『幻想郷を
第四章。純黒に生きる侵略者・最終話。
【終末特異点】
※誤字脱字などのミスが必ずあると思います。
それをご了承のうえ読んでいただけると幸いです。
しかし、そういったミスが多いのをご不快に思う方にはブラウザバックをオススメします。
大気の流れは時が経つにつれて激しくなっていく。
そんな中、箒に跨り懸命に前へ進み空を飛ぶ白と黒の魔女・霧雨魔理沙が居た。そして彼女の後ろに横向きで箒に座っているのは紅白の巫女・博麗霊夢。二人はスキマ妖怪・八雲紫からの緊急集合に応じて指示された場所に向かっている途中だった。
魔理沙「…………お、おい霊夢。前を見てみろよ」
霊夢「じょ、冗談でしょ?アレって………」
そこには元々緑豊かに生い茂る森があった。
しかし二人の少女の目に映った光景は一つの森をすべて飲み込む巨大な真っ黒い竜巻……。
きっとあの黒い竜巻のせいで大気の流れが異常なまでに激しくなってしまっていたのだろう。
黒い竜巻からはまだ離れた場所を飛行する箒に乗る二人。
遠くからだがそれでも至近距離で眺めているのかと誤認してしまうくらいハッキリと巨大な黒い竜巻は目で確認できていた。
それから、だ。魔理沙と霊夢は強風に煽られながらも八雲紫に指示された場所付近まで到着する。
地面に目を向けてみると八雲紫と八雲藍、橙。それに西行寺幽々子や魂魄妖夢の姿まで発見した。
魔理沙「あっ!霊夢待て!!____」
生き返ったばかりでまだ体は本調子でなく、それを知って箒に乗せて運んでくれた親友からの静止する声を無視して博麗霊夢は座っていた箒から飛び降り八雲紫の居る場所へ着地すると、だった。
霊夢「こんの腹黒妖怪ーッ!!アンタが送ってきたメールには確かこう書かれてたわね『学園都市から来た敵が幻想郷に出現した。力を結集させて直ちにそれを撃退する』って!!アンタのメールに書かれていた敵ってやつを今しがたこの目で確認した。あの黒くてアホみたいに巨大な竜巻の中に居るやつが今回の異変で倒すべき最後の敵なんでしょうね。外側からじゃ中の様子は見えなかった。けどねわかってる、わかってんのよ!!あの中に居るのは
紫「違うわ霊夢。あの中に居るのは我々の幻想郷の平穏を脅かす心の無い殺しと破壊しか出来ない恐ろしい“バケモノ”よ」
霊夢「………ふざけて言ったなら一発殴るだけで許してやるわ。でも冗談じゃなく本気で
紫「熱くならないの霊夢、こういう時こそ冷静になりなさい」
霊夢「御生憎様。今の私は
紫「霊夢」
霊夢「なによ?クソったれ妖怪」
出会って早々一気にその場の雰囲気は最悪になった。
鋭い目つきで霊夢は八雲紫を睨みつける。
まるでその目は憎き敵を睨むようだった。
魔理沙「落ち着けって霊夢。まずは話を聞こうぜ?どうしてああなったかとか、どうせ物知りな紫のことだから原因とか分かってるんだろ」
霊夢「話を聞いてどうするの魔理沙?こいつらは
そして。
紅白の巫女は隣に箒を持って着地した白と黒の魔女からスキマ妖怪達に目を向けると更に険悪な顔になった。
霊夢「さっきから黙り決め込んでるアンタ達も紫と同意見ってわけ。絶望のどん底まで沈みこれっぽっちも希望が見えてこない滅びかけていた幻想郷を救ってくれたのは、私達の知るかつての幻想郷に戻してくれたのは誰?
妖夢「お
霊夢「アンタ達と一緒にするなァ妖夢!!幻想郷の未来の為だなんだのって御託を並べてあいつを殺すことを正当化しようとしてるけど結局はアンタ達はどうせ我が身が一番可愛いだけなんだよ!!
魔理沙「____教えてくれ紫。本当に
紫達と霊夢の間に立ち魔理沙は質問する。
声色や態度から見ても白と黒の魔女は冷静だった。
紫「そうね魔理沙。あの“バケモノ”を正気に戻すことができたなら暴走は止まり異変は無事解決される。でもね、それができないから私はあなた達に協力を仰いだのよ?幽々子と妖夢は
魔理沙「………説明ありがとう紫。
霊夢「わかった?紫、これが人間の考え方よ。私達は命を軽視しない。命とはどこまでも尊いものなの。大切な人が恐ろしいバケモノに変貌してしまったからといって殺すなんて情の欠片もない決断はできない。わたし達人間にあるのは“助けたい”という気持ちだけ。助けようとした結果もしもそれでこの身に一生消えない傷を負う結果になってしまっても大切な人が死んでしまうよりは遥かに良い」
覚悟は決まった。
この幻想郷で最も危険な場所に飛び込む。
例え我が身が傷つこうとも、未だ経験していない痛みに襲われる結果になろうとも“助ける”。いいや“助けたい”。
幻想郷最強の超能力者が暴走しているあの地帯に飛び込むという行為は銃弾砲弾が飛び交う戦地の中を何も持たず裸で歩くようなもの。
生還できる可能性はゼロに等しいだろう。
それでも。そうだとしても、だ。
助ける。助けてみせる!!
これまで自分を含め多くの幻想郷の人々を救ってきたヒーローを。
博霊の巫女・博麗霊夢。白と黒の魔女・霧雨魔理沙。
二人の少女は紫達の横を通り過ぎる。
向かう場所はあの真っ黒で大きい竜巻。
その中できっと苦しんでいるであろう
「好き勝手に言ってくれちゃって_____」
小さく笑いながらポツリと呟いたのは大妖怪・八雲紫だった。
紫「___誰が心のないバケモノだ無知で生意気な
そして、そして。八雲紫は頭を乱暴に搔き毟り、荒げた声で溜めていたもの全て吐き出した。
吐き出してしまったのだ………。
紫「___そもそもあなたが
大きな声で発せられたその言葉。
八雲紫は自分がなにを言ってしまったのか気付く。
これまでずっと隠していた事実……。
もしも知られてしまえば全員が不幸になる真実……。
束の間の静寂。その後、振り返り博麗の巫女は、、、
霊夢「呪いをかけた……?私が、
紫「あ……、ああっ!!あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああァァァァァァァァァァァァーッ!!??違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!!!」
一瞬で八雲紫は崩れ地面で蹲り小さくなっていた。
幻想郷の賢者や大妖怪とまで呼ばれている八雲紫にあるまじき醜態。
その体以上の大きな存在感を放ち口元で扇子を開きその奥で不敵な笑み作る姿を見ればどんなに頭の悪いやつでも八雲紫という大妖怪がただ者ではないと察知できる。
余程の愚か者か、それか命を自ら捨てようとする大バカ野郎ではないかぎり彼女にケンカを売ろうとはしない。
もしもあの八雲紫と敵対してしまえばどうなるか幻想郷の大概の者は知っている。
が。遠ざけられ、嫌悪され畏怖されているあの大妖怪様が地面で身体を丸めている。
なんて弱々しく、なんてみっともない姿なのだろうか。
彼女の姿を見ただけでただ者ではないと思わせる風格はどこかへ消えていた。
霊夢「答えなさい紫!!“アンタ”が、いいや“アンタ達”がずっとなにかを隠していたのはとっくに気付いていたわ。でも人の秘密を探ろうなんて悪趣味なことはしたくなかったし、このままでも良いのかもって思っていた。でも私が関わってることなら教えて、アンタの口から直接教えてちょうだい!!」
紫「………………………………、」
まるで幼子。八雲紫の今の姿を見るとその一言に尽きる。
両手で頭を抱えて全身を震わせ酷く怯える姿はまるで親に叱られた子供のよう。
「もういいのよ紫。楽になっていいの。あなたは頑張った____」
ポン…と身体を震わせる大妖怪の近くで屈むと彼女の背中に手を置き優しい声をかけたのは八雲紫の数少ない友人である西行寺幽々子だった……。
幽々子「___もうひとりで苦しむ必要はないわ。あなたが考えている以上に幻想郷の皆は強い、強く成長したわ。紫、きっとあなたがこれまで隠し続けていたことを語れば深く傷つく者も現れるでしょう。でもそれで心が挫けてしまい終わるなんてことはない。それでもこの子達は立ち上がるわ。信じましょう紫。皆を、そしてあなたが長い長い年月守ってきたこの幻想郷を」
紫「…………幽々子___」
この世に知らなくていいことはたくさんある。
知らなければ幸せに暮らせる。しかし知ってしまえば今後一生不幸な日々に……。
だったら知らなければいい。
誰かを傷付けてしまう真実があるのならばずっと自分の中で隠し続けることが最善だと八雲紫は考えていた。
別に好んで人を傷つけたいなど思っていない。
『幻想郷の嫌われ者』そんな肩書きがあっても、だ。
紫「___でも……、だけど………」
スキマ妖怪の彼女は周囲を見渡す。
そして、自分を囲む少女らの顔を見た。
紫「……元を辿れば悪いのは全部わたし、原因を作ったのは私なの。すべては私が
全員に聞かせる。
八雲紫は決意した。
大妖怪の彼女は誰の手も借りることなく立ち上がるとスマートフォンを手に持つ、そして画面を操作して幻想郷でスマートフォンを所有している全員に通話を繋げた。
なんで?なぜ?どうして?どうやって?原因は?
そういった疑問を頭によぎったことがあったと思うが、しつこく言及なんてせずこれまで幻想郷を守るため協力してくれた者達すべてに真実を語る時が来たのだ。
紫「学園都市から送り込まれた
大妖怪の彼女は自覚していた。
幻想郷を最悪に導いたのは自分自身なんだと。
無から始まった戦争ではなかった。
“きっかけ”というのはしっかりあったのだ。
嗚呼、どれだけ自分を責めたことか……。
どれだけ自傷行為に走ったことか……。
どれだけ悪夢に魘されたことか……。
毎日、八雲紫は責任に押し潰されていたのだ。
もしもこの命ひとつで物事が治まるとしたら喜んでこの心臓を捧げられる。
自分のせいで誰かが不幸になってしまう。
最悪、望んでもないのに死を迎えることに……。
そんなのは見たくない。そんなのは耐えられない。
紫「ごめんなさい……、ごめんなさい……。何千、何万回謝ったって許されないことをした。皆を危険な目に遭わせてしまった……。私が余計なことをしなければ、今頃みんなは命を奪われる不安なんて抱くこともなく安全な生活が送れたはずなのにそれを全部この私ひとりでぶち壊してしまった……」
霊夢「………それで。アンタは言ったわね?私が
腕を組み左目は閉じていたが開いている右目で八雲紫を見て霊夢は質問する。
紫「……霊夢、
霊夢「忘れるわけないでしょう。あの時のことは全部、鮮明に思い出せるわ。もしも今すぐここであの時に見たこと感じたことを文章にしてみろって言われてもそりゃあもう筆が乗りに乗りまくるでしょうね」
紫「あなたが絶望の淵で藻掻く術を見つけ使った魔法を作ったのは、そしてあの魔法書を書いたのは私よ」
霊夢「どうして?どうしてあんな本を書いたの?そして何故あの本を博麗神社に置いていたの?」
紫「あの子に……、子供ながら憎悪に塗りたくられた冷たい目をしていた
霊夢「憶測なんだけどもしかして
魔理沙「霊夢、魔法ってのは時にその魔法を作った本人や魔法を発動させた本人でもわからない効果を生む時がある、不思議なことにな。魔法を歴史は長いが未だに解明されてない部分が多々あるんだぜ」
霊夢「そう。じゃあやっぱりあの時の魔法が“呪い”に……」
紫「それは違うわ。私が生み出した魔法は私の能力を限りなく本物に複製したもの。けど私の能力はあなた達も知ってる通り結構特殊でね、本物に近い能力の複製を作るにはどうしても魔法という一つの世界だけじゃ足りなかった。それを知った私は他の世界を吸収して魔法の可能性を拡大させることによってまだこの世に誕生してない様々な術を取り入れた全く新しい魔法を作った。そして作った魔法に付与した効果が特定の人物を強制的に幻想入りさせるというもの。その特別の人物ってのはもう説明しなくてもわかってるわよね?例えどんなに間違った方法であの魔法を使用しても“呪い”に転じる可能性はゼロ。これは自信を持って断言できる。
霊夢「……わ、たし………?」
紫「膨大な世界を見渡してもこの世でただひとり、あなたにしかあの“呪い”はかけることができない。あなただけが持つ特別がなければ……ね」
妖夢「霊夢さんだけが持つ特別……“博麗の巫女”ですね?」
紫「正解よ妖夢。そう、博麗の巫女である霊夢にしかかけられない“呪い”が存在する」
霊夢「待って待って、博麗の巫女にそんな力があるなんてわたし知らないんだけど!?」
紫「そりゃそうでしょ。だってわたしがそうさせたんだもの。博麗の巫女の歴史から消去したのよ、あってはならない博麗の巫女の“黒歴史”をね」
霊夢「なんなのよ、博麗の巫女の“黒歴史”って……」
そして……、大妖怪は語り始める。
これは現代の博麗の巫女である霊夢からすれば遠い遠い昔。
博麗の巫女の黒歴史を作るきっかけとなった七代目博麗の巫女の“少女”の過ちの物語。
現在、博麗の巫女である博麗霊夢が『七代目博麗の巫女の名前は?』と聞いたが八雲紫は『あの子の名は口に出せない』と首を横に振った。
もしも彼女の名を口にしてしまうと大妖怪が苦労して博麗の巫女の歴史から、そして幻想郷の歴史からも消した七代目博麗の巫女の痕跡や記憶が復活してしまうかもしれないからだと八雲紫は次に言う。
七代目博麗の巫女。彼女はとても真面目で尚且つ頑張り屋だった。
博麗の巫女としての役目を愚痴一つ吐くことなく毎日全うしていた。
が、しかし。ある日ことだ。彼女は“あるもの”を見て憧れの感情を抱いてしまう………。
七代目博麗の巫女の少女はなにを見て憧れたのか?それは人里の中を歩いている時に“どこにでも居るような普通の女の子”を見てだった。
七代目博麗の巫女はどこにでも居るような普通の少女らと自分を見比べたのだ。
あの子達は別に特殊な力を使ったり武器を持ったりして血の見える危険な戦いなんてしない。
あの子達はどんなに世界が大変なことになっても誰かが助けてくれる。
普通の女の子とは誰かの“ヒロイン”。
しかしだ。『じゃあ私はどうなんだろう?』と七代目博麗の巫女は考えた。
七代目博麗の巫女の彼女には特別な力がある。人間であるくせに妖怪達すら圧倒する特別な力が。
異変解決をするため血飛沫が舞う戦いをこれから何度もしなくてはならないのだろう。彼女は博麗の巫女だから。
そして、七代目博麗の巫女の彼女は次にこんなこと考える。『もしも私が危機的状況に陥ったらかっこよく私の前に現れて笑顔で私を助けてくれる“ヒーロー”は居るのかな?』と。
……………そんなものは居ない。
博麗の巫女であり続けるかぎり彼女は“ヒロイン”になれない。
博麗の巫女は幻想郷の平和を守る“ヒーロー”なのだから。
この世に“ヒーロー”を助ける“ヒーロー”なんて存在しない。
その答えが出た瞬間だった……。
七代目博麗の巫女の彼女の中で今までの真面目で頑張り屋だった自分がガラスのように砕けてしまう。
そして……。そして……。
それから重い足で七代目博麗の巫女の彼女は自宅の博麗神社に帰宅すると部屋に閉じこもってしまった。
『どうして私は博麗の巫女にならなくちゃいけなかったの?』
『どうして私はあの子達のような普通の女の子として生きれないの!?』
それは誰に向けられた問いじゃなかった。
だからその問いに答えられる者は
『どこにでも居る普通の女の子』
それに七代目博麗の巫女は布団の中で丸くなりながらとても強い憧れを抱いた。
そしてその『憧れ』は『妬み』になり『嫉妬』を超越して最終的にドス黒い『憎悪』となってしまった。
七代目博麗の巫女の少女の心の中で色んな感情がぐちゃぐちゃに混ざる。
そして、博麗の巫女に新たな力が生まれた。
七代目博麗の巫女の彼女は布団に潜りながら願った。自分が『どこにでも居る普通の女の子』になるため自分の代わりとなってくれる人が出てくることを。
すると博麗の巫女の力がそれに
博麗の巫女は幻想郷に貼られた二つの結界の一つ、博麗大結界を操ることが可能であるため幻想郷から人を出すことだってできるのだ。もちろんその逆も可。
そう、博麗の巫女の力は七代目博麗の巫女の想い
しかし、七代目博麗の巫女の彼女の願いは自分の代わりとなる人の出現。
なんと驚くことに強制的に幻想入りさせられたなんの特徴もなく臆病なひとりの青年の中に神という大きな存在も凌駕するとてつもない力が生まれていた。
しかもしかも、だ。性格も変わっていたのだ。
以前までは人一倍臆病だったのに幻想入りしてからはとても勇敢になっていた。
そして、困っている人が居たら誰でも笑顔で助け異変が発生すれば即座に異変解決に向かう。
彼のその姿は正しく幻想郷の“ヒーロー”。
強くて勇敢で、そして優しい青年の出現で幻想郷には異変解決や妖怪退治に向かう博麗の巫女は不必要となった。
しかし七代目博麗の巫女がやってしまったことはその程度でのものではなかった。
幻想入りしてからそんな日も経たずに幻想郷のヒーローになった青年。
彼は気づいていなかった、
彼は自分でも気付かない内に七代目博麗の巫女の少女に捧げられたのだ幻想郷に“生贄”として。
そして。まるで自らの意思を持つかのような幻想郷は
これが博麗の巫女の黒歴史の全貌。
幻想郷に全く無関係な人間に幻想郷を護るという使命を身勝手な理由で押し付けて平凡で普通の人生を送れたら幻想郷とは無縁だったはずの人間を幻想郷の守護者にさせた。
幻想郷の守護者となってしまった者はもう二度と幻想郷から出ることは不可能。
そしてその身、その命尽きるまで幻想郷を守らなくてはならないのだ。
が、幻想郷の守護者となった者は幻想郷から与えられた莫大な力を収められる器として“神”となってしまう。
つまり、だ。幻想郷の守護者は死ぬまで幻想郷を守らなくてはならないのだが神になってしまったため、神は寿命がなく老いで死ねないので誰かに殺されるまで永遠に幻想郷を守り続けなければならないのだ。
霊夢「……そんな、そんなことって………」
紫「____私が自身に課した役目は幻想郷のバランスを保つこと。もしも幻想郷のバランスを崩す存在が出現すれば瞬時に実力行使で排除する。排除っていう単語だけで想像できるでしょ?わたしがどんなことをしたか……」
どれだけ非道で惨忍だと言われようと誰かがやらなければいけなかったのだ。
あのまま放置すれば七代目博麗の巫女は時間が経過していくごとに徐々に腐っていき活力のみならず博麗の巫女の力まで失い幻想郷に貼られている博麗大結界も消失してしまう。
もしも博麗大結界が消えようものなら幻想郷にどれだけの被害が広がっていたことか……。
霊夢「____ねえ紫、アンタの話の中で気になっていたことがあるんだけどさ、アンタの話じゃまるで博麗の巫女は幻想郷を守るのが役目みたいな感じだったけど博麗の巫女の役目は博麗大結界の管理だけよ?妖怪退治や異変解決は博麗神社に納められるお賽銭だけじゃ生計が立てられないから仕方なくやってるだけなんだけど?」
一呼吸置いたら、だった。霊夢は取り乱す様子も見せず八雲紫に質問を投げる。
すると、である。
大妖怪は、、、
紫「霊夢。質問を質問で返すようで申し訳ないけれど、じゃあどうして過去、博麗の巫女を受け継いだ者達が妖怪退治や異変解決で受け取った報酬で生計を立ていたか詳しく調べたことはある?」
霊夢「えっ……?」
紫「疑問に思わなかった?違和感のようなものはなかった?どうして代々博麗の巫女は妖怪退治や異変解決で貰える報酬で生計を立てていたかって。神社なら神社らしくお守りや厄除けの御札とか人里で売ればそれで最低限必要な生活費は稼げるのに」
霊夢「確かに……、言われてみればどうして……?」
紫「言ってなかったけど私、初代の博麗の巫女とは結構親しかったの。昔、初代の博麗の巫女が博麗神社のお賽銭だけじゃ生活できないって嘆いていたからわたしが助言してあげたのよ『妖怪退治や異変解決で生活費を稼いでみたら』ってね。そしたら初代から代々博麗の巫女は妖怪退治や異変解決で生計を立てるようになった。それは私にとって好都合だったわ。私だけじゃこの幻想郷という大きな世界のバランスを保つのは難しい、だから私のような人物があと一人くらい欲しかったの」
霊夢「……っていうことは初代から今の代になっても博麗の巫女が妖怪退治や異変解決をしてその報酬のお金で生計を立てるようになっているのはアンタの企み通りってこと?」
紫「そうよ。私を恨む?博麗の巫女を自分から異変解決に向かわせるように仕向けたのは、博麗の巫女から普通に生きれる可能性を奪ったのは私よ。それにもう一つ恨む理由はあるでしょ?私はあなたの祖先も殺害している___」
七代目博麗の巫女。彼女と彼女が幻想入りさせた青年。この二人は八雲紫の手で亡き者とされた。
仕方なかった。そうするしか幻想郷の危機を回避する方法はなかったと言い訳はしようとすればできるが大妖怪は言い訳などしなかった。
幻想郷のバランスを保つため、まずは幻想郷のヒーローとなった青年の寝込みを殺意を持って襲った。
卑怯だがその方法でしか幻想郷のヒーローとなった青年を殺すことはできない。
真っ向から戦いを挑めば絶対に敗けると八雲紫は分かっていたのだ。
そして、そして、だ。
青年を永眠させると次の
しかし直ぐに殺害するわけにはいかなかった。
次の博麗の巫女が誕生するまで待たなくてはならなかったのだ。もしも直ぐに殺害してしまえばそのまま博麗の巫女は幻想郷から消えてしまうことになる。
だから八雲紫は自身の能力を駆使して七代目博麗の巫女が抱いた普通への憧れやすべての幻想郷の住人から幻想郷のヒーローとなった青年の記憶を消し、彼が残した痕跡も消し去ると七代目博麗の巫女が想い人を見つけ、そしてその想い人と結婚し子供を授かるまで待った。
そして七代目博麗の巫女“だった”者とその夫の間で生まれた少女が育ち“八代目”として博麗の巫女の力を受け継ぐと八雲紫は動いた。
七代目博麗の巫女“だった”者の夫と七代目博麗の巫女“だった”者の娘から母の記憶を消す。
幻想郷全体からも七代目博麗の巫女“だった”者の記憶も痕跡も消した。
これで博麗の巫女の黒歴史は完全に消え去った。
しかし残ったもの。八雲紫でも完全に消せなかったものがあった。
それが代々受け継いできた博麗の巫女の力に目覚めた新たな能力。
見ず知らずの誰かを強制的に幻想入りさせ、幻想郷の守護者にさせる力。
巫女が持つべきではない『願い』という名の“呪い”。
紫「___幻想郷の未来を考えてやったことに後悔はしていない。でも分かってるわ、私は許されないことをした。幻想郷の未来のためあの殺しは必要なことだったけれど殺しは殺し。罪を償わなくてはならない。霊夢、あなたには私を裁く資格がある。今まで溜まっていた私に対する恨みも込めて気が済むまで殴りたければ殴ればいい。私を好きにしていいわ。辱めたり、苦痛に苛まれた時間を永久に味わわせることだってしてもいい。でもお願い、それは
霊夢「はぁ?私はアンタを恨む気なんてないけど?だって遠い過去のことでしょ?正直クソほどどうでもいいんだけど」
紫「……本気で言ってるの?」
霊夢「私の顔を見て嘘を言ってるように見える?」
…………冗談や嘘を言ってるようには見えなかった。
博麗霊夢は過去のことだと、通り過ぎた昔の話なんてそんなのはどうでもいいと吐き捨てた。
それもそうだろう。彼女が見てるのは“今”なのだから。
霊夢「博麗の巫女の黒歴史、それは分かったわ。そして私がなにをしてしまったのかもね。でも博麗の巫女に目覚めてしまった“呪い”という力はどうすれば発動するの?」
紫「“願い”という名の呪い。その発動条件はとにかく願うこと。しかもそれは強くね。霊夢、あなたは
霊夢「………願ったわ、暗闇の未来しかない私達を希望の光で照らしてくれるヒーローが現れてくれることをね。でも七代目の巫女のように全部預けて自分は
紫「言ったでしょ?発動条件はとにかく強く願うことだって」
霊夢「…………チッ、自分の力だってのに言うことを聞かないってのは腹が立つわね」
大きな溜め息を吐くと霊夢は、、、
霊夢「で?まだ答えてもらってなかったけどどうしてアンタが作った魔法が記された本を私の家に置いていたの?ってか、あの本の内容はなに?これは言い訳とか責任から
紫「アレが私の手元にあったら我慢できず使いそうだったからあなたの家に無断で置かせてもらったの。
霊夢「ふーん。それにしても意外ね、アンタがそこまで個人に入れ込むなんて。しかも相手は異なる世界の住人だってのに」
紫「そう?妖怪といえど私もひとりの女、人並みに恋だってするわ」
…………………………????????????
八雲紫のその一言。それを聞いた少女らは長時間混乱して停止する。
が、しかし。その後である。
『えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!??』
その場に居る者、そして八雲紫が手に持つスマートフォンからも多くの者の驚きの声が聞こえた。
霊夢「うっっそマジ!?アンタが!?紫が!?」
紫「うん。驚かれるとは思っていたけどそこまで驚かれるとこっちも驚くんだけど。ちょっとみんなリアクションが
霊夢「いや。いやいや、いやいやいやいやいやいや!?アンタはあの八雲紫でしょうが!?今まで他人にこれっぽっちも興味を示すような態度とってなかったじゃないアンタは!!色恋沙汰とは全く無縁なやつとか思うに決まってるでしょ!?しかもまさかまさか相手は
魔理沙「まっ、驚いて当然か。私も紫の気持ちに気づいたときは驚きを隠せなかったぜ。でもこの幻想郷で紫の本当の気持ちに気づいてるやつは私しか居ないと思っていたんだがな、みんな驚いているなか落ち着いた様子だった幽々子もどうやら気づいていたらしいな紫の本当の気持ちを」
幽々子「まぁね♪これは口に出して言わせてもらうけど魔理沙、あなたより私の方が紫のことを多く知ってるわ。紫がどんなに工夫して隠し事しようが私なら容易く見抜ける。なぜそういうことができるかというとそれだけ紫とは長い付き合いがあるから。魔理沙は私と同じことできる?できないでしょ?それはまだあなたは紫の付き合いが浅いから。紫の友人であることは認めてあげてやってもいいけど紫の親友ポジションは私のものだからね?」
魔理沙「あぁ……うん。いいよいいよ要らないよ紫の親友ポジションとか。だからそんな怖い目を私に向けないでくれ。妖夢同様お前のようなやつからそういう目を向けられるとこの後マジに殺しにくるかもしれないって不安で夜も眠れなくなっちゃうだろ」
妖夢や八雲紫の式神達も驚いてるなか、幽々子と魔理沙だけはいつもと変わらぬ振る舞いだった。
そして。霧雨魔理沙は殺意剥き出しの光のない目つきで幽々子に睨まれちょっと怯えた様子を見せていたが八雲紫に視線を向け大妖怪の彼女に質問する。
魔理沙「そうだ。私からも
紫「ええそうよ。よくそれに気づいたわね」
魔理沙「もう一つの質問だぜ。
紫「本当なら“呪い”を受けた者は幻想郷から一歩も外に出れない。けど彼には『ベクトル操作』という能力があった。
魔理沙「なあ、もうなんでもあいつには『ベクトル操作』があるからで説明を済ませようしてないか……?」
紫「実際そうなんだからしょうがないでしょ?」
魔理沙「えーっと。まぁ……分かったよ。でもここでまた一つの疑問ができちまったぜ?『ベクトル操作』で呪いにも存在していたベクトルを操れたんなら呪いそのものを自分の中から消すことだってできたんじゃないか?」
紫「……できたでしょうね。彼は私から見ても天才。この世で天才と呼ばれている者達全員を遥かに凌駕するほどのね。呪いなんて解こうと思えば解けた。けど解く必要がなかったのよ。
霊夢「……………どういことよ」
驚きのあまり情報が頭に入ってこないっていうのにそっちで勝手に話をしやがってとか言ってやろうとしたのだが、博麗霊夢から出た言葉は違った。
八雲紫は一度、霊夢の顔を見るとゆっくりと目を閉じると深く息を吸う。
そして吸った息を静かに吐いてから、、、
紫「まだ
ここで大妖怪の彼女は身を焦がすほど愛している白髪で華奢な体をしている最強の白い彼の姿を思い浮かべる。
すると、だ。
自然と口角が上がってしまう。
ここまでだ。ここまで八雲紫は
間もなく幻想郷は漆黒に塗り潰される。世界は終わるというのに、だ。彼の姿を想像するだけで大妖怪の彼女はとっても幸せな気持ちになっていた。
『愛』というものにはとても大きな力を秘めている。
もしかしたら世界を平和に救う力は『勇気』でもなく『覚悟』でもなく『愛』から生まれる力なのかもしれない………。
紫「___
八雲紫の瞳からはポロポロと涙が流れていた。
黙って聞いていた彼女達は知っていた。
声に出して説明されなくても
彼の度が過ぎる程の優しさを。
霊夢「特異点……、人を引き寄せる特殊な存在。だったら私が、私達があいつと出会えたのは
紫「違う。違うわ霊夢。あなたや皆の
霊夢「………………………………」
涙を手で拭いながら八雲紫は答える。
………博麗霊夢は黙ったまま。
ただ口を結び俯いていた。
紫「……他に質問は?まだ聞きたいことがあるなら遠慮なく聞きなさい。この八雲紫が他者からの質問を素直に答えてくれる機会なんて今後もう二度とこないかもしれないし」
『幻想郷という世界は消えてしまえば次なんてものはないけどね……』と、大妖怪の彼女は心の中でそう呟いた。
魔理沙「……ない、みたいだな。さーて、じゃあ長い話も終わったことだし世話の焼けるあのバカタレを正気に戻してやろうぜ」
しかし……。
誰も動こうとはしなかった。
それを見て霧雨魔理沙は舌打ちをした後に、
魔理沙「あー、そうだよ。皆の思ってる通りだよ。私達は私達の意思で
霊夢「……べ、別に嫌いじゃないし好きではあるけどアンタの言ってるような意味での好きってわけじゃないし………」
魔理沙「はあ……霊夢、お前さっきスッゲー恋する乙女な顔して紫に自分の気持ちは本物か偽物かって聞いていたのにその発言は無理があるぜ?つーか、わたしが知る中でお前が
霊夢「誰が恋する乙女よ!!アンタの方があいつの前で恋する乙女してたじゃない!!」
魔理沙「そりゃあそうだろ。だって私はあいつのこと好きだし。そして当然その好きってのはLIKEという意味じゃなくLOVEという意味だぜ?」
霊夢「あのさー、アンタそういうキャラだったっけ?なんかどいつもこいつもキャラが急変するし、しかも今日は多くの出来事があったから余計混乱するんだけど………」
ポツリと小さく霊夢が呟くとそこから博麗の巫女と白と黒の魔女は普段の調子に戻っていた。
それを黙って見ていた者達は、、、
幽々子「……こんな時だからこそ素直になるってのも大事、ってね。魔理沙はそう言いたいんじゃない?どう妖夢?あなたも少しは自分に素直になっていいのよ」
妖夢「…………はい」
そう言われると、だ。
力強く刀の
妖夢「私は
幽々子「うん、わかった。じゃあそうしましょうか♪」
そして、西行寺幽々子は微笑みながら妖夢の頭を撫でたのだった。
藍「………紫様の望みは私の望み。紫様が本当は
橙「私も皆さんと同じですよ藍様。私も皆さん同じ気持ちです」
藍「そっか………」
そして、そして。各々気持ちの整理はついた。
すると……、だ。
紫「___貴女達、絶望にも屈しない勇気を持ちなさい。でなければ命はないわ。さあ、覚悟の決まった者から私のあとに続け。持てる力全てを使いこのクソったれな現実をひっくり返し返すわよ!!そして戻すのよ、極悪人のせいでバケモノになってしまった
魔理沙「よっしゃー!!じゃあ助けに行くかーっ!!みんなの大好きな
霊夢「魔理沙アンタ本当に黙っててくんないッ!?」
妖夢「すごいですね。紫様のお言葉で皆々更に身に力が入りあんなに重たく張り詰めた空気になったのに魔理沙さんはたった一瞬で全部ぶっ壊せるんですから」
幽々子「いいんじゃない?私はこっち雰囲気の方が好きだな♪今日で魔理沙のことすっごく気に入っちゃったわ♪いつか家に招待しようかしら♪」
妖夢「えぇ〜……、わたし嫌ですよあんなのが白玉楼に来るなんて」
魔理沙「オイコラ妖夢ゥッ!!私のこと“あんなの”って言ったな“あんなの“って!やっぱりおまえ私のことスゲー嫌いだろ!?」
霊夢「ちょっと考えなくても分かることでしょ?魔理沙の日頃の行いを知れば誰だってアンタを家に入れるのを嫌うに決まってるじゃない」
橙「なんたって魔理沙さんは無礼千万の悪名高き盗人ですからね♪」
魔理沙「おぉい!!言い過ぎ言い過ぎィッ!!もしかしてお前らの中で私にだったらなに言っていいみたいな風潮になってないか!?言っとくがそんなことないからな!?キツイ言葉を何度も投げられたら私だって拗ねちゃうからな!!あーあーもういっそこのこと今拗ねちゃおっかな!!拗ねちゃおっかなー!!いいのかなぁ私拗ねたらめちゃくちゃ面倒くさいぞー!?」
藍「………………ゆ、紫様」
紫「チッ、戯れはそこまで。心の準備ができたやつからさっさと私に続いて
『ずっと真面目モードだった私がバカみたい……』と頭の中では落胆しながら心の内で呟くと八雲紫は手に持っていたスマートフォンの通話を切り電源も切るとスキマを開きその中にスマートフォンを入れた。
そしてその後、少女たちは立ち向かう。
勝つためじゃなく、殺すためでもない。
白い最強の怪物を助けるため………、
一人で苦しんでいるヒーローを救うために………。
自身の身を顧みることなく。
「…………………………………………」
目を開くとまず最初に見えたのは亀裂の入った天井だった。
次に白髪で赤い瞳を持つ最強の超能力者は首を左右に振り辺りを見回す。
すると分かった、自分がどこに運ばれ寝かされていたのかを。
この建物には何度も来たことはある。
そこは、、、
「___永遠亭か……」
永遠亭。迷いの竹林の中にある永琳たちの住処であり、重い病にかかってしまった者や重症を負った者が最後の頼りにしている場所だ。
そこに“一週間前”に運ばれたのが現在、永遠亭の病室に置かれているベッドの上で寝ている最強の超能力者・
一方通行「……あン?」
上体を起こす時に首に違和感があった。
一方通行(こいつは………、そうか……)
自分の首に鋼で作られた黒いチョーカーが着けられていることに気付く。
そして着けられた“その意味”も。
一方通行「………チッ」
左腕にはチューブか繋がれていてチューブの先になにがあるかと目をやるとそこには透明な袋に透明な液体が入ってある。
それは学園都市でも見たことがあるもの。点滴だ。
「目覚めたのね
その病室にはドアが無く、通路から室内は丸見え。
永遠亭の主。“隻腕”の彼女はドアの代わりに壁をコンコンと二回ノックする。
一方通行「…………………………」
永琳「あら、まだ目覚めたばかりで寝惚けてるかしら?」
一方通行「……バカが。自業自得だっつの。逃げりゃあ良かったのに自ら爆心地に突っ込むような真似しやがって」
永琳「“あの時”の記憶はあるみたいね……」
八意永琳は完全に左腕を失っていた。
どうしてあらゆる病やあらゆる傷を治療してきた薬師である彼女が大事は左腕を失う結果になってしまったのか……。
それは最強の白い彼の暴走を止めようとしたから。
しかし幻想郷のあらゆる実力者の力を結集させ
どこまでも黒い翼を大きく広げ暴走する白い怪物を止めようと向かった時は少女らの瞳に覚悟の光があった。
でも……、それは一瞬で消えることになる。
永琳「……あの戦いはとても苦しかった。いいや、あれを戦いと言うのかも怪しいわ。あまりにも事態は一方的で、あの場に居た者達は恐怖で身を震わせるか悲鳴を上げるしかできなかった。でもあなたがひとりで苦しんでいたから私達はあなたを苦しみから開放させたくてやった。私達の理想の結末とはだいぶ違う最悪の結末になってしまったけどきっと誰も後悔はしていないと思う。絶対の終末に抗った結果、代償としてあなたの暴走を止めようとした者は体のどこかを欠損してしまったけど……それもみんなそのくらいの負傷は覚悟していたわ」
一方通行「チッ。どォして幻想郷のやつらはどいつもこいつもバカばっかなンだ」
すると、だ。
永琳「どこに行くの?」
一方通行「答えなくちゃいけねェのか?外出くらい自由にさせろよ。別に俺ァどこも怪我してねェンだ、安静になンかする必要はねェだろ」
永琳「そうね
一方通行「俺がなにをしたかこの目で見てェンだ……」
永琳「そう……。分かったわ」
そう言うと、だ。永琳はあるところに指をさす。
永琳「そこに杖があるでしょ?使いなさい今のあなたには必要なものよ」
一方通行「………あァ」
ベッドの頭の方に立てかけてあったにシンプルなデザインの木製の杖を握ると床にあった靴を履き
永琳「ボロボロでしょ?こんな有り様だからここが屋内か屋外か分かんなくなりつつあるわ」
一方通行「………………………………」
廊下に出てみれば廊下の壁には亀裂が入っていたり人ひとりが余裕で通れるくらいの大きな穴があったりした。
そして。その大きな穴から外に出る。
一方通行「これが迷いの竹林_____」
永琳「______“だった”ところよ。こんなんじゃ迷う人なんて誰も居ない。妹紅ちゃんやてゐのような案内人はもう不要になっちゃったわ」
深い霧が無けれは竹もない。
緑の植物が全く生えていない死んだ大地。
それが
永琳「もうじき幻想郷は崩壊するでしょう。いいやこれは崩壊した後って言った方が正解かしら」
一方通行「ここ以外もこンな感じなのか?」
永琳「運良く自然や建物が残ってるところあるって話では聞いたけど、せいぜい残ってる自然ってのは今にも倒れそうな木とか枯れた草だけ。建物だってちょっと小突けば崩れそうなものばがりよ、あなたがさっき居た永遠亭のようなね」
幻想郷全域がどんよりとした空気。
空は黒い雲しかないのだが、不思議と物が見えるくらいの光は確保できていた。
一方通行「………そォか。そォだよなァ。これだけのことォすりゃあ当然だよなァ。オマエがそンな目で俺を見るのも頷けるぜ、なァ永琳」
永琳「ッ」
一方通行「俺が初めて幻想郷に来た時はそりゃあ酷い有り様だったが、これはあの時の幻想郷より酷い。あれはオマエ達全員が暴れた結果だったがこれは俺がたった一人でやったことだ。怯えるよな、怖ェよな。“こンなモン”をつけるくらい」
一方通行は指先で自身の首に巻かれている黒い鋼のチョーカーを突く。
すると、、、
永琳「それに……触らないで」
一方通行「ハッ」
八意永琳は隠し持っていた拳銃の銃口を
薬師の彼女が持っている拳銃はかつて学園都市から送り込まれた
永琳「もう気が済んだなら早くベッドに戻りなさい
一方通行「そして……また睡眠薬を大量に俺の体内に注入して長時間眠らせるつもりか?」
永琳「………どうして。あなたはもうベクトル操作も模倣能力も使えないはずなのに、どうして分かったの……?」
一方通行「どうやら“オマエ達”は俺の能力を完全に封じることはできなかったみたいだな。ベクトル操作はまだ使えるぜ?ま、と言ってもレベル1程度の少量の力だがな。それでも自分の体のベクトルを解析するくらいはできる。俺は学園都市に居た時は狂ったやつらの実験動物をやっていた。体の隅々を調べられたりくっだらねェ実験に付き合わされ薬を何度も何度も打たれた。そのおかげか薬物の成分とか詳しくなっちまってな。で、俺の体の中に強力な睡眠作用のある成分あったことがわかった___」
永琳が拳銃を下ろすことはなかった。
銃口を
そして隻腕の薬師の彼女が銃でどこを狙っているか?
彼の白い頭だ。
頭を銃で撃てば人は殺せる。
もしも運良く生きていたとしても白い怪物の能力は演算して発動しているため、脳にダメージを負えば超能力は失われるだろう。
一方通行「___だがベクトル操作がまだ使えるといっても銃弾を反射できるほどの力はないぜ?頭、脳を撃ち抜けば確実に俺を殺せるぞ」
永琳「どこの誰かは知らないけど幻想郷をめちゃくちゃにした原因であるあなたを殺せばこの生き地獄から開放されるって答えを導き出した者がいたらしい。もしそれが本当ならば私は___」
一方通行「___俺をその銃で殺すか?弁解する余地なンて俺にはねェ、俺が引き起こした惨劇の結果をこの目で見た後じゃな。あァそォだ。そォだよ。幻想郷をここまでぶっ壊したのは俺、学園都市に7人しか存在しない
怖い。怖い怖い怖い怖い。
アレからずっと頭の中にずっとある光景があった。
一点の光もない黒い翼の一撃は天地を裂く威力。
轟音の中から聞こえるのは知り合いの悲鳴。
砂煙が激しいなか誰かの大量の血が飛び散る。
八意永琳の中ではあの時からずっと覚めない悪夢が続いていた。
一方通行「___って言ってみたが見ろよ永琳。かつて最強だった俺様が恐怖で震えてやがる。最強の力を失えばこのざまだ。今までだったら銃を向けられようと平気で笑っていたってのに心臓の音はバカにうるせェし手足はガタガタ震えてやがる。オマエ達が俺をこうさせた。超能力だってそいつを構成しているものの一部、つまり俺はオマエらに超能力という俺という存在を構成していた一部を奪われたンだ。許せねェ、許せねェよな。許せるかよクソったれがァァ!!確かにオマエらは平穏な日常を奪われた。そしてオマエ達から平穏な日常を奪ったのはこの俺だ。でも失ったのはオマエらだけじゃねェ、俺は失ったンだ超能力をな。オマエらに奪われた!!今まで散々救ってきてやったのによォ!!」
パァン!!
乾いた音。その音の正体は銃声だった。
一方通行「…………………………」
永琳「……はぁ……はぁ………はぁ……はぁ……」
息遣いは荒く、震えた手で撃ったからかずっと狙っていた頭部には外してしまった。
しかし、、、
一方通行「チッ、痛てェな」
白い彼の頬を銃弾は掠めていた。
彼の左頬には横に一線の傷ができていて、そこから血が重力の向きに従い地面に垂れていく。
永琳「もう一度言うわ。これは警告よ。私に従い大人しくベッドに戻りなさい。もしも従わないのなら次はあなたの脚を撃ち抜くわ」
一方通行「戻れば殺されるかもしれねェってのに誰が従うンだァ?オマエらは既に知ってるだろォが俺ァ敵に容赦しねェ。そいつを
永琳「私達はあなたの敵になった………」
一方通行「あァそうだ。これまで何度もオマエ達を助けてやった。なのにオマエらはその恩もなかったことにして杖を使わなきゃ歩けないくらい体を不自由にしただけじゃ飽き足らずこの俺様の首にクソなモンを付け俺から『最強』を奪った。で、次は俺の命を奪おうとしている。そンなやつを仲間とは呼べねェだろ」
そして。
一方通行「撃ちたきゃどこでも好きに撃てよ。一回は見逃してやったが、次はねェ。次撃てば俺はオマエを殺す」
以前のような幻想郷最強の力はない。
今の
『最強“だった”彼をそこまで弱らせたのは私たちだ……』と、八意永琳は自分たちがなにをしたのか改めて思い知ることになる。
しょうがない。仕方がない。こうするしかなかった。他の選択の余地がなかった。
そんな言い訳をしたところで意味がないのは知っている。
永琳はずっと拳銃を握り構えていた。
ずっと拳銃で
が。が、である。
気が付けば薬師の彼女の前から
永琳(これまで私は人間、そして妖怪らと比べてもそれはそれは長過ぎる生涯のなかで数えきれないほどの命を救ってきた。そのことは誇りに思ってるし誰かの命を救うたび私は誰かの命を救うことが私の役目であり幸せだと気づいてた____)
八意永琳の震える手から拳銃が地面に落ちる。
そして薬師の彼女は自分の手から落ちた拳銃を憎悪を込めて睨みつけた。
永琳(____こんなもの……、こんなもの私は大嫌い。相手に向かって発砲するだけで簡単に命を奪う邪悪な道具がこの世にあっていいはずがない)
しかし永琳はその拳銃を広い自分の着ている服の中に忍ばせる。
すると、である。永琳は永遠亭に向かって歩き出した。
永琳「…………わたしたちは、どこで道を間違えてしまったの」
風に流すかのように、、、
悲しい目をして永琳は呟いた。
『最終記録』
今回の学園都市と幻想郷の闘争で
学園都市の闇を体現したかのような暗部という存在。
ただの闇とは言えないほどより真っ暗な闇。それは純粋な黒だった。
光なんてものが少しもない純黒の世界にしか居場所を持たぬ者達が幻想郷に来て起こった異変。
それは平和を夢見た者にとっては最悪な形で幕を閉じる。
「どこに行っちゃったんだよ………、
終末特異点が降臨したがなんとかまだ存在している幻想郷には絶望と混乱、そして狂気が充満していた……。
そんな幻想郷で生きている“隻眼”の白と黒の魔女が瓦礫の山の中から発見したのはかつて自分が学園都市の暗部が幻想郷に来た時の出来事などを記録していたノート。
彼女はそれを手に取り最後のページを読みながら残った左目から涙を流していた。
あの時のことを思い出すと左足の義足の付け根部分が痛む。
皆は心が折れてしまった。
また皆が再び立ち上がることは……もう無理かもしれない。
誰もが未来を諦めた世界で“隻眼”の白と黒の魔女は立ち向かっていた。
____最悪の絶望に“たったひとりで”。
第四章・【純黒に生きる侵略者】___完。
次章予告。
超能力には制限という縛りをかけられた。
満足に力を使うことができなくなった
現在の幻想郷には最強のヒーローは居ない……。
しかし、アレイスター=クロウリーは手を緩めることは決してしなかった。
最終計画『
『終わりにしよう。これまで続いた幻想郷と学園都市の戦争を』
次章・最終章【幻想郷は
博麗神社の巫女・博麗霊夢
「アンタは、いや“オマエ”は私がブチ殺すッ!!学園都市統括理事長・アレイスター=クロウリーッッ!!!!」
“隻眼”の白と黒の魔女・霧雨魔理沙
「今まで散々やってくれたなアレイスター!!私達でお前をぶっ倒してやるぜ!!」
大妖怪・八雲紫
「終わりにしましょうアレイスター。あなたの幻想はこの八雲紫が粉々に打ち砕いてやるわ」
右手に『
「テメェの
幻想郷最強の超能力者・
「あばよオマエら。オマエらとは今日でお別れだ。オマエ達と一緒に過ごした幻想郷の日々は……悪くなかったぜ」
と、その前に第四章と最終章の間で起きた一つの物語。
番外の章【闇を穿つ天使】
学園都市・
(なんだこの変なガキ……?)
「……天使、さま……?」