幻想郷を一方通行に   作:ポスター

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そこに踏み入ってしまったら、まず生きて帰れることを諦めた方が良い。
その館の主もその他の者達も善良な人ではない。

「私の手の中で踊らせてあげる、光栄に思いなさい」

気高く、そして美しい吸血鬼はそう言った。
さあ、ひれ伏せ、こうべを垂れろ、命を奪われることを快楽としろ。
君臨者、人を喰うバケモノ……、
いいや人の上に立つ生物に従え。
お前ら人間にはそれが相応しい。


絶対、誤字があります。
ですが発見した場合、面倒だったら無視してくれて構いません。
お暇なお方や心優しいお方は出来たらで良いので誤字やそれ以外のミスを見つけたらこんなダメな私に報告してくれると非常に助かります。


8話

今日は天気が良いというのに、とある場所だけは薄暗く不気味な空気が立ち込める。

 

辺りにある木々達は風に煽られ自然の唄を奏でる。

そして、その中にまるで人工的に作られたと思われる一本道。

そこに三つの影があった。

 

「……なんだか不気味な場所ですね」

 

「だにゃー。こんなところ仕事じゃなかったら絶対に来たくない場所だぜい」

 

「女性の前でだらしない男どもね」

 

三人は暗部組織『グループ』の構成員だ。

そう幻想郷に乗り込んできた刺客なのだ。

まず最初に口を開いたの者の名は海原光貴。

本当の名は、エツァリというのだが訳あって他人の体に容姿を化けさせている。

次は土御門元春。

金髪にサングラスっというだけで個性全開なのだが更に学生服の下に緑色のハワイのお見上げ売り場で売ってそうな派手派手な服を着込んでいる。本当にこれで学生というのだから恐ろしい。

そして、最後。

たった一人の女性、結標淡希。

座標移動(ムーブポイント)』という能力を有した大能力者(レベル4)の超能力者。

『座標移動』。その能力は主な力は至ってシンプル。物体の"空間移動"(テレポート)だ。

結標の容姿は長い赤毛を後ろに二つに結び、肌寒い季節になりつつあるというのに下はミニスカートで上は前を全開きのブレザーを引っかけ桃色の布を巻いて胸を隠しただけである。

この中で一番まともと言える格好をしてるのは海原だけだろう。

彼はベージュ色のスーツを着ている、髪はそこまで長くない暗めの茶髪だ。

その三人達。暗部『グループ』の面々達も腕に銀色のバングルを巻いていた。

 

 

そして、道を進むこと一時間ぐらい経った頃だった。

『グループ』の面々はとある館を目撃する。

紅に染まるどこか怪しさを感じさせるとても大きな館。

その館の名は"紅魔館"。

 

「ん?」

 

まず最初に"彼女"に気付いたのは土御門だった。

 

紅色の館の前、門があるのだがそこの前に立つ女性。

珍しく起きていた居眠り門番の彼女は『グループ』の姿を確認すると、

 

「紅魔館へようこそお越し下さいました。土御門様、海原様、結標様」

 

「「「____ッ!?」」」

 

三人は驚愕する。

こことは違う世界に居た自分達と初めて会うはずなのに、きっちり三名の名を口にした門番。

紅美鈴。彼女はご丁寧に頭を下げた後、顔を上げる。

そして門を開いたのだ。

 

美鈴「さあ、どうぞお進み下さい。この先でお嬢様がお待ちです」

 

土御門「どうやらなんらかの力によって俺達はここに導かれたようだな」

 

海原「ええ、そうみたいですね」

 

なにかがおかしかった。

理解が追いつかない事だらけで頭で考えることが出来なかったが、そう……、何かがおかしかったのだ。

 

例えば、"足が勝手に前に進む"……とか。

 

『グループ』の三人は自分の意思とは関係なく紅魔館の中へと進む足に抗う術はなく、多分あの門番が言うお嬢様とやらの思うがままにされるしかなかった。

そして、三人が門を通るのを確認したら美鈴はその門を閉じる。

 

美鈴「……フッ。さあさあ、あの人達は"無事"に帰ってこれるかな?」

 

"無事"になんて一ミリも思ってない彼女は上から垂らされた糸に繋がれ操られてる人形のようなあの三人に背を向けたままそう呟いた。

 

そして、いつも通り門の守る番人として門前に立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、そして。

勝手に扉が開きそして閉じる。

 

館の中に入ってまず目に入ったのは大きな大きな階段であった。

すると、そこに

 

「ようこそ、お客様(食物)方」

 

メイドの格好をした女が階段の一番上の段に立っていた。

が、だ。

だからなんだ。

初めて会う。名も知らない。

しかし、最初に仕掛けてきたのはそっちだ。

戦るなら戦ってやる。

 

バンバンッ!!!っと二発。

乾いた銃声が響く。

土御門は腰に隠していた拳銃を抜き銀髪のメイドに向かって発砲したのだ。

 

…………だが。

 

「学園都市ではこういう挨拶が流行ってるのですか?」

 

土御門「…………まともじゃ無いぜい」

 

見下す様子で笑うメイドに土御門のみならず、隣の二人も冷や汗をかいた。

確かに当たったと思っていた。

ノーモーションだったのに、だ。

 

銀髪のメイド。十六夜咲夜はいつの間にか土御門の持っていた拳銃を手にし、階段の一番下に腰を下ろしていた。

 

では……撃った二発はどこに行ったか?

それは壁に直撃、そして埋まっていたのだ。

 

そして、

 

『お返しします』。

そう言うと咲夜は土御門の目の前に立っていて、勝手にその手を取り拳銃を掌に置いた。

突然のことだった。

さっきと同じだ。

時間が一秒を刻む前に瞬時に移動。

 

そして、グループの三人が咲夜の姿を確認した時にはもうそこには居なかった。

また、三人の前にある大きな階段の最上階に居たのだ。

 

海原「さっきから訳の分からないことばかりです。頭がどうにかなってしまいそうですよ」

 

土御門「安心しろそれは俺もだ」

 

結標「……………………」

 

不気味。

もうそれ以外の言葉が見付からなかった。

海原は黒曜石のナイフを手にし、土御門は返された銃を構える。

結標は黙って二歩下がった。

全く助け合う気は無い。お互いがお互いの目的のため利用し合う関係なのだ。暗部組織、『グループ』というものは。

 

そして。

 

「私が来る前に始めちゃうなんて酷いじゃない咲夜。貴方の活躍を拝みたいって私言ったでしょ?」

 

床に足を付けず浮いて移動する悪魔のような翼を生やすその幼い容姿の少女。

彼女が……、

彼女こそがこの紅魔館の絶対の支配者。

レミリア・スカーレットである。

 

レミリアは階段の上ると奥にある扉から姿を現し上層の床に足を付ける。

そして我が主を見た咲夜は、レミリアに対し片膝をつき頭を下げていた。

見るからにアイツが、アイツこそがこの館で一番偉いのだと『グループ』の三人は分かった。

 

咲夜「申し訳ありません。あのような下劣な存在、お嬢様にとっては見る価値がないと思い……つい」

 

レミリア「見る価値があるか無いか、それを決めるのはこの私よ。それより椅子が欲しいわ。用意してちょうだい」

 

咲夜「でしたら今、丁度良いものがあります___」

 

ニタリと恐ろしさを感じさせる笑みを浮かべ、紅魔館のメイド長はとある場所へ目を向ける。

そこは学園都市から送り込まれた"刺客"達だった。

 

そして。

 

咲夜「___どうぞ、お嬢様」

 

三人並んで立っていたはずだが……、そこから一人消えた。

その者は…………。

 

土御門「海原ーッ!?」

 

吸血鬼の少女の足元には両腕両足、肘膝と合計四ヶ所にナイフが刺され床に張り付けにされていた海原が居たのだ。

 

咲夜「椅子……、ではなく座布団になってしまいました」

 

レミリア「別に良いわ、床に座りたくなかっただけだし」

 

そう言うと、レミリアは足元に倒れた人間に腰を下ろす。

 

それを見た土御門は舌打ちを一つ打つ。

その後、後ろに居る結標を見ずに小さい声でとある事を話した。

 

土御門「____頼むぞ」

 

結標「……、了解」

 

そして、土御門の姿が消えた。

それは結標淡希の超能力。座標移動(ムーブポイント)の力によってである。

 

レミリア「ふーん、なるほどね。こいつを残して後ろへ逃げ出しても美鈴が居るから挟み撃ちにあう、それは得策ではない。ならば前に進むしかないわよね」

 

咲夜「あの男、中々頭が回るようですね。放置したら厄介になる可能性がありますが……。どうしますか?私ならば一秒も掛からないで仕留めてくることは可能です」

 

レミリア「咲夜は目の前の子だけを相手すれば大丈夫よ。アイツはフランの場所へ"行くようにした"から」

 

咲夜「それはそれで問題があると思います。妹様は未だに御世辞にも力のコントロールが完璧とは言えません。確かに以前よりは大分進歩したと思いますがそれでも………。うっかり殺してしまったら一方通行の作戦が……」

 

レミリア「そう、だからよ。だから今回でフランがどのぐらい力のコントロールが出来るようになったか、あの男で実験しようってこと」

 

咲夜「なるほど。人間ごときにはピッタリな役目ですね__」

 

__しかし。そう続けて咲夜は結標を見た。

 

咲夜「___攻撃を仕掛けてくると思ったがしてこなかったか。一見隙だらけ。そう見えるがそうではない。もしも私とお嬢様の会話中攻撃してきたら確実にその瞬間に"終わっていた"。もちろん、終わるのは貴方の命よ」

 

ゆっくり、ゆっくりと階段を降りていく。

その手に一本のナイフが…………と、思ったが二本。三本と時が進むごとに増えていった。

 

そして。

階段を降りきった時には両手に何本ものナイフを持っていた。

 

咲夜「さあ、精々お嬢様を退屈させないように踊りなさい。一瞬で終わってしまってはお嬢様も私も詰まらないから」

 

そう言った次の瞬間には、銀髪のメイド長の姿はなかった。

そして、結標の周りには今にでも串刺しにされそうな程無数のナイフが自分に向かって飛んできた。

 

だがしかし。

まるで逃げ場を無くすように覆われても、だ。

彼女は空間移動が可能なのだ。

 

過去にトラウマがあり、自分自身に能力を使うのを躊躇っているのだが今は関係ない。

命を優先するのが当たり前。それにそんなトラウマ、ここで克服すれば良いだけの事。

 

結標は、ナイフから遠く離れた並べく暗い所へ空間移動。

しかし、

 

結標「____ッ!?」

 

咲夜「どうも、さっき振りね」

 

目の前に柔らかく微笑む銀髪メイドが立っていた。

だが次の瞬間。キリッとした顔へ変わっていた。

そして、、、

ボゴンッ!!!っと一発腹部へ強烈な拳を叩き込まれた。

背後近くにはすぐ壁があり、拳が腹部へ突き刺さったまま結標は壁へ打ち付けられた。

 

一瞬意識が飛びかけた。

だが、ここで倒れる訳にはいかない。眠る訳にはいかないのだ。

結標には、彼女には目的がある。

そのためにクソったれな暗部まで堕ちた。

 

守るもの、命に変えてでも守りたいものがあるのだ。

だから、例え万に一つの勝機が無くても立ち向かうのだ。

 

シュンッ………と。

結標の姿が消え、また別の場所へ姿を現す。

足元には地面はない。

 

まず、一回。空中にテレポートしてからまたもう一回テレポート。

っという作戦だった。

 

だが、、、、

 

まず一回目のテレポート場所。つまり、移動先の空中に十六夜咲夜の姿があったのだ。

今回ばかりは反応できた。

身を捻り蹴りを繰り出す。

 

しかし、しかし。

あっさりそれは避けられ顔面を鷲掴みされ、

そして、思いっきり全力で後頭部を床に叩き付けられた。

 

咲夜「さあ、貴方ならこの状況でも私の手から逃げることは可能でしょう?ならば早く逃げなさい、そして次の手を考え実行してみろ。私は貴方が試行錯誤して導きだした一手一手を一片も残さず粉砕してみせる。立て、戦え。もっと……、もっと踊れーッ!!」

 

結標「____バケモノが……ッ!!」

 

地面に押さえていた人間が音もなく消える。

が……。

 

結標「やっぱりかっ!!」

 

何度やっても。何度もやっても。

絶対に自分の移動先には銀髪メイドが居る。

そして、何故かナイフではなく。拳や蹴りなどで攻撃してくる。

ここまでやったら気付ける。

いいや、なんなら最初の方で理解していた。

『こいつには勝てない………』と。

 

確実に格上の存在。

力の差が明確であった。

 

しかし。だが、だった。

弱点のようなものは発見できていた。

それがお嬢様と呼ばれている悪魔のような翼を生やした少女。

あのガキさえ抑えてしまえばいくら力の差があっても勝機はある。

銀髪メイドの態度を見る限り自分の命より主のことを大切にしている。

そう……大切なものを人質に取れば良いのだ。

そういうことに結標の能力は最適な能力だ。

 

だが、

 

近付きたくても近付けない。

十六夜咲夜を壁と例えるならば相当大きく、その前に立つだけで戦意が喪失してしまう強大な壁だった。

 

そして、また一発。

薙ぎ払うような蹴りを顔面に直撃させられた。

 

頬は赤く腫れ床で二三回跳ねた後、壁へ体が激突する。

 

そして床で倒れているとまた十六夜咲夜は言う。

『立て』『戦え』と。

言われなくても立つ。

言われなくても戦う。

 

だが、こんな格上と真っ当に()ったって同じことだった。

無慈悲で残酷な暴力をこの身で浴びるだけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方の話だった。

 

土御門は紅魔館のなかを詮索するため駆けていた。

 

そして、気付けば自分は奇妙な扉の前に立っていた。

硬く重く冷たい扉。

 

その扉を両手で開く。

錆びているのか、ギギギギギと鳥肌が立つような音がした。

そして手を扉から手を離すと、バタンッッ!!!!っと勢い良く勝手に閉じる。

 

土御門「この館に入ってから一番嫌な予感がするな…………」

 

オカルト的な知識がある土御門は見た瞬間分かった。

この館の主。つまりあの青みががった銀髪の少女、あれは間違いなく今や伝説的な存在『吸血鬼』だ。

不死身の肉体。人間の血を好む生物。

まさかこんな所で純血の吸血鬼に出会うなんて夢にも思ってなかった。

 

しかし、伝説とだけあって弱点も結構知れ渡っている。

ニンニク。十字架。日光。

それらを探すしかない。

まず一つ、日光は無理だ。

 

この館は日光を遮断する窓が張られている。

壁を打ち開けて日光浴びせたいがそんな力は土御門はない。

 

そして。

 

土御門「……………………ん?」

 

カチッ。っと音と共に明かりがついた。

あまり暗くてどのような所か分からなかったが一見豪邸ならばまあこんなものか、と。納得してしまう一般人の部屋よりも広くそして高そうな家具が並んでいた。

この家主はとにかく赤が好きなのだろうか?

土御門が今いる部屋も殆どのものが赤色であった。しかも暗めのやつ。

 

「ねえねえ、お兄ちゃんだぁれ?」

 

土御門「______ッ!?」

 

なんと、この地下室に人が居た。

しかも可愛らしい少女であった。

だが土御門はすぐに察した。

目の前の少女は普通ではない、と。

 

カラフルな結晶のようなものを吊るした小枝のような翼を背に生やす少女は、

 

「もしかして、侵入者。泥棒さんなの?」

 

土御門「違う_____」

 

嘘を吐くのは慣れている。

だから、

 

土御門「___俺は頼まれてここに来たんだ。お嬢ちゃんと一緒に遊んであげてくれってな」

 

見た限り子供である。

この館に入って出会った吸血鬼よりは知能も低いだろう。

妹とかそんなところだろうか。

この金髪の吸血鬼の少女からは寂しがり屋な感じがする。

床やベット付近には多くの人形があった。

それに自分の姿を確認するとパァっと明るい表情になっていた。

この薄暗い地下室に閉じ込められていたんだろう。

話し相手ぐらいなら誰でも求めて当たり前だ。それが子供なら尚更である。

 

土御門(このまま、騙せるか……?)

 

上手く話を作って誤魔化すつもりであった。

そして、隙を見て逃げて吸血鬼の弱点である日光を浴びせるため壁を壊せる道具を探す。

吸血鬼の弱点はニンニクや十字架など説明したがそれは、人間で例えるならゴキブリやムカデなど見たら不快な思いをする程度でコレと言った撃退の効果はない。

確実に命を絶つ為には日光。

それしかない。

聖水っという手もあるが『よし、吸血鬼を倒すためちょっくら聖水作るか☆』みたいな軽いノリで作れるものではない。

まあ、ニンニクや十字架などがあったならあったで助かる。

が、しかしここは吸血鬼の館だ。

そんなの置いている訳がない。

 

「へぇー、お姉様から頼まれたのかな?」

 

土御門「ああ」

 

上手く、上手く話を繋げろ。

一つのミスで自分の命はおろか大事なものまで失うことになる。

 

「私はフランっていうんだ。よろしくねお兄ちゃん!」

 

とても笑顔が可愛らしい少女はそう言って土御門に抱き付いた。

 

そして、

 

フラン「本当に私のお姉様は世界で一番優しいや。丁度オモチャが壊れちゃって暇してたところだったんだ」

 

土御門「……オモチャ?」

 

フラン「うん。ホラ、あそこの壁にあるでしょ」

 

そう言って抱き付いたまま、指を差す。

土御門は指の差された場所へ首を向ける。

その時、背筋が凍った。

心臓の鼓動はバカにうるさいのだが体温は低くなる一方だ。

 

フランが指を差した壁には全身血だらけで原型が留まってない肉の塊が張り付けにされていた。

 

フラン「じゃあお兄ちゃん。フランと一緒に____ア、ソ、ボ?」

 

土御門「_____ッッッ!!!!!」

 

今からその顔は絶対に忘れないだろう。

狂気に染まった瞳で口角を引き上げていた。

口の中のでは上の牙から下の歯へと唾液が糸を引いていた。

 

そして、能力を発動する。

ありとあらゆるものを"破壊"するという恐ろしい能力を…………。

 

が、しかしだ。

咄嗟の行動であったが、金髪吸血鬼の顔を見た瞬間危険を察知して反射的に彼女の腕を払い後方へ跳躍した。

 

土御門「……おいおい、マジかよ…………」

 

もう笑うしかなかった。

自分がさっきまで立っていた場所はあんな可愛らしい少女がやったとは思えないほどベッコリとへこんでいた。

 

もしも、あのまま彼女の腕の中に居たら……。

そう考えるだけだ寒気がする。

 

そして。

 

フラン「キャハハハッ!!あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!!!!」

 

楽しそうに、芸を見て壺にでも嵌まったみたいにゲラゲラ笑う少女。

 

土御門「俺が今まで出会ってきた中で断トツだ………。断トツで狂ってやがるぜい……」

 

フラン「アレで大抵の人間は死んじゃうのにお兄ちゃんスゴイね!お兄ちゃんとなら長く遊べそう」

 

土御門「お兄ちゃんって呼ばれるのは好きだが……、お嬢ちゃんにそう呼ばれるたび心臓に痛みが走るな」

 

そして次の瞬間。

また、間髪いれずこちらに手を向ける。

数々の場数を踏んでる土御門は手を向けられてる場所に留まっては危険だと瞬時に分かった。

真横へ全力で移動することで攻撃を回避する。

 

そして、そして。

またまた自分が立っていた場所はベッコリへこんだ窪みのようなものができていた。

 

 

フラン「はーいっ、きゅっとして_____」

 

___ドカーンッ!!っと楽しそうにまた向けた手を握りそして開く。

 

土御門「クソっ、あまりああいう子には向けたくなかったが……っ!!」

 

ゴロゴロゴロっと転がって避けた後、弾数が少ないがここで悠長に後先のことを気にして出し惜しみしてる場合じゃない。

それにあんなに小さな女の子に拳銃を向けるなど、死んでもやりたくなかったが相手は正真正銘本物のバケモノだ。

仕方がない。

 

そして。

バンッ!!!っと一発の乾いた銃声が響く。

撃った弾丸は見事フランの眉間に直撃。

後頭部からは血飛沫を上げて弾丸が頭を貫く。

 

一瞬、なにが起きたか分からなかったが全身の力が抜けうつ伏せての形で金髪の吸血鬼のバケモノは倒れた。

 

土御門「…………、そういえば吸血鬼は銀が効くんだったっけか。銃弾には銀が混ざっている…………偶然ではあったが助かったぜい」

 

無関係な人間は傷つけたくない。

それは『グループ』の人間全員思っている。

だがしかし、今回は一方通行の殺害。もしもそれを邪魔する者が居たらソイツも殺しても構わないと命を受けた。

もしかしたら今自分が殺したバケモノは今回の件に無関係だったかもしれない、いいや無関係じゃなかったかもしれない。

 

後味の悪さが残るが今はただ死なずに済んだことを喜ぼう。

 

そう………一息吐いた時だった、、、

 

とりあえずこの部屋から出ようと扉の方へ歩いて行くと背から視線を感じた。

 

まさか……。まさか……。

 

『そんな訳が……』っと思いながらも振り返る。

 

土御門「嘘……だろ。頭を撃ったんだぞ………、鉛弾を脳に撃ち込んだんだぞっ!?」

 

サングラスの奥に隠れた瞳には明らかに動揺が見えた。

なんとあの金髪の吸血鬼のバケモノは生きていたのだ。

むくり、と立ち上がり何事もなかったかのようであった。

そして頬から伝ってきて口の中に入った血が混じった唾液をぺっ、っと吐く。

が、それからが驚きであった。

見る見る頭の傷が塞がり始めもう一度目蓋を閉じ開いたときには完全に傷が塞がり血も止まる。

 

フラン「アハキャハハハ!!痛かった、今の痛かったよ?でも大丈夫。フランはあの程度じゃコロセナイ」

 

頭に弾丸を撃たれても平気な顔で笑っている吸血鬼の少女。だが、それが更に土御門の恐怖を煽ることになる。

 

フラン「お兄ちゃんの番はさっきのでおしまい。次は……こっちの番だよネ?」

 

刹那。

フランは一瞬にして土御門の懐に潜った。

まるで、点と点が移動したみたいに。

超スピードと言えるぐらいに、瞬間移動と言えるぐらい速かったのだ。

 

フラン「はいっドーン☆」

 

反応出来なかった土御門がフランへ視線を向けようとした時には吸血鬼の少女の足裏が腹部へ突き刺さっていた。

 

ガンッッ!!!っと強力無慈悲な蹴りでくの字で背後へ吹っ飛び壁へ激突。

そして、たった一撃受けただけで内蔵はズタズタにされ大量の血を口から吐いた。

 

力無く前へ壁から倒れるとベチャっと吐血でできた赤い液体の溜まり場へ顔面から落ちた。

腹部が異常なまでに熱い。

上手く息を吸えない、呼吸が乱れる。

 

あんなか細い脚から放たれたとは思えない蹴りだった。

 

フラン「あれれー?もう御眠?まだまだこれからだよ、オタノミシは_____」

 

バゴンッ!!!!

寝てる暇すら与えず破壊の力を向けた。

だがだが、土御門は体に無理をさせることでなんとか攻撃を回避。

そして、もう戦闘なんて放棄して一心不乱に逃げようとした。

 

…………しかし。

 

土御門「____開かないっ!?」

 

鍵は閉まっていない。

なのに何故か開かないのだ。

 

今はまだ土御門は知らない。

それが紅魔館の主にして、気高い吸血鬼レミリア・スカーレットの仕業だということに。

 

土御門「…………やるしか、ないみたいだな」

 

扉を背にして振り返ると変わらず楽しそうに笑う吸血鬼のバケモノが立っていた。

 

フラン「アクセラレータみたいにフランを楽しませてくれる人は中々現れないんだ。お兄ちゃんはアクセラレータみたいにフランを楽しませてくれる?」

 

土御門「一方通行と面識があるのか……。話が繋がったぜい。そうか、俺達はここの世界に来てからもう既にお前達の手中で踊らされていたのか」

 

ニヤリ、と口角が上がる。

しかしそれは不適な笑みと強がれるものでなかった。

恐れや不安が容赦なく心を蝕む。

今にでも泣き叫んで逃げたい。

 

だが、やるしかない。

いいや、やるという以外選択が無いのだ。

 

サングラスを外し、ズボンのポケットに仕舞う。

そして。残り一発の弾丸を撃った。

乾いた音が炸裂する。

 

フラン「キャハハハ!!!アハハハははははははッ!!」

 

狂ったように笑いながら金髪の吸血鬼は突進した。

避ける、なんて弱者の行動はしなかった。

吸血鬼とは、気高く、強く、美しく。

弱者を強者が喰らう。

 

筈だった…………。

 

土御門「俺にも帰りたい場所が、守りたいものがあるんだ。______許せ」

 

胸に銃弾を受けても勢いは死なず突っ込んできた吸血鬼はそのまま腕を伸ばす。

体を掴み、地面に叩き付けてゼロ距離で破壊の能力を喰らわせようとしたのだ。

だが、その作戦は失敗に終わる。

 

何度も何度も何度も何度も危機を打破してきた土御門は、体を掴まれるより先に正面に一歩前進して拳を放ち顔面を殴り付けていたのだ。

そしてそして、それだけでは終わらせない。

殴られたことで後ろへ体が反れたフランを次に後頭部から地面に激突させるように相手の体を掴み正面に投げた。

すると、思い通り頭から倒れた吸血鬼のバケモノの頭蓋骨は砕け後頭部から大量に出血した。

 

土御門「………………、ふぅ」

 

安堵した息を吐く。

手応えはあった。

 

目はぐりんと上を向いて口を開き床に倒れる幼い容姿の吸血鬼。

少女を殺したことに罪悪感が無いと言えば嘘になるが、

それでも、

やらなければこっちが死んでいた。

 

土御門「_____さて」

 

何とか撃退出来た。

結標の方はどうなっているのか。

そう、考えたとき…………

 

土御門「…………………は?」

 

倒れていた吸血鬼の少女の姿が消えた。

綺麗さっぱり跡形もなく。

まるで、最初からそこにはなにも無かったみたいに。

 

「スゴイスゴーイっ!!良くフランを倒せたね」

 

土御門「嘘……、だろ?俺は悪夢でも見せられてるのか……?」

 

見たくもない光景を見た。

もしもこれが夢だと言うのなら両手を上げて喜びたい。

しかし、しかし。残酷なことに土御門の見た"ソレ"は現実なのだ。

 

なんと苦労して倒した吸血鬼の少女は生きていた。

元気良くピンピンしてたのだ。

しかも、

 

土御門「まさか四つ子だった……、な訳ないよな。幻影、もしくは分身ってところか」

 

フラン「そう♪これはフランの分身ダヨ」

 

どこをどう見ても全く一緒の姿が三つもあった。

だが、次の瞬間には三つが四つとなった。

その事にこれまでに無いほど土御門は絶望する。

たった一人でさえ、奇跡が起こせたからやっとこさ倒せたというのに、だ。

その相手がまさかの四人となったのだ。

 

逆立ちしても勝てるビジョンが見えない。

 

フラン「さーてっ!次は二人のフランを相手に頑張って。その次は三人。そしてその次は四人。キャハハハハッ!!お兄ちゃんはどこまで頑張れるかな?」

 

自分が玩具(オモチャ)として見られてるのはもう解った。

そして、次は絶対に死ぬのだということも…………。

だがこんな所では死にたくない。死んでたまるか。

 

だから、だから、

 

土御門「なあ、お嬢ちゃん_____」

 

ここからは嘘の時間だ。

 

この幻想郷に来る前から感じていた違和感。

それは携帯に依頼が来たときから始まった。

アレイスターから送られた依頼のメール。

それを見てなにか……。そう、なにか"自分達がなにかの出し"にされているのだと感じた。

依頼を見る限りその文の中にアレイスターの真意が見られなかったのだ。

しかしそれでも首を縦に振るしかなかった。

仕掛けられた罠に飛び込んで血にまみれた策で生還する他選択が無いのが今の土御門の現状だった。

 

土御門「___実は俺は一方通行の友達なんだ」

 

フラン「アクセラレータの、トモダチ?」

 

土御門「ああ、アイツの事が心配で俺達はここに来た。一方通行に嫌悪感を抱いていないなら協力してくれないか、アイツを元の世界に戻すことを」

 

フラン「………………、」

 

土御門「俺達に闘う意思はないんだ。頼む、もしも一方通行が元の世界に帰りたくないと言ってるならせめてアイツの居場所だけでも教えてくれ。友達として久し振りに話をしたいんだ」

 

土御門の話を聞いた後沈黙があった。

が、しかし。

 

フラン「……………………はぁー。チッ、クズが。調子に乗りやがって」

 

土御門「…………………………え?」

 

いったいさっきまでの明るく狂気に満ちた愛らしい吸血鬼のバケモノはどこにいったのだろうか。

突然変異したフラン。

その瞳に光は無く、闇を飲み込む紅色になっていた。

そして子供っぽい表情は消え去り、その変わりに下等生物を見下す正真正銘何百年もこの世界に君臨している吸血鬼となっていた。

 

子供のようなどこまでも響きそうな高い声ではなく、大人びた低い声で、

 

フラン「フランね、ここでいっぱいヒトを殺してきた。寂しいから、詰まらないから、ムカつくから、特に理由もなく殺したときもあったっけ………。それでね、トドメ刺そうとした時いつも見てきたんだ。人間が死にたくないと思うと誰かを騙してでも、見捨てても生きたいと必死に足掻く姿を。分かる?そんなのを何度も何度も目の当たりにしてきたフランに嘘が通用する訳ないじゃん。最初に言ったやつ、お姉様に頼まれてきたってのもそれも嘘でしょ?ナメるなよ、三下人間。オマエの臭い息を吐く口から出る嘘なんて見破るのは訳ないんダヨ」

 

土御門「はははっ……、俺も人のこと言えないがお前性格悪いな。騙すのが得意な俺が騙されていたってのか……」

 

フラン「もう少し泳がして暇潰しとして遊んでも良かったんだけどもう良いよ。壊しちゃうね」

 

バッ!っと四人のフランは土御門へ片手を向ける。

 

フラン「_______さようなら」

 

そして、、、、無慈悲で残酷な攻撃を放つ四本の腕からは逃れることは出来ず土御門元春は回避行動は取ったがそれでも………………。

金髪サングラスの四肢はバンッ!!っと皮膚の内側から肉と血が飛び出すように弾けた。

 

フラン「アクセラレータが言っていた学園都市から来る暗部とかいう組織の人間がまさかこの部屋に来るなんてね。……いや、これは偶然じゃない。お姉様の仕業か____」

 

自分の分身を消し、

床に転がる手足のない人間を冷たい瞳を向ける。

その時先程のことを思い出す。

そうだ。あの時のことだ。

 

このギリギリ息のある人間が部屋から逃げ出そうとしたとき鍵もかかってないのに扉が開かなかった。

それはつまりこの嘘つきはこの部屋に来る"運命"だったのだ。

そして運命を操り、ここから逃げれなくしたのだろう。

レミリア・スカーレットは運命を操る吸血鬼。

彼女の手にかかればある程度の問題はニヤリと笑うだけで解決する。

運命を操る。

それはつまり自分や他人や世界の運命さえも変えることはもちろん、この世に存在する万物の運命も見ることできる。

だから、初めて見る人でもその者の運命を見ることによりソイツの得意不得意などを見抜くことも可能だ。

 

フラン「____ってことはこれもお姉様の計画通りなんだろうな………」

 

多分まだコイツ以外も紅の主に運命を操られこの紅魔館に足を運んだのだろう。

だがしかし、ここはコイツらにとってはそこは終点だった。

 

フランは手足が消し飛んだ人間の体を踏みつける。

 

フラン「そういえばアクセラレータは学園都市の人間は捕まれろってメールしてたっけ。絶対に殺すなって………………あっ」

 

今、踏みつける物へ目を向けた。

一応息はある。だがあと生きていられるのはせいぜい数分といったところだった。

 

フラン「わぁァァァっ!?どうしようどうしよう!!このままじゃフランのせいでアクセラレータの作戦が失敗しちゃう!!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だッ!!アクセラレータに嫌われたくない!!」

 

っと言ったって、だ。

やってしまったのは仕方がないと言ったところか……。

フランには破壊する力はあるが直す力はない。

だから、この後数分……、いや後数秒に終わる命を助ける方法はないのだ。

 

しかし……。

 

「大丈夫ですよ、妹様」

 

フラン「えっ?……咲、夜?」

 

泣きじゃくりくしゃくしゃになった顔を上げる。

するとそこには音もなく気配を感じる暇もなくこの場に現れた優しく微笑む咲夜が立っていた。

 

フラン「大丈夫ってなにが大丈夫なの?」

 

咲夜「この者の時間を止めました。これで死ぬことはありません。後は永遠亭へ運んで時をまた再始動させれば勝手に治してくれるでしょう」

 

フラン「そうなの?ありがとう咲夜っ!」

 

咲夜「感謝の言葉をかけるのは私の方です。ありがとうございます妹様。邪魔な手足を消すことによって簡単に運ぶことができます。私は妹様のその優しさに胸を打たれました」

 

フラン「えっへへへ!!やったやった褒められた!!」

 

咲夜「では、お嬢様の所へ一緒に向かいましょう。妹様と紅茶を飲みたいと仰ってました。多分妹様の活躍を妹様自身から聞きたいのでしょう」

 

フラン「そうなのかな?だったら嬉しいなっ!」

 

そして。

フランと咲夜は手を繋いで部屋を出てレミリアが待つ食堂へ歩いて行った。

二人はとても楽しそうに明るく笑っていた。

 

 

だが……………、

メイド長が吸血鬼の少女と手を繋いでいない方の手は手足のない人間の髪を掴み、その肉体を引きずって運んでいた………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、、、

咲夜がフランの部屋へ来る前の話だ。

 

結標は右ふくらはぎに刺さっていたナイフを抜きそれを握り締める。

すると傷からは大量に出血する、もう右足は体を支える機能が無に等しくなっていた。

 

結標(…………早く私の役目を果たさなくては……)

 

足から抜いた自身の血に染まったナイフを見つめる。

結標は紅魔館のメイド長には、絶対に勝てないと確信していた。

しかし勝利する方法はある。

 

弱点を突けば良い。

あの小生意気なガキだ。

アイツがこの館で一番偉いのなら、アイツを捕らえればメイド長は必ず動きが止まる。

子供を人質にするのは出来ることならしたくない。だが、今は手段を選んでいるほど余裕などないのだ。

 

そして。

結標淡希に手加減無しの拳と蹴りが放たれた。

 

十六夜咲夜の攻撃は見てから避けれるものでは無かった。

突然自分の周りに現れ攻撃が当たったとこちらが気付いた時には遠くに悠々と立っているのだ。

だから、今日何度も受けた拳を三発受けたあと突くような蹴りを食らい結標は後方へ床に二回バウンドした後壁へ激突する。

 

レミリア「……………咲夜、お遊びはその辺にして早く終わらせちゃって良いわよ。あの男とフランが闘い始めた。私はフランを試すと言ったけれど自分の妹だとしてもあの子の力に絶対的な信用があるわけじゃない。無事無力化するよりうっかり殺す可能性の方が大いにあるわ。だからフランが殺す前に咲夜にはフランの部屋へ向かって欲しいの、出来るわよね?」

 

咲夜「承知しました。直ちにこの者の意識を刈り取ってみせます」

 

指と指の間に無数のナイフを挟んだまま咲夜は結標淡希が倒れている方向へ駆けていく。

そして、その途中で指に挟んでいたナイフを投げる。

が、しかし。しかしである。

 

投げられたナイフより明らかに多い数のナイフが結標を襲う。

だがここが根性を、覚悟を見せつける時だった。

 

咲夜「____ッ!?」

 

目を疑うという言葉は今使うのが正しいと確信がある。

今まで驚愕の顔を見せなかった咲夜が初めて驚愕の顔を見せたのだ。

それは、、、何故か?

 

結標淡希が刺されば確実に死に至る銀色の刃物へ自分から突っ込んで行ったのだ。

 

咲夜(不味いこのままでは……ッ!!)

 

 

避けれる攻撃だと思っていた。

だから、回避したところ拳を叩き込めば良い。

咲夜の作戦はそうだった。

しかしここでその計算が狂う。

このままでは刺客の彼女を殺してしまう。

殺害せず、無力化して捕まえることが咲夜のやらねばいけないことだ。

 

咲夜「どこにでも居る完璧なメイドというものを見せてあげる!!」

 

時を止める。

ナイフは結標へ当たる前に宙で止まる。

だが、だが。

 

咲夜「一体どこへ……?」

 

結標淡希の姿が無かったのだ。

首を振り周りを確認する。

しかし、ここで考えた。

今までは結標が空間移動して、"この世に現れて"から時を止めていたので攻撃が当たっていた。

だが今は違う。

ナイフが当たると思って慌てて時を止めた。

だから今はまだ、結標淡希は"この世に現れてない"かもしれない。

空間移動とは、別次元の空間を通って移動している。

それを知っている咲夜はため息を吐いた後に時を再始動させる。

『みっともない………』。

自分にそう罵倒する。

なにがどこにでも居る完璧なメイドだ。

慌てるなんて完璧なメイドはしない。

冷静に物事を見て判断して行動する。

だから今からはそうしよう。

 

次、この空間にあの女が現れたら自分の失態を反省すると同時にお嬢様の前でこんな失態をしてしまった原因のクソったれをボコボコにしてやる。

死なない程度に。徹底的に、、、

 

グサグサグサグサッ!!!

っと、ナイフ全てが壁へ突き刺さった。

 

そして咲夜は結標の姿を探す。

 

咲夜「____嘘ッ!?」

 

結標淡希は上に居たのだ。

別にさっきまで居なかったって訳じゃない。

咲夜が時を止めているともずっと無数のナイフの高さ数メートルぐらいに居た。

しかし、それを咲夜は見逃していた。

偶然と偶然が重なり絶対に敗北で終わる闘いに勝利する可能性というなの"奇跡"を結標は引き寄せた。

 

その"奇跡"をものにするため、、、

もう一度座標移動する。

飛んだ場所はもちろん、あの小生意気なガキの頭上だ。

 

咲夜が時間を止めるより結標が両手で強く握り持つ逆さに刃を向けたナイフがレミリアの頭に突き刺さる方が先なのは明確だった。

 

が、しかし。

 

レミリア「_____フッ……」

 

偶然に向けた刃物は普通のナイフではない。

咲夜が武器として所有するナイフは"吸血鬼を殺す"ことができるナイフだ。

どんなに頑丈で大きな刀で首を斬り落としたとしても、最先端の技術で作られた最高傑作の対物ライフルで体をぶっ飛ばしたとしても吸血鬼の息の根を止めることはできない。

しかし、結標が偶然に自分に刺さっていたナイフは吸血鬼を殺すことができる。

そんなのを向けられているのに、、、

後瞬き程度の秒数で頭に突き刺さるというのに、、、

 

レミリア・スカーレットは余裕の態度を見せて怪しく笑う。

 

そしてそして。

結標が振り下ろしたナイフはレミリアの頭に突き刺さ____________らなかった。

 

結標「………………………………え?」

 

そのことに一番驚いたのは結標自身だった。

確かにあのままだったら"こんなこと"にはならなかった。

 

結標淡希がナイフで突き刺したのはレミリアに座られている海原の右足だった。

 

結標「そんな____」

 

レミリア「___バカなって?」

 

結標「く……ッ!!」

 

ナイフを抜き再び刃を向ける。

だが、、、

だが、、、

 

結標「なんで……、なんでっ!?」

 

___私の手は言うことを聞かないッ!?

気持ち悪い。吐き気がする。

全身で振り絞った力を入れナイフを振るうが……、

ナイフで突き刺そうとするが……、

 

自分の体が自分の意思と裏腹にそれを拒む。

つまり何度も何度もレミリアに攻撃を仕掛けるが、それを自分の体が勝手にその攻撃を反らしているのだ。

 

結標「____私に一体何をしたッ!?」

 

間違いなくこの症状はこのガキのせいだろう。

結標は、叫びながらそれでも銀色に輝く刃を向けた。

 

しかし。しかし。

 

咲夜「お嬢様に貴様ァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

憤怒に震える咲夜が時を止め結標に急接近し、扉の方へ向かって顔面を殴り付ける。

だがそれだけでは済まさない。

 

吹っ飛んでいる最中に無数の打撃を食らわせた。

すると彼女の体は空中でピンボールの様に跳ね返りを繰り返す。

時を止め、殴り。また時を止め吹っ飛んで行った場所へ先回りしてまた殴りを繰り返しているのだ。

 

鈍い音が連続で炸裂する。

 

だが、最後。

〆の一発はもちろん顔面であった。

拳を突き当てたまま地面へと押し落とす。

 

______ドゴンッッッ!!!!

地面は揺れる。

そして、、、

崩壊した床の中心に完全に気を失い息があるか怪しいぐらい深手を負った倒れてる彼女へ、

 

咲夜「お嬢様に刃物を向けるとは万死に値するっ!もしも殺さないようにと言われてなかったら確実にお前を殺していた、愚劣な人間」

 

レミリア「さすが私の咲夜、お見事ね。クールに決めるその姿、惚れ惚れするわ____」

 

パチパチパチパチっと手を叩き自分に支えるメイドを褒める。

 

レミリア「____でもちょっとやり過ぎよ。私達は善か悪かと言えば悪の存在。下らない正義感に突き動かされ武器を持って私達を退治しに来た人間なんて数え切れないわ。もう刃物なんて向けられるのは慣れてしまってるのよ。私は"生きるために人を殺す"。どんな目的や理由があれ他者を殺すのならば誰かに殺される覚悟は出来ていて当然。もしもその覚悟が無いのなら失礼極まりない」

 

そうだとも。

彼女は"吸血鬼"。人間の血を摂取しなくては体から生命力が無くなりみるみる枯れていってしまう。

だから生きるために殺す。

死にたくないから殺す。

それが彼女の産まれてから背負いし業なのだ。

 

レミリア「素直に認めるわ、確かにさっきのは"危なかった"。偶然の行動から生まれた奇跡とはいえ私の命を絶つナイフがあともう少しといったところまで接近していたのだから。でもね咲夜、貴方が私を護ろうとしてくれるのは嬉しいのだけどあんな小娘にやられる私じゃないわ」

 

咲夜「それは十分承知しております。しかし……、」

 

レミリア「____しかし?」

 

咲夜「私の命より大事なお方に危険が迫っているのなら全力で排除するのが私の使命です。いくらお嬢様が私の手なんて必要ないほどお強い方だとしてもそれでも私はお嬢様の壁となり矛となる所存です」

 

レミリア「ありがとう咲夜。貴方のその気持ち、とても嬉しいわ」

 

咲夜「____あと、ですが……。それとは別にただ許せなかったと言うのが本音です。お嬢様に無礼をしたことが」

 

レミリア「彼女に……、いいやその子達に同情する箇所はある。哀れな運命を背負ってしまった子供達。運命の奴隷となってしまったのなら運命に従うしか道がない。それを知ってしまったから少し優しくしてあげたくなっちゃったの。咲夜、この後始末は美鈴に任せて早くフランの所へ行って。あの子……、やっぱりまだダメだったみたい。あのまま放っておいたら殺しちゃうわ」

 

咲夜「承知しました」

 

レミリア「あっ、私は食堂で待ってるわ。フランと一緒に来てね。一人でより二人で紅茶を楽しみたい気分なの」

 

咲夜「____はっ!」

 

そして、そして。

メイド長が姿を消すとレミリアは立ち上がり食堂へと向かって行った。

後ろから扉が開く音がした。

美鈴が屋敷の中に入ったのだろう。

いつも門番の仕事をサボってるから、他の仕事をさせても問題ない。

給料分の仕事はしてもらわなくては困るというものだ。

 

レミリア「『アイテム』は魔理沙達が、そして『グループ』は私達が片付けた。後は『スクール』……か」

 

運命を操ると言うことは運命を見ることも変えることも可能なのだ。

別に能力の対象は自分だけではない。

他の者へも可能なのだ。

 

紅色に瞳を灯らせると、

 

レミリア「……見えない。あと『スクール』のヤツの運命が見えない。私の能力が通じないとは相当危険な相手ってことは確実ね…………」

 

そして。

口元に手を当てて、

 

レミリア「嫌な予感がするわ。この先の運命が見ることが出来ないなんて………、一体私達にどんな運命が待ち構えてると言うの_______」

 

 

________一方通行(アクセラレータ)

最後に彼女はそう呟いた…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそして。

その後『グループ』三人無力化し集めた所で報告する。

 

紅魔館にて『グループ』の無力化、捕獲完了。

 

すると大妖怪のスキマが開かれその中へ気を失っている三人をそっと入れる。

繋がれた場所はもちろん永遠亭だ。

 

 

永遠亭では、『グループ』三人の酷い有り様を見て「これはまた大変な患者が運ばれて来た…………」っとため息を吐いてる中、フランとレミリアは紅茶を楽しみながら会話を弾ませていた。

そしてその様子を少し離れた場所で嬉しそうに咲夜は眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

一方の話をしよう
月の戦争。救いを貪欲に欲する月面

もしも我らが倒れてしまったら、、、

「俺がやらなきゃ誰がやる」

一方通行達は何時間も死闘を繰り広げていた。

次回、第四章・第九話『月面制圧』
救済なンて俺には似合わねェ。だけど、護る。
救ってやるよ、

どこのどいつだって俺が助けてやろォじゃねェか!
血みどろの方法だが、
それでも証明してやる。
『俺には誰かを護れる力があるってなァッ!!!!』

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