幻想郷を一方通行に   作:ポスター

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『交渉』


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10話

『月面制圧』。

一方通行達、幻想郷で生きる者達は力の限りを尽くした。

それは血と汗を流してまで…………、

 

 

月にばら撒かれた黒い玉。

その悪意の塊で作られたものにより、理性を無くし暴走して自らの手で自分達の住む世界を崩壊させていった。

しかしそこに救済の手が差し伸べられた。

救いが到来する。

それが一方通行達なのだ。そう、地上の民達は次々と暴走者となってしまった月人を倒していき正気に戻させていく。

どんな企みや目的があるのか知らない。

けど……、血と汗を流してまで全力を持って月を救ってくれたのは事実だ。

それにより月人は幻想郷に感謝して、

一方通行達を、『英雄(ヒーロー)』を称えた。

 

そして。

月人達全員が正気に戻り、廃墟のような有り様の月の都を元の月の都の姿に戻そうと動いていた。少し一方通行の創造の力も借りたが月人達は言った。

『ここからは我々の力だけで、月の民だけでやります。我々も全て地上の者に頼るほど落ちぶれちゃいません』と。

その言葉を聞くと一方通行は小さく笑い、その場を去る。

 

頼もしい奴らだ。脆くない、簡単に折れない芯を持つ強いヤツらだ。

真っ白な彼は素直にそう思った。

そして、一方通行は本来の目的に移ることにした。

 

サグメが月で偉いヤツと対面する場を作ってくれたそうだ。まあ、あちらの方も話をしたいと言っていたらしい。

 

さあ、これからは『交渉』の時間だ。

うまくいくか、それとも失敗に終わるか、

 

始めよう。

楽しい楽しい腹の探り合い(お喋り)を…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月の都で一番目立つ一番大きな建物。

中国と日本を足して二で割ったような建物であった。

その中に一方通行、藍、橙、クラウンピースの四人は入った。

衣服は先の戦闘によりボロボロであったが替えの服もないし、最低限砂や汚れを叩き落とした。

そして見かけ通り中もとても広い建物。

だが、外見は中国と日本の雰囲気を醸し出すのに内装は洋風であった。が、所々和風な所もあったりする。

和、洋。そのどちらの良いところを取り入れた感じであったのだ。

まあ、そんなこと一方通行達御一行にはどうでも良いことだ。

そして、そして、

この月で偉い者に対面する一室へここの使用人か知らないがウサミミが頭に生えた女子高校生のような身なりの少女に案内された。

 

その中に入るとそこに“あの"姉妹とサグメが居た。

 

「お待ちしておりました、この月をお救いくださった勇敢で心優しい英雄様。この度は月の民を代表して感謝を_____」

 

一方通行「そォいうお堅い挨拶はイイ。こっちも話してェことがあるし、そっちも聞きてェことや話てェことがあンだろ」

 

洋風な部屋。

まるでそこは世界遺産として提示されている王宮の中にある客室のようだった。

ここは客室で間違いないのだが、それでもとても豪華な家具が並べられていた部屋。

一方通行や藍はいつも通りの様子だったが、橙は少しその表情に緊張を見せる。

クラウンピースは今日出会ったばっかり、

全然こいつの事を知らないが欠伸(アクビ)をしているし、緊張とかはしてないみたいだ。

 

そして、

対面場に入ると綿月姉妹は椅子の前で立ちサグメは壁に寄り掛かるように立っていた。

椅子に座らず立って待っていたのだ。

膝ぐらいの高さの長テーブル。

それを挟んで空席の椅子もあった。

多分、それが客用の椅子だろう。

 

そしてまず最初、綿月依姫が口を開いた。

が、しかし一方通行は依姫の話を割る。

 

依姫「…………では、椅子にお座り下さい。っと言いたい所ですがその穢れはこの部屋に入ることは許せません。いいやこの部屋はおろか、月に足を付けてるのも許せない……。我々月人は穢れを最も嫌っております」

 

クラウンピース「ほらね。言った通りでしょ?あたいはここの連中に嫌われてる、だから先にあたいを幻想郷に戻してくれよ。一方通行、お前の力ならそれができるんだろ?」

 

一方通行「…………チッ」

 

さっき案内してくれたウサミミの月人や、月の都に居る月の民達。

そして目の前に居る綿月姉妹。その者らが地獄の妖精の少女を見る瞳の中に嫌悪があった。

 

嫌われてることに慣れている。

ただ地獄で生まれただけなのに嫌われる。

小石を投げられても全然平気と笑うクラウンピース。

だが、その事に一人だけ怒りを覚えていた者が居た。

一方通行だ。

彼は、白い手を地獄の妖精の頭の上に乗せて、

 

一方通行「こいつにも俺達の話を聞かせてやりてェ。このガキには俺達の話を聞く権利がある。こいつも月の異変解決に貢献した。泣かせるじゃねェか、過去に月の奴らに迷惑をかけたからその償いのため今回俺達の中で一番奮闘したンだぜ?」

 

クラウンピース「はァ?なに______」

 

地獄の少女が口を開くがその口は白い手で塞がれる。

頭の上に置いていた手をクラウンピースの口にやったその時、バシンッッ!!っと叩かれた音が響く。

急に口を塞がれ、もがきながら口を塞ぐ手をどかそうとしているがそれを全力で最強の能力者は無視する。

 

すると、、、

 

橙「えっ?そんなこと言っ_____」

 

次に口を開いたのは橙だ。

だが余計な事を言う前に藍が両手で後ろから抱き締めるように口を塞ぐ。

 

藍「そうなんですよ。私もこの妖精がそんな想いで協力すると聞いた時はそれはそれは驚きました」

 

黄金色の九つの尻尾を持つ、式・藍は微笑みながらそう口を開く。

 

豊姫「……そうですか。なら良いでしょう、依姫も良いわよね?」

 

依姫「姉様がそう仰るなら……」

 

そして。

藍と一方通行はそれぞれ抑えていた手を離し、一方通行達の話を信じた綿月姉妹は地獄の妖精をこの場に居ることを承諾する。

何事も無く次はやっと話が出来ると思った。が、まさかのここで問題が起きた。

 

なんと、空いてる椅子が三つしかなかったのだ。

 

藍「私は立っているので結構です。一方通行さん椅子をお使い下さい。後、橙とクラウンピースもいいぞ」

 

一方通行「いや、そンな気遣いは必用ねェ。あるモンだけでどうにかする。クラウンピース、オマエは俺の膝の上に座れ」

 

誰よりも早く椅子に腰かけると自身の膝をタンタンと叩く。

だが彼の発言にこの場の誰もが驚きを隠せなかった。

特に、藍とサグメは……、、、

 

「「……………………」」

 

藍とサグメは背後に『ゴゴゴゴゴゴ……!!!』っと圧力がある擬音が浮かんでいた。

殺意と妬みを込めクラウンピースを睨む。

当然、そんな目を向けられてることに地獄の妖精も気付いている。

 

だから、、、

 

クラウンピース「別に良いよ。あたいは後ろでぷかぷか浮いてるから」

 

一方通行「無駄なところで力を消耗するな。それにこの俺が座れと言ってンだ。だから早くしろ」

 

クラウンピース「…………チッ」

 

どこまでも自分勝手なヤツだな、と唇を動かした。だがそれでも白い彼に従うことにした。

きっとこれ以上断ったとしても無駄だと思ったのだ。

 

そして、そして。

 

一方通行「思った通りだ。オマエは顎乗せにピッタリだ」

 

クラウンピース「このヤロウ………」

 

藍「………………」

 

橙「……はぁ、これ以上面倒なことにならなきゃいいな」

 

左から藍、一方通行、その膝の上にクラウンピース。そしてポツリと誰にも聞こえない程度の声音で思ったことを呟いた橙の順番に座っている。

その反対側には、、、

 

依姫「姉様、ここって真面目な話をする場で間違いないんでしょうか?」

 

豊姫「一応あちら側も真面目に話をするつもりだと……思う……。もしからしたらだけと……」

 

サグメ「………………」

 

二つの席に依姫、豊姫が座りサグメは壁に寄りかかっていつも通り口に手をやっていた。

 

一方通行「……まずはオマエ達から聞いてこい。サグメからある程度聞いてると思うが今日何が起き、そして何故あの悲劇が起きちまったか全部聞いた訳じゃねェだろ。この中じゃそれに一番詳しいのはこの俺だ。知りてェこと何でも聞け、答えてやる」

 

依姫「それはそれは感謝申し上げます。他の月人にも説明するためにも私達が今回の件の全てを知らなくてはいけませんからね」

 

クラウンピース(ヤバイ……眠くなってきた……)

 

一方通行「あァ?うとうとしてンじゃねェよクソガキ」

 

クラウンピース「……んぁ?……何か急に眠くなってきたんだよ。お前の体温が高いからかな?ほら、温かくなると人は眠くなるじゃん」

 

一方通行「俺の体温は普通だ。むしろ体温高いのはオマエの方だろ」

 

橙(そんなにくっ付いてりゃ誰でも温かくなるよ普通…………)

 

なんて、心の中で呟いたのだから二人にその言葉が届くはずもなく……。

『もしかしたらまともなのは私しか居ないのでは?いや、まともなのは私だけだ!!』っと確信した橙は終始呆れ顔で居るのかもしれない。

 

まあ、そんな猫娘の気も知らずクラウンピースを膝の上に座らせる一方通行は、、、

 

一方通行「…………あン?どォした?質問しねェのか?」

 

依姫「いえ、こんな場になると知らず貴方達が来るまで緊張していた私がバカだなぁと黄昏れていただけです……」

 

一方通行「?」

 

コホン、と。気持ちを切り替えた依姫は真面目な表情になっていた。

そして、

 

依姫「それではお聞きします。月で起きた異変、それを誰が起こしたかご存知なのでしょうか?」

 

一方通行「あァ。“そいつ"が誰なのか、何処に居るかも知ってる」

 

依姫「“そいつら”ではなく“そいつ"ですか。つまり敵は単体というのが正しい認識でよろしいでしょうか?」

 

一方通行「中枢となる人物は個人単体だが、もしもそいつを討つことになるとそいつが自由に動かせる大勢となる駒と殺し合い、総力と総力をぶつける全面戦争となる。そォなると今回の月以上の惨劇が起きる可能性があるぞ?」

 

情報だけで敵を認識してその顔も知らぬ者に殺気を向ける依姫を見て、一方通行は彼女達が逆襲しようしてることを感じとる。

 

依姫「これ以上誰も傷付かないためにも……仕方ありません。月の秩序と平和を守るのが我らの使命。ですから月の平和を脅かす者は一匹たりとも生かしておくつもりはありません。必ずや今回の事件を起こした犯人の息の根を止めてやるつもりです」

 

一方通行「……ハッ、良い覚悟だ教えてやる。オマエらの平和だった月を地獄に一変させたクソ野郎の名をな、そいつの名はアレイスター=クロウリー。学園都市と呼ばれる科学の町、人工的に超能力開発を成功した所のトップだ」

 

依姫「超能力を人工的に……?」

 

豊姫「誰もが才能を、強大な力を手にすることができると言うわけですか……」

 

サグメは最初の時からずっと変わらず瞳を閉じて腕を組んでいて、壁に寄りかかりながら部屋の端の方で話を聞いていた。

綿月姉妹は一方通行の『超能力を人工的に開発出来る』っという発言に驚きを見せる。

 

一方通行「いや、少し違ェな。確かに誰にでも超能力開発は出来る。ちっと強引な方法だと頭のネジが外れた科学者に体のあちこちを弄ってもらう必要がある、だがそれは下手したら死ぬリスクと隣り合わせだ。それにそンなリスクを背負ってやっと超能力に目覚めても個人差は出る。カスみてェな能力に目覚めるやつ、どンな兵器よりも危険な力に目覚めるやつにな」

 

依姫「……なるほど。それにしても貴方はその学園都市とやらに詳しいですね」

 

一方通行「そりゃあそォだろ。俺は元々その学園都市に居た人間だからな」

 

____ガダッ!!!

刹那。

依姫の目と気配が変わった。

足元に置いてあった刀を素早く掴み取る。

そして抜刀し一方通行へその鋭い刃の先端の部分を向ける。

 

依姫「一体それはどういうことですか?返答次第ではここで貴方の首が飛ぶことになりますよ」

 

片足を長テーブルに乗っけて刀を向ける依姫。

しかし、白い怪物は表情一つの変えない。

焦りというものが一切無かったのだ。

だが、一方通行の両隣は刀を向ける依姫に立ち上がりそれぞれ臨戦態勢に入っていた。

一方通行の膝の上に座るクラウンピース、彼女も一方通行と同様一切焦った様子もない。

普段通りであったのだ。

 

一方通行「落ち着け………、オマエら」

 

一気に空気が変わる。

橙は刃物のように伸びた爪を構える。

藍はボールを掴むように手を開き、中指の先を輝かせる。

それは光のエネルギーを溜めているのだ。

もしもその光を閃光のように放てば当たり所によっては人を絶命させることが可能だ。

 

式達の目も、依姫同様鋭く殺気を放つ目となっていた。

 

依姫「お前ら雑魚二匹で私を止められると本気で考えているのか?」

 

藍「出来る出来ないは関係ない、私は一方通行さんに刃を向ける者を許せないだけだ」

 

橙「紫様の敵は私の敵、藍様の敵は私の敵。それだけのこと。勝てないから挑まない理由にならない。主の敵ならば全力で挑む。それが私の使命ッ!!」

 

 

「_____やめなさい」

 

 

そう発言したのは、、、

 

依姫「………サグメ様?」

 

サグメ「依姫、刀を下ろし座りなさい。これはお願いではない、命令よ」

 

依姫はサグメの居る方へ首を向けた。

その時、依姫は驚きの顔だった。

滅多に口を開かないサグメ様は口を開いた。

しかもそれは月の敵かもしれない白い彼を庇う為だったのだ。

 

依姫「しかしこいつは____」

 

サグメ「私は刀を下ろし座れと言ったの。貴女(あなた)の意見を述べろとは言った覚えはないわ」

 

依姫「_____ッ!!!!」

 

声色で分かる。舌禍の女神様の表情を見るだけで恐怖に震えそうだ。

サグメ様は怒っている。間違いなく。

 

何故?

 

依姫は少し刀を握る力が抜けていった。

だが、まだ刀を向けている。

言うことを聞いていない小娘に、だ。

 

サグメ「ここは話をする場であって、刀を振るう場ではないはずよ。それともそれが依姫なりの話の仕方なの?だったら____」

 

そっと、その口を覆うように置いていた手を退ける。

それを意味するのは、、、

 

サグメ「___私は貴女(あなた)に力を振るうことになるわ」

 

依姫から完全に殺気は消えていた。

次、もしも何かサグメ様に口答えすればあの恐ろしい能力が自分に振るわれる。

普段優しいサグメ様がここまで怒るのは初めてかもしれない。

 

豊姫「依姫」

 

依姫「姉様………。申し訳ありませんでした。敏感に反応し過ぎてしまいました」

 

依姫は一方通行へ向けていた刀を納刀し、腰を下ろす。

そして頭を下げたのだ。

 

それを見たサグメは、

 

サグメ「一方通行、うちの子がごめんなさいね」

 

一方通行「気にすンな。疑ってかかるだろォって踏ンでたしこォなることも想定内だ」

 

争い事にならずに済んだことに橙、藍も腰を下ろす。

 

一方通行「敵と判断したら即座にかかる。いい判断だ。だが無関係な奴を巻き込ンで、ってのは感心しねェな」

 

依姫「すみません」

 

あの時、依姫は一方通行の膝の上に座るクラウンピースごと一方通行を斬ろうとしていた。

それを指摘する。

 

が、もう先程のような緊迫した状況は無くなり素朴な疑問が浮かんだ豊姫は一方通行が膝に乗せる地獄の妖精を指しながら、

 

豊姫「ところでそのお嬢さんとどんなご関係なのですか?」

 

それに一方通行はクラウンピースの頭に手を乗っけて答えた。

 

一方通行「こいつは俺の生徒だ」

 

クラウンピース「………………。はァ!?」

 

彼の発言にこの場で一番驚いたのはクラウンピースだった。

振り返って白い怪物の顔を見ながら、

 

クラウンピース「いつあたいがお前の生徒になった!?って言うか生徒ってなんだ!?」

 

一方通行「オマエのような人外の問題児を集めた森の教室ってのがあってな。俺はそこで教師をやってンだが、オマエは今日からそこの生徒になってもらう」

 

クラウンピース「勝手なこと言うなよ真っ白野郎!!あたいのことはあたいが決める!!それにあたいはご主人様以外の言うことを聞くつもりはない!!」

 

一方通行「オマエに拒否権はねェぞ?」

 

クラウンピース「えっ?」

 

次の瞬間。

クラウンピースは今までに味わったことのない地獄を見ることになる。

 

クラウンピース「痛たたたたたたたたたたたっ!!!!痛い痛い痛いーッ!!!」

 

一方通行「始めに言っておくがオマエが俺の言うことを聞くまで続くぞ」

 

左右から拳で挟んで、頭にぐりぐり攻撃を容赦なくする一方通行。

それをされているクラウンピースは涙を浮かべて暴れまくる。

だが頭を拳で挟まれていて身動きできない。

よって、大人しくぐりぐり攻撃を受けるしかないのだ。

 

クラウンピース「分かった分かった分かりましたーッ!!私は今日からお前の生徒だー!!」

 

一方通行「分かりゃァ良い」

 

クラウンピース「鬼!悪魔!!大魔王!!!」

 

ぐすっ、を鼻を鳴らし地獄の妖精のその瞳には涙が浮かんでいた。

 

一方通行「さて、こっちからもオマエらに質問がある。オマエらは暴走する直前の記憶はあるか?」

 

豊姫「目の前に真っ黒な球体が突如現れた所までの記憶ならありますが……」

 

依姫「私もです」

 

綿月姉妹は淡々と答える。

それに対して、

 

一方通行「…………そォか」

 

っと、一言息を吐く。

 

今回の暴走事件は地上で起きたものとは少し違うのかもしれない。

実は幻想郷で暴走者となってしまった者に意識が無くなる直前の記憶はあるのかと質問したら全員揃ってないと答えたのだ。

しかし、月で暴走者になってしまった月人達は暴走する直前の記憶があると言う。

そのことも引っ掛かるがもう1つ引っ掛かることが……、

 

どうやって月にあの黒い玉をばら蒔いた?

 

幻想郷には、八雲紫が幻想郷から学園都市にスキマで繋いだ時に現れるその時空の歪みに強力な電磁波を当てることにより強制的にそのスキマの歪みから時空の扉を開いていた。

だが、月から学園都市にスキマを繋いだ時は無いと聞いた。

それに月と、幻想郷はスキマで繋いだことは月面戦争であるらしいがもう幻想郷に紫が作ってしまったスキマの歪みは直した。

なのに、今日。幻想郷に録音機を送り込むこともでき、そして月に黒い玉をばら蒔くことも出来ていた。

もしかしたら学園都市は学園都市で別の世界へ繋がる扉を開く方法を手に入れたのかもしれない……。

 

豊姫「あの黒い玉。あれが今回の事件を起こした物なのでしょうが、一体あの黒い玉は何なんですか?」

 

一方通行「黒い玉。何のひねりもねェ安直なネーミングだが“暴走玉”(ぼうそうだま)っと呼称するか。その暴走玉は埋め込まれた対象が持つ様々な能力を飛躍的に強化させる。オマエ達も気付いてるはずだ、自分の能力が進化したことに。まだ暴走玉には謎な部分が残っているが、解ってることもある。それはあの玉っころを埋め込まれた対象から取り除いていも能力は強化されたままだってことだ」

 

依姫「それは敵側からすると喜ばしい効果ではないのでは?倒したい敵を強くさせてなんの得があるのですか?」

 

一方通行「敵を強化するために暴走玉を使ってンじゃねェ。アレイスターが暴走玉をばら蒔いた理由は、暴走玉を埋め込まれた奴は急激な力の強化により理性を失い無差別攻撃を開始する。だから理性を失い、しかも能力が強化されたやつらが勝手に自分の滅ンで欲しい場所をテメェらの手で滅ぼしてくれる、って訳だ。つまり暴走玉を埋め込まれた敵は自分の駒と変化する」

 

豊姫「“暴走玉”……ですか。とても恐ろしい兵器ですね。しかしその後はどうするのですか?」

 

一方通行「その後、ってのは敵地を滅ぼした後のことか?」

 

豊姫「はい。その後の処理はどうするのかと思いまして」

 

一方通行「さっきも言ったが暴走玉の正体を完全に理解できねェが暴走玉を埋め込まれたまま一定の時間を過ごすとそいつは確実に死ぬ。一定の時間ってのはこれも確かではねェンだが、俺の予想で2ヶ月ぐらいだ」

 

豊姫「敵が勝手に己の敵地を滅ぼした後、用済みとなったら勝手に絶滅してくれる……なんて恐ろしい」

 

"暴走玉"。それを知れば知るほど背中に鳥肌が立つ。

寒気がする。それは一方通行と会話していた豊姫の隣で聞いてる依姫もそうだった。

そんな当たれば勝ちが確定してしまう反則兵器。それを自分達の月に使用された。

もしも目の前に居る地上から来た英雄達が月に来なかったら……、

もしも救済の手を差し伸べてくれなかったら、、、

我々はの月は環境は崩壊し、終焉に満ちていただろう。

 

嗚呼……恐ろしい。恐ろしい。

それ以外言葉が見付からない。

 

一方通行「まだ聞きてェことはあるか?」

 

豊姫「私は知りたいことを知れまし、もう聞きたいことはありません」

 

依姫「私も姉様と同じ、もう聞きたいことはありません」

 

綿月姉妹はそう答えた。

すると、

 

一方通行「そォか……______」

 

___じゃあ、っと。

 

一方通行「ここからは俺の聞きたいことだな。いや、提案とも言えるな」

 

さァ『交渉』の時間だ。

一方通行はそう口の中でも呟いた。

そうだ。ここからが、本番。本当の目的なのだ。

今後の為にも、ミスは絶対に許されない。

 

依姫「提案……?」

 

一方通行「あァ。ここで確認する。オマエ達は本当にこの月の最高責任者、王や皇帝みてェ存在で間違いないな?」

 

依姫「王や皇帝などとは呼ばれたことは私達はありません。私達は月人達から『月の使者』っと呼ばれております」

 

豊姫「我々月の防衛を任された『月の使者』では不満ですか?」

 

一方通行「いや、構わねェ。今からする提案は有象無象のカスにすると無駄話になっちまうから一応確認しただけだ」

 

そして。

一方通行はズボンのポケットからスマートフォンを取り出し、前の机に裏面が上になるように置いた。

 

一方通行「月の防衛を任された『月の使者』。オマエら提案する。俺達、幻想郷と手を組ンでくれねェか?アレイスターをぶち殺すため」

 

依姫「地上の者達と手を組む、ですか……」

 

一方通行「アレイスターは厄介な野郎だ。だから多くのやつらと協力が必要だ。他のやつらの知恵や力が必要なンだ。勿論タダで手を組ンでくれと言うつもりはねェ、こちらもそれなりのものは支払う」

 

豊姫「仮に貴方達を手を組んだ場合、我々に望むものは?」

 

豊姫の表情や雰囲気が変わる。

さっきまで、確かに『月の使者』っと呼ばれる風格はあった。

だが今の豊姫はさっき以上の凄みを感じる。

 

一方通行「月独自で作られた武器や兵器などの技術の提示、後はこちらが協力して欲しい時に駆けつけると縦に首に振る。その二つで良い」

 

豊姫「で、貴方達は何を支払うと?」

 

一方通行「幻想郷独自に開発した通信機を渡す。そしてこの俺の力をオマエ達月の奴らに貸すと約束する」

 

豊姫「……貴方の力を?」

 

一方通行「実を言うとなァ、今オマエ達に話してるのは俺が勝手に他の奴らと相談もしねェでしている。だからこの俺が責任を取るのは当然のことだ。だがこの俺、一方通行には幻想郷最強って看板がある。その俺の力をオマエ達は全面的に利用できる。これはオマエ達に利点があると思うぞ」

 

依姫「最強、ですか。貴方が……?」

 

藍「一方通行さんが最強と呼ばれてるのは本当です。幻想郷で住む者達は皆、この方のお力を認めておりますし多くの信頼もあります。一方通行さんがもしも月の方達と協力してくれと頼まれたら絶対に幻想郷の他の者達も協力してくれます」

 

真っ白で体は細く、男か女か一目見ただけでは区別が難しい……、

脆弱そうに見える真っ白い超能力者からかけ離れた『最強』っと呼ばれているとは考えにくいと依姫が一方通行に疑いの目を向けると、それを察して藍が口を開いた。

 

「一方通行は強いわよ。貴女達の想像より遥かにね」

 

豊姫「サグ姉………」

 

サグメ「私には決定権なんてもの無い。けど、もしも今後の事を考えるなら一方通行達と手を組むのはありだと思うわ。まっ、ただこれは普段無口の女が吐いた独り言とでも思ってもらって構わない。決めるのは貴女達よ、お姫様方」

 

依姫「私は姉様の考えに従います」

 

豊姫「依姫。…………分かりました」

 

考えに。考えて、考えた結果。

豊姫は答えを出した。迷いはない。

正しい判断を脳内で下した。

そう確信できる。

 

豊姫「共通の敵を、“アレイスター”を倒すため私達月人は貴方達幻想郷と手を組みましょう」

 

一方通行「交渉成立だな。これからよろしく頼むぜ綿月依姫、そして綿月豊姫」

 

サグメ「ちょっと、私は?」

 

一方通行「あァ、オマエもよろしくな。稀神サグメ」

 

サグメ「うん♪」

 

上機嫌に微笑んだ舌禍の女神。

これから、月の民と一方通行達は協力関係になった。

共通の敵を倒す『仲間』になったのだ。

前は助けてもらっただけ、それ以外のなにものでもなかった。

だが今は違う。『仲間』だ。前の時よりもっと近い関係になれたとこにサグメは嬉しく思う。

 

一方通行「とりあえずスマホを10台渡す。足りなかったら後で言ってくれ」

 

そう言って一方通行は片手で空間にスキマを開きその中に腕を突っ込む。

そしてそのスキマからスマートフォンを10台取り出し机の上に置いた。

 

だが、

 

藍(いつも開くスキマよりサイズが小さい。それに能力を使った時、辛そうな表情をしていた。もう一方通行さんは限界なんだ……)

 

きっと、誰よりも疲れているはずだ。

それはそうだろう。

今回一番、多く戦ったのは間違いなく一方通行だ。

目蓋はとても重たいはず。早く横になって休みたいはず。

 

ここで藍はさっきの事を思い出す。

 

そう、依姫が刀を一方通行に抜いた時だ。

もしもあの時、依姫が一方通行に斬りかかったら今の一方通行には依姫の攻撃を防げるほどの力は残ってない。

それが分かっていても自分は一方通行の盾となることも出来ず、目の前で一方通行が斬られるのをなすすべもなく眺めてることしか出来なかっただろう。

 

『なんて私は無力なんだ……』

 

今回の件で彼の隣に立ち、力になれると思っていた。

助けもらってばかりだったが、今回は助けになれると思っていた。

なのに……、なのに……。

結局、最初から最後まで一方通行さんに頼る形になってしまっていた。

 

……強くなりたい。

一方通行さんを守れるぐらいと高望みするつもりにはない。

この人の隣に堂々と立てるぐらいの力が欲しい。

 

藍はそう思った。

自分がお慕いする白く誰よりも強い彼をその瞳に映しながら…………。

 

そして、である。

 

豊姫「これがサグ姉が使っていたスマホか……」

 

依姫「いざ手に持ってみると思ったより壊れやすそうですね……」

 

綿月姉妹は前に置かれたスマホをそれぞれに手に持ち眺めていた。

 

一方通行「使い方はサグメから聞け。あと、強度は中々のモンだ、ちょっとやそっとの衝撃じゃヒビ一つ入らねェ」

 

豊姫「一つ、よろしいでしょうか?」

 

一方通行「なンだ?」

 

豊姫「一方通行様のスマホと私達に渡されたスマホと少し違いがありませんか?私達に配られたこのスマホは全て同じ灰色模様です。なのに一方通行様のはオシャレな模様が施されていて……ちょっと……」

 

一方通行「???」

 

もじもじ、と。

言いたいことがあるのだが、その言いたいことを言うのを躊躇っている様子だった。

そんな豊姫の後ろに立ち、サグメは、

 

サグメ「そうね。私もこのスマホ渡されたときから思っていたわ。一方通行のスマホやそこの式達のスマホもそれぞれに違う模様になっていた。なのに私達のスマホは無地ってのは無料(タダ)で貰った身でこれはワガママだと承知してるけどちょっと納得できないのよね」

 

一方通行「今からオマエの望む柄のスマホを作れって言いてェのか?」

 

サグメ「頼めるなら頼みたいわ。けど、やっぱり難しい?」

 

一方通行「正直に話すとまた1から作るってのは難しいな。柄が気に入らねェならカバーでどォだ?」

 

サグメ「カバー?」

 

一方通行「スマホにもう1つ外装を取り付けンだ。カバーならスマホをまた一台一台作るより楽だし、カバーはスマホの強度をもう一段階上げることもできる」

 

『スマホのカバー』の説明をしながら一方通行は自分のスマートフォンを手に取る。

そしてそのスキマの1つの機能。スケッチ機能を使ってスマホカバーのおおまかな図を描く。

そしてそれを綿月姉妹、サグメに見せた。

 

一方通行「こォいうのならスマホを1から作るより早く作れる。柄はオマエ達が決めろ。これでも不満があるなら手帳型のスマホケースってのもあるが?」

 

豊姫「良いですね!カバーですか!」

 

依姫「私はちょっと強度が心配だったので、そのスマホカバーというの欲しいです」

 

サグメ「私は手帳型ってのが気になるわ。もっと詳しく話してくれない?」

 

綿月姉妹と舌禍の女神、その三人と一方通行がスマホカバーのことで話をしていると、

 

藍「良いなー。私もいつ傷ついてしまわないか不安だったのでそのカバー私も欲しいです」

 

一方通行「分かった、オマエの分もにとりに頼ンでやる。だが、オマエのはこいつらの後だ。それでも構わねェな?」

 

藍「はいっ!」

 

サグメ「………で、さっきから気になっていたんだけど、そこお子様二人はぐっすり眠ってしまったわね」

 

先程から橙とクラウンピースが静かだったのは眠ってしまったからだ。

月面制圧で相当疲れたのだろう。

ピクリとも動かず寝息を立てていた。

 

藍「起こしましょうか?」

 

一方通行「寝かせといてやれ。疲れてンだったら休ませるのが一番だ」

 

藍「……一方通行さんは大丈夫ですか?お疲れのようでしたらその妖精は私が預かりますが?」

 

一方通行「俺は平気だ。そォいうオマエはどォなンだ?」

 

藍「オンとオフ。しっかりと切り替えることができるので大丈夫です」

 

一方通行「そォか………」

 

綿月姉妹は自分のスマホカバーの柄をどうするか話し合っていた。

そんな二人を無言で眺める隻翼の舌禍の女神。

 

そして。

十分ぐらいの時間が経った頃には、それぞれにどんな柄にするか決まっていてそれを一方通行に報告する。

 

一方通行「……覚えた。後は聞きたいことはねェか?」

 

豊姫「カバーの費用はどのくらいになるのでしょうか?」

 

一方通行「あ?そンなの請求しねェよ。俺達は手を組ンだ一つの群れだ。それにこれもオマエ達と手を組む為の条件と考えていたし、全額俺が負担してやる。ってか俺が直直に作ることになるかもな」

 

豊姫「でしたら私達は完成するのを楽しみに待っていますね」

 

そして。

 

一方通行「さァてと……、こいつらが起きたら俺達は月から退散するか」

 

藍「今からにでも………。ふふっ、ええそうですね。この子達が起きるのをのんびり待ちますか」

 

ぐっすりと気持ち良さそうに寝ているその寝顔を見て、 無理にでも起こそうと思う気持ちは失せる。

 

一方通行「つゥ訳だ。少しこの場を借りたいンだが構わねェか?」

 

豊姫「全然構いませんよ。しかしすぐお帰りになるのはこちらとしては困ります。せっかく月へ来てくださり、しかも月をお救いになってくださった恩人様達を手ぶらで帰すわけにはいきません。せめて、お食事やお風呂などのおもてなしをさせてください」

 

一方通行「俺はオマエ達との交渉が成立しただけで大成功って万歳三唱のところだが………まァ、良い。厚意を踏みにじる趣味はねェし、オマエ達なりのおもてなしとやらを受け取らせてもらうぜ」

 

豊姫「ありがとうございます。では、まずお風呂ですね。最初はやはり一番疲労してるであろう一方通行様からどうぞ。汗や砂埃などでお体が汚れになったでしょう。この部屋を出れば扉の隣に"レイセン"がおります。彼女がお風呂場まで案内してくれるはずです。そしてお風呂に入ってる間にお洋服をお直しをこちらでしておきますね」

 

一方通行「なにからなにまで気が細かく利くことだなァ______ッ!?」

 

膝の上に座り寝るクラウンピースを両手で起こさないように持ち上げ立ち上がろうとしたのだろう。しかし、一方通行は一ミリも動かなかったのだ。

 

依姫「どうかなされましたか?」

 

たまらず依姫が訪ねる。

すると、、、

 

一方通行「………俺は後でイイから先にオマエらが入ってこい。オマエ達が風呂を堪能してる間俺は少しここで仮眠を取らせてもらう。だからこの部屋を俺1人に貸して欲しいンだが、良いか?」

 

豊姫「構いませんよ」

 

そして。

女性陣全員がこの部屋を出た。

クラウンピースはサグメが、

橙は藍が、優しく運んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、だ。

 

女性陣は大きな浴槽に浸かっていた。

 

今回の異変により、所々崩れてしまっている場所が多々あるがいつ崩壊するか気が気でならないぐらい心配してしまう程ではなかった。

ほんのちょっぴりではあるが、もう既にこの大浴場には修復作業が施されていた。

とても広い大浴場。

数人程度で使用するのは勿体無いと月の民達は考えない。

そう、誰もが使用できる所ではないのだ。

選ばれた高貴なお方のみが使用できる大浴場なのだ。

藍や橙、クラウンピースは綿月姉妹に承諾されたから、この存分に癒される湯に浸かれている。

 

藍「はあー………生き返るー……」

 

橙「らんしゃまー、だらしないお顔してますよぉ」

 

クラウンピース「どっちもだらしない顔してるっての」

 

とても疲れた体が癒しを求めていたらしく、湯に肩まで浸かり体がぽかぽか温まる。

やはり、お風呂というものは素晴らしい。と考える式神の二人であった。

そんな式神二人を横目に地獄の妖精は鼻息を吐く。

 

豊姫「いつもお風呂は1人だけと、たまにはこうやって複数で入るのも悪くないと思えるな。特に今日はサグ姉と一緒だしね♪」

 

依姫「あっ!お姉様ずるい私も!!」

 

サグメ(体は大きくなってもまだ中は子供だなぁ……。可愛い子達ね)

 

左右で子供のように明るく楽しそうに笑う二人の姫様の様子を見て、サグメは口元を手で覆い表情一つも変化は見られないが、それでも彼女は確かな幸せを感じていた。

 

依姫「そうだ、霊夢や魔理沙は元気にしてる?」

 

そんな質問を依姫は投げかける。

 

藍「霊夢も魔理沙も元気ですよ」

 

豊姫「では、貴女の主様は?」

 

次に質問したのは豊姫だった。

その質問に対して藍は一度、硬直した様子を見せるが次の瞬間に笑みを見せて、

 

藍「いつも通り。とだけお伝えすれば豊姫さんならばそれだけで察していただけますか?」

 

豊姫「ふふっ。今この瞬間、扇子で口元を隠しながら不敵な笑みを浮かべてあの頭の中で複雑な思考をするのに夢中になってるのでしょうね、いつも通りの八雲紫なら。そう、でも良かった。その様子だと他の人達も大きな変化は無さそうね」

 

藍「よろしければ幻想郷に来られますか?皆様にも幻想郷で会いたい人が居るのでしょう?月の復興が進んだら、の話ですが」

 

豊姫「それは良い提案ね。久しぶりに顔を見たい人も居るし、幻想郷の美味しい食べ物も食べてみたいわ」

 

依姫「地上へ行くのでしたら私も御一緒させていただきますよ、私も幻想郷の美味しい食べ物も食べてみたいですからね。しかし、食べた後はしっかり運動してくださいね姉様。最近お腹出てきてますよ」

 

豊姫「依姫ッ!?」

 

サグメ「……………………………」

 

豊姫「サ、サグ姉……?」

 

じとーっ、とサグメが何も言わず豊姫のお腹を見ていたが、次はなんと目を逸らしたのだった。

 

豊姫「サグ姉なんで目を逸らすの!?なんか言ってよ!!なにも言わないってのが一番傷つくよー!!」

 

依姫「姉様。例え姉様がふくよかな体型になっても私は見捨てたりしませんよ」

 

豊姫「なんでそんなこと言うのよ依姫!!しかも優しい目で!!私って太ってるの?」

 

藍「普段どんなものを食してるのですか?」

 

豊姫「あ、甘いもの、とか……」

 

藍「ああ、それで……」

 

依姫「影でむしゃむしゃ食べ続けているの。いくら果物と言えどある一定以上食べたら肥えていく一方。しかも姉様は運動を全然しないからぷよぷよボディの完成よ」

 

藍「ブヨブヨにならないだけ、マシなのでは?」

 

依姫「家族として、そして妹として姉が果物を貪るように食べてる姿を見てると心配になるのよ」

 

藍「あー、それはなんとなく分かります。紫様も橙も栄養バランスを考えずに食べたいものだけ食べていて、栄養バランスを考えて料理を作ってる側としては心配になっていて____」

 

どこにでもあるなんの変哲もない日常会話のお陰ですっかり、依姫と藍は同じような苦労を持つ同士として仲良くなっていた。

その会話での犠牲者となった豊姫は、

 

豊姫「ねぇ!ねぇ!サグ姉はどうなの?サグ姉も私のことを悪い子だって言うの?」

 

サグメ「……………………」

 

彼女はなにも言わなかった。

だが、なにもしなかった訳ではない。

サグメは優しく微笑み、豊姫の頭を撫でる。

 

豊姫「サグ姉………」

 

そして、そして。一方では、

 

橙(それにしても、どこを見てもスイカだらけだな………)

 

まだ、体が小さく幼い容姿の橙は嫌でも視界に入ってしまう“ある大きなもの”を見て、心の中で呟いた。

あと何年、何十年の時を過ごせば彼女達のような大人の女性になれるのかと思う。

たまにではあるが、自分が主様のように成長した姿を想像したりする。

だが、やはりそれはどこまでいっても想像は想像。

妄想にすぎない。

 

そうやって吐き捨てたりするが、心のどこかで本気で思ったりしている。

そして叶えてみせる。

自分が大人の女性になり、藍様と紫様のように成長して、心配をかけないで、次は自分はあのお二方を助ける側となってみせる。

 

橙(………………同じぐらい、だな)

 

隣に座るクラウンピースの胸部を見る。

肩まで湯に使っていて全体を完全に視界にとらえた訳ではないが、『負けてはいない』と確信していた。

だが、橙があまりにもじろじろ見るものだから、彼女がなにを考えているか読み取ったクラウンピースは、

 

クラウンピース「あのね、こう見えてもそこそこあたいもあるほうなんだよ」

 

橙「えっ?」

 

そして。クラウンピースは橙を腕を掴むと彼女の手を自分の胸に当てる。

 

クラウンピース「ほらね?」

 

橙「………………………………」

 

言葉が出なかった。ただ、手のひらから伝わる柔らかい感触から敗北感に………。

 

 

 

 

それからもそれぞれあの血で血を洗うような地獄から解き放たれ豊かで暖かい空間の中で命が奪われる恐怖も無く、穏やかな時を過ごす。

平和はやっぱり素晴らしい。

一生笑って仲良く争いも無い日常が永遠に続いてほしい。

 

時にはぶつかることも必要なのかもしれない。

意思と意思が擦れ違うこともあってもいいのかもしれない。

 

しかし、どんな理由があったとしても命をかけた殺し合いは間違っている。

 

これは“絶対”である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャリ………。

扉の開く音がした。

 

 

藍「一方通行さん……?」

 

ゆっくりと扉を開くとその室内に顔を覗かせる。

彼女は頭部には狐ような耳があり、そして後ろを見てみれば九つの金色の尻尾があった。

藍。八雲の名を名乗ることが許されている式神である。

 

女性の皆がお風呂上がったので、その報告にしに来たのだ。

 

黙って俯いた状態で椅子に座る一方通行に首を傾げる。

確かめるため、 藍は部屋の中へと進む。

そして彼の前でしゃがんで下から一方通行の顔を覗く。

すると、瞳を閉じて寝息を立てて熟睡していた。

 

藍(警戒心の高い一方通行さんがここまで寝ていらっしゃるなんて、相当お疲れになったんだろうな………)

 

ふふっ。と優しく笑う。

誰も彼のこの寝ている姿だけを見たら、絶対に想像もしないだろう。この白髪の若い子が世界を滅ぼしてしまうような力をその華奢な身に宿しているなんて……。

 

藍「こうして見ると、ただの子供なんだけどなぁ」

 

『これは多分、いけないことなんだろう』と思いながらも、藍は行動に移してしまう。

仮眠とは言えど、ちょっとやそっとのことでは起きないのなら、と藍は一方通行の頬へ手を伸ばした。

 

ドキドキドキドキ。

胸が高鳴る。もしも起きてしまったらどうしようと心配しながらも止まらない。

優しい手つきで一方通行の頬を触れていたが、次は彼の真っ白な髪に触れてみる。

 

まだ、寝ている。

 

起きている時は全然触れないのに、今だけは触れ放題なのか?

 

藍(起きない……、起きないなら………)

 

これ以上はさすがにヤバイ。理性が確かにそう告げている。

しかし、自分の本当の気持ちに嘘は吐けない。

私はこの人に恋心を抱いてしまっている。

可能な限り近付きたい。触れ合ってみたい。ずっと一緒に居たい。

 

“彼の特別な存在になりたい”。

 

幻想郷に戻れば数えきれないほどのライバルが居る。

二人っきり、そして一方通行の意識がない。このようなするには絶好な瞬間は、もう2度と無いかもしれない。

 

ここで出さずにどこで出すのだ、勇気を!!

 

 

そして。

胸の前で両手を握りながら、藍は自分の顔を彼の顔へ近付ける。

先程より、心臓の鼓動が加速する。

 

顔が真っ赤にながらも、、、

 

体が震えながらも、、、

 

藍は一方通行の顔へ自分を顔を近付ける。

 

しかし、あともう少しの所で____

 

 

___ガッチャンッッ!!!

まるで、嵐のような勢いで藍と一方通行が居る部屋の扉が開かれた。

 

橙「藍様ーッ!!」

 

藍「うきょわぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

橙「?……藍様、そんなに叫んでどうかなされましたか?」

 

藍「な、なんでもないよ!!!」

 

扉を開く音で驚いてしまい藍は悲鳴を上げて立ち上がり一方通行から離れる。

そして、何もなかったような素振(そぶ)りをするのだった。

 

橙「顔が真っ赤ですよ?それにちょっと泣いてます?」

 

藍「なんでもないったらなんでもないの!!」

 

橙「???」

 

怒ってる?それとも泣いている?

こんな藍を見たことない橙は、落ち着きがない主を見て不思議に思ったいた。

 

橙ちゃん、両方なんだ……

藍は怒ってるし、泣いているんだ…………。

だが君は悪くない。

 

 

一方通行「…………チッ。人が気持ち良く寝てるってのにギャーギャー喚きやがって、ケモミミどもが」

 

藍「あっ…………」

 

橙「あれ?ここってもしかして一方通行様がお借りしていたお部屋だったんですか?」

 

一方通行「だからここに俺が居るンだろォが、クソったれ」

 

そう吐き捨てると、眠そうに欠伸をしていた。

 

一方通行「でェ?オマエらはなにをしにここに来た?人様の睡眠を邪魔しに来ましたァ、とかほざきやがったら太陽系の彼方まで殴り飛ばしてやるぞ」

 

グググッ!!

と、藍と橙を睨み顔の横で力強く拳を握る。

 

藍「いえ、別に一方通行さんがお休みしているところを邪魔しになんてことをするために来たんではないんです。もう皆お風呂を済ましたので、そのご報告を一方通行さんのもとへ来たんです。大きな声を出したことはここにお詫び申し上げます、橙が音を立ててドアを開けるものだからビックリしてしまいました」

 

橙「そうだったんですか。………すみません、全て私のせいです。どうか藍様を怒らないで下さい。お叱りなら、どうか私1人だけに」

 

一方通行「二人して頭を下げるなバカどもが。別にオマエらを本気で殴ろォなンて思っちゃいねェし、そこまで怒ってねェよ。全て偶然で起きちまったことだ。それがさっきの話で分かった。悪意は全くねェンだろ?だったら頭を上げろ藍、橙」

 

式神の二人は『はい』とだけ返事して、頭を上げるのだった。

 

一方通行は片手を首に当てて首を動かし間接を鳴らす。

そして次は椅子から腰を上げる。

 

一方通行「風呂、だっけか。俺は風呂の場所を知らねェ、一度行ったオマエらならどこか知ってンだろ?案内してくれるか?」

 

藍「はい!喜んで!」

 

三人は部屋を出る。

だがやはり、さっきまでアレイスターの手により月の民が暴走していたので、廊下も所々ヒビや穴があった。

 

藍「……そう言えば、何故橙はあそこに来たんだ?」

 

橙「何故って、藍様をお探ししていたんですよ」

 

藍「私を?どうして?」

 

橙「藍様に今の私の姿を褒めて欲しくて」

 

藍「そういうことか。相変わらず橙は見た目も行動も可愛いな」

 

橙「ありがとうございます藍様♪」

 

藍は自分の隣を歩く橙の頭を撫でる。

その様子を一方通行はポケットに両手を突っ込みながら横目で見ていた。

 

藍、そして橙。

彼女達の服装はこの月に来た時の服装から変わっていた。

暴走した月の民達の鎮静化。その時の戦闘により、服が傷んでしまったのだ。

それを綿月姉妹の厚意で直してもらっているため、一時的ではあるが藍と橙は月の民の服を借りているのだ。

だが、それは民族衣装なんて言えるものではない。

どこからどう見ても、女子高校生の制服のようだあった。しかも下はミニスカート。

 

一方通行「……似合ってるぞ橙」

 

橙「やった!一方通行様にもお褒めの言葉を頂いちゃった♪」

 

藍「ああ、本当に似合ってるし可愛いよ橙。食べてしまいたいぐらいだ」

 

橙「ええっ!?」

 

藍「あははっ冗談だ、本気にするな…………半分はな」

 

さらっと最後何かとんでもないことが聞こえたが気のせいにしとこう。

多分、そこら辺に空いている穴から漏れた風の音で聞き間違ってしまったのかもしれない。

 

一方通行「似合ってるってのは藍、オマエもだぞ。オマエが着ていたいつもの格好もイイが、そォいうのも藍なら文句も言えねェぐらい着こなせてるぜ」

 

藍「あ、ありがとうございます。実はこういうのは着慣れていなくて、私が着たら変になってしまってしまうのではないかと不安になっていたんですが、一方通行さんがそう仰ってくださるのなら自信が出てきました」

 

そして。

それからも三人は廊下を歩きながら話をしていたら到着した。

 

 

一方通行「____っと、話をしていたら風呂場に着いたか。ここまで案内ご苦労だったなァ。オマエらはここからは自由時間だ、自由に過ごしてろ」

 

そう言うと1人で一方通行で中へ進む。

すると、まず目に入ったのは脱衣所であった。

そこには今着ている服を入れるカゴが置いてあり、その隣には持つ一つカゴがあり、その中には服を直してもらっている間に着る服が置いてあった。

 

一方通行は着ている服を全て脱ぐと入浴場へ向かった。

そして、まず最初に頭や体を洗う。

それらが終わると、湯へ浸かる。

 

一方通行「……すゥー…………はァー……ッ」

 

息を吸い、そして吐く。

湯に浸かっていると疲れが取れていくのを感じる。

 

一方通行「にしても広すぎるだろ、1人用の風呂とかねェのかよ。つか、俺は風呂ってよりかはシャワーの方が好みなンだけどなァ。まァこの世界ではそれは不可能か」

 

あまりにも広い浴槽にポツンと1人というのは一方通行でも少し思うような所はある。

だが、それは別に寂しいとかそういう感情はない。

別にここまで風呂は大きくしなくたも良いのではないか?とかその程度のことだ。

 

 

一方通行は浴槽の端にいた。

そこで縁に両肘を置いて、瞳を閉じていた。

この状態が一番リラックスできる。

 

____バシャバシャ

 

____ジャバジャバ

 

そんな音がする。

聞いた感じ、水の音だろう。

だがここは風呂場だ。溢れんばかりに湯があるのだ。

そのような音がしても不思議ではない。

 

 

 

「お隣、よろしいでしょうか?」

 

一方通行「こンだけ広いンだ。別にどこでもイイだろ“藍”………………あァ!?」

 

藍「えへへっ、来ちゃいました☆」

 

一方通行「………せめて何か布とか体に巻けよ、丸見えだぞ」

 

後ろから聞き覚えのある声がした。

そしてその声の持ち主の名を無意識に言ったあと、数秒脳が停止したが驚いた様子で一方通行は後ろへ振り向く。するとそこには藍がいたのだ。

 

……しかも、布一枚纏わぬ姿で。

 

藍「前に一度見られてるという事実があるのに、隠す必要がございますか?」

 

一方通行「オマエは女だろォが。男より隠すとこが多いし、裸を見られるのを嫌うモンだろ?」

 

藍「ふふっ、貴方の歳で女を語るにはまだ若すぎますよ?」

 

一方通行「そォかよ。そりゃあ失礼しましたァ」

 

藍「それで、お隣は良いのでしょうか?私も早く湯に入りたいんですが」

 

一方通行「お好きにどォぞ」

 

藍「それでは、お隣失礼しますね」

 

そして、そして。

一方通行の隣に藍は座る。

心なしか彼女には笑みがあり、それが一方通行は気になっていた。

だがそれを直接口にすることはやめた。

 

一方通行「…………さっきの話だが、俺は女を語るには若いと言ったな」

 

藍「ええ、言いましたが。もしかしてお気に障りましたか?」

 

一方通行「いいや、全然。その通りだと思ってなァ。女ってのはどいつもこいつも理解できねェ行動をしやがる、今のオマエのようにな。たまにオマエらがなにを考えているか分からなくなるぜ」

 

藍「一方通行さんはお若いです。ですからこれから色んなことを経験していけば、いつか分かる時が来ますよ。きっとです」

 

一方通行「そォか……」

 

その一言が出た時だった。

 

「藍様ーッ!!私も一緒に入りたいです!!」

 

一方通行「………オマエもかよ、橙」

 

橙「_____って藍様大胆過ぎませんか!?私のようにタオルを体に巻いて下さい!!一方通行様も腰にタオルを巻いて下さいよーッ!!見えてはいけないものが見えてしまいますう!!」

 

藍「タオルは湯につけてはいけない。そのマナーを知らない訳ではないだろ?」

 

橙「は、はい………ですが……」

 

顔を真っ赤にして顔を逸らしながら会話する橙。

 

「今回だけは特別に湯にタオルをつけても良い。そう私が決めればタオルをつけても文句は言われませんよ」

 

一方通行「チッ、次から次へと来やがって。まだ入りたりねェンだったら満足いくまで湯に入ってりゃ良かったじゃねェかよ。俺は別に急げなンて一言も言ってなかっただろォが、なァ綿月豊姫さンよォ」

 

豊姫「貴方と一緒にお風呂を入りたいからですよ」

 

ニコッと笑う一枚だけ体にタオルを巻いただけの姿で一方通行の前に来たのは豊姫だった。

 

一方通行「そォか。だったら茹でタコになるまで湯に浸かっていろ。もォ俺は1人2人増えても気にしねェよ」

 

豊姫「そうですか、では気の済むようにさせていただきます。ですがその前に一方通行様も腰にタオルを巻いていただけませんか?意識しないようにしていてもどうしても気になってしまいまして………」

 

一方通行「勝手に入って来やがったくせに注文するのかよ、お姫様ってのは全員我が儘だなァ、ったく」

 

そう良いながらも背中の方に置いてあったタオルを手に取る。そして器用に座りながらでも腰にタオルを巻く。

 

豊姫「ありがとうございます。では一緒に入りましょうか、橙ちゃん」

 

橙「あ、はい!」

 

何度も説明するがここは大きく広い浴槽。

だが一方通行、藍、橙、綿月豊姫。この四人は一箇所の場所に集まっていた。というよりかは途中から入ってきた三人の少女達が一方通行の所に集まった、というのが正解だろう。

 

一方通行「月に来るのは二度目だ。だが最初来たときはどンな場所か調べる前に帰っちまって正直どンなに頭を捻っても感想は一行も出てこなかった。だが、今なら言える。綿月豊姫、ここはイイところだなァ。また月に来ても良いか?」

 

豊姫「構いませんよ。英雄様ならいつ来ても歓迎いたします」

 

一方通行「そりゃあ嬉しいお言葉だァ」

 

と、言いながらも嬉しそうな顔は一つもしていなかった。

 

橙「私もまた来たいです!本来の月の都に戻った姿を見てみたいですからね!」

 

藍「悪いけど橙1人では行かせないぞ。無事に家に帰れなくなってしまわれたら困るし、迷子になったら探すのが大変だからな」

 

橙「では藍様と紫様と一緒行きます!」

 

藍「そうだな、次は三人で月の都に旅行しに来ようか」

 

豊姫「あらあら、それでは一刻も早く月の都の復興を進めなくてはねぇ」

 

それからも三人の少女はお喋りが途切れることはなかった。しかし、1人だけその会話に参加していないものがいる。

一方通行だ。

だが別に彼は人と話をするのが嫌いな訳ではないのだ。

 

藍「えっ?一方通行さん……?」

 

一方通行「悪りィな、肩を貸してくれ。眠くてよォ、真っ直ぐ座るのも辛くてなァ」

 

疲れきった体がぽかぽかに温まったら眠くなったのだ。だから口数が少なくなってしまっていたのだ。

 

一方通行「ウザくなったら退かしてくれて構わねェから」

 

藍「私の肩でしたらお好きに使って下さい。一方通行さん、今日は本当にお疲れ様でした。今は何も考えないてお休みください」

 

他人に体を預けて寝るなんて今まで一度もやったことない。

しかし。最強と呼ばれ、

怪物と呼ばれ、人間と呼ばれることがなかった学園都市で生活をしていたこんな気分を味わうことはなかっただろう。

 

一方通行(他人に体を預けるってのは、こンなにも落ち着くンだなァ)

 

 

 

そして。彼はまた眠ってしまった。

 

藍「……………………」

 

自分の肩に頭を乗せて眠る一方通行の寝顔を見て藍は頬をぽっと染めながら笑顔をであった。

 

『私は今、女としてとても幸せな時間を過ごしている』

 

藍と一方通行。その二人だけの空間になってしまったいて、

 

豊姫「ええと、藍ちゃんと一方通行様は結婚してるの?」

 

橙「ぜーんぜん違います。あと、それを本人に言わないでくださいね。特に藍様には。蒸発してしまいますし、爆発してしまいます」

 

豊姫「ああ、なんとなく分かってきたわ。もしかして藍ちゃんのような人って結構居るの?」

 

橙「幻想郷に戻れば掃いて捨てるほど」

 

豊姫「橙ちゃんは違うの?」

 

橙「違いますよ。まぁ、一方通行様は顔立ちが良く、素敵な方だと素直に思いますよ、身を挺してまで私を守ってくださいました。意地悪なところもありますし、キツイ言い方をしますが時より見せる優しい部分があるんです。私的にその優しい部分を見せてる時が一方通行様の本当のお姿だと思っておりますが、断じて違います」

 

豊姫「ふ~ん」

 

橙「あっ!違いますよ、違いますからね!?」

 

豊姫「分かってる、分かってるよぉ~」

 

そう言って、豊姫は面白いものを発見したように笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風呂の次は食事であった。

結構長風呂をしてしまい、のぼせてしまったが冷たい飲み物を飲み風に当たったりしてたら頭のボーッとした状態が解けた。

 

藍、橙、一方通行。

その三人は綿月姉妹と一緒に、とても和で宴会をするにはうってつけな部屋で食事する。

サグメはやることがあると、言って断った。

クラウンピースは1人で食事をしたいと言って、1人だけの部屋を借りそこでご飯を食べいるらしい。

 

一方通行「なかなか旨かったなァ、ここの飯も」

 

幻想郷のご飯も美味しかったが、月の料理もなかなか腹と舌を満足させてくれた。

地上と月。環境が全然違うせいか、月料理は変わった味がしていた。

しかし顔を歪めてしまうような味ではなく、箸が止まらなくなってしまう病み付きになってしまう味であった。

魚料理。肉料理。野菜料理。

暴走事件で都は荒れてしまい、いつも以上に貴重となってしまった食料を使って作ってくれた料理を振る舞ってくれた。

だから、だろうか。

橙がいっぱい食べ過ぎてしまい、寝たままで動けなくなってしまい、その近くには藍とが寄り添っていた。

綿月姉妹も橙が心配らしく藍と共に居る。

 

そして、一方通行はクラウンピースの用事があるので彼女が居る部屋へ廊下は歩き向かっている。

 

一方通行「こォいうモンを着るのは何年振りだろォな。学校なンて、片手で数えられるぐらいしか行ってねェし。そもそも制服なンて貰ってなかったからなァ」

 

一方通行も、月に来たときに着ていた服は汚れや破れなどしてしまい、綿月姉妹の使い人に直してもらうため預けている。

それで、彼も月人の副を借りていてそれを着ている。

 

藍や橙のと違い、学生服のような作りではあるが一方通行のは下はズボンである。

本来ならネクタイもあるはずなのだがそれはしていない。

理由はただするのが面倒だからだ。

 

一方通行「…………ここか」

 

教えてもらった部屋の前に到着した。

そして扉を開ける。

 

すると_____

 

一方通行「あァ?」

 

クラウンピース「あっ」

 

____下着姿のクラウンピースを目撃する。

彼女の手には、月の民に修復してしもらったいつもの服があった。

 

どうやら、着替えてる最中に扉を開けてしまったらしい。

また頭がボーッとしててノックをすンのを忘れちまったなァ。と、ここで一方通行が自分の行いに後悔する。

だが『後悔先に立たず』と言葉があるように、後悔したところで取り返しがつくということは無いのだ。

 

一方通行「…………………」

 

クラウンピース「………………」

 

静寂がそこにあった。

 

だが、

 

クラウンピース「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!」

 

高い声がこの建物内に響き渡る。

クラウンピースは顔を真っ赤にしてしゃがんだ。

だが次の瞬間、近くあったものを乱暴に掴み取る。そしてそれを思いっきり一方通行へ投げた。

 

一方通行「オイ、物を投げるなあぶねェだろ。つゥかここ借りモンだって認識できてるかァ?」

 

クラウンピース「変態覗き魔め死ねぇぇぇぇぇ!!!!」

 

なにを言っても無駄だった。

クラウンピースは止まらず、物を投げ続ける。

だが、一方通行は彼女の耳障りな声に耳を塞ぎながら呆れた表情して突っ立っていた。

どんなに物を投げられても怪我はしない。

『反射』がある。『ベクトル操作』がある。

向かって来たものを適当な場所へ行くようベクトル操作をしていた。

しかしクラウンピースは、ついにはテーブルまでも投げしまう。

 

一方通行(チッ、仕方ねェか。まァ意図してなかったとはいえ女の下着姿を見ちまったしなァ)

 

そう心の中で呟くとため息を吐いた。

そして、投げられたテーブルが一方通行に直撃する。

衝撃は凄まじく、廊下の壁まで吹っ飛ばされた。

 

クラウンピース「えっ……?」

 

一方通行「あァ、クソ……痛ってェな。これで満足かァオイ?」

 

クラウンピース「わざと受けたの?」

 

一方通行「そうだよ、クソったれ。とりあえず扉を閉じて、服に着替えろ。そのあと少し話がある」

 

クラウンピースは言われるがままに、扉を閉じた。

そして中で彼女が着替えている間に一方通行はすっかり壊れてしまったテーブルを片付けいた。

 

クラウンピース「着替え終わったよ」

 

一方通行「そォか。なら中に入って話をしてェンだがイイか?」

 

クラウンピース「うん」

 

一方通行は部屋の中へ入る。

すっかり散らかってしまったが、椅子は無事だったのでそこに腰を下ろす。

 

一方通行「まずはすまなかったなァ、着替え途中なンて知らなくてよォ」

 

クラウンピース「レディが居る部屋に入る前はノックは必ずしてよね。次からはしないって約束をできるなら許してやる」

 

一方通行「あァ、もう二度としねェよ。俺ァ記憶力は良くてなァ、絶対約束を忘れねェ。誓ってやる」

 

クラウンピース「なら許す」

 

そして。それで、と続けて

 

クラウンピース「話ってなに?」

 

一方通行「こいつをオマエに渡す」

 

黒いスキマを開く。そしてその中から小さな物を取り出す。

“渡す”と口では言ったが手渡すとは言っていない。

一方通行はスキマから取り出したものをクラウンピースに向かって投げた。

 

クラウンピース「おおっと!?危ないな!投げるなら投げるって言えよ!」

 

一方通行「投げる」

 

クラウンピース「やった後に言ったって意味無いだろ!!こういうのはやる前に言うんだよ!!……で、これは?」

 

一方通行「スマホだ。オマエにもそれを渡しておく」

 

クラウンピース「なんで?これって貴重なものなんじゃない?それにこれは仲間のために作ったものなんでしょ?」

 

一方通行「オマエは地獄の妖精だよな。つまり、地獄を自由に出入りが可能だろ?地獄の様子を知りたくてなァ。その連絡手段として渡しとく。もし、他に仲間が居るならそいつらの分も渡すぞ」

 

クラウンピース「そういうことね。仲間、じゃなくご主人様が居てね。その方は地獄でとても偉い人なんだ。いや、人じゃなく神様か」

 

一方通行「地獄にも神様が居るのか。そいつにもいつか会ってみてェな。……ま、それはいつかでイイ。とりあえず他にも地獄の住人が居ると分かったし、三台ぐらい渡してやる。だが始めに言っておくが、それはオモチャじゃねェ。オマエのようななにか異能を持ち、そして強いヤツに渡してくれ」

 

向かい合うように互いに座っている二人。

一方通行は椅子から立ち上がりまた、スキマを開きスマホを三台取り出す。そしてそれをクラウンピースに渡した。

 

一方通行「それには誰の連絡先も入ってねェ。だから手始めに俺の連絡先を入れてやる」

 

そして。スマホの使い方を教える。

初めて触れる未知の機械。

それに戸惑いを見せながらもクラウンピースは彼の教えをちゃんと聞き、一時間もかからないでスマホの使い方をマスターする。

 

クラウンピース「へぇ~。写真に、メール、通話、だっけ?こんな小さなもので色んなことができるんだ。便利だねコレ」

 

一方通行「強度はあると言ってもそれは精密機械だ。乱暴に使えば簡単に壊れる。大切にしろよ」

 

クラウンピース「はいはい、分かってる分かってるって」

 

鼻歌交じりでスマホを弄るクラウンピースは離れて見たとしても上機嫌なのが分かるだろう。

 

クラウンピース「お前は地獄とも手を組むつもりなのか?アレイスターってヤツを殺すために」

 

一方通行「多くの協力を必要としてるのは事実だし、それを隠すつもりはねェ。だが無関係なヤツを巻き込むつもりはねェ。アレイスターの危害を受けてねェンなら、あのクソったれを知らずにいつもの日常を過ごしてもらいてェ。ただ、もし地獄のヤツらがアレイスターという存在を知りあのクソ野郎をぶっ殺す協力をしてくれるっていうなら俺は迷わず手を組ませてもらうつもりだ」

 

クラウンピース「あたいはアレイスターと言うヤツの顔も知らない。だが、そのクソ野郎のせいで散々な目に遭ったし、お前に協力するつもりだ」

 

一方通行「オマエは俺に協力してくれる。そう思ったからそれを渡した」

 

クラウンピース「ふん、あたいはバカは嫌いだし、変に賢すぎるやつも嫌いだ。だけどお前は嫌いじゃないよ。むしろ好きな方だ。お前と話していると退屈しない、なんでだろうな?他の人間はあたいを退屈させるのに」

 

一方通行「普通の人間とは俺はかけ離れてるからなァ。化け物同士気が合うってのは幻想郷に来て立証済みだ。俺もオマエもなンの力も持たねェ人間からしたら、強大な力を持つ化け物だ」

 

クラウンピース「じゃああたいは化け物でお前も化け物だから、あたいはお前と居て退屈しないの?」

 

一方通行「俺はそう思ってる。戯れ言と処理しても構わねェよ」

 

クラウンピース「……事実だよ。あたいは化け物さ。生者も死者も脅える地獄。地獄というその単語を聞いただけで顔面を歪める場所であたいという存在は誕生した。地獄の妖精。そんなの化け物以外なんだと言うんだよ?そう思うからお前はあたいを化け物と言ったんだろ?」

 

生まれた場所。そして、経験により人格が構成される。

ならば地獄で生まれ、地獄を経験してきたあたいの中には化け物が構成されている。

最狂の妖精。

そう呼ばれたりしている。

 

クラウンピースはそんな自分をたまにだが嫌いになる時がある。

ご主人様はあたいを好きだと言ってもくれた。

両手で抱えきれないほど、大きな愛であたいの身も心も包んでくれる。

 

だけど、思う。

道を歩いているだけで石を投げられ。

存在しているだけで忌み嫌われる人生。

 

この世に生まれたからには楽しく人生を歩んでいきたい。

愉しく可笑しく、生きていたい。

そうしたい。

 

けど、あたいはこれからも多くの人に嫌われる。

地獄の妖精だから。地獄で生まれた化け物だから。

 

『好きで、望んであたいは化け物になった訳じゃないのに……………』

 

そんな事を言ってもヤツらには響かない。

 

所詮、化け物の言ったことだから。

 

クラウンピース「あたいは化け物の自分を受け入れている。だけど涙を流し苦しんで受け入れた訳じゃない。笑って受け入れたのさ。化け物と罵られようとあたいにのすぐ近くにはご主人様が居る、一緒に可笑しく遊ぶ仲間が居るからね。毎日を楽しく生きていられるよ」

 

一方通行「そォだ、化け物であろうとオマエには仲間が居る、助けてと手を伸ばせばその手を掴ンでくれる仲間がなァ。孤高とか孤独なンてものは今時流行らねェよ。どンな人格であろうと、どンなに人間に脅えられようと、どンなに嫌われようとオマエにはオマエを好きでいてくれる仲間の居る。それを忘れるな」

 

クラウンピース「言われなくても」

 

一方通行「スマホに入れる連絡先、それはオマエが大切にしているやつだけを入れろ。俺のようにな」

 

クラウンピース「へぇ~。オマエみたいなヤツでも大切な人が居るンだ」

 

一方通行「あァ、そりゃあ沢山な。幻想郷はどンな手段を取っても守る。だがそれはあいつらが居るから守ンだ。入れ物なンて俺にとっては何の価値もねェ。大事なの中身だ。世界の行く末なンてどうでも良い。俺はあいつらが命を奪われる恐怖を一生覚えずに笑って過ごせる日常をあのクソ野郎から取り戻す。そのために力を使う」

 

クラウンピース「自分の為であり、そして人の為である。化け物のヒーロー、ね。キャハハッ!!なるほど、それは退屈しないわけだ。世の中広しといえど、どこを探してもお前のようなヤツは見付からないだろう。珍しい人間、今までに会ったこともないタイプの人間だ。そりゃあ刺激的なはずだ、愉快なはずだよ」

 

この白い化け物がどういうやつが理解できた。

人間であり、人間でない。

善でないのにヒーロー。

聞いたことも、想像したこともない人間だ。

 

どうしてこいつを気になってしまうか分かった。

本来なら一方通行のようなタイプは嫌いなのだ。

だが新しい好きで珍しい好きな自分だから、一方通行と話をしているた楽しいと思えるのだ。

 

一方通行「俺の大切なヤツの連絡先は必ずも持っている。だからよォ、愉快に笑ってるところ悪いがオマエの電話番号を俺に教えてくれねェか?」

 

クラウンピース「………………はぁ?」

 

一方通行「言ったよなァ、オマエは俺の大切な生徒だ。俺はオマエの教師としてオマエを守ってやる。どンな野郎であろうとオマエに危害を加えようとしたヤツは飛ンで駆け付けて片っ端から粉々にしてやるよ」

 

クラウンピース「平気だよ。あたいは強い。誰かに守って貰わなくても自分の身ぐらい自分で守れる」

 

一方通行「頭の悪いヤツだな。オマエがどれだけ強くても関係ねェンだよ。言ったよな“大切”だって」

 

椅子から腰を上げる。

すると一方通行はクラウンピースの前で片膝を立ててしゃがむ。

 

一方通行「そのスマホを渡したのにはまだ理由がある。それは遠くからでも助けを求められるため、もしも、自分1人ではどうしようもなくなっちまった時に助けを求められるためだ。そして俺がオマエの安否を離れていても確認できる為にスマホを渡した」

 

クラウンピース「…………もしも、あたいが助けてと連絡したらお前は来てくれるのか?」

 

一方通行「当然だろ。真っ先に優先してどこに居ても駆け付けやるよ」

 

その時。

クラウンピースの胸の内が、体が、顔が、熱くなった。

彼の赤い瞳が物語っていた。『嘘偽りは無い』と。

 

化け物に生まれて後悔はない。

こんな自分でも好きになってくれる人が居るから。

 

クラウンピース「ねぇ。そ、それ以外でも?」

 

一方通行「あァ?」

 

クラウンピース「ただ会話がしたいから、とか。会いたいからとかの理由じゃ連絡しちゃ……ダメ?」

 

一方通行「その時によるな。俺が暇だったら相手してやるよ」

 

クラウンピース「絶対だよ。約束してよ」

 

一方通行「約束してやる」

 

クラウンピースは頬を染め、笑ってみせた。

 

そして。

地獄妖精の電話番号を一方通行は手に入れた。

手のかかるクソガキの、

そして、大切な自分の生徒の。

 

クラウンピース「お前はホント変わってるよ。あたいが会ってきたやつらの中で一番だぜ」

 

一方通行「変わってるのはお互い様だ」

 

クラウンピース「初めてだよ。あたいを化け物と知り、化け物だと言いながらも人間扱いされたのは」

 

一方通行「人間扱いじゃねェよ。ガキ扱いだ」

 

クラウンピース「一方通行の登録名『カス』にしてやる」

 

一方通行「そういうところでムキになるからガキなンだよ」

 

クラウンピース「ほんっっっっっとムカつくなお前はよォッ!!」

 

立ってスマホをズボンのポケットにしまう一方通行。

クラウンピースは見上げて口を開く。

すると、一方通行は地獄の妖精の頭の上に手を乗せる。

 

一方通行「助けを求めれば駆け付けてやる。構って欲しけりゃ構ってやる。だからその為にも決してスマホを無くすなよ?」

 

クラウンピース「うるさい!!あたいは大人だ!!そう簡単に物を無くしたりするか!!っつか手を退けろ!!」

 

クラウンピースの頭から手を離すと小バカにするように笑うと一方通行は歩き始めた。

そして扉の前まで行くと、その扉に手をかけた。

だが彼は振り返る。

 

一方通行「オマエの服も修復が終わってるなら俺達のも直ってるだろォし、それを受け取って着替えたら幻想郷に帰るぞ。帰る準備とかあるなら早めにしておけよ」

 

クラウンピース「分かったから、さっさと服を貰って来いよ。そしてその一ミリも似合わない服から着替えな」

 

一方通行「やっぱり俺達気が合うなァ。俺も自分で似合ってねェて思ってたンだァ」

 

そして。

扉を開くと廊下に出る。

しかし、扉を閉じる時、

 

一方通行「向かいに来る。それまで大人しく待ってろよ、“クラウンピース”」

 

クラウンピース「____ッ!?」

 

 

廊下から歩く音が聞こえる。

服を貰いに行ったのだろう。

 

静寂がまた、戻ってきた。

たった一人の空間。

 

そこで地獄の妖精はあの白い彼が最後、自分の名を呼んでくれた事を思い出していた。

 

 

クラウンピース「クソ、初めてだ。なんだよこの気持ちは…………」

 

 

生まれて初めて抱くこの気持ち。

 

これはいったいなんなのだろうか?

 

 

それからも考えるが答えは見つからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廊下に出てから、だった。

 

一方通行「ここはオマエの家だ。だから好きにすればイイ。だが盗み聞きはあまり良い趣味だと言えねェぞ」

 

「一方通行様にお伺いしたいことがあったのでノックでもして入ろうとしたのですが、とても仲良くしていらっしゃったので外で終わるまで待っていたんです」

 

ふふっ。と、扇子で口元を隠して笑う姿はどこかの大妖怪と重なる。

彼女は綿月豊姫。

 

一方通行がこの月に来てから最も警戒している人物だ。

 

豊姫「でも、そんな急いで出て来なくても良かったんですよ?」

 

一方通行「そうもいかねェだろ。ガキの前で殺し合いなンてできるかよ」

 

豊姫「………二人っきりなれる場所があります。ついて来て下さい。あっ、でも二人っきりになった瞬間襲うのはNGですよ☆」

 

一方通行「時と場合による」

 

豊姫「うふふっ、正直なお方。私は正直な方大好きですよ」

 

一方通行「俺はオマエのようなヤツは嫌いだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______ガチャン。

重い扉が閉じる音がした。

 

豊姫「いつもなら月に都全体を見渡せる素晴らしい景色が見えるのですが、ご覧の有り様ですよ」

 

そこは豊姫の自室であった。

彼女の部屋には解放感のあるバルコニーがあった。

そこから見える景色は酷いものだった。

崩壊した建物。荒れた地面。

それらを一生懸命直している月人達。

 

一方通行「こっちは本当の顔を見せている。だからそっちも見せてくれよ“本当の顔を”よォ。じゃねェと幻想郷に帰りたくても帰れねェンだよ、性悪女」

 

豊姫「うふふっ………、くふふふっ…………」

 

口の前に拳を作って口を抑える。

プルプルと体を震わせていた。

笑いを堪えている様子だった。

 

だが。しかし。

いつまでも堪えるということは不可能だ。

必ず、終わりが来る。

 

豊姫「アハハハハ!!あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!」

 

ここまで人は変われるものなのだろうか。

百八十度、顔も雰囲気を変わってしまった。

あの穏やかで優しい皆の綿月豊姫は完全に姿を消す。

 

豊姫「初めてお会いした時からでしたよね。一目で貴方は真の私を見抜いてみせた。心から嬉しかったですよ、本当の私を理解して下さったと知った時は」

 

彼女笑みには、確かな狂気があった。

誰かの能力でそうなったのではない。

薬物のせいでそうなったのではない。

 

これが。

現在、一方通行の前に居るのが“本当の綿月豊姫”なのだ。

 

一方通行「用件はなンだ?オマエは今まで隠し続けていたそのバカ笑いを俺の前に晒してなにがしたい?」

 

豊姫「お話をしましょう。私は貴方を知りたい。私は貴方を知りたくて知りたくて、解析したくて解析したくてたまらないのです」

 

一方通行「……………飲み物はあるか?なにもなしでお喋りってのはお断りだぜ」

 

豊姫「そういうと思いまして、あらかじめ紅茶をご用意していました。甘い果物と一緒に」

 

真っ白なのトレーの上に二つのティーカップにティーポット。そして切られた桃が乗ったお皿。

その食器達はどれもこれも美術品として飾られてもなんの不思議な思わないものだった。

 

そして。

向かい合えるように設置された椅子が2つ。その間にはテーブルがあり、そこに真っ白なトレーを置いた。

 

豊姫「さあ、どうぞ腰をお掛けください。一方通行様」

 

一方通行「チッ」

 

舌打ちをすると一方通行は豊姫が座す椅子に座る。

 

 

一方通行「………………でェ?話をするとしても、何を話すンだ?」

 

豊姫「一方通行様のことを根掘り葉掘りお聞きしたいのですが、それは『月の使者』としての仕事を終わらせてからにさせていただきましょう」

 

一方通行「………………」

 

豊姫はティーポットを取り、それぞれ二つのティーカップに甘い香りの紅茶を注ぐ。

一方通行は黙ってティーカップを取り紅茶を飲んだ。

 

豊姫「この月にも幻想郷同様結界が張られていました。しかし、ある時を境にその結界が破られてしまった。サグ姉が私達の前からお姿を消した時に」

 

一方通行「サグメが自分の能力を制御しきれず、幻想郷に来ちまった時があった。しかも厄介なことに能力のせいで幻想郷から出られなくなる始末だ。そこで俺はやつを月に戻すため強行手段を取った。そン時に俺は結界を破壊しちまったらしいな」

 

豊姫「もしも結界があり正しく機能していたら、暴走玉が月全体にばら蒔かれることはなかったでしょう」

 

一方通行「責任を取れ、ということか」

 

豊姫「幸いにもこれに気付いているのは私だけでしょう。一方通行様は神すらも超越したお力を持っておられます。ならば、新しい結界を張ることも可能なのではないのでしょうか?もしもこの事が他の者にバレでもすれば、また大きな争いの火種となってしまいます。私もそんな事が起きるのはなんとしてでも防ぎたいです」

 

一方通行「元々あった月の結界とは全くの別物、しかも俺好みに設定された結界でも構わないなら可能だ」

 

豊姫「それで構いません」

 

一方通行「そうか………」

 

一息吐くと、だった。

一方通行は徐に立ち、バルコニーに向かう。

 

白い手を天へ向ける。

そして、

彼の背中から真っ白な翼が出現する。

頭上には光の輪。

その姿は書物で見たことある天使そのものだった。

 

豊姫「なんて、綺麗……なんて神々しいのかしら……」

 

一方通行「結界を張った。これで満足か?」

 

思わず、ポロっと口にしてしまった豊姫。

だがその声は一方通行に耳には届いていなかった。

 

そして。

振り返った時にはもう彼から翼も輪も消えたいた。

しかし、これから何があろうと豊姫はあの一方通行の姿を忘れることないだろう。

瞳に、記憶にあの目も心も奪われてしまう一方通行の姿を焼き付けた。

 

豊姫「うふふっ」

 

一方通行「似合わないってのは自覚ある」

 

やることをやったら身を投げるように椅子に腰を下ろし、足を組む。

 

豊姫「まさか、その逆ですよ。すごくお似合いでした。一方通行様のあの姿を私は見たとき、まるで時が止まったような衝撃でした」

 

一方通行「そいつはどうも」

 

ティーカップを取り、また紅茶を飲む。

紅茶よりコーヒー派なのだが出されたのなら仕方ない。

 

そして。一切れの桃を手に取り口の中へと運ぶ。

とても柔らかく、老人の顎でも噛み砕けるほどだった。

甘い汁が口内で弾ける。

幻想郷にも、桃は存在している。

しかしこれは月という環境で育てられたもの。

肥料、土。そういったものが違うだけでいくら同じ果物でもここまで味が変わるものなのか。

 

甘いのは当然のこと、桃という果物は柔らかい食感と知ってはいるが、幻想郷の桃より月の桃を更に甘く更に柔らかかった。

 

豊姫「ッ~!!やはりこの桃は美味しい。これを食べてる時は辛いこと何にもかも忘れさせてくれる」

 

まるで頬っぺたが落ちてしまいそう。と、美味しいそうに豊姫は桃を食し、口の中からその甘い果物が無くなると次は紅茶を飲む。

 

豊姫「ふぅ……結界を張っていただきありがとうございます。これで私の月の使者としての仕事は終わりです。これからは____」

 

口角を限界まで引き上げて笑い、

 

豊姫「_____私一個人として、一方通行様とお話をさせてください」

 

彼女の頭の中ではいったい何がどうなってるのだろう。

常識外れの、規格外過ぎる力。

サグメが一時的に月から姿を消したことと、一方通行が舌禍の女神と面識があり一度だけ月に来たことがある。

前に一度だけ、自分の能力のせいで地上に転送され閉じ込められた事があったが“白い人”が助けてくれたとサグメから聞かされた事があった。

 

それらだけで、あの事件の全貌を把握した。

この白い怪物が結界を破壊した張本人だと気付けた。

頭の回転の速さはあの八雲紫に匹敵するだろう。

 

豊姫「一方通行様、貴方は人を何人殺しましたか?」

 

一方通行「…………この屋敷に居る人間の指を全部使っても数えれねェほど」

 

豊姫「やはり……、殺人鬼特有の目付きをしてらっしゃるから確実に人を殺していると思っていました」

 

一方通行「殺人鬼で、化け物。だからオマエはずっと俺を警戒していた。英雄だのなンだの口では言ってはいるが完全に信じちゃいねェ。そンなの百も承知だった。オマエは俺がどこに居ても監視しようとしていた、違うか?」

 

豊姫「素晴らしい思考速度をお持ちですね。その通りです。助けて下さった人、と存じていたとしても危険な人物だと疑いの目を向けていました。人同士で築かれた世界というものの仕組みは思ってる以上に複雑です。そうと分かっているから我々人は信じるという難しい行動より、疑うという楽な行動を取ってしまう………愚かな生き物ですね人というものは」

 

一方通行「信頼ってので結ばれる前には必ず疑いが入るモンだ。もしも疑うを省いて信頼で結ばれたら、それは軟弱なモンで結ばれた信頼だ。俺はオマエ達に背中を預けられる信頼を築きたかったから、疑いをかけられていても良かったと考えいた」

 

豊姫「一方通行様はまだ十代でいらっしゃいますよね?なのにそこまで考えられるなんて、千年という長い年以上生きてきた私の立場がございませんね」

 

一方通行「謙遜するな。この俺を越えれるほどオマエは賢い、この俺がそれを認めやる」

 

豊姫「ふふっ、ありがとうございます。あなたのような優秀な方にそんな言葉をいただけるなんて光栄です」

 

一方通行「嘘吐け。オマエは俺も含む全ての人間を見下している。本性を裏に隠し一切悟られずに相手を把握し呑み込む、自分が圧倒的有利になるため。オマエは軍隊の指揮を任されているらしいな。綿月依姫は力、綿月豊姫は頭脳として大きな軍隊を動かしている。ってのが俺の見解だ」

 

豊姫「恥ずかしいものなのですね。心の内を声にして言われると……。そう私は多くの命を預けられ指揮を任されております。だから敵味方含めても誰よりも賢くなる必要があった。生憎依姫と違い昔から戦闘は苦手で、私は幼い頃からあらゆる知識を頭の中に叩き込まれました。軍を率いる(かなめ)と育てるため」

 

一方通行「最初からオマエらは多くの人の上の立つ者として生まれてきたのか」

 

豊姫「はい……。多くを救うため、小を捨てる。月人の敵となるものは微塵も残さず殲滅する。誰もを出し抜くため、本心を決して悟られてはならない。辛かった。それは千年以上続き拷問に等しかった。上に立つ者として、上の立つ者の振る舞いをしなければならない。だけど、今は違います。今この瞬間本当の自分になれた。私の本心を見破ってくれた人が初めて現れた。その時、これまで我慢していたものから解放されました。そう貴方と出会うことで……ッ!!」

 

ギュッと胸の前で手を握る。

そして、ズイッと一方通行の方に上体を傾ける。

 

豊姫「私を唯一理解して下さった人よ。私は貴方の全てを知りたい!!こんな気持ち初めてなんです、他人にここまで興味を持ったのはッ!!」

 

一方通行「オマエが望むなら俺を可能なだけ教えてやる。その代わりオマエも可能なだけ俺にオマエを教えろ。これは等価交換だ」

 

豊姫「えぇ、はい、そうですね。そうしましょう。それがいいです」

 

両手を頬に当てているが、彼女の笑顔が見える。

それは純粋だった。しかし歪んでいた。

真っ黒な何かに染め上げられたような笑顔だった。

だが、それが“本当の綿月豊姫”なのだ。

 

そして。

それからも会話は続いた。

月と幻想郷のこれからのことも話したが、多くは二人の話題だらけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「思った以上に長話をしたな」

 

豊姫「そうですね。しかしとても有意義な一時でした」

 

満足そうな表情で一方通行に微笑みかける。

 

一方通行「そろそろ幻想郷に帰らせてもらう。俺の電話番号は既にオマエ達のスマホに入れてある。また話てェことがあったら連絡しろ、出来る限り答えてやる」

 

豊姫「まあ!では毎日掛けさせてもらいますね」

 

一方通行「スマホ取り上げてやろうかクソアマ」

 

どのくらいの時間話をしたのか確かではないが、長く座っていたのは事実だ。

その為、ずっと同じ体制でいたので立ち上がるとき少し困難ではあったがなんとかよろけず立ち上がる事に成功する。

 

一方通行「俺もオマエの電話番号を持っている。こちらかも連絡することがあるからその時はしっかり出ろよ」

 

豊姫「はい。この度のことは言葉で表せられないほどとても感謝しております。無事、ご帰宅できるよう私は願っております」

 

一方通行「なにも起きねェよ。ただ帰るだけだ」

 

豊姫「家に帰るまでが遠足ですよ?ご存じてはない?」

 

一方通行「…………そォだな。油断せず、警戒して帰るとする」

 

そして。

白い彼は豊姫の部屋から出た。

 

豊姫「………………」

 

バルコニーへと足を運ぶ。

そしてまた、月の都の様子を眺めていた。

しかし都の心配などこれっぽっちもしていなかった。

 

彼女の頭の中は一方通行ことでいっぱいだったのだ。

 

豊姫「嗚呼……、一方通行様、一方通行様、一方通行様。お美しい方、素晴らしい方、魅力的な方。私は貴方に心奪われてしまいました」

 

両腕を広げ天を仰ぐ。

 

豊姫「いつか、あなたを奪ってみせます。そして私だけのものとして誰にも見付からない所に幽閉して、二人が運命を共にするまで一生お話をしていたい。うふふっ、くふふはははっ!」

 

___コンコン。と、ノックされた。

 

そして、

 

「姉様。入りますよ」

 

豊姫「………良いわよ」

 

いつも腰に刀を差した豊姫の妹。

 

依姫「地上の者は帰るそうです」

 

豊姫「そう。報告ご苦労様」

 

振り返った時にはいつも綿月豊姫に戻っていた。

そう、皆の綿月豊姫に。

 

依姫「その、それで姉様。スマホを誰に配るか、なのですが。姉様のご意見もお聞かせ下さい」

 

豊姫「もう誰に配るか私の中で決まってるわ。これから名を上げるものに渡してちょうだい」

 

月は月で動き始める。

それは新しい風を起こすだろう。

そしてその風はどんな猛威も跳ね返す防壁となる。

 

新しい風を呼び込み進化する。

 

さあ、生まれ落ちてた時から背負った使命を果たそう。

 

役目を果たそう。

 

民を救え。敵を殲滅しろ。

平和が脅かされることもない生活を民に授けてみせろ。

 

民を導く者ならば。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして。一方では、

 

直して貰い、綺麗になったいつもの格好に戻っていた四人。

一方通行。藍。橙。クラウンピース。

 

彼ら彼女らは、都から離れた灰色の地面の上に立っていた。

 

一方通行「今回で大きな収穫を得れた。これは喜べる事だな。面倒なヤツで、話をしてるだけで虫酸が走るが八雲紫に続いて二人目だ、下手したら俺を越えている頭脳を持ったヤツに巡り会うことも出来た。アイツはイイ。今後も利用できるぜ」

 

藍(誰なんだろういったい……?)

 

地上に居る紫には連絡していた。

幻想郷に戻る、と。

 

すると幻想郷と月を繋げるためその場で待ってほしいときた。

今になって思うのだな、地上から遠く離れた月からでも連絡を可能とするその幻想郷産のスマホはそれまて存在していた携帯電話の常識を覆している。

 

にとりは言った。

このスマホは太陽系から出ても、全く異なる世界に行っても連絡を取ることが出来ると。

平気な顔して使っているが、これは後世に残すべき技術だと思う。

 

一方通行「あン?」

 

紫がスキマを開いてくれるまで待っていたら、ピカッと正面に球体の光が現れる。

が、それが消えると小さな機械が地面に落ちる。

 

『遥遥月まで来て私の計画を阻止するとはご苦労だったね。一方通行』

 

一方通行「……アレイスター=クロウリー」

 

録音機だった。

つまり、アレイスターは最初から一方通行がこの月に来ることはお見通しだったのだ。

もう既に結界が張られている。その結界は一方通行が認めなければ弾かれてしまう。

だが、これは結界を張った後に前に転送された。

 

聴いてるだけ拳に力が入る。

 

『だがこれも私の計画通りなんだ。これは強がりではない。今回は私は必ず勝利できると確信している。その理由を教えてやろう、今の私は機嫌がいいからね』

 

そして。それからも録音機はアレイスターの肉声を流す。

 

『____________________________________________________________________________________』

 

橙「嘘……だ。こんなの嘘に決まっている……。すべてデタラメ、そうですよね藍様!?」

 

藍「……………………」

 

クラウンピース「クソ野郎だ。こいつは邪悪から生まれた正真正銘のクソ野郎だ」

 

嘘か、本当かまだ確めることは出来ない。

だがもしも学園都市統括理事長の言ってることが本当ならば、、、、

 

橙「私達は誰もかけることなく、あの楽しく皆が過ごせる日常を取り戻そうとしていたのに……、それなのに、どうして、どうしてこうなるの!!うわぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!」

 

涙を流し、膝をついて橙は泣き崩れてしまった。

藍はなにも言葉が出てこなかった。

クラウンピースは今まで抱いたことのない嫌悪感に襲われる。

 

そして、一方通行は何一つ声も発することなく録音機に近付く。

 

一方通行「クソったれ………」

 

小さい声だった。

 

一方通行「クソったれが………」

 

だが、録音機を手で拾い上げる。

その手に持つ機械を握る力が増す。

 

ミシミシミシミシ………。

軋む音がするが、そんなのお構い無しだった。

 

一方通行「クソったれがァァァァァァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

全力だった。

能力までも使って握り締めた物を地面に投げ付ける。

月全体が振動する。

だが怪物は止まらない。

 

一方通行「アレイスター!!アレイスター!!アレイスタァァァァァァァァーッ!!!!」

 

藍「お静まり下さい一方通行さん!!これ以上は月がもちません!!」

 

粉々になっても一方通行は録音機の破片を何度も踏みつける。

彼の体が地面に吸い込まれていく。

大きな穴が底へ底へと深くなっていった。

 

一方通行「クソ……、クッッソォォォォォォォッ!!」

 

背中を藍に抱き締められた時、一方通行は止まった。

そして空間を揺らす咆哮を轟かせた。

 

受け入れられない敗北。

最初から“その違和感”に気付いていたら結果は変わっていたのかもと言っても過ぎたものはどうすることも出来ない。

 

一方通行「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!」

 

こうなってしまえば無力なものだ。

本気で皆を守りきれると信じていた。

 

しかし、、、

 

 

気づかないうちに一方通行の手から守りたい大切な人が溢れ落ちてしまった。

 

守りきれなかった。

“この物語が始まった時から”あのクソ野郎の思惑通りになるしかなかったのだと痛感させられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷。そこは博麗神社。

その中に一方通行達は戻ってきた。

 

霊夢「すごっ、早く終わらせて来たわね。アンタ達も本気出しすぎじゃない?まっ、月人相手は本気でやらなきゃ命が危ないからまあ当然か。疲れたでしょ?アンタ達が月に行ってる間地上で何が起きたか話したいから疲れを取るついでにここで寛いで良いわよ」

 

魔理沙「そうだそうだ、聞いてくれよ一方通行。私は頑張り過ぎて肩に大きな穴が空いちまったぜ。永琳からは無茶し過ぎって何時間も説教されちまったよ、あははっ……散々な日だったぜ」

 

紫「…………どうしたの?浮かない顔をしてるけど?」

 

畳の上に置かれた和風な作りされたローテーブル。

そこに座るのは、霊夢、魔理沙、紫達。

 

一方通行「紫、クラウンピースを地獄に帰してやってくれ」

 

紫「え、えぇ。分かった……」

 

そして。紫はスキマを開いた。

 

一方通行「クラウンピース、オマエは地獄に居ろ。絶対そこから出てくるな」

 

クラウンピース「はいよ。一方通行、お前は出来ることをしろ。黙ってやられるがままなんてあたいは許さないぞ」

 

一方通行「…………」

 

地獄へと繋がるスキマを潜り、地獄の妖精は自分の世界に帰る。

 

紫「さっきのはどういう意味なの?一方通行」

 

一方通行「それを今から話す」

 

橙は藍の腕を掴み黙ったままだった。

藍は俯いたままだった。

 

 

霊夢と魔理沙は一方通行に不思議そうな顔をしていた。

 

そして。そして、だった。

白い彼は口を開く。

 

一方通行「………霊夢」

 

霊夢「なに?」

 

一方通行「俺は、オマエを_____」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「_____“殺す”」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

一方通行から衝撃的な言葉が飛び出してきた
しかし冗談ではない
白い怪物は本気で霊夢に確かな殺意を向けていた


次回・第四章・第十一話『絶対禁忌』


博麗霊夢は初めて“死”を経験する。






私のサプライズプレゼントは喜んでくれたかな?喜んでくれたらなによりだ

逆さまの“ヤツ”は嘲笑う

結末を知った風に…………。
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