幻想郷を一方通行に   作:ポスター

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【絶対禁忌】(前編)


※絶対に誤字脱字などのミスが多々あります。
それをご了承のうえ読んでいただけると助かります。
しかし、そういったミスが多いのをご不快に思う方にはブラウザバックをオススメします。


11話

 

 

 

 

「霊夢。俺はオマエを殺す」

 

 

 

 

魔理沙「……………はぁ?」

 

 

 

そこには戸惑いがあった。

地上。幻想郷。博麗神社の一室で一方通行の帰りを待っていた紫、霊夢、魔理沙の三人は白い彼の放った言葉に硬直していた。

しかし、黙ったままではいられなかった魔理沙が最初に口を開いた。

 

白黒の魔女はその後も続いて、

 

魔理沙「____あのなぁ……、冗談でもそういうことを口にするもんじゃないぜ。一方通行、お前はすぐに死ねだの殺すだの言うが、こんな状況下では特に笑えない冗談だぜ?」

 

一方通行「……………………」

 

紫「………一方通行。なぜその決断に至ったのか説明して。私達が理解出来るように、そして納得できるようにね」

 

魔理沙「おいおい紫。軽い冗談にそこまで反応するなよ?」

 

紫「バカは黙ってなさい。私は一方通行と話がしたいの」

 

八雲紫の表情は真剣そのものだった。本気だったのだ。

それは一方通行も同じである。

 

魔理沙もそれには気づいていた。

白と黒の魔女も頭の回転が鈍いわけじゃない。

紫と一方通行の話は笑顔なんて見せられないほどとても深刻なことなのだろう。

真面目な話を他者が言い出したら大人しく聞くことにする。不真面目なことは口に出さない。そんな弁えぐらい魔理沙はある。

借りたものを返さないとか、許可もなしに他人の家に侵入するなど数え切れないほどやってきた。

しかし、皆が思ってるほど魔理沙は非常識な人間ではない。

 

だがそれでも受け入れられなかった。

これから仲間内で“殺し”が行われるかもしれないということが。

 

一方通行「月でアレイスターの声が収録されたボイスレコーダーが新たに送られてきた。その収録内容をオマエらに伝える。そうすればオマエらも気付く、反吐が出るクソったれな現状を。俺達は最初からアイツの手のひらで踊らされていたことを、あのクソ野郎の計画通りになっちまったという事実をなァ_____」

 

 

そして一方通行はアレイスターから送られた録音機の内容を話すのだ。

 

 

本当に本当に、受け入れ難い残酷な現実を。

 

包み隠さず全て。

 

例えそれで誰かを傷付けてしまっても。

 

それでも、話すのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如、目の前に転送されたボイスレコーダーからあの忌々しい学園都市統括理事長の声が流れ始める。

 

 

『___幻想郷であの暴走の騒動が起こる一年以上前から既に幻想郷に私は攻撃を仕掛けていた。お前達が生活している幻想郷は私には不快と思うほど邪魔な存在だったからね。だからまずは幻想郷を跡形もなく破壊する前に絶対私に歯向かってくるであろう幻想郷の住人を一人残らず駆除しようと考えた。でも言葉で言うのは簡単だ、しかし実際にそれをするというのは想像してる以上に困難を極める。大量の破壊兵器、そして武装した大量の兵隊、この二つを幻想郷に送り込むのにもこちらに相当なコストがかかってしまう。そこで私はコスト削減するため低コストで作製できる新兵器を開発した。それは一度、目標(ターゲット)をセットすればそこからは勝手に自動で目標(ターゲット)を殺害する兵器。対象に気付かれず暗殺に特化したものだ。それが君たちがよく知るもの。そう、あの『黒い球体』さ。私はそれに贈り物(イヴ)と名付けた』

 

やつが話しているのはあの“黒い玉”のことだ。

一方通行が『暴走玉』と呼称したが正式名称は『贈り物(イヴ)』というらしい。

しかし、なぜ贈り物(イヴ)と名付けたのか?

そう疑問に思ったときご機嫌な声色でやつは語り始める。

 

『____最初は記録に残すつもりはなかった兵器だっため、特別な名など付けるつもりはなかった。当初は隠密特化暗殺兵器とその(まま)の意味で呼んでいた。では、なぜ隠密特化暗殺兵器を贈り物(イヴ)と呼ぶようになったのか?それは開発した私でも予想だにしていなかった効果を発揮したからだ。それが幻想郷の諸君らも体験したもの、あらゆる力を強化するというものだ。これには私も頭を悩まされたよ。しかし本来の目的である“殺害”という機能も備わっていて、この兵器を埋め込められれば暴走して“忌々しい”幻想郷を幻想郷に住む奴等が勝手に破壊させてくれるオマケ付きときたものだ。幻想郷を滅ぼしたいと考えている私にとってはこれはこれで都合が良いため使用することにした。埋め込められれば即座に暴走するもの。埋め込められても即座に暴走はせずこちらがスイッチを一つ押せば暴走するもの。そして、その2種に加え『贈り物(イヴ)』を埋め込められた対象をこちらで遠隔操作できるもの。この3つのタイプの隠密特化暗殺兵器も製作した。私はとても慎重な性格でね、どんな予想外な事態が発生してもそれに対処できるよう配慮しておいたのさ。『備え有れば憂い無し』。ははっ、これは名言だな______』

 

それから愉快に笑う声が聞こえる。

ヤツのことだ。

きっとこちらがどういう顔をして聴いているのか頭の中で想像できているのだろう。

 

『______じわじわと死に近づきながら、力が強化されていく。そして強化された力を(もち)いて己の手で自分の世界を破壊する。我ながら恐ろしい兵器を開発したとしみじみ思うよ。隠密特化暗殺兵器・贈り物(イヴ)、これを私は幻想郷に住まう妖怪や神や人間など、例外なく“全てのやつら”の体内に埋め込んだ。重要なことだからもう一度言おうか、“全てのやつら”だ____』

 

“全てのやつら”。

この言葉を聞いて嫌な予感がしたと一方通行は語る。

 

 

『___お前達の中に一人だけまだ暴走してない者が居ないか?博麗の巫女“博麗霊夢”。彼女にも他のやつら同様贈り物(イヴ)を埋め込めこんでいた、しかもそれは一年以上前からだ。贈り物(イヴ)は2ヶ月以上体内にあればどんなに特別な存在であろうと死が確定する。博麗の巫女こそが幻想郷の住人の中で一番最初に学園都市の攻撃を仕掛けられていたんだよ。彼女は幻想郷の住人の中で一番学園都市にとって脅威となりうる存在だったからね。この話しを信じるか信じないかはお前ら次第だ。これを嘘だと思い無視するのもいいし、本当だと思うのなら早めの行動をおすすめするよ。そうだな、博麗の巫女を殺すか博麗の巫女が自分自身を殺害する前になにかくだらない話をしたりとかな。そのぐらいの猶予(ゆうよ)はくれてやろう。この録音された音声が終わってから1時間後にスイッチが作動する、そうすれば博麗霊夢は死が確定されながらも暴走するだろう。言っておくが生かして助けるなんて手段はないぞ?贈り物(イヴ)の影響で現時点では生命活動を維持できているが暴走を止め贈り物(イヴ)を取り除けばお前らは既に知っている通りその肉体は死体に変わる。それは決して避けては通れない運命。覆すことなど不可能な定めだ。最後に言っておく_____』

 

 

 

 

____覚えておけ、私は持てる全てを使いお前らとお前らの幻想郷を滅ぼす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「……ま、待てよ。なんだよ……それ……?」

 

一方通行「説明した通りだ。霊夢の体内にもあの黒い玉っころが埋め込められている。そして、これから霊夢は暴走者となる」

 

魔理沙「ヤツの……、アレイスターの、敵の言葉を信じるのか?口から出任せかもしれないだろ?」

 

紫「……信じられない。けど、無いとは言い切れない」

 

一方通行「俺は最初これを知らされた時、怒りのあまり暴れちまった。みっともなくな。だが、その後冷静になりヤツから出た嘘だと疑った。でも嘘だと思いそのまま放置するわけにもいかず一応確認することにした。霊夢は学園都市側からすると喉から手が出るほど欲しい人材。“鍵”だからな____」

 

一方通行はズボンのポケットからスマートフォンを取り出し、そのスマートフォンの電源を入れてから指で画面を操作する。

そして。“ある者”から送られたメールの内容を画面に表示させたらスマートフォンをこの場に居る全員が囲んで座っているテーブルの上に乱暴に投げた。

 

一方通行「___しかし、もしも学園都市(ヤツら)がもう既に鍵を手に入れていたら霊夢は用済みだともこれは言えねェか?」

 

紫「………まさかっ!?そんなっ!?」

 

一方通行の言葉に一人だけ反応する。

それは八雲紫だった。普段の彼女は如何なる時も冷静で、どのような問題が起きても表情一つ変わることはない。

しかし、あの大妖怪は声を上げて冷静さなんて欠片もない様子だった。

 

一方通行「紫、“そのまさか”だ。木原のクソ野郎に霊夢は誘拐されはしたが俺達は幻想郷に連れ戻すことに成功したあの日の後、永琳に依頼したよな?霊夢の体を隅々調べろ、と。俺達はあの時同じ不安を感じていた」

 

紫「で……、でも!!霊夢の体には異常はなかったって、 目立った外傷は1つもなかったじゃない!!」

 

一方通行「俺達が見たのは1回目のカルテだったらしい。アレイスターのクソ野郎から送られたボイスレコーダーを聞いた後にすぐに永琳に尋ねたら診察は計5回したらしい」

 

紫と一方通行だけの会話。

藍、橙、霊夢、魔理沙はその会話について行けず黙って聴くことしか出来なくなっていた。

 

一方通行「そして、その俺達が知らない4回の診察の中で見付かったそォだ。脇の下に“刺し傷”がな。まるで細いもので刺されたような傷。永琳はそれを“注射針”で刺されたものだと断定していた。まさか脇の下とはなァ、奴らも考えたンだろ本当の目的がこちらに悟られないようによォ」

 

冷たく、だがハッキリと一方通行は次に言い放つ。

 

一方通行「ヤツらはある意味、霊夢を学園都市に連れ去ることに成功していた。ヤツらは手に入れていたンだ、霊夢の“DNAマップ”をな」

 

紫「……そう、そうなのね。だからあの時は終わり方があっさりとしていたの。………封印された技術。禁忌。命を冒涜する行為_____」

 

八雲紫は珍しく頭を抱えていた。

しかし。だが。

その後、彼女の中で怒りが爆発した。

 

紫「____ゴミどもがッッ!!御坂美琴に続き次は霊夢の細胞情報を使い“アレ”を作りやがったっていうのかッ!!!!」

 

藍「紫様………」

 

長く、とても長く支えてきた八雲藍ですら初めて見た、声を荒げ物に当たるほどの激怒する主の姿。

 

一方通行がテーブルの上に置いたスマートフォン。

その画面には八意永琳から送られた、霊夢の診察結果が映されていた。

 

もう、確信した。

恐れていたことが起こってしまったのだ。

一度動き出してしまった歯車。

最悪な状況。

物に当たってもそれで物事が解決することはない。

地団駄を踏んだ所でこの身の内で激しく燃え盛る怒りの炎が鎮火されることは絶対にない。

 

紫「………鍵が既にアレイスターの手中と言うのなら霊夢が死んでも何も痛くない。ならば、アレイスターの言葉も嘘と断言できず、真実と捉えるしかない……わ。一方通行、これからの事でもっと深く話し合う必要があるわよ」

 

一方通行「先のことを見れるのはご立派だがなァ、その前に目の前の問題を_____」

 

「___ちょっと待ったァァァァッ!!!」

 

紫「………なに?」

 

大声を上げて二人の会話を中断させたのは、白と黒の魔法使い・霧雨魔理沙だった。

 

魔理沙「『なに?』じゃないぜ!何がなんだか分からないから大人しく黙っていたが、私達を置いて二人だけで話を進めすぎだ!私達のことも忘れないでくれよ!?」

 

紫「魔理沙………。これは貴女の知らなくて良いことよ黙ってなさい」

 

魔理沙「知らなくていいこと?黙ってろ、だと?ふざけんなよ紫!!バカな私でも分かるぞ!お前らが話してることは幻想郷のこれからに関わってるとても重要なことなんだろ!?私の大事な親友の霊夢が関係していることなんだろ!?黙ってなんか、蚊帳(かや)の外になんかされてたまるかよ!!」

 

紫「でも……これは………」

 

大妖怪の彼女とて、話せることは全て話したい。

魔理沙の性格は良く知っているつもりだ。

だが、話したくても話せない。

 

知らなくてもいいことはある。

いままでの八雲紫ならば淡々と平常心のまま、残酷な現実を告げることができた。

他者がどうなろうと、自分の発言で他人を傷付けしまってもほくそ笑むだろう。

だがもう違う。

 

霊夢や、魔理沙は仲間だ。

八雲紫は『大事な仲間』を傷付けたくないのだ。

 

しかし。

 

霊夢「紫……、頼むわ。アンタ達が話していたことを私達でも理解できるように説明してほしい。私が関係していることなんでしょ?自分のことよ、私は知りたい。例え残酷な現実を突きつけられても私は挫けないわ。今日まで一緒に戦ってきて、前よりもずっと距離が近くなったじゃない。大丈夫。私は、私達はそれほど弱くない」

 

紫「………霊夢。だけど……」

 

一方通行「それだけの覚悟あるなら話してやれよ。まァ、最初から俺は話すつもりだったがな」

 

紫「……分かった。良く聴きなさい____」

 

固く握られた両手をテーブルの上に乗せる。

今から話されることを聞いて確実に彼女は後悔するだろう。

 

紫「___霊夢が拐われた日を覚えてるかしら?学園都市の人間が幻想郷に入るためには、能力者、無能力者問わずどんな人間でも幻想郷に入れるよう製作した大型な特殊装置を使わなくてはならない。だけどその装置は起動するのに莫大な電力が必要とされるため、その装置を何度も何度も使用するのは学園都市側は難しいの。だから学園都市の連中は幻想郷を自由に出入りすることが可能な博麗の巫女である霊夢を誘拐をした。霊夢が有する博麗の巫女の力を利用しようとしたのね」

 

魔理沙「あぁ、それは知ってる。だが霊夢は取り戻したし、博麗の巫女の力も奪われてなかっただろ!?」

 

紫「そうね。私達全員そう思っていた。けど、本当は奪われていたのよ。奴らには“アレ”があるから……。絶対能力進化計画(レベル6シフトけいかく)って、覚えてる?一方通行が学園都市に居たとき、一方通行を中心に行われていた実験よ」

 

藍「学園都市では超能力にレベルというものがあって一方通行さんは7人しか存在しない超能力者(レベル5)でありしかも序列は第一位。そんな一方通行さんの能力を更に上の段階へと進化させる計画の名が絶対能力進化計画(レベル6シフトけいかく)。そして、その実験内容は超能力者(レベル5)第三位の武装したクローンと用意された二万通りの戦場で戦闘をして、そしてクローン二万体を殺害することで未だ誕生せず誰も到達していない絶対能力者(レベル6)へ一方通行さんは進化する。でしたよね?」

 

魔理沙「藍……お前マジか。まさかそこまで詳しく覚えてたのか、スゴイなその記憶力ちょっと羨ましいぜ。それで?それが今回の件と何が関係してんだよ?紫」

 

紫「藍が話してくれた話の中で注目すべきは“クローン”というワードよ。学園都市にはオリジナルと比べると劣るが瓜二つの人間を機械で作る技術を持っているの」

 

魔理沙「………ッ!!まさかっ!?」

 

霊夢「私達が気付かない内に私にそっくりな人間を学園都市は作っていたってこと……?」

 

紫「……えぇ。クローン製造には作る対象となる確かな細胞情報を必要とされる。爪やら髪の毛などからそれは得るのことができるの。だけど一番効果的でより正確にクローン製造を可能とするために必要とされるのは……………“血液”」

 

一方通行「木原の野郎は幻想郷に来た日、霊夢の博麗の巫女の能力を欲して人間の里で騒動を起こし異変解決を率先して行う霊夢を誘い出そうとしていた。だが、その前に霊夢と人里で遭遇し、麻酔薬の入った弾丸で霊夢を撃ち込み意識を奪うことで霊夢を学園都市に連れ去ることに成功した。そしてその後、俺は霊夢奪還のため学園都市に単独で乗り込み、無事に霊夢を幻想郷に連れ戻せた。だが、もォその時には遅かったンだ。奴らの真の目的は“霊夢の血液”だった。それを幻想郷側(こちら)に悟られないようにあれだけ事態をあえて大きくした。ってのが俺が考えたあの日の真相だ」

 

橙「あのー……、このようなお話に私が口を挟むのは無礼だと思うのですが、一つ疑問あります。霊夢さんのクローンを製造したとしても、そのクローンに博麗の巫女の力は宿るのでしょうか?」

 

紫「良い質問ね橙。そこは学園都市側もぶっつけ本番やってみなきゃ分からなかったことだと思うわ。けど超能力者(レベル5)第三位、超電磁砲(レールガン)という名で呼ばれている能力を持つ電撃使い(エレクトロマスター)の“御坂美琴”という成功例があったからほぼほぼ確実に博麗の巫女の力も発現すると結論付いていたのでしょうね。そしてやった結果、霊夢のクローンにもオリジナル同様博麗の巫女の力が発現した。だから今回のように学園都市から刺客を送り込めたのでしょうね。以前より断然結界は強化されていたのに、それをいとも容易く突破できたのは博麗の巫女の力を使ったから。こちらの力でこちらの結界を破る。あのクソったれが考えそうなことよ。違和感は最初から感じていた。なぜ、霊夢だけが黒い玉を埋められていないのかって。そうよ、考えればこうなるかもしれない予想はできていたのに………、それなのにそれに気付けず後手に回ってしまった結果、私達は窮地(きゅうち)に追いやられてしまった」

 

スキマを正面に開くと紫は暗部のやつらから回収ものを取り出しテーブルに並べた。

それは『シルバーリング』。

暗部のやつらが腕に装着していたものだった。

 

紫「……………これがやつらの狂気の実験で作られた学園都市なりの『幻想郷の鍵』ってところね。このリングを見たとき、何か私の力に近いものを感じてはいたけど、まさかね……」

 

魔理沙「霊夢のクローンを作り出し、そのクローンから博麗の巫女の力を何らかの方法で抽出して、その腕輪に組み込んだ。ってことか?」

 

紫「………違う。違うのよ魔理沙。そんな“優しいやり方”、やつらはしないわ……」

 

もう、八雲紫は気付いてしまった。

暗部のやつらが腕に巻いていた『シルバーリング』がどうやって製作されたか。

 

『シルバーリング』を見た時。そして、結界の守りを強固にしたのにそれを容易く突破して刺客を送り込めたことにずっと疑問を感じていた。

しかし。しかし、だ。

それはまるで埋まらないピースを探している感覚であったが、今さっき確かに紫の脳内ではピースが完全に埋まった。

 

紫「あいつらは嫌ってほど合理的で、誰も成し遂げなかった“成果”を手に入れるためならどんな残酷なことも厭わない。どんなに後ろ指をさされようと、幾万の大罪を犯してもなお、なおやるのよ。学園都市の狂った科学者達は…………」

 

魔理沙「?」

 

テーブルに乗せた紫の両手に力が入る。

『もうこれ以上は………』と、説明をしたくない気持ちが膨れ上がる。

しかし。しかし、である。

彼女達の覚悟は既に確認済みだ。

だから、だ。紫は奥歯を噛み締めた後に彼女達に伝える、、、

 

とても残酷な……真実を。

 

紫「この銀色の腕輪の正体はね……。霊夢のクローン“そのもの”よ。霊夢のクローンを生成したらどこに博麗の巫女の力が宿っているのか、学園都市の科学者は何体何十体何百体の霊夢のクローンを解剖をし、研究に研究を繰り返しデータを取り続けそしてそれを積み重ねていって学園都市オリジナルの“幻想郷の鍵”を創ることに成功した……。その成功の結果がこの腕輪なのよ」

 

その瞬間この空間には静寂が訪れた。

そして『シルバーリング』の正体を知った彼女達には衝撃が襲いかかる。

 

魔理沙「なんだよそれ……?ウソ……、だろ?それは本当なのか!?」

 

否定ができるのなら是が非でもしたい。その真実を。その存在を。

魔理沙はそう考えていた。

だがこういう時の紫は嘘を吐かない。

 

魔理沙「いくらクローンといえど、そこには確かな命がある……。作り物だとしても人間ってことは間違いないんだろ!?それなのに……ッ!!それなのにか!?どこまて腐ってやがるんだ学園都市の連中は!?学園都市統括理事長アレイスター・クロウリーは!?」

 

一方通行「他の世界を住人ごとぶっ壊そうって連中だァ。そンなことォするクソったれどもはまともな思考はしちゃいねェ、例え元は善人だったとしても学園都市の大きな闇に心身(しんしん)染まっちまったヤツァどいつもこいつも性根は腐りに腐ってやがる。俺は何度も見てきた、やつらは平気な顔をして人を形をしていてもバラバラに切り刻み愉快に命を(もてあそ)ぶ。そして、自分達の求めた成果とやらを手にする為なら目の前で誰が泣き叫ぼうと殺すぞ。それが俺達の敵だ。覚えておけ」

 

その場は冷たく静かな空気に包まれた。

体内で流れる血の音が、心臓の音がよく聴こえる。

 

衝撃に押し潰され静寂が支配した場で、だ。

 

霊夢「自分でも気付かないほど私は学園都市(やつら)にとって貴重な存在だったのね。だけど学園都市(やつら)にとって私はもう生かしておく価値はない。あっちはあっちで幻想郷の鍵は既に入手しているんだから。しかもそれは、ふっ……簡単に大量生成できるんだもの。そう……、だから黒い玉が私に埋め込められてるということは嘘と断言できない………か」

 

魔理沙「霊夢……」

 

紫「そうよ霊夢。黒い玉は確実に貴女の体に埋められている……一年以上前から贈り物(イヴ)が」

 

まともに霊夢の顔が誰も見れずにいた。

これから絶対に死ぬことが確定した者へどんな言葉をかけてやればいいか分からないのだ。

 

一方通行「eve(イヴ)。あの原初の人間であるアダムの妻、最初の女として生まれたイヴ。そのイヴという意味じゃないだろォな。夕方、晩………『前夜』か。贈り物(イヴ)によって起こったことは全てまだ序章に過ぎないってか?これから近い未来、“本番”ってやつが始まるのかよ?クソったれ、アレイスターの頭の中ではどンな地獄絵図が描かれてやがンだァ?」

 

魔理沙「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!?一方通行、お前のところにボイスレコーダーが送られてからどのぐらい時間が経っているんだ!?あとどのくらいの時間しか残ってないんだ!?」

 

一方通行「霊夢の暴走が開始するまであと40分、ってところだろォな」

 

魔理沙「クソっ!!だったら悠長にお喋りしてる訳にはいかねえじゃねぇか!!どうにか霊夢を救ける方法を探さなくちゃだぜ!!色んなやつらにこの事を説明して皆で情報を共有しながら探せばきっと見付かるはずだ!!お前ら早くスマホを出して今回の件で助けになってくれそうなやつから順番に霊夢の現状をメールで伝えてやってくれ!!」

 

ガバッっ!!と、勢いよく立ち上がり皆の顔を見た。

しかし、、、

 

魔理沙「____どうして行動に移さねぇんだよお前らはァァ!!」

 

誰ひとりとも動かなかった。

助けたい。救えるのなら救いたい。

その気持ちは誰も一緒なのだろう。

しかし、今回ばかりは両手を上げて降参するしかないと考える者が多かった。

 

藍「……普段はダラダラして自堕落を体現したようなのが霊夢だったが、いざという時は博麗の巫女として幻想郷に起きた異変を解決していたのは我々は知っている。それで助けられた者は数多く居るだろう。言葉にしてこなかっただけで私だって霊夢にとても感謝している。だから我々も救えるのなら救いたい……しかし_____」

 

魔理沙「_____しかしなんだ!?無理だってか!?八方塞がりってか藍!?ふざけんなよ諦めてたまるかよクソったれェェッ!!なにも打つ手がないからって目の前で見殺しになんてできるかよ!!霊夢は……、霊夢は私の大切な大切な友達なんだよーッ!!」

 

一方通行「落ち着け魔理沙。感情的になった所で状況が変わることはねェぞ?」

 

魔理沙「だったらどうするんだよ一方通行!?ご自慢のその頭でこの絶望的な状況をひっくり返せるのか!?」

 

一方通行「最初に言ったことをするだけだ。“霊夢を殺す”」

 

魔理沙「ふっっざっっけるなァァァァァァァァァァァァッッ!!!!」

 

怒りが込められたその絶叫は部屋から外に木霊(こだま)した。

 

 

『ダメだ。こいつらは霊夢を殺す気でいる……』

心の中で魔理沙は呟いた。

相手は妖怪。そして、敵と判断したら容赦なく殺す怪物。

人の心など無かったのだ。

少しでも自分達と関わり合うことで、人間の優しさという感情がこいつらにも芽生えたなどと思っていたが間違いだったと白と黒の魔女は思う。

 

霊夢は殺させない。死なせない。

ここから博麗の巫女を連れ出す作戦を練ろうとした、その時だった。

 

「…………ありがとう、魔理沙。私のために必死になってくれて嬉しいわ、けどもういいの。もう、いいのよ」

 

 

魔理沙「なに、言ってんだよ霊夢……?」

 

 

霊夢「黒い玉を一年以上前から私は埋められてた。確かさっき黒い玉は2ヶ月以上体内に黒い玉があったら死ぬって言ってたわよね?だとしたらもう私は手遅れよ。どう足掻いてもこれから迎える結末は変えられないわ。私がこれから死ぬという結末はね」

 

魔理沙「いいのか?お前はそれで本当にいいのか霊夢!?敵の思惑通りに死んで満足のいく人生だったと()めれるのかよ!?悔しくはないのかよ!?」

 

霊夢「アンタはチェックメイトと宣言されているのに『まだ終わってない』と口を叩けるの?それほどアンタはバカだったの?」

 

魔理沙「ああああああああああああああああああああああああああああああァァァァァァァァーッ!!クソ!!!そんなお前の姿は見たくなかったよ。でも、私は諦めない。誰も協力してくれなくても私一人で霊夢を殺さず命を救う方法を見つけてみせるぜ!!」

 

そう台詞を残し、魔理沙は部屋から飛び出した。

多分どこを探しても霊夢を救える方法なんてないのかも知れない。

しかし。白と黒の魔女はたがらと言ってなにもしないで部屋の隅で(うずくま)るなんてことを嫌う。

 

霊夢「なんで、どっか行くのよ。最後ぐらい側に居てよ………魔理沙。アンタに話したいことが沢山あるのに………」

 

死は怖いものだ。

いずれ命あるものには終わりがくる。

しかし、それが唐突に襲い掛かるのだから声も震えてしまうのは仕方ないことだ。

 

もう一度言う。死は怖いものだ。

でも。ただ一人で死ぬのではなく誰かに看取られてなら少しは心が救われるのに……。

 

一方通行「……チッ。人の話は最後まで聞いてけよクソったれが」

 

紫「え?一方通行、今なんて……?」

 

一方通行「霊夢を救う方法は既にこの俺の頭の中にある」

 

人差し指で自分の真っ白な頭を突いた一方通行。

彼は冷静だった。

 

とても落ち着いた様子で、、、

 

 

一方通行「魔理沙を連れ戻せ紫。その後で話してやるよ、あの能面野郎の顔面を大きく変える、アレイスターのクソ野郎に吠え面をかかせられる霊夢を救える完璧な方法をな」

 

いつものようだった。

ニヤリと笑い、白い怪物は動揺している彼女らに言い放つ。

 

 

一方通行の頭の中にある“霊夢を救える完璧な方法”とは?

 

 

一体何なのか。それは魔理沙が戻ってから説明される。

 

 






次回予告

終わりを終わりとさせない……。
これから幻想郷の歴史に刻まれるは前代未聞の逆転劇ッ!!

「世の規則を破り禁忌に手を染めてでも、やつの思い通りになンかなってたまるかよォッ!!」

次回・第四章・第十二話

【絶対禁忌】(後編)

ここが明確な分岐点。
定められた運命に蹴りを一発かまして白い怪物は自分達の未来は自分達で手で掴むことを決意する。

その結果………ここで新たな物語は始まったのだ。
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