【第一位と第二位】(前編)
幻想郷のヤツらに幸福が訪れるなんてことはない。幸せなんて見させない。
そんなことは許さない。
忌ま忌ましい。貴様らは我が手で根絶やしにしてやる。
※誤字脱字などのミスが必ずあると思います。
それをご了承のうえ読んでいただけると幸いです。
しかし、そういったミスが多いのをご不快に思う方にはブラウザバックをオススメします。
博麗神社に続く長い長い階段の頂上にある鳥居の下には一人の大妖怪が遠くを見つめながら胸の前で腕を組み佇んでいた。
紫「…………、中の様子は?」
魔理沙「まあまあ落ち着いたぜ」
振り返ることもしなかったが、誰が後ろから近づいてきたか八雲紫は気付いていた。
白と黒の魔女・霧雨魔理沙は紫の質問に答える。
魔理沙「“二人”は中でぐっすり眠ってるよ。霊夢はどこにも体に異常はない。だが一方通行の方は正直言って危険な状態だよ。どうしてあんな重傷な体になっているのに生きていられるのか、その前にどうしてあれ程の重傷を負ったのかどちらとも
紫「聞けば絶対に答えが返ってくると思わないで欲しいわね。1000を超える年を生きている私だって知らないことはいくつもあるわ」
魔理沙「……そう、だよな。悪い」
紫「………………はぁ。ごめんなさい、今の私は冷静さを
魔理沙「そう気を落とすなよ紫。私だって悪かった。誰だってあんなもん見たら気が動転して当然だし、頭が混乱して人に当たりたくなってしまう気持ちも分かる。私も全然気分が落ち着かなくてな、何事もなかったかのようにいつもの調子で平静に振る舞うなんてできないぜ」
そして。霧雨魔理沙は八雲紫の隣に立つと彼女と同じ方角に視線を向ける。
魔理沙「…………フッ」
紫「なに急に?どうしたの魔理沙?」
魔理沙「いやー、こうやってお前と肩を並べ同じ方角を見る日が来るなんて昔は思いもしなかったからさ。一方通行がこの幻想郷に来る前なんかは紫とは敵対ばっかりしていたし」
紫「………そうね。幻想郷に異変が起きても私は個で動くことが多かったからこうして誰かと長く一緒に居るっていうのはちょっと不思議な感覚だわ」
魔理沙「あっ、そうだ。そ、う、い、え、ばッ☆」
なにかを思い出した様子だった。
するとニヤニヤとしながら魔理沙は紫の顔を見ると、、、
魔理沙「お前が泣いてる姿なんて初めて見たぜー?意外だったな、あの大妖怪様が人を心配して涙を流すなんてよ。お前は冷徹で狡猾無慈悲な血も涙もないやつだと私は思っていたんだがな」
紫「まぁ、それが正解だと言えば正解だし違うとも言えるわ」
魔理沙「ん?ホントお前は難しい言い方するなー。どういうことなんだよ?」
紫「………はぁ。そういう一面もあるけど、でもそれが全部じゃないってことよ。あなた達が私はそういうやつだって勝手にイメージしてるからこちらもそういう風に振る舞ってただけ」
魔理沙「じゃあ本当のお前はどんなやつなんだ?」
紫「………ねえ、私はあの大妖怪・八雲紫よ?この私がそんな簡単に他人に本当の顔を見せると思って?」
魔理沙「ハハッ、それもそうだな。じゃあ宴会の時でいいから私達と同じところで一緒に酒を酌み交わそうぜ。酒の席だったら誰だって本性の一つや二つ見せるってもんだ」
紫「それは酔ってからでしょ?生憎だけど私お酒に強いから、あなた達が先に酔っ払って暴れるに一票」
魔理沙「ははははははははははははっ!!確かに!今そんな未来が容易に見えたぜ!!」
紫「なによ、ホント……」
霊夢は自分のせいで一方通行が傷ついてしまったことで罪悪感に押し潰され、自分を責めていた。
そして、一方通行が辛うじてではあるがまだ息があることに安堵したらその直後に気を失ってしまった。
一方通行は一方通行で体の中で無数の爆弾が爆発したかのように負傷をしていた。
内臓はめちゃくちゃ。血液が流れる血管もボロボロである。
なのに、だ。
あんな衝撃的なことがあったというのに、大きく口を開けて楽しそうに笑う魔理沙に紫は不気味と感じ始める。
魔理沙「そんな顔すんなって紫。別にお前のことをからかいたいとか困らせたいとかそんなこと考えてお前の隣に来たんじゃないんだぜ?ぶっちゃけ、昔はお前ことは嫌いだったんだけどな。今はお前のこと結構好きになってるんだぜ?」
紫「……ッ!!」
魔理沙「お前の印象はどれもこれも最悪のものばかりだ。ハッキリ言って関わりたくないやつランキング堂々の第一位だったよ。しかもそのランキングは不動のものだった。けど……、こうして幻想郷を守るため一緒に行動したり、その分会話をしたりしてさ。そしたら考えが変わったんだ。お前が結構いいヤツだって気づけたって訳ッ☆」
紫「ばか言わないでよ………もう」
頬を赤く染めて顔を白と黒の魔女の反対の方向に向ける紫。
そんな彼女に魔理沙は明るく微笑みながら、
魔理沙「へへっ。もっと見せてくれよ本当のお前を。私は知りたい、紫がどういうやつなのか」
紫「……………紅魔館の引き籠もり魔法使いさんや、人形遣いの子があなたに心奪われてしまうのもなんか分かる気がしたわ。あなたも一方通行と同じ、相当な人誑しだったのね」
魔理沙「???」
紫「真っ直ぐにそうやって気持ちを打ち明けられると、こちらもそれに答えたくなっちゃうじゃない………」
声が小さかったせいが大妖怪が最後なにを言ったのか魔理沙は聞こえなかった。
不思議そうにしている白と黒の魔女を見て『これが無自覚でやっていることなのだがら本当にタチが悪い』と八雲紫は心の中で呟いた。
そして。ため息を吐くと階段の1段に腰を下ろす。
紫「でも、そうね。あなたがそういう性格だったから私は誰にも言うつもりはなかった『例の計画』を言ってしまったのかもしれないわ」
魔理沙「例の、計画……?」
首を傾げる魔理沙。
八雲紫がなんの事を言ってるのかさっぱりだったからだ。
しかし、ハッとして思い出す。
魔理沙「あー……、『時が来るまで内緒よ♪』とか言ってた一方通行を中心にお前が行うとしてるやつのことか。って、アレ誰にも言ってなかったのか!?計画内容を聞く限り別に隠すようなことじゃないだろ!?」
紫「“この私に似合わないこと”だからよ。だって私って幻想郷の中でも特に嫌われてるじゃない?しかも自分以外心底どうでもいいヤツだとも思われてるし。そんなやつが“自分以外の人のために”……って。頭でも打ったんじゃない?て言われておしまいよ。急に私が変なこと言い出したで片付けられちゃうわ」
魔理沙「紫が嫌われ者だってのは否定しないが誰かの為に行動することを変なことだと言うやつ、お前の周りに居るのか?」
紫「……………居ない、けど」
魔理沙「じゃあ隠さず素直に話したって良いと思うぞ。多分?いや絶対みんな協力してくれると思うぜッ☆みんな一方通行のこと大好きだからなッ☆もちろん私も協力するぜ、それは私もみんなと気持ちは一緒だからなッ☆」
紫「こういうところでは言えるのに、いざ本人の前だと……ねえ?」
魔理沙「ほ、ほっとけ!!」
顔を真っ赤してる魔理沙を見て、紫は優しく微笑む。
こうも分かりやすい反応をするのだからいじめたくなってしまうのだ。
魔理沙「……でも、最初お前が完遂させようとその計画を聞かしてもらった時はそりゃあ驚いたよ。『あの紫が!?』ってな。だけど、お前が血塗れの一方通行を大事に大事に抱き締めて涙を流している姿を見て分かったよ。“お前も”……だったんだな」
紫「あら?意外だったかしら?」
魔理沙「うん。紫に“そういった感情”があるなんて考えられなかったからな。それにそういう素振りは見せなかったし………」
紫「あなた達が分かりやす過ぎるのよ。まぁ、私も女だったってことよ」
魔理沙「…………いつから?」
紫「ふふっ、いつからでしょうねー?」
魔理沙「う〜わっ!!ウザ過ぎこのスキマ妖怪!!」
服の中から扇子を取り出した。
そして、扇子を広げるとその奥で笑う紫の姿を見て魔理沙は引いた顔をしていた。
紫「さて……。私達がお喋りしている合間に終わったみたいね」
魔理沙「終わったって、なにが終わったんだよ?」
扇子を閉じるとその扇子を服の中にしまう紫。
すると次は立ち上がったのだった。
紫「戦いが、よ。最後にアレイスターが幻想郷に送り込んだ刺客と氷の妖精のお嬢さんのね」
魔理沙「チルノか。結果は?」
紫「………………氷の妖精のお嬢さんの圧勝、になるはずだった」
魔理沙「なるはずだった、って?」
紫「氷の妖精のお嬢さんは最後の刺客を
魔理沙「だけど……?」
紫「迷っていた、迷っていたのよ。自分の下した決断を信じて第二位を殺すか、それとも一方通行の考えを尊重して第二位を生かして捕らえるかって。もしも第二位を捕らえることができたら、こちらに有利な情報が手に入るかもしれない。第二位はこれまで送られてきた刺客の中で特別な存在だったからね。それに第二位の力も間近で見てそして体験して、もしも第二位が仲間になったら
魔理沙「迷いもなくそいつ殺していたらチルノは負けなかったって?」
紫「えぇ。あの子は本当に凄い子だわ。この私でも手の届かない場所に辿り着いた。唯一神の神綺と対等に渡り合えるほどの力を手に入れたのよ。それがどれだけ凄いことが一々説明しなくても魔界の神の力を見たことがある魔理沙なら分かるわよね?」
魔理沙「あの神綺と対等だと!?チルノが!?マジかよオイ!?」
紫「そこまでの力なら圧勝できていたはずなのよ。森一つ凍らせるなんて造作もない。周りのことを本当に気にしないで良いのなら惑星一つ、いいえ太陽だって凍らせられるのよあの子は」
魔理沙「そっかー、なんか遠い存在になっちまったなー。雑魚扱いしてたのが懐かしく感じるぜ」
紫「でも結果がすべてよ。あの子は『最後の刺客』に敗れてしまった。今は第二位に惨いことをされてるわ。目も当てられないほどのね」
魔理沙「…………私が行こう」
目の色が変わっていた。
白と黒の魔女は右腕を伸ばす。するとそこに箒が飛んできた。
箒の棒の部分をパシッと力強く魔理沙は掴む。
魔理沙「____紫、私ならその第二位にも勝てるだろ?」
相手はあの『アイテム』の連中よりずっと強いのだろう。
しかもたった一人で、あの『アイテム』以上ときたもんだ。
魔理沙は『アイテム』のリーダー・麦野沈利と戦い見事第四位の怪物を撃退できたが、その戦闘で魔理沙も重症の傷を負わされた。
だが、しかし。
箒を地面に突き立てる白と黒の魔女は自信に満ち溢れている様子だった。
紫「……えぇ、そりゃあ余裕で快勝できるわ。なんたってあなたは氷の妖精のお嬢さんよりも更に上、あの唯一神すらも超越した力を手にしたんだからね」
魔理沙「……………誰にも教えてないんだけどな」
紫「あらごめんさない、秘密にしていたかったのね。でも別に覗きたくて覗いたんじゃないのよ?とても強大な力が幻想郷内で発現したから、その発現した場所を特定してスキマを開き覗いてみたらそこには魔理沙、あなたが居た」
魔理沙「き、気づかなったぜ………」
紫「あれ程に大きな力を感じたのは初めてだった。でも恐ろしいことに私が感じ取った力はほんの一部に過ぎない。本当の力はもっともっと、なんでしょう?少なく見積もっても『一撃で太陽系にあるものすべて塵も残さず消し飛ばせる力』。まったく、あの力をもしも全力で使用されたらどこまでのものになるのか……。この私でも想像がつかないわ」
魔理沙「一撃で太陽系にあるものすべて塵も残さず消し飛ばすほどってのは言い過ぎじゃないか?……まあ、いいか。あれを知られたのは嫌だったが知ってるなら知ってるで話が早いや。まっ、そういうことだ。私なら無事にチルノを救出できるし『最後の刺客』にも勝てるだろうぜ」
紫「知ってるわ。そうよ、知ってるのよ。あなたがあの力を全開で使ったしまった瞬間“命を落としてしまう”ということもね」
魔理沙「チッ、そこまで知られちまってんのかよ
そこで魔理沙は止まった。
大妖怪が手のひらを向けてきたからである。
紫「私が行きましょう。私なら相手があの第二位でもギリギリ勝てると思うわ」
魔理沙「なんで頑なに私を行かせてくれない?あの力を使わなくても勝てる相手だと思うだけどな」
紫「一方通行は倒れた。もう……、動けない。幻想郷の中で最も強い超能力者がしばらく戦闘に参加できない体になってしまった以上魔理沙、今はあなたが“幻想郷最強”。我々に残された最後の希望。最後の切り札なのよ。最初に言っておくけどなるべくそうならないよう私も全力を尽くすわ。でも、しかし、もしかしたらあなたの“あの力”に縋る時が来てしまうかもしれないわ。その時のためにちょっとでも魔理沙には力を温存していてほしい。可能なら魔界の神に頼りたいところだけど、面倒くさいことにあのババアは一方通行以外の頼みは聞かないだろうし。しかも幻想郷の結界の設定を一方通行が少し弄っちゃってるから魔界からこちらにあのババアを呼ぶのだって時間がかかってしまうわ。だから私なのよ。魔理沙、あなたを除いて幻想郷の中で“今の第二位”に勝てるとしたらこの私しか居ないわ。それほど危険な相手なのよ学園都市・
八雲紫は辛そうに顔を顰めて拳を握る。
このまま順調に事を進め今回の騒動も無事に片付けられると思っていたのだろう。
しかし、予想外のことが起きてしまったのだ。
そしてその予想外は簡単に対処できるものじゃなかった。
紫「この世に存在しない物質を創り、そして自ら生み出した物質を自由自在に操る能力。
一人でブツブツ独り言を言っている紫。
魔理沙「ちょっと待てちょっと待て、“3人目”?その“3人目”ってのはなんの“3人目”だ?」
だが。霧雨魔理沙は大妖怪の独り言に気になる部分があったので質問する。
紫「“幻想郷の脅威となる存在”。それはその者が幻想入りした時点で幻想郷の存在そのものの消滅を覚悟しなくてはならないほど危険で突出した人間」
魔理沙「チルノと戦いそして勝ったやつ、確か名前は垣根帝督だっけ?そいつが幻想郷の脅威となる存在になったと?」
紫「えぇ。まあ、でも他の2人に比べればまだ垣根帝督なんて可愛いものよ。他の2人が特殊過ぎるからね」
魔理沙「その他の2人ってどんなヤツなんだ?もしも話せることだったら聞かせてくれよ」
紫「1人はあなた達も知ってるしもう既に会っているわ。学園都市の能力者達の頂点。第一位。最強の
魔理沙「………そっか。じゃあ私達は、今は垣根帝督だけをぶっ倒すことだけを考えてれば良いんだな?」
紫の話の中に気になるワードがあった。
『特異点』。
それはいったい何なのだろうか?
疑問に思いそれについて質問しようとしたが自分の頭じゃ理解出来ない複雑過ぎる説明が始まると思ったから霧雨魔理沙は質問するのをやめたのだった。
紫「そういうこと。ま、行くのは私だけだけど」
滅多なことでは動かないと有名な彼女が自ら出向き敵を排除しに行くとは珍しいことだ。
それだけ垣根帝督が危険な存在だということなのだろう。
八雲紫は目の前にスキマを開こうと能力を使用しようとしたその時だった。
やけに後ろが騒がしかった。
そう、博麗神社が建っている場所が、
「まっ、待って!お待ち下さい!!そんな状態の体で動いてしまうのは危険です!!お願いします中にお戻り下さい!!」
その声の主は八雲藍。
式神の彼女は慌てて外に出てきたため裸足だった。
魔理沙「藍……、それに_____」
藍の声が聞こえ魔理沙は振り返る。
白と黒の魔女の視界には藍ともう一人が居た。
「待てよ紫。俺が、行く。チルノは俺が助ける」
永遠亭は今も大忙し。
捕らえられた『グループ』『アイテム』。この二つの組織の連中の治療で手一杯なのだ。
特に『グループ』の奴らは紅魔館の少女らに酷く傷を負わされた。全身刺傷だらけだったり手と足がなくなっている負傷者が永遠亭に送られた時はそれはそれは永琳は大きなため息をついたそうだ。
“白い彼”は自分は後でも良いということで、今は博麗神社の中で寝ていてもらっていた。
しかし白い彼は重傷の体を引きずるように紫と魔理沙のところまで来た。
魔理沙「____
改めて見るとやはりそれは酷いものだった。
日に照らされた場所では細かな傷もくっきりと見える。
腕や体は包帯でグルグル巻き。
額にだって包帯が巻かれている。
その包帯の色はすべて真っ赤だった。
一方通行「後のことを考えるなら切り札ってのは多く残していたほうがイイ。紫、オマエも力を温存しておけ。最後の暗部のクソ野郎は俺がぶちのめして来てやる」
魔理沙「聞いて……、いたのか……」
一方通行「…………あァ」
魔理沙の問いに一方通行はいつもの調子で静かに答えてみせた。
しかし、幻想郷の誰もがその実力を認めている最強の超能力者はボロボロ。
一瞬でそして一撃で敵を倒すことも、傷一つ負うこと無く一度に数多の敵を屠ることも平然とやってのける幻想郷最強は指一本で押せば倒れてしまいそうなほどフラフラだった………。
その場の彼女達全員が分かっていた。“一方通行は無理をしてる”と。
見ているだけで心苦しくなる姿だった。
彼の後を追ってきた藍、そして魔理沙や紫すらも今の一方通行の姿を見て心の底から辛いと思っていた。
そして、だ。一瞬、足の力が抜けてしまい一方通行は前に倒れそうになったがそれを察した八雲紫の式神・八雲藍は彼のもとまで駆け寄り一方通行の体を受け止め支えてあげることで地面に倒れることを未然に防いだ。
藍に体を支えてもらいながら、ひとりの力で立つことすらままならなくなった幻想郷最強の超能力者は、、、
一方通行「紫。早くスキマを開け、クソったれが居る場所に通づるスキマをなァ」
紫「……………………藍、命令よ。殴ってでも良いからそのバカの意識を刈り取り手足を鎖で縛り博麗神社の中に監禁しなさい」
藍「紫……さま………?」
紫「なにをしてんの藍?早く行動に移しなさい!!私の命令が聞けないのかッ!?」
藍「ひっ」
顔は見えない。
背を向けたままだが分かる。大妖怪が激怒しているのが。
藍がここまで怯えているのは初めて見る者は多いだろう。
その姿はまるで親に叱られている子供のようだった。
魔理沙「待て待て紫、落ち着けって。まったく勘弁してくれよこういうのは柄じゃないってのに……」
ため息を吐き被っている帽子の上から頭を掻いた。
すると魔理沙は、、、
魔理沙「一方通行、お前は回れ右で大人しく博麗神社の中に帰れ。藍もだ。月の一件で今日お前たちはいっぱい動いた、疲労困憊でへとへとってところだろ?もう横になってゆっくり休んでいいんだ。後はまだ元気のある私達でどうにかするぜ!!」
一方通行「ダメだ。これだけは譲れねェ、チルノのことは誰にも託せられねェ。俺じゃなきゃダメなンだ」
紫「藍ッッ!!私に二度も言わせるな!!早くそいつを博麗神社の中に監禁するのよ!!」
一方通行の一言を聞くと更に怒鳴り声が増す紫。
どうしてそこまで怒りの感情を露わにする?
そんな疑問が浮かぶが、、、
藍「……で……、できません私には、そんな恐ろしいこと……」
大きな子供が居た。
体をビクビク震わせ瞳に涙を浮かべる大妖怪の式神。
八雲藍も主人の八雲紫と同様表情がコロコロ変わることはあまり多くない。
しかし、現在の藍の姿は普段の彼女から程遠い姿だった。
魔理沙「あーっホントもうさァーッ!!いい加減にしろやァッ!!落ち着けって言ってんのが分からねぇのかゴラァ!!力ずくじゃなくても一方通行を無事説得して自分から博麗神社の中に帰らさせれば良い話だろうがァッ!!」
我慢に我慢を重ね我慢していた白と黒の魔女。しかし、抑えに抑えた感情が彼女の中で大噴火。
怒鳴ってるから怒鳴り返すなんてそんなことしたら一生怒鳴り合いが続き無駄に時間を費やす。
忘れてはいけない。緊急事態なのだ。早めの行動が大事だというのにこんなくだらないことで無駄に時間を使ってられないのだ。
今は誰が窮地に陥る氷の妖精を救出しに行くか?それを決めなくてはいけない。
だというのに、だ。
魔理沙も怒りの感情を露わにする。
避けようとしていた怒鳴り合いが始まってしまった。
紫「分かってないのよあなた達は!一方通行にとってどれだけあの氷の妖精のお嬢さんが大事な存在かってね!!一方通行は私達を信頼してくれているわ。だけど、それでも、一方通行はあの子だけは私達に任せることができない。それだけあの子が特別だってことなのよ!!____」
「「……ッ!?」」
大妖怪の言葉に藍も魔理沙も驚きの表情を浮かべる。
冷静になれと言われても声量が下がることはなかった。紫は続けて、、、
紫「____だったらもう実力行使で意識を刈り取るしか、一方通行を止める方法はないのよ!!」
大妖怪・八雲紫。
彼女は能力は発動させる。
背後に大きなスキマが開かれた。
そのスキマからは多くの気味の悪い目玉がこちらを覗く。
八雲紫はその一瞬の隙を見逃さなかった。藍と魔理沙が一瞬ではあるが止まったのだ。
そして。
八雲紫は一方通行に向かって弾幕を放とうと動き出す。
白い彼が重傷なのは百も承知。
だが、それでも死なない程度に加減をした弾幕を一方通行に撃とうとしたのだ。
その時に、だ。紫と一方通行の間にひとりの少女が両腕を広げて立つ。
「おやめください!!こんなことは……もう!!」
八雲藍は一方通行の看病を担当し、突如紫と一方通行の間に立った式神は霊夢の看病を担当していた。
突然現れた式神とは橙だった。
八雲藍の式神である。
式神の式神だ。
橙「どうして……、今は仲間内で争っている場合では無いはずです!!」
大粒の涙を流し鼻水だって垂れていた。
橙「もうやめてください。幻想郷の誰かが傷つく姿は見たくありません!私の心はもう限界です!!これ以上は誰も傷ついてほしくありません!!」
紫「身の程を知れ出来損ない。“八雲”も名乗ることが許されてないお前が私の前に立ちはだかるか。無礼者め、今から殺されても文句は言えないぞ」
橙「……………ッ!!」
全身から血の気が引いた感覚を味わう。
橙は恐怖した。そして『これから私は紫様に殺されるんだ』と覚悟した。
八雲紫は本当にやる気だった。
周囲の誰もがそれを感じ取る。
魔理沙「ったく、今までだったら毎度毎度私が勝手に暴走して止められる立場だったんだけどな。どうやら今回は止める側をやらなくちゃいけないらしい。なァ紫!!口で言っても分からねえバカは殴って止めるしかないってお前も思うだろ!?あァ!?」
白と黒の魔女は服の中にしまっていたミニ八卦炉を取り出し握り締めるとその取り出したミニ八卦炉を八雲紫に向ける。
式神の二人。藍も、橙も、
これから八雲紫と魔理沙が力と力でぶつかってしまうと諦めかけていたその時、
「もォイイやめろ」
絞るように声を出したのは最強の超能力者、
一方通行「オマエに悪役は似合わねェよ紫」
紫「…………………………………」
あの眼だ。あの眼が悪い。
あの赤い瞳………、
それを見てしまうとどうも体の力が抜けてしまう。
頑張って、頑張って、頑張って…………。
頭をフル回転させてこれから自分が更に嫌われるようになってしまっても良いから、恨まれてもいいから止めたかった白い彼の夜道の中でも目立つ赤い瞳を見ると紫は決めた覚悟が揺らいでしまっていた。
一方通行「紫、オマエは本当は優しいやつだってこの場の誰もが知っている。八雲紫を理解してる俺達の前じゃあ隠しきれてねェンだよ根の優しさがな。諦めな、演技でもオマエは俺達の前じゃ悪役になりきるのは無理だ」
大妖怪の背後に開かれたスキマは徐々に閉じていった。
鋭く殺意を宿した彼女の瞳の力がだんだん抜けていく。
一方通行「あァ、分かってる。きっとチルノを助けに行けば必ず戦闘になるだろォな、『刺客』の目的はこの俺を殺害することだからな。そしてこンな状態で戦えば俺は確実に死ぬ_____」
………………やめて。
八雲紫は心の中で強く願う。
弱っているからか?それとも違う理由なのか?
一方通行の顔には笑みがあった。
狂気に満ちた笑みでもなく、戦闘時に見せる悪魔のような笑みでもなかった。
とても、とても。穏やかな笑み。
もうすっかり紫からは殺気が消えていて全身の力が抜けてしまった状態になっていた。
一方通行「____だったらだ。俺が“あと一回だけ”戦える状態になればオマエらは俺がチルノを助けに向かっても構わねェって満場一致で首を縦に振ると勝手に解釈させてもらうぞ」
これが“とっておき”。最後の最後の最後まで残していた最後の切り札。
それを“使用”する時がきたのだ。
この幻想郷に来てから目覚めた第二の能力の模倣能力でコピーした数ある能力の一つ。
大妖怪・八雲紫の能力を発動させて一方通行のは自身の前にスキマを開く。
開かれたスキマはとても狭く腕一本入る程度である。
しかし無問題。腕一本入れば“取り出したい”ものは取れる。
目的のものを掴み取るとスキマから腕を抜いた。
一方通行が取り出したもの。
それを見た魔理沙や藍、それに橙はこれから何が起こるのか全く思い浮かばなかった。
だがひとりだけ…………。
スキマ妖怪。幻想郷を創った賢者の一人と言われている八雲紫だけは違った。
紫「バカッ!!それは_____」
慌てた様子で白い彼が行おうとしたことを止めようとする。
だが………、止められなかった。
紫「バカ野郎ォォォォォォォォッ!!あなた自分がなにを自身の体に“打ち込んだ”か分かってるんでしょうね!?」
一方通行「当然だ」
スキマから一方通行が取り出したもの。それは“注射器”だった。
そして。注射器の中に入っていた液体を体に打ち込むとあれだけ辛そうにしていたのに一方通行は普段と変わらぬ様子になっていた。
魔理沙「一方通行。お前……さっき自分になにを打ったんだ?」
白と黒の魔女。霧雨魔理沙は質問する。
だが一方通行は黙ったままだった。
だからか。変わりに八雲紫が答える。
紫「…………“麻薬”よ。それを体に摂取するだけで眠気や疲労感などがなくなる薬___」
だけど。と、続けて、
紫「___麻薬はとっても危険なものなのよ。疲弊した人や落ち込んでる人が抱えてる不安や恐怖といったマイナスの感情。それに、そうね。今の一方通行のように重傷な人が抱えてる痛みだってたった一回麻薬を体に摂取するだけで緩和してくれる
一方通行「それは純正のモノだったらだろォが。この俺が幻想入りしてから今日までずっと監視していたオマエなら態々言葉にして説明しなくても分かってるはずだ。俺がなンで永遠亭にまで足を運ンで永琳から直々に薬学を学ンだ理由が。さっき俺が打ち込ンだのは確かに麻薬だ。だが危険な成分は取り除き、モルヒネ注射と同じ感覚で使えるモンに仕上げた」
過去に一度、人間の里に“危機”が迫っていた。
里の人間が全滅してしまうかもしれないほどの“危機”が。
完全に暴走者となってしまった妖怪達が里を襲撃したきたのとは全くの別、人間と人間の問題で………。
幻想郷には制限なく他世界から色んなものがやって来る。
それは人だけではなく物もであった。
そして。
あるものが幻想入りをしてしまう。
それが“麻薬”だった。しかもその麻薬はそこら辺にあるものよりとっても危険なものだった。
成分などが他の麻薬と異なるため言ってしまえば今までにない全く新しい麻薬だったのだ。
そんな危険なものが幻想入りしたのに気付かない八雲紫ではない。
一刻も早くその危険麻薬を回収しようと行動を開始する。
だがその麻薬は大妖怪よりも一足早く幻想郷の人間の手に渡ってしまい、そしてその麻薬を手に入れていた人間により栽培などされ数は増えてしまいたったひとりでは回収しきれない量にまでなってしまったのだ。
藍と橙。この二名に危険麻薬の回収を協力してもらうことでたったひとりで回収していた時より幻想郷から麻薬の数を減らすことに成功した。
そして。そして、だ。
八雲紫を筆頭に藍や橙の
残る仕事は………。
麻薬の最後の所有者。幻想郷で危険麻薬を一番最初に手に入れ人間の里に麻薬を流行させた張本人。多くの人間の人生を潰し大金を獲得して豪遊に豪遊を重ねていた生活を送っているクソ野郎。表では資産家の善人として
それが幻想郷最強の超能力者・“
麻薬を流行させたクソ野郎は一方通行に家をプレゼントしてくれた人だった。
だが、それでもクソ野郎はクソ野郎だ。生かしておくには危険なヤツだった。
一方通行は紫達よりも早く人間の里の裏で暗躍するクソ野郎が率いる組織をたった一人で壊滅させた。
その時、一方通行はやつらが蓄えていた金銭と一緒に麻薬も回収していた。
麻薬は処分するかと思いきや、最強の超能力者は大事に家の中に保管していたのだ。
紫は何故一方通行がそのようなことをするのか、その意図は全く理解できなかった。
しかし、彼のその後の行動で分かった。
一方通行は自分で使うために危険麻薬をクソ野郎達から奪ったのだと。
紫「ええ、確かに。あなたが自分に打ち込んだ麻薬は純製のものに比べれば“危険性は少ない”でしょうね。でもね、“危険性が少ない”だけであって“絶対安全なもの”じゃないのよ。あなたの他と比べてずば抜けた優秀な頭脳を持ってしてもあの麻薬の危険性を完全に排除できなかった………」
一方通行「悪りィな紫____」
チルノを助けに行く。そう言えば優しい優しい彼女らに止められると最初からわかっていた。
全力で反対される。例えどれだけの覚悟を示したとしても………。
だから一方通行は決意していたのだ。
自分を心配して引き止める彼女らの優しさを無下にしてでも強引に行くと。
そして……、
穏やか表情で、落ち着いた様子で、静かな声で、
一方通行「____俺の身勝手を許してくれ」
ゴバッッッ!!!!
それは一瞬だった。
一言その場に残すと一方通行はベクトル操作を駆使して目にも留まらぬスピードで飛び立ってしまった。
紫「バカタレ!!許すわけないでしょッ!!」
空を高速で飛んでいく一方通行の方へ腕を伸ばした大妖怪。
彼の背後にスキマを開き首根っこを掴み博麗神社に連れ戻そうとしたのだ。
だが………、、、
紫(クソったれ!!こんな時に邪魔をするか『呪い』め!!)
彼女の望みは叶わなかった。
魔理沙「…………………紫?」
小刻みに震える腕を空に伸ばしたまま動かない大妖怪に白と黒の魔女・霧雨魔理沙は首を傾げる。
紫「もういい……、もういいもういいもう知らない自分の体の状態も分かってないあんなバカ!!私は寝るわ!!あなた達も勝手になさい!!フンっ!!」
足音を立てて八雲紫は博麗神社の中へと歩いていった。
橙「藍様………わたし達はいったいどうすれば……?」
藍「答えが分かりきった質問だな。我々がすべきことは一つだよ橙、私と一緒に紫様のお側に居て全身全霊で仕える。それが今の私達にできる唯一のことだ」
橙「でも、ああいう時はお一人にさせてあげたほうがいいのでは……?」
藍「ああ、そうだな。きっと今の精神状態の紫様に近付いたら厳しいお言葉がいくつも飛んでくるだろう。それでも私達はその厳しいお言葉を受けて止め紫様のお側に居なくてはならないんだ。それが我々『式神』の役目なんだから」
式神の二人、藍と橙は手を繋ぎ博麗神社の中に帰っていく。
その途中だった。藍は未だに一方通行が飛びだった方角を眺めている霧雨魔理沙のところに足を止めずに振り返り質問する。
藍「魔理沙はどうするんだ?」
魔理沙「お前達と同じだよ。今の自分にできることをする。それが正しいか間違っているのかは後で考える。“とりあえず”だ。とりあえずやるしかないだろ?はぁ……、今後の命運がかかってるんだ、ちっとはこちらが決断するのに待っててくれてもバチは当たらない思うんだけどな。どうしてここまで時間ってやつに意地悪をされなきゃならないんだろうな、まったくよォ……」
藍「ふふっ。そっか、そうだな……。以前より逞しくなったようだな魔理沙」
大きくため息を吐いて下を向く魔理沙を見て扇状に伸びる九つの金色の尻尾を持つ式神は小さく微笑んだ。
八雲藍と手を繋ぐ歩いていく橙は見た。
その時の藍はとても嬉しそうに笑っていた。
そして、静寂な空間にて。
博麗神社の長い階段の頂上にある鳥居。
そこには箒を持つ白と黒の魔女が立っていた。
たったひとり、その場に残っていた魔理沙は、、、
魔理沙「行くぜ」
小さく呟き、八雲紫が危険とまで言う垣根帝督の手からチルノを救出するという目的もあるが現在の一方通行に無理をさせないという目的も果たそうと霧雨魔理沙は博麗神社から出発しようと足を前に出した。
しかし………?
魔理沙「わぁ……ぷっ!?」
見えない壁に道を遮られたのだ。
魔理沙「あん?これは結界か?まさか飛んでいく時に一方通行が張ったのか?あいつ結界なんて張れたのか?いや、一方通行はどんなことも実現できる力を持っているし結界を張るなんてちょちょいのちょいってか?」
紫の話の中に一方通行は幻想郷全体に張られている結界の設定を弄ったと説明していた。
つまり幻想郷の結界に接触していたのだ。
そして、その事をきっかけに結界というものの解析も完了していて模倣能力で結界を模倣したのだろう。
だが………。
魔理沙(それにしてもなんだこの結界は?すっごく嫌な感じだぜ。一方通行が張ったとは思えない結界だ。結界の壁が肌に触れた瞬間、全身の細胞から拒否反応が起きたような感覚がした……、これより先に進んでいけないと思ってしまうくらいの)
目には見えない透明な壁。
しかし、魔理沙は感覚で結界を感知していた。
どうやら博麗神社を覆うようドーム状に結界が貼られているらしい。
そして、この結界は半端な力じゃ打ち破ることはできないと何故か理解できた。
魔理沙「恐らくこの結界が原因だな……。あの時、一方通行のことを阻止しようと紫はスキマを開こうとしていた。だがなにか別の力にそれは阻害されスキマを開けずに終わった。でもやっぱりこの結界は変だぜ、結界の壁の近くに立ってると毎分毎秒嫌な気分にさせられる。一方通行、お前はここまでしてでもひとりの力でチルノを助けたいと言うのか……?」
ここまで拒絶されたら仕方がない。
白と黒の魔女は諦めた。いいや、諦めざるを得なかった。
魔理沙「はぁ……、チルノに負けた気分だぜ………」
風に流すかのようにポツリと呟いて霧雨魔理沙も式神の二人の後を追うように博麗神社の中へと入っていった。
そして。それから5分も経たずに一方通行は垣根帝督の居る場所に到着すると最強の超能力者は目撃することになった。
変わり果てた氷の妖精の少女の“衝撃的な姿”を………。
次回予告。
第一位と第二位の戦いが始まった。
どちらも人知を超越した絶大な力を持つ超能力者、どれほど恐ろしい光学破壊兵器に囲まれても全然平気な顔でいられる怪物だ。
そんな両者がぶつかったらどれだけ周囲に被害が及ぶのだろうか?
想像もつかない激戦が始まったのだった………。
でも、始まりがあれば終わりもある。
戦いには勝者が居れば敗者も存在する。
ニヤリと口角を上げて怪しく笑う逆さまの人間は最初から知っていた。
第一位と第二位が戦ったとしてどちらが“勝ち”どちらが“敗ける”のか………。
次回・第四章・十五話
【第一位と第二位】(後編)
学園都市統括理事長・アレイスター=クロウリーは望んでいない。
この物語のハッピーエンドを。
幻想郷が崩壊するまで、、、、、『1』