつもりじゃないだろうな?」

 

一方通行「教えてくンねェなら仕方ねェだろ」

 

魔理沙「大丈夫、ホントに霊夢は大丈夫なんだ。私が保証する。多分、貧血気味になったり急にイライラし始めたりすると大丈夫なんだ。なっ!!」

 

そんな事を言われても一方通行はさっぱり分からなかった。

だから、この幻想郷に来てから目覚めた第二の能力。

『本物に限りなく近く模倣する能力』に備わっている『自動解析』の能力を霊夢に向かって発動する。

 

 

実は、だ。

その『自動解析』の能力はある設定がされているのだ。

それは、能力や物は自動解析するが、人の体は自動解析しないというものだ。

 

これは、一方通行の能力を全て知られた時に彼女達が強くお願いしたのだ。

だって、そうだろう。

 

勝手に体も解析されるなど、一目会っただけで丸裸と同じだ。

しかも、彼女達。相手は女の子である。

勝手に乙女の秘密を解析するなど、許される訳がないのだ。

 

だが、今。一方通行はその設定を外そうとしていた。

やはり、『出血』は見過ごせないのだ。

 

 

 

霊夢「ァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああっ!!!もうッ!!!」

 

霊夢は覚悟を決めて、両手を固く握り床を強く踏んだ。

 

魔理沙「お、オイ。霊夢、まさか……………?」

 

ここからじゃ別に腕を伸ばした所で止められない。

 

が、

 

魔理沙は嫌な予感をしつつ、行く宛てがない手を霊夢の居る方向へ伸ばす。

 

 

 

そして、そしてだった。

 

頭が良いのに分からないヤツに、

今世紀で一番鈍感な彼に、爆発したかのように

 

霊夢「"生理"じゃボケェェェェェええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!!!!!!」

 

 

魔理沙「あーあ。言っちまいやがったぜ…………」

 

 

自暴自棄にでもなったのだろうか。

頬を染めて叫ぶ霊夢に魔理沙は額に手を当てて天井を仰いだのだった。

そして、だ。

言葉にされてやっと理解した鈍感さんは、

 

 

一方通行「あァ…………、生理か」

 

魔理沙「なんだよその反応……………。まあ、これで分かったろ?だから霊夢の出血は大丈夫なんだ」

 

一方通行「悪りィな霊夢。気付けなくて」

 

霊夢「もう良いわよ。じゃ、さっさと生理の薬飲みたいからご飯作ってくるわ。魔理沙、早く作りたいから手伝って」

 

魔理沙「へいへーい」

 

適当に返事した魔理沙は台所へ向かって行った。

 

霊夢「じゃ、一方通行。ご飯できるまで待っててね」

 

一方通行「なァ。俺の能力なら生理の症状治せるぞ」

 

霊夢「……………アンタねえ、何でもかんでも能力に頼るのは悪い癖よ。そのまま能力に頼ってばっかりだと体弱るからね」

 

魔理沙「そうそう。いやー、能力に頼りっぱなしで運動不足になり太っちゃった人が言うと説得力があるなー。だから霊夢は今ダイエット中なんだぜッ☆」

 

 

 

霊夢「…………………………………………………………今日の朝は特大なハンバーグかステーキになるかも」

 

 

その後だ。

余計な事を言ってしまった魔女に怒り狂った巫女が台所へ行った途端、

台所が戦場かと勘違いしてしまうぐらい騒がしくなっていた。

 

 

だが、一方通行は面倒だから止めに行こうとはせず、黙って瞳を閉じて座って待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから、だ。

無事に朝食も完成して皆で囲む机の前に並べられた。

前に置かれた朝食は和食であった。

 

温かい味噌汁に、白いほかほかのお米、野菜の煮物と目玉焼き。

これが三人の今日の朝食だ。

 

そして

 

 

「「「いただきます」」」

 

と、両方の掌を合わせて三人同時に食事前の挨拶をした。

それから、食事を取る。

そして、モグモグと食べている時にだった。

 

 

突如急に三人が囲む机の上に十センチぐらいの大きさの、長方形の黒い機械が落ちた。

 

 

一方通行「あン?」

 

霊夢「なに、これ?」

 

魔理沙「見たことない物だな。機械なのは分かるが、なんだコレ?」

 

一方通行「録音機…………か」

 

そして、だ。

ピッ!とその小さな黒い機械から起動音がした。

すると

 

 

 

 

『やあやあ、元気かね?幻想郷の諸君』

 

 

 

一方通行「…………………アレイスター」

 

霊夢「アレイスターっ!?それって学園都市の親玉の名じゃ!?」

 

魔理沙「マジか、なんで…………っ!?」

 

朝から嫌な声を聞いたといつもの彼なら吐き捨てて無視するだろうが今回は違う。

一方通行は人差し指を口の前で立てる。

『静かにしろ』ということだ。

 

 

アレイスター『突然だが。今日、今から一時間後に私は幻想郷を攻める。だが今回も私は幻想郷に行けない。だから"暗部"の者達を送ることにした___________________』

 

 

平和とは何故、こんな簡単に終わってしまうんだろうか。

ずっとずっとこのまま過ごせたら良いと思っていたのに、

 

学園都市を創設した学園都市統括理事長、アレイスターは幻想郷を徹底的に破壊しなきゃ気が済まないのだろうか。

そして、なぜここまで幻想郷に拘るのだろうか?

そんな疑問が浮かぶ。

 

 

そして、その録音の再生は続く、

 

アレイスター『________あ、そうだ。月にも私の実験に付き合ってもらったよ。自ら自分の世界を破壊し続ける月の民を見捨てるなり助けるなり好きにしたまえ。では、今回もせいぜい足掻くと良い』

 

 

……………………………………ピピッ。

その機械音は再生の終了を意味した。

 

すごく、ものすごく短い音声だったがそれでも重要な事は全て言っていた。

 

そしてそれから直ぐに、三人が居る部屋の空間に一つの裂け目が出来た。

 

その中からは、

 

「三人揃っていて良かったわ。これから学園都市が攻めてくるらしいのだけど、対策を考えたいの。時間はあるわよね?」

 

大妖怪・八雲紫が三人の前に現れた。

幻想郷を守るためなら彼女は行動が速い。

 

そうだ。今回もアレイスターの好きにさせる訳にはいかない。

 

 

…………だが?

 

 

魔理沙「ちょっと待って。今、飯の途中なんだよ」

 

紫「え?」

 

霊夢「紫、適当に座っててくれる?直ぐに済ませるから」

 

紫「あ………貴方達。幻想郷の、私達の命の危機がまた来たのよ?なにを呑気に________________」

 

一方通行「…………チッ、紫。おすわり」

 

まるで大妖怪様を犬か猫のように扱うかの如く、一方通行は床を叩く。

 

紫「……………は、はぃ………」

 

もっと慌てふためいてるかと思いきや、三人は冷静にご飯を食べていた。

流石に、そんな反応をされたら従うしかなかった紫は一方通行の隣に腰を下ろす。

そして、一時間後。学園都市の者達が攻めて来るというのに呑気に食事をしてる三人は、

 

一方通行「オイ霊夢、醤油はどこだ?」

 

霊夢「醤油?なんで?」

 

一方通行「あァ?目玉焼きには醤油だろ」

 

霊夢「いやいや、目玉焼きには塩でしょ」

 

魔理沙「いやいや、目玉焼きにはソースだぜ」

 

一方通行「はァ?ソースゥ?バカかオマエ」

 

霊夢「うーわ………ソースって。舌壊れてんじゃない魔理沙?」

 

魔理沙「なんで総攻撃なんだよ!?一回試してみろよ美味しいぜ?」

 

霊夢「嫌よ、私まで舌がバカになるじゃない。やっぱり塩よ塩。塩が最強」

 

一方通行「塩もおかしいだろ、なンで塩なンだよ。普通醤油だろ」

 

霊夢「私の普通が塩なのよ」

 

魔理沙「………だったら私だって、ソースが普通なんだが」

 

「「オマエ(アンタ)は論外」」

 

魔理沙「論外って酷くないか、なあ!?」

 

 

 

紫「幻想郷もうダメかもしれない、………………」

 

 

 

紫はそんな事を呟いた。

一方通行、霊夢、魔理沙は異変解決でも頼りになる存在だ。

 

なのになんか知らないが『目玉焼き』には何が合うかなどと、そんなクソ程どうでも良い話をしていた。

 

 

しかし、その話は揉めていたが争いも起きず既に終わっていた。

 

 

紫「ねえ、一方通行。私に一口分けてくれない?」

 

 

ちょんちょんと白が特徴的な一方通行の隣に座る紫は彼の方を指で軽く突く。

 

一方通行「あン?」

 

紫「余りにも美味しそうに皆が食べてるから、私も食べてみたくなっちゃった☆」

 

一方通行「…………チッ。ほら」

 

面倒臭そうであったが、それでも一方通行は箸で野菜の煮物を掴む。

そしてそれを紫へ差し出した。

 

紫「はむ…………っん。あ、美味しい。貴方達とっても美味しいものを食べてたのね」

 

口の中には優しい味が広がった。

その味は八雲紫は好みの味で、頬に手を当てて柔らかく微笑んでいた。

 

だが、だ。

だかそんな仲の良い光景を許せなかった霊夢と魔理沙。

思わず、手に力が入りピキピキと持っている箸に亀裂が………………………

 

 

そんな二人を見た紫は面白そうに、意地悪そうに微笑み一方通行の腕を抱き締めたのだった。

そしてその腕は彼女の豊満な胸と胸の間に挟まっていた。

 

大人の女性としての魅力を全力で使っている大妖怪に、

 

 

魔理沙「そう言えばまだ退治出来てない妖怪が居たなー?霊夢」

 

霊夢「そうね。今からソイツをブチ殺しましょうか」

 

紫「あらあら。嫉妬とは醜いと言うけれど、こうやって目の当たりにすると醜いと言われる理由がよく分かる☆」

 

 

今から血で血を洗う戦いが起きてもおかしくない現場であった。

その爆心地となる可能性がある中心に居る一方通行は黙って動かずにいた。

 

実は彼の周りでは良くこういうことが起きる。

どうせいつもの戯れだろうと思っているのだ。

 

 

全く、鈍感とは恐ろしく感じる。

いつか刃物で後ろから心臓を刺されても文句は言えないだろうな。

 

 

 

 

そして。

魔理沙と霊夢が八雲紫に向かって全力で殺意を向けながらであったが、朝食は無事に終えた。

その時には可愛い反応にご満足したのか、紫は一方通行の腕を離していた。

 

 

 

食器は全部霊夢が片付けた。

彼女は面倒くさがり屋であるが、やる時はやる少女だ。

そんな、霊夢は最後の食器は台所へ運んで帰って来たときに畳まれた掌サイズの薬包紙を持っていた。

その中には散薬が包まれている。

 

霊夢「………………ッ、ふう」

 

そして、自分の座って居た場所に腰を下ろしたと思ったら薬包紙を開きその中の散薬を口内に含み目の前にあったお茶を飲んでその薬を胃の中へ流し込む。

その光景を見た紫は、

 

紫「霊夢、体調悪いの?」

 

魔理沙「ただいま霊夢に女の子の日が到来中だぜ」

 

紫「それはそれは大変ね。大丈夫?」

 

魔理沙が霊夢の変わり答えた。

同じ女性としては、その辛さが分かる紫は霊夢を心配する。

だが、その時に同時に思ったことがある。

『運が悪い』……………と。

 

今日、一時間後にまた戦争が始まるというのに、と。

 

 

霊夢「まあ、平気よ。今回はバカみたいに血が出るからタンポンをすぐに交換しなきゃいけないけどね」

 

紫「痛みは?」

 

霊夢「永遠亭の薬を飲んだから大丈夫」

 

魔理沙「あそこの薬はすぐに効くから助かるよな」

 

一方通行「………………………、」

 

 

女の子の会話に入れない一方通行は黙るしかなかった。

もしも、場違いな彼がここで口を開いたならどうなることやら…………

 

だから沈黙を貫き通すしか道はない。

しかし一方通行が居ることを忘れてしまったのか、三人の女の子の話は続いた

 

魔理沙「なあ、そう言えば妖怪にも生理ってあるのか?」

 

紫「生殖器があるんだから妖怪でも女性ならそういうのがあって当然でしょ」

 

霊夢「じゃあ紫も生理来るんだ。知らなかったわ」

 

紫「妖怪でも見た通り体の構造は人間と同じなのよ。全く、私をなんだと思ってるの?」

 

そして

「失礼しちゃうわ」と扇子を口前で広げる八雲紫。

 

 

だが、

 

 

一方通行「…………………………オイ」

 

 

とうとう、だった。

我慢の限界が来た。と、言うよりは彼女達の為を思って沈黙を破った一方通行。

 

一方通行「オマエら、俺が居るってこと忘れてねェか」

 

「「「あっ…………」」」

 

そして、だ。

一方通行を除いたこの場の三人は少女は口を開いたままであったが、口元を手で覆う。

 

紫「………完全に忘れてわ。ごめんなさい、貴方からしたら居ずらい話をしてたわね、私達」

 

霊夢「コラー、魔理沙。アンタがあんな話を切り出すから」

 

魔理沙「あははっ…………、ゴメンゴメン」

 

一方通行「チッ。そォいう話は俺が居ねェ時にしろよな」

 

 

 

そしてそして。女の子の話も終わり

 

それからだった。

 

 

紫「さーて、では。こっから真面目な話をしましょうか」

 

そうやって話を切り出した八雲紫は机の上に長方形の小さな黒い機械を置いた。

これは先程、博麗神社に送られた物ではない。

まだ別の物であった。

 

紫「これは私の元に送られた物よ」

 

一方通行「内容は?」

 

まず最初に質問したのは一方通行だった。

そして、八雲紫はそれに答える。

 

紫「幻想郷に来る暗部のチーム名と、月に設置した核兵器の存在」

 

霊夢「月に核兵器を設置、ね。随分良い趣味してるわ敵の親玉さんは」

 

腕を組んで息を吐く霊夢。

前回はまんまと捕まり、今回で一矢報いてやると考えていた。

 

紫「月に設置した核兵器は、月を破壊するのではなく月から里に向かって撃つのが目的らしいわ」

 

そして、と八雲紫は続け

 

紫「幻想郷に送り込まれる暗部は合計三チーム。『アイテム』『スクール』『グループ』。本来はもう少し送るつもりだったらしいけど他は暗部同士の潰し合いで消えちゃったみたいよ」

 

霊夢「三チーム、ね。で、人数は?」

 

紫「それは知らなくて良いわよ。幻想郷に来る暗部の人達は三チームで別々に行動してくる。一人一人、未知の異世界で個人個人で動くのは自殺行為。その事に気付けないほどバカじゃないから三つの団体として動くだろうし、その三つの団体を叩いてしまえばそれで終わり。それにどうせ殆どは私達にとっては雑魚同然よ」

 

魔理沙「そこまで教えてくれたのか?」

 

そんな疑問が浮かんだのは魔理沙であった。

確かに自分達に送られた音声とは違うらしいが。でも。

いくらなんでも敵は詳しく教えすぎだ。

 

紫「ええ、前回は自分が敗北の形で終わったからって言ってね。『敗者はいつも不利であり、勝者はいつも有利に立つものだよ』とか、そんな戯れ言をほざいていた後にクソムカつく声で教えてくれたわ」

 

魔理沙「だからって……………………、敵の親玉はバカなのかな?」

 

一方通行「違ェよアホ。そンな情報を俺達に与えてもアレイスターは自分の思い通りなるって考えてるってことだ。クソったれが」

 

前の机に肘をつけて手に顔を乗せ、そう吐き捨てたのは一方通行に紫は視線を向けて

 

紫「そう、そういうことよ一方通行。今回のアレイスターは自信たっぷりだった。それがとても気になるわ」

 

霊夢「なにか裏があるってこと?」

 

紫「そう考えたほうが妥当ね」

 

 

 

一方通行「関係ねェ____________」

 

そう口を開いた一方通行はズボンのポケットからスマートフォンを取り出し、

 

そして。

 

一方通行「__________裏があるだの関係ねェよ。今回もアイツらを負かしてやれば良い話だ。その策をオマエらに伝える」

 

 

手慣れたように字を打ち込み、今回の作戦を一斉に皆に送った。

 

すると。

ぶるぶるぶる…………と、振動音と共に三人のスマートフォンが小刻みに震える。

そして、一方通行が送った作戦を確認するため霊夢、魔理沙、紫は各々の場所からスマートフォンを取り出した。

 

 

………………………………………が?

 

 

霊夢「……………へー。アンタが立てたにして意外な作戦ね」

 

紫「"次"に繋げる、ね。ふふっ、これはこれは面白くなってきたわ」

 

魔理沙「ああ、そうだな。此方の"数が多い"方が良いしなって________________って、お前どこにスマホしまってたんだよ紫!?」

 

最強の白い怪物が立てた作戦にしては意外と口にしてしまう程、しつこいだろうが本当に意外であった。

が、しかし。

三人がスマートフォンを取り出した時に事件が起きた。

 

なんと、八雲紫はスマホを胸の谷間から取り出したのだ。

 

紫「え?私の服にはしまう場所がないからなんだけど?」

 

きょとんとする豊満な胸を持つ大妖怪様に、

 

魔理沙「だからってなァッ!!だからってなんでそこなんだよ!!なあッ!!??」

 

紫「………………………ふーん」

 

魔理沙「な、なんだよ…………?」

 

 

小さな沈黙の後に開いた扇子の裏で怪しく笑う紫。

そう、その顔はとても面白いことに気付いた顔だった。

それになにか嫌な予感がする。

 

 

そして。

 

 

紫「もしかして自分のじゃ出来ないからって妬いてる?」

 

魔理沙「________________ッ!!!!」

 

紫「ふふっ。その顔その反応。大当たりだったりして?」

 

 

魔理沙「…………………………………………………」

 

長い長い沈黙であった。

が、しかし。

 

しかしである。

次に山の噴火の如く、

 

 

 

魔理沙「うるせえェェェェェェええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッッッ!!!!」

 

 

 

魔理沙の怒りが爆発した。

その怒号は空気を、博麗神社を揺らす。

 

魔理沙「私のマスパで削り取ってやろうかその贅肉!!ああッ!?!?」

 

紫「あら、魔理沙にも女の子らしい悩みがあったのね。可愛いっ☆」

 

魔理沙「バカにしやがってこのクソババアァッ!!!」

 

紫「そんな事私に言って良いのかしら?貴方のような悩みがある子の弱点なら私は熟知してるけど?」

 

そう言うとだ。

八雲紫は自分の隣にスキマを開く。

そしてその中に腕を伸ばし、ある物を掴んだ感覚がしたらその腕は抜きスキマを閉じる。

 

紫「ほらあった。やっぱり思っていた通りだわ☆」

 

一方通行「あン?なンだそれ?」

 

紫が掴んでいた物を三人の前に置いた。

一方通行はその置かれた物は理解出来なかったが、霊夢が"それ"を見た時は顔を青ざめて『うわー………』と声を洩らしたいた。

 

そして、だ。

その置かれた物に一番反応したのは

 

 

魔理沙「うわァァァァァァああああああああああああああああああああああああああッッ!?!?!?」/////

 

 

魔理沙は全力で机の上に置かれた物を上半身を使って隠す。

そして顔を真っ赤に染めながらその物を抱きしめていた。

 

紫「で、可愛い可愛い魔理沙ちゃん。それは今は着けているのかしら?こ、こ、に♪」

 

黒い笑顔で紫は自分の胸元を指差す。

 

魔理沙「着けてない着けてないっ!!今は着けてないっ!!」/////

 

紫「今は、ねえ?ふふ…………」

 

魔理沙「~~~~~~~~~ッ!!!!」/////

 

 

その赤さは、湯気が出てしまう程の熱があった。

そして体温が上昇し続ける魔理沙の隣に居る、霊夢はため息を吐いた後に

 

 

霊夢「まんまと罠に填まっちゃって。それにしても、アンタそこまで気にしてたのねー………」

 

 

別にもうご説明不要かと考えているが紫がスキマから取り出しのを一応ご説明させていただくと、それは胸とブラジャーの間に挟む、バストアップしたと誤認させるパッドであった。

 

現代のようなシリコン製ではない。

肌に優しい柔らかい布製のものだ。

 

そして、

 

そしてそして。

 

 

魔理沙「________________せ__ぇ_」

 

霊夢「?」

 

ぼそり。と、魔理沙の口から声がした。

しかしその声量は耳をすましても聞こえるかどうかと言うぐらいだ。

 

だから、隣に居る霊夢でも聞こえなかった。

 

が。が。

 

魔理沙「うるせえってんだよクソったれ!!ああそうだよ周りが巨乳ばっかで自分の見窄らしい胸を気にしてたんだよォォォォッ!!!!」

 

霊夢「はいはーい落ち着いて魔理沙。アンタ今興奮してヤバイこと口走ってるわ」

 

魔理沙「もうここまで来て何を言ってんだ!!クソッ!!どいつもこいつも駄肉ぶら下げやがってその肉ミンチにしてやろうかッ!!あぁ!?」

 

霊夢「僻むな僻むな。ってか、アンタそんなに悩む歳じゃないでしょ?」

 

魔理沙「悩んじゃうんだよお前のせいでなァッ!!」

 

霊夢「わ、たし…………?」

 

魔理沙「ああそうだよ!!なんで一番歳が近いお前と私とでこんなに差があんだよ!?」

 

ガシッ!!とその乱暴に振られた手は霊夢の胸を鷲掴みする。

 

が…………………………

 

魔理沙はそっとその手を離した。

 

霊夢「ど、どうしたの?」

 

先程、霊夢の胸を掴んだ震える腕をもう片方の手で掴む魔理沙。

そしてポツリと呟いた、

 

魔理沙「だ、弾力があった…………ッ!!」

 

と。

 

 

霊夢「ホントにどうしたのアンタ?」

 

困った顔とはこういう時にするのだろう。

絶望に顔を染めて落ち込む友人にかける言葉を失う霊夢。

すると、だ。

 

紫「そんなに悩んでるなら胸が大きくなる良い方法を紫お姉さんが教えて、あ、げ、る☆」

 

そして。

とてもとても、他には聞こえない声で八雲紫は魔理沙に耳打ちする。

 

紫「__________________すれば良いのよ☆」

 

魔理沙「んなっ!?!?」/////

 

ボフッ!!!

と頭上から煙が吹き出てしまうぐらい、魔理沙が顔を真っ赤にして紫の言葉に反応した。

 

八雲紫がどのようなことを言ったのか、霊夢と一方通行は聞こえなかったが魔理沙の反応を見る限りまともなことを言ってないというのは確かだろう。

 

紫「もしも、今すぐにと言うのなら一方通行に手伝ってもらう?」

 

魔理沙「良いっ!!もう良いよこれからの自分の望みに賭けるよ!!」/////

 

一方通行「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ、さあ。

気を取り直してだ。

 

紫「で、一方通行。先程のメールには月の件が書かれてなかったけど、どうするつもりなの?」

 

一方通行「月の方は任せろ。俺がやる」

 

全然緊張もしてない様子で淡々と言ってみせる白い怪物。

確かに一方通行は幻想郷の第一位の実力者。

 

が、しかし。

 

霊夢「月の広さはご存知でしょ?たった一人でやんなら時間は相当掛かるわよ」

 

一方通行「霊夢。いつ誰がひとりでやるって言った?」

 

足を伸ばして座る白い彼はそんな言葉を良い放つ。

だが、だった。その言葉に三人は驚愕した。

 

霊夢「ごめんなさい。アンタはてっきり一人でやると言ってるかと思ってたわ」

 

 

そう。いつも一方通行は自分一人の力でどうにかしようとしていた。

そして、自分だけを危険に晒し他を守る。

そんな行動ばかりしていたのに………………………

 

彼は成長したのだ。

一人では無い。

 

『皆』でアレイスターに勝つ、と。

 

 

 

一方通行「月は地球よりデケェ。そンなことガキでも理解してる。例えこの俺でもたったひとりじゃそのデケェ月の騒動を静めてからここに帰って来るとなると霊夢の言っていた通り相当な時間が掛かる」

 

だから、と一方通行は続けた。

 

一方通行「一分一秒でも早く月の騒動を静めるため俺と一緒に月に向かってくれるヤツが欲しい」

 

白い怪物のその紅の瞳は真っ直ぐだった。

 

それを見たらだ。

その瞳に答えるように魔理沙から、

 

魔理沙「良し分かった!!私達はお前に付いて行くぜ、一方通行!!」

 

霊夢「しょうがないから、ね」

 

紫「そう言ってる割には嬉しそうな表情してるじゃない霊夢?」

 

 

三人はやる気は十分。

 

月の方はもう暴走者の破壊が始まっている。

今からでも出発しなくては

 

が?

 

 

一方通行「オマエ達はここに残れ」

 

魔理沙「えぇ!?嘘だろーッ!?今の流れはこの場の四人で行く流れだったろーよ!?」

 

一方通行「オマエ達はこの地上に残らなきゃいけねェ存在だ。だからダメだ。だが、今から俺と一緒に月に向かうヤツを探すとなると無駄な時間が掛かるか…………」

 

もう帽子も被り、身も心も十分準備出来たのに、と。

魔理沙は月に向けていたそのやる気に困っていた。

しかし、そんな魔女を無視して

 

一方通行「____________八雲紫、オマエに頼みがある。オマエの式神を俺に貸してくれ」

 

紫「藍を?」

 

一方通行「あァ。アイツの実力なら暴走者が溢れる月に行っても問題はねェ筈だ」

 

紫「…………なるほど。分かった、良いでしょう。でも藍だけじゃ私が不安だから橙も一緒に向かわせましょうか」

 

一方通行「礼を言う」

 

 

約一時間後の戦争の為にもう準備をするため、四人は呑気に座ってる訳にはいかない。

八雲紫は指を鳴らす。

すると、この部屋の中に人が通れる程の大きさの空間の裂け目が開かれた。

 

紫「藍と橙を呼んだわ。後は二人が来るまで待っててね」

 

一方通行「そォか」

 

ズボンのポケットに手を突っ込んで立って待つ一方通行。その隣には腕を組む大妖怪の影が。

 

藍と橙。

その二人が来るまで待つしか出来ない。

 

しかしだ。

 

一方通行と紫以外のこの場に居る二人の少女はと言うと、

 

 

魔理沙「ちぇー。良いよ良いよ、どうせ私なんかお荷物ですよーだ……………」

 

霊夢「そんな落ち込まないでよ魔理沙。あーもー、面倒くさいなー」

 

部屋の角で膝を抱えてブルーになって居る魔理沙の隣で両手を腰に当てて一息吐く霊夢。

 

その光景を見て、

 

一方通行「チッ。クソったれ」

 

白い彼はその場へ足を運んだ。

そして、膝を抱えて座る魔女の少女の後ろで片膝を立ててしゃがみ彼女の肩に片手を乗せる。

 

一方通行「オイ、バカ魔理沙。なに勘違いしてやがる。俺はオマエをお荷物だからここに残すンじゃねェ。アレイスターが送り込ンでくるヤツらは結構な手練れだと俺は踏ンでる、だが今回俺は月の件で手一杯だ。だから地上はオマエ達に任せるしかねェ。それは頼りにしてるからだ。魔理沙、霊夢、紫。オマエらは他のヤツらに悪いが特に頼りにしている」

 

魔理沙「どうせ本当に頼りしてるのは紫と霊夢だけだろ。私なんて魔法を()(ぱな)すしか能がないんだから。他のヤツらとは違って不器用だし……………………」

 

一方通行「あァ、そォだな。だからだ。そンな魔理沙だから俺は頼りにしてる。オマエはごちゃごちゃ考えず、真っ直ぐ前に進む。下手に賢いヤツは重要な場面で立ち止まっちまうが、オマエは違う。オマエはその何も考えず自分の意思を通すその真っ直ぐな心がオマエの一番頼りになる長所だ」

 

魔理沙「それってただバカにしてるだけだろ……………」

 

一方通行「まァ、半分はバカにしてる」

 

魔理沙「ははっ、正直に言いやがって。じゃあ見せてやるよ、天才。バカが全力を出せば天才では不可能なことを可能に変えれるってことを」

 

一方通行「あァ。月からでもオマエ達の活躍を見せてもらうぜ」

 

 

二人の表情には明るさがあった。

魔理沙は立ち上がると一方通行も立ち上がる。

 

そして、魔女の少女は自分とは真逆の存在。

才能に満ち溢れた白い彼に拳を突き出し、一方通行はその拳を掌で受け止めた。

 

魔理沙「へへっ」

 

一方通行「フッ」

 

 

 

 

「羨ましいわね」

 

そんな声があった。

その声の出所は、

 

紫「人間って羨ましいわ。挫けても周りには立ち直らせてくれる人が居る。集団で生きてるからこそそんな事ができる。妖怪は独りでも生きていける力がある。妖怪は自分させ良ければ他のヤツなんてどうでも良いってヤツが多いからホントに羨ましいわ。助け合う生物、人間って…………………」

 

八雲紫はその瞳に映る光景に素直にそう思っていた。

彼女は孤独。

唯一無二の存在。

 

同族なんてそんなもの居ない。

 

だから、か。

珍しく『羨ましい』なんてそんな事を思ってしまった。

 

「あら、アンタにも居るじゃない。立ち直らせてくれる人が」

 

紫「え?」

 

声がした隣を向いた。

すると自分の隣に立って魔理沙と一方通行を眺めていたのは博麗霊夢であった。

 

霊夢「あそこに二人。アンタの隣に一人。今からここに来る式神が二人。まだまだ居るわよ、アンタの周りにはね」

 

紫「……………………………………。ねえ、霊夢。貴方も私が心が折れてしまったら、立ち直らせてくれるの?」

 

霊夢「当然でしょ。私達は同じものを守ろうとする"仲間"なんだから」

 

紫「…………………………ありがとう」

 

 

大妖怪、八雲紫。

彼女はやっと気付いた。

 

自分は独りではない。孤独の存在ではない。

この幻想郷には、周りには多く人が居た。

 

 

孤独ではない知って、八雲紫は柔らかく微笑んだ。

 

その姿を見て博麗の巫女は、

 

霊夢「へー、意外。アンタもそんな風に笑えるのね」

 

紫「………………え?私笑ってた?」

 

霊夢「うん。もうそりゃあニッコリとね」

 

紫「恥ずかしい…………」////

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、そして。

 

「遅くなって申し訳ありません紫様。藍、ただいま到着いたしました」

 

「橙もただいま到着しましたーっ!!」

 

八雲紫が開いていたそのスキマから二つの影が姿を現す。

ひとりはその髪と同じ金色の尻尾を九つ持つ、モデルのような体型の大人な女性。

 

もうひとりは、頭部に猫耳を生やしその左耳には金のピアスを付けていた。

それに彼女にも尻尾が生えていた。

しかしその隣に立つ者のような尻尾ではなかった。

尻尾の本数は二本。

そして細長かった。

 

 

紫「良く来てくれたわね藍、橙」

 

藍「それで紫様。御用とはなんでしょう?」

 

紫「うん、時間がないから一回しか説明できないわ。藍は多分大丈夫だと思うけど、橙。貴方は頭をフル回転させてちゃんと聞くのよ」

 

橙「はーいっ!」

 

 

 

そして、紫は二人にこれから幻想郷に危機が来たことを説明する、

 

二人の役目は月に行って核兵器の停止、月の民が暴走者になってしまったので正気に戻すことだと。

 

 

紫「それでね、ここに来てもらって早々で悪いけど。もう今から月に向かってもらいたいのだけど、大丈夫?」

 

藍「はい、紫様の命とあれば」

 

橙「月かー。月ってどんな所なんだろー?」

 

 

紫「……………………。じゃあ二人を頼んだわよ、一方通行」

 

チラリ、と。

八雲紫は両手をズボンのポケットに突っ込み立っていた白が特徴的な一方通行の方向を向いた。

 

一方通行「あァ」

 

そして、彼は一言返事をして藍と橙の方へ進む。

 

一方通行「もォオマエらは覚悟決まってるよォだし行くぜ、月へ」

 

藍「はい」

 

橙「はーいっ!」

 

 

片手に靴を持って、

 

 

そして、それから八雲紫によって開かれた月へ通ずるスキマへ三人は姿を消していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは月。

穏やかで静かな場所。

 

そこは、まるでおとぎ話にでも出てきそうな風景、

 

 

______________だった。

 

 

 

だが、今は…………

 

一方通行「おォおォ、こりゃあ随分騒がしい場所だなァオイ」

 

何処(どこ)彼処(かしこ)も轟音と爆音が響き、煙と炎が所々立ち昇っていた。

そんな破壊を繰り返していたのはこの月の民達。

 

アレイスター=クロウリーが造り出したあの"黒い玉"により暴走してしまっているのだ。

 

 

そんな光景を月の地から高い位置に浮いて眺めている三つの影、

 

藍「これを今日中に…………か。想像していた以上に大変そうだな」

 

橙「でも、藍様も居るし一方通行様も居るのでなんとかなるのでは?」

 

一方通行「オマエでも弱音は吐くンだな、藍。だがそンなのを聞いてる暇はねェ。さっさと手当たり次第にぶっ倒すぞ」

 

そう言ったらだった。

見覚えがある姿を見つけた。

 

背に白鳥のような真っ白な翼が右にしか生えてない、隻翼の銀髪少女

前に、自身の能力によって不本意ながら幻想郷の地に降りて来てしまった月に住むサグメを発見した一方通行。

 

彼女の能力はとても強力だが"暴走者"になると叫ぶ以外は声を発さない。

だから、強い能力者なのに暴走状態の方が倒しやすいのは嬉しいと思うべきだろうか………………

 

彼女は最初の内に味方に入れて、暴走者を正気に戻すのを手伝ってもらえたら相当助かる。

 

だから、と。

まだ肉眼で見えるぐらいの距離にサグメが居る間に、

 

一方通行「オマエ達にこれを渡しておく」

 

正面に真っ黒なデザインのスキマを開きその中に手を突っ込み何かを掴んだら手を抜き、もう用が無いスキマを閉じた。

そして一方通行はスキマから取り出した二人分あるそれを藍と橙に渡す。

 

藍「……こ、これは?」

 

一方通行が二人それぞれに渡したのは手のひらサイズの布の袋だった。

『中には何が入ってるんだろう…………?』と八雲藍の隣に居る橙が紐で閉じた袋を開き中を確認する。

すると、その中には紫色のビー玉のような小さな丸い玉が袋に沢山入っていた。

 

そして、その紫色の小さな丸い玉っころを一つ手にして

 

橙「……これって何に使うんです?」

 

一方通行「暴走者を正気に戻して、自分達の力になりそうだと思ったらソイツにそれを飲ませろ。それは俺が独学で勉強して調合した薬だ。余り酷い怪我じゃなけりゃ直ぐに傷が治るしその後普通に動くことができる。だがその薬は体の治癒力を無理やり飛躍的に上昇させ、明日明後日の体力を前借りさせるから普通の人間や体力のねェやつに飲ませると逆に殺すことになるから気をつけろ」

 

藍「なるほど。一方通行さんは最初からこの三人でやるつもりはなかったのですね。確かに、正気に戻った暴走者だった人に今の月の状況を説明すれば他の暴走者を正気に戻すのを手伝ってくれるかもしれない。そうすれば早く終わるし私達の体力の消耗も軽減できますね」

 

一方通行「そォいうことだ。じゃあ俺は単独で行動するがオマエ達は二人で行動しろ。良いな、絶対無理をするなよ。流石に相手の数が数だ、この俺でもオマエ達を気遣いながら戦うなンて出来るかどうか分かンねェ。だからヤバイと思ったり死にかけたら自分の命の安全だけを考えろ。これは命令だ、絶対に死ぬな!!」

 

「「はいっ!!!」」

 

余りにもの気迫だったので無意識に背筋を伸ばし藍と橙は敬礼をして答えた。

 

そしてその返事を聞いた一方通行は背中から、ボッ!!と爆発音のような音と共に真っ黒な噴射に近い翼を伸ばす。

 

相手は月の民。

正直、どんな能力を持っているか分からない。

 

にも拘わらずこちらの人数は三人とごく少数にも程がある。

 

 

しかし、

 

 

しかし、だ。

 

 

例え絶望的な状況だとしても真っ正面から打つかってもぎ取ってやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くそったれのハッピーエンド、ってやつを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、そして。

地上の幻想郷より、時早く月でたった三人で挑む激戦が始まった。

 

 

 

 

 

 




次回予告

一方通行(アクセラレータ)達が月でアレイスターの魔の手によって暴走者になってしまった者達を正気に戻そうと戦いを繰り広げている時に、幻想郷の地上に純黒に生きる"奴ら"が来た。



次回、第4章第7話。


『アイテム』


遂に"儀式"が始まった。
目覚(めざ)め』の刻、来たれり……………………

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