幻想郷を一方通行に   作:ポスター

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※誤字脱字などのミスが必ずあると思います。
それをご了承のうえ読んでいただけると幸いです。
しかし、そういったミスが多いのをご不快に思う方にはブラウザバックをオススメします。


参話

────さすがにすぐその日には無理だったが、初春飾利はあれから翌日病院に行って身体検査をしてもらった。

 

結果は良好。

なにひとつ異常はなく極めて健康体と審査された。

 

その結果を皆に報告すると超能力者(レベル5)第三位・御坂美琴は誰よりも安堵した顔をしていた。

 

すると、である。

 

その後、御坂美琴は真剣な顔をして初春に言う。『いい?初春さんが会ったという天使のことは忘れて。誰かのことを心配するのは悪いことじゃない、けど“ヤツ”は人から心配されても迷惑にしか感じないと思う。それに“ヤツ”は強い、誰かの助けを借りなくてもいいくらいにね』と。

 

初春飾利はそう言われると首を縦に振り一言『わかりました⋯⋯』と答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────ごめんなさい、御坂さん⋯⋯。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初春「やっぱり裏路地は薄暗いですね。先に全く進めないとまでじゃありませんが、これ以上暗い場所があると足元を照らす懐中電灯とか必要になりますね」

 

まだ日の高い時刻。

学園都市の薄暗い裏路地。

そこに奥へ奥へと進む一つの人影があった。

 

風紀委員(ジャッジメント)に所属する初春飾利である。

 

初春「ここもハズレ⋯⋯ですかね」

 

頭に花畑のような髪飾りをつけている彼女がファミレスで仲の良い友人たちに自身が経験した摩訶不思議なことを話してから、である。

あれから初春飾利は学校が終わってからだったり、風紀委員(ジャッジメント)の活動がない時間を使ったりして、あの日出逢った『天使さま』を探していた。

 

御坂美琴には『天使さま』のことは忘れろと言われた。

 

わかっている。

それは自分のことを心配しているから言ってくれたのだ。

もしかしたら『天使さま』は“危険な人”なのかもしれない。

 

しかし。

それでも初春飾利は『天使さま』を忘れるなんて、できなかった。

 

 

そして。

花畑のような素敵な髪飾りをつけている少女は、今回で何回目はもう数え切れないほど行っている裏路地探索を終えようとしていた。

 

初春「はあ⋯⋯。あの感じから見て『天使さま』はこういう薄暗い路地を頻繁に利用していると思うからこうやって薄暗い路地を探索していればそのうち会えると考えいたんですが、全然うまくいきませんね⋯⋯⋯」

 

裏路地から出ようと来た道を戻ろうと後ろへ振り返る。

 

すると、である。

 

 

カンッ!カンッ!ギギギギギギギギッッ!!

金属製のものをコンクリートの地面に引きずる音が聞こえてきた。

 

 

初春「───────あっ」

 

真っ直ぐこちらに向かってくるガラの悪い男。

そいつは鉄パイプを引きずっていた。

 

初春飾利は鉄パイプを引きずって近づいてくる男を視界に捕らえた瞬間すぐその場から逃走する。

それは『このままここに居たら危険』と思ってだった。

 

とにかく鉄パイプを引きずる男から遠く離れる。

危機的状況だと自覚していたが初春飾利は冷静だった。

直ぐ様、先程まで向いていた方向へ振り返ると裏路地の奥へと走り出す。

 

そこからは未知の場所だ。

しかし鉄パイプを引きずる男に“捕まる”より安全なのは確かだ。

 

 

5メートル先に進むと左右に別れる道があった。

 

それが運命の分かれ道。

 

もしかしたらどちらかは行き止まりかもしれない。

いや、もしかしたらどちらも行き止まりなのかもしれない。

 

そんな考えが脳裏に浮かんだが初春飾利は迷わず左に進むことを選択する。

 

 

だが────、

 

 

「ヒァハァッ!!」

 

初春「う⋯⋯ッ!!」

 

進もうとした道。その曲がり角からもう一人の鉄パイプを握る男が出てきた。

その男は握る鉄パイプを思いっきり花畑のような髪飾りをつける少女目掛けて振るう。

 

鉄パイプで殴られた初春飾利はそのまま地面に倒れてしまう。

 

「オラァ!オラァ!オラァッ!!!!」

 

それからは滅多打ちだった。

地面に倒れた少女に容赦のない追撃。

曲がり角から出てきた男は何度も何度も何度も強く握り締めていた鉄パイプを初春飾利に振り下ろす。

 

「おい待て待て、待てって。そんなに“商品”に傷をつけるなよ、売る時の値が落ちちまうだろうが」

 

「あっ!悪い悪い♪こういうの久しぶりだからついやり過ぎちゃったぜ♪」

 

「ったくよォ。まっ、ボロボロの女のほうが興奮する変態趣味(マニアック)な買い手も居るが、そういうのは数少ねえからな。次は気をつけてくれよ。あー、もしもしこちらチームβ。獲物は捕らえたぜ」

 

鉄パイプを引きずっていた男はやる気の見えない態度でポケットから取り出すと、その取り出した携帯電話で仲間に通話していた。

 

「うんうん♪これで完璧だな♪」

 

鉄パイプを引きずっていた男が電話をしている最中、もうひとりの男はニタニタと気味の悪い笑みを浮かべて地面に倒れて動かない風紀委員(ジャッジメント)の少女の手や足をロープで縛る。

 

それから、である。

そこに次々と金属バットや拳銃など物騒なものを所持した男たちがやってきた。

 

なんとか意識を保っていた初春飾利は細く開けた目で自分の周りに集まってきた男たちを見て、男たちがどんなやつらなのか、彼女は理解する。

 

武装無能力者集団(スキルアウト)。

不良。無法者。

法で取り締まるべき犯罪者集団。

 

風紀委員(ジャッジメント)ととして活動している初春飾利はスキルアウトとは何度もぶつかってきた。

それで危険な目に遭ったことも何回もあった。

でもそういう時は決まって初春飾利と同じく風紀委員(ジャッジメント)に所属している白井黒子が助けてくれた。

 

しかし今回それを期待するのは無駄だろう。

白井黒子だけじゃない。初春飾利は自分が今、行っている裏路地探索は誰にも言っていない。

 

だから今回は自分ひとりの力でこの危機的状況から脱しなくてはいけないのだ。

 

わかっている。

それは想像以上に困難を極める、と。

 

だが。しかし。

できるできないじゃない。

 

やるしかないのだ。

 

体の所々に打撲がある初春飾利は自身の周囲に集まっているスキルアウトたちにバレないよう目を盗み小さく行動する。

 

最小限の負傷でこの場から逃れるように。

 

「おい」

 

初春「────ッ!?」

 

傷を負った風紀委員(ジャッジメント)の少女の周りに集まるスキルアウトのひとりが一言発する。

その一瞬、初春飾利は痛みを覚えるほど鼓動が高鳴る。

 

だが。

そのあとすぐにわかったのだがスキルアウトの男たちはまだ初春飾利がなにか企てていることには気づいてなかった。

 

しかし。

これから“地獄が始まった”。

 

ここが風紀委員(ジャッジメント)・初春飾利の運命の分岐点。

 

 

「────こいつが最近ここら辺を嗅ぎ回ってるゴミクソ風紀委員(ジャッジメント)だろ?でも、こいつの“ポイント”がいくつかまだ判明してないんじゃねえか?」

 

「おっ、そういえばそうだったわ。じゃ、今から調べるわ」

 

そういうと、だ。

スキルアウトの中のひとりがスボンのポケットから携帯端末を取り出した。

そして、それでロープで手足を縛られ地面に倒れている少女の顔を撮る。

 

すると、だ。

 

「でたでた。なになに、所属は第177支部で柵川中学の1年、名前は初春飾利⋯⋯。ポイントは1ポイントだってよ」

 

携帯端末に備わっているカメラ機能。

それで写真を撮っただけだった。

 

たったそれだけなのに所属している支部、通っている学校、そしてフルネームまで、すべて的確に知られた。

 

それはさすがに驚くしかなかった。

 

初春「な、なぜそれを⋯⋯⋯?それにポイント、とは?」

 

「あっ☆もしかして知りたい?知りたいの?うんうん知りたい顔してるね!ヨシ!しょうがない優しい優しいお兄さんが君に特別に全部教えて、あ、げ、る☆」

 

初春飾利の顔を携帯端末で撮った男は不気味な笑みを浮かべていた。

とても楽しそうにしているその男を見て、周りにいたスキルアウトの中には『うわっ、また始まった⋯⋯』とうんざりした様子で呟く者も居た。

 

「学園都市の生徒なら知ってると思うけど学園都市に存在するすべての能力者の頂点、一方通行(アクセラレータ)っていうクソ野郎がこの街から姿を消したって噂を一度は聞いたことがあるよね?それが本当かそれともただのデマか、その答えを俺たちは知っている。本当にこの街から忽然と消えちまったのさ最強様は。第一位、学園都市最強が消えた。その噂が流れてからこの街はどうなった?他の能力者たちは第一位が消えてから自分の力を他者に見せつけるように暴れるようになったよな。まるで『次の第一位になるのは自分だ!!』と訴えるように。第一位、最強という称号はとてつもない魅力を感じるからな、わかってやれるぜあいつらの気持ち。だが俺たちは無能力者(レベル0)、空いた玉座を狙える権利すらない。だがいいんだ、俺たちは俺たちで狙っているものがあるからな。スキルアウト、そうやって呼ばれている集団は学園都市にいくつもある。そしてスキルアウトは必ずと言っていいほど縄張りを所持している。ハハッ、ここからが面白い話になるぜ─────」

 

気持ち良さそうに語るスキルアウトの男は笑顔を絶やすことなく語り続けた。

 

「────俺たちスキルアウトの住処はこういう陽の光が届かないこういう裏路地だけだ。だがそれは“あのクソ野郎”も同じ。その“クソ野郎”とは誰だと思う?学園都市から姿を消した第一位様だよ。あのクソ野郎もこういった裏路地を良くに通り道にしていた。だからスキルアウトが第一位と偶然に裏路地で会うってのは珍しいことじゃねえ。俺たちがあいつと遭遇しないようどんなに頑張ってもな。そうさ、俺たちはあいつをずっと避けていた。正直に言って第一位を恐れていたのさ。まあ、脳ミソ空っぽなバカは無鉄砲に第一位に挑んでたりしていたけどな。あいつだけは人間とは呼べねえ。俺たちは知ってるのさ第一位がどれだけ冷酷無慈悲なバケモノなのか。第一位に喧嘩を売ったやつ、第一位に偶然会っちまったやつが二度と病院から出てこれない体になったなんて話はもう数え切れないほど聞いた。だから第一位が出没すると言わている場所には俺たちスキルアウトでも近寄らないようにしていた。だが!だがあのクソ野郎はこの街から消えた!するとどうなる!?始まるんだよ!!始まっちまうのさ自ずと!!あのクソ野郎が消えたことにより空いた土地を巡ってスキルアウト同士の抗争がな!!縄張りを広く、そして多く所持しているほどその集団の力となる!!そいつはスキルアウトも一緒だ!!無能力者ってのは学園都市ではゴミクズのように扱われ、俺たちスキルアウトは学園都市には無価値と烙印を押されたゴミクズの集まりだ。だが、お前ら風紀委員(ジャッジメント)はスキルアウトは悪人の集まりだと思ってるようだがそれは間違った認識だぜ。スキルアウトは能力者になれず、能力者に迫害を受けた哀れな被害者の居場所でもあるんだよ。それはどこのスキルアウトも一緒、だから違うグループでもスキルアウトだったら同じ志を持つ同志と言える。だから俺たちはスキルアウト同士で抗争することは可能ならしたくない。でも、他のやつらより多くの縄張りは欲しい。そこで、俺たちは考えた平和的な抗争を。スキルアウト同士で殺し合わなくてもいい方法を。そして、俺たちが出した平和的な抗争が風紀委員(ジャッジメント)狩りさ!!」

 

 

最近、風紀委員(ジャッジメント)に所属している生徒の多くが襲われたり消息不明になる事件が多発していた。

どうしてそんな事件が最近多発しているのか不明だった。

 

しかし。初春飾利は知った。

なぜ、どうして罪もない風紀委員(ジャッジメント)に所属している生徒が意識不明になるまで痛めつけられ、病院のベッドから一歩も出れなくなるほどの重傷を負っていたのか。

 

初春(⋯⋯⋯⋯許せない)

 

縛られ身動きが取れないが、初春飾利は怒りの炎を心の中で激しく燃やしていた。

 

「また新たな被検体を捕らえた、と報告があったので来たのですが。またあの話をしていたのですか」

 

「おっ!博士じゃないっすか!」

 

「なんでもかんでもペラペラ喋ってしまうのは感心しませんね」

 

「いやー、俺ってお喋りなもんでッ☆話しをするのが大好きなんすよッ☆ごめんさい♪」

 

「そうですか。まあ、あなたたちとは我々の崇高なる計画の弊害になるようなこと以外なら好きにしていいという契約ですが。しかし、忠告はさせていただいます。口は災いの元、という諺があることをお忘れなく」

 

その場に新たにもうひとりやって来た。

“博士”と呼ばれていた者は片手にアタッシュケースを持っていて、そして真っ白なスーツの上に白衣を羽織る腰まで伸びた黒い髪のとても中世的な容姿をしていた。

“博士”と呼ばれる者からの忠告を受けたスキルアウトの1人は、適当に謝っていた。

 

「あっ、そうだ☆そういやこの人なんだぜ?俺たちに風紀委員(ジャッジメント)狩りを勧めてきたのは。なんでも、この人たちにとって風紀委員(ジャッジメント)っていう存在は邪魔でしかないんだってよ。なんでだと思う?」

 

「バカ野郎が。さっき博士にペラペラ喋るなって忠告をされたろ。お前は記憶力ゼロか」

 

「でもでも喋りたいし見たいんだよ、学園都市の闇を知ったこいつら風紀委員(ジャッジメント)のやつらの絶望した顔を」

 

「はぁ⋯⋯わかりました。そこまで彼女に話したいのなら話してあげることにしましょう。どうやら彼女も知りたい様子ですからね。しかし、それは私にやらせていただきます。それで構いませんね?」

 

「えぇ〜、俺が話してぇのに〜」

 

「それでいいっすよ。頼んます。こいつだとマジで余計なことまで喋りそうなんで。その点、博士なら安心っす」

 

「さて───」

 

手足を拘束され、地面に倒れている初春飾利の前に“博士”と呼ばれている者は持っていたアタッシュケースを置く。

そして。

 

「まずはあなたに私たちを正しく認識してもらいます。あなたは私たちを悪の者と思っていますね?ですが、それは違います。私たちは悪ではない、私たちは巨悪の打倒を志す善なる者です」

 

初春「なにを最初に言うかと思えば、まさかそんなことを言うとは。女子中学生に暴行を加えたうえ、身動きが取れないよう拘束している人たちの口から出た言葉が自分たちは悪ではなく善、ですか。一般の人がこの現場を見たら、100人中100人があなたたちを悪と言いますよ」

 

「テレビ中継された戦場を外野からしか見てない者には戦場の大量虐殺を阿鼻叫喚の地獄としか見えません。しかし戦場に立ち、己の命を懸けて戦っている者は違う。阿鼻叫喚の地獄の中であろうと、戦う者の心には常に絶望を跳ね返す眩い光を放つ希望があります。そう!戦場に立ったことのない者は命を奪うという行為はすべて悪としか捉えることのできない!!一般の者にはわからない!!戦場でしか見ることのできない希望があるということがッ!!戦場はいつも地獄ですが、希望もあります。戦争、それは殺意と殺意のぶつかり合いです。しかし!正義と正義のぶつかり合いでもあるのですよ。それがわからない一般の者など、私たちは眼中にありませんよ。どれだけ私たちを悪と批難しようとどこ吹く風です。まあ、私たちは善なる者ではありますが闇の住人であることは否定しません。どれだけ気高い思想や理想を持っていようと、闇に染まらなければ倒すことのできない悪がこの世にありますから」

 

初春「⋯⋯⋯あなたは、あなたたちはなにをしようとしてるんですか、我が身を闇に染めてまで」

 

「諸悪の根源、学園都市統括理事長・アレイスター=クロウリーの抹殺」

 

初春「学園都市統括理事長の⋯⋯抹殺⋯⋯」

 

「アレイスター=クロウリー。やつは無数の腐り狂った計画(プラン)を同時並走で進めている。そして、学園都市に住まう者ならやつの何かしらの計画(プラン)の巻き添えを食うことになる。それは絶対なのです。私たちは腐り狂ったアレイスターを殺し、やつの被害者をこれ以上増えることのない世界を築く。やつの魔の手からすべての人を解き放つ!そして学園都市を、いや!!この世界を隅々まで豊かにするのですッ!!」

 

初春「それで、なぜ⋯⋯、風紀委員(ジャッジメント)狩りなんてやるんですか?なぜ風紀委員(ジャッジメント)が邪魔なんですか?」

 

「風紀委員(ジャッジメント)は腐り狂っているアレイスター=クロウリーが作り、そしてアレイスター=クロウリーに毒されている集団です。我々が築こうとしている世界にはあなたたち風紀委員(ジャッジメント)は邪魔な存在でしかないのですよ。しかし、そんなあなたたちでも我々は見捨てません。あなたたちも私たちは救います」

 

初春「救い?これのどこが救いですか⋯⋯ッ!!」

 

「立派に救ってるじゃないですか。お辛いでしょう?悪の存在でありながら自分は善だと思い込みながら生きていくのは」

 

初春「⋯⋯⋯⋯わたしから見れば腐り狂っているのはあなたたちだと思いますよ」

 

「悪の存在のあなたに理解してもらおうとは思っていませんよ。悪と善は未来永劫相反するものですから」

 

───さて、と。スキルアウトの男たちから博士と呼ばれている者は息を吐く。

 

そして。

 

「では、あなたがどんな結末を迎えるのかを最後に教えましょう。あなたから我々に抵抗しようとする意思を削ぐため、そして私がアレイスター=クロウリーを抹殺するために開発している薬が完成したかどうか知るために、あなたにはある薬の実験台になってもらいます。その後、あなたは学園都市外に運び出しお金を持て余す資産家に性玩具として売られることになります」

 

初春「最後に、わたしも教えてあげますよ。あなたたちは近い未来、必ず大きな壁を当たることになります。どれだけ人を、そして武器を集めたところであなたたち以上に力を持つ権力者にあなたたちは倒されます」

 

「はっはーっ!!それはないね。俺たちには強い味方が居るからね。統括理事会のお偉い様方という強い味方がね」

 

初春「統括理事会の人たちが?そ、そんなの、嘘に決まってます⋯⋯ッ!!」

 

注意をされて大人しく黙っていたお喋りなスキルアウトの男が口を開いた。

お喋りなスキルアウト男はズボンのポケットから携帯端末を取り出し、それを見せびらかしながら続けて話す。

 

「どうして俺たちみたいなのが風紀委員(ジャッジメント)一人一人の情報を持っているのか、そしてこんなに大暴れしているのに未だに俺たちは捕まってないのか、統括理事会のお偉い様方が俺たちの味方をしているからと言えば納得がいくだろ?まっ、統括理事会のお偉い様方、全員が全員俺たちの味方をしてくれているわけじゃあねぇけどな。でも統括理事会の半分以上のお偉い様方はスキルアウト(俺たち)の味方だぜ」

 

初春「⋯⋯⋯そんな⋯⋯⋯」

 

「あっ!顔色が変わった!その顔だよ俺はその顔が見たかったんだ!!この話を聞いた風紀委員(ジャッジメント)は全員その顔になる!!どうだどうだどんな気分だ!?自分たちの味方だと思っていた人たちが実は敵だったと知った時はどんな気分なんだァッ!?」

 

静かで薄暗い裏路地。

そこでお喋りなスキルアウト男の高笑いが木霊する。

『まったく⋯⋯』と、博士と呼ばれている者は息を吐く。

が、その後は博士と呼ばれている者が淡々と話す。

 

「────しかし、そうですね。スキルアウトの皆さんと私だけでアレイスター=クロウリーを抹殺し、学園都市に変革をもたらそうとなんて、最初から考えてませんよ。と、いうより、アレイスター=クロウリーの抹殺計画や風紀委員(ジャッジメント)狩りを発案したのは統括理事会という席に座する我が主、ですがね」

 

初春「今までの騒動はすべて統括理事会の人たちと統括理事長の抗争が原因だった?そして私たち風紀委員(ジャッジメント)はその抗争に巻き込まれただけ⋯⋯」

 

「巻き込まれた、と思われるのは不快ですね。あなたたち風紀委員(ジャッジメント)もこの学園都市を歪めている一部なのですよ」

 

そして。そして、である。

スキルアウトの男たちから博士と呼ばれている者は『では、そろそろ始めますか』と言うと、周りのスキルアウトの男たちが一斉に地面に倒れ手足を拘束されている初春飾利の体を押さえつける。

 

博士と呼ばれている者は、地面に置いていたアタッシュケースを開けるとその中から直径15センチほどの大きさの注射器を取り出す。

その注射器にはもう既に液状の薬が入っていた。

 

「大きな声で助けを求めてみたら?もしかしたら心優しい人が、統括理事長暗殺計画に加担してない善人ぶってる他の統括理事会の人が君を助けてくれるしれないよ。な〜んて、そんなミラクル起きるわけないけどね〜!!」

 

お喋りなスキルアウトの男はニタニタ笑いながら、初春飾利の身体を押さえてつけていた。

頭に花畑のような髪飾りをつけている風紀委員(ジャッジメント)の少女は最低限抵抗しようとする。

が、しかし。非力な女子中学生ひとりの力では数名の男の力に勝てなかった。

手足を暴れさせたくても暴れさせられない。

その場から逃げたくても逃げられない。

 

絶対的、そして圧倒的な恐怖が初春飾利の心を支配する。

 

「それで?博士、今回の薬はどんなやつなんすか?」

 

「前回のは人体を脆くさせる薬でしたが、今回のは人体を腐敗させる薬です」

 

「ええ!?大丈夫っすかそんなもん打ち込んで!?忘れないでくださいよ、この子は最終的に売り飛ばすんですよ。そしてその金は俺たちの今回の報奨金なんですからね」

 

「安心してください。この少女の値が落ちるようなことはしませんよ。しかしこの少女を買った人の手から逃げる、なんてことがないようにこの少女には足を一本失ってもらうだけですよ。ほら、足が一本しかなかったら逃げる心配ないじゃないですか。そうすれば買い手もそれで安心して購入できるでしょう?」

 

「そうっすね!さすが博士!!頭いいですねッ☆」

 

スキルアウトの男と博士がそんな会話をしていた。

その会話を聞いていた初春飾利は心の底から震え上がる。

しかし。悲しいことに複数の大きな力で地面に押さえつけられていて、逃げたくても逃げられなかった。

 

そして。そして、である。

 

スキルアウトの男たちから博士と呼ばれている者はアタッシュケースの中から取り出した注射器、その針を地面に押さえつけられている風紀委員(ジャッジメント)の少女の足に刺した。

 

「さて、これでどんな反応を起こすのか。観察しましょうか」

 

初春飾利の右足に注射器の中にあった薬はすべて注入された。

すると、彼女を地面に押さえつけていたスキルアウトの男たちは一斉に離れる。

 

初春(熱いッ!!熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱いッッ!!!)

 

“人体を腐敗させる”という薬を打ち込まれた右足に激痛が走る。

だが、それだけではなかった。

初春飾利は自身の右足に異常なまでの熱を感じていた。

まるでそれは燃え盛る炎に右足を炙られているようだった。

 

「おや、実験は成功のようですね」

 

人体を腐敗させる薬を打ち込まれた風紀委員(ジャッジメント)の少女の右足の肌色は見る見る青紫色に変色していった。

 

「実験が成功したのはいいんですが、このまま放置して大丈夫なんすか?」

 

「いえ、このままにしていると、いずれ薬の効果は全身に回ってしまう。なので、そうなる前に腐敗した部分を“切り離さなくてはいけません”。どなたか刃物を持っている方は居ませんか?」

 

そう言うと、だった。

スキルアウトの男たちのひとりは博士と呼ばれている者にサバイバルナイフを手渡す。

 

「では、どんな人でもできる簡易手術の時間です」

 

そして。そして、である。

 

博士と呼ばれている者は初春飾利の腐敗してしまっている右足をサバイバルナイフで切断した。

 

薄暗い裏路地。

その場に風紀委員(ジャッジメント)の少女の絶叫が響く。

 

「失神してしまいましたか。麻酔なしでの手術でしたからね、仕方ないでしょう。しかし、これは好都合ですね。では、皆さん彼女を運んでしまいましょう」

 

初春飾利に簡易的な手当てをしてから、博士と呼ばれている者はそう話す。

 

「失神だけじゃなくて失禁もしたんじゃね?なんか臭うぜ?」

 

「そりゃあこの娘の切った右足から臭ってるんじゃね?腐ってるらしいし」

 

なんて話していると、スキルアウトの男たちのひとりが話し声の中にとある音が混じっていることに気づく。

 

それは“足音”だった。

 

「だれ─────」

 

足音は後ろの方から聞こえていた。

足音に気づいたスキルアウトの男は足音がする後ろへと首を向ける。

 

しかし。その瞬間、だった。

 

後方へ首を向けたスキルアウトの男の頭が音もなく“爆ぜた”。

 

突如として起こった異変。

当然、スキルアウトの男たちは動揺する。

 

すると。

 

「ゴミの分際で俺の歩く道を塞いでんじゃねえよクソボケ」

 

薄暗い裏路地。

殺傷能力の武器を所持しているスキルアウトの男たちが屯うところへひとりの青年が恐れることなく歩み寄っていく。

 

「止まれッ!!止まらねえと撃つぞッッ!!」

 

相手は能力者。それは確実だった。

スキルアウトを見ても、拳銃を見ても動揺してない。

 

スキルアウトの男たち、その中のひとりが拳銃をズボンのポケットに手を突っ込んだまま歩み寄ってくる茶髪の青年に向ける。

 

警告はした。

しかしヤツは止まらなかった。

 

ならば。

 

パンッ!!と、乾いた銃声が薄暗い裏路地に響く。

それは茶髪の青年に向けていた拳銃の発砲音だった。

 

スキルアウトの男が狙っていたのは頭部。

 

銃弾は茶髪の青年の頭部に直撃⋯⋯“しなかった”。

 

「⋯⋯⋯⋯は?」

 

それは、なんとも間抜けな声だった。

 

拳銃を撃った者。その周りに居たスキルアウトの男達。

博士と呼ばれている者以外は全員呆気にとられていた。

 

それはなぜか?

茶髪の青年が自身に撃たれた銃弾を素手で掴んで止めたのだ。

 

「いくら超能力者だとしても⋯⋯に、人間業じゃねぇ⋯⋯⋯」

 

スキルアウトの男達、その中のひとりがそんなことを呟く。

すると茶髪の青年は銃弾を掴んでいた手をゆっくりと開く。

 

そして。

 

「人間なんてものはとっくに辞めててな。今の俺は未知で形成された怪物だ。俺の歩く道を塞いだことはそこのクズ一匹の命で許しやるから、さっさと俺の前から消えろ三下」

 

スキルアウトの男たちは過去に銃や刃物などを用いて数々の学園都市の超能力者を倒してきた。殺害もしてきた。

どんな高位な超能力者が相手でも武器と数で勝てるとスキルアウトの男達は思っていた。

 

しかし。

今、自分たちの前に立つ名もどういう超能力を持っているのかも不明な青年。

その者にはどれだけ武器を渡されても、どれだけ大勢で挑んだとしても“絶対に勝てない”。

 

スキルアウトの男達は謎の茶髪の青年にすっかり怯えてしまっていた。

 

だが。

 

「おお!おおおっ!!おーっほほほほほほほほほほッ!!!!」

 

「は、博士⋯⋯?」

 

博士と呼ばれる者はいつも冷静沈着だった。

しかし。

スキルアウトの男達から博士と呼ばれている者は周りのスキルアウトの男達が不気味と思うほど高揚していた。

 

「まさか。まさかまさかーッ!!このようなところであなたに会えるとはなんという幸運!!皆さん、彼を捕らえてください!!もしも捕らえることができたら今まで支払っていた報奨金の10倍を皆さんにお渡しすることをお約束しますよ!!殺しても構いません!!私は彼の脳が欲しいのですッ!!」

 

博士と呼ばれている者は高揚したまま突如としてこの場に現れた茶髪の青年に指をさしながらそう叫ぶ。

すると。

スキルアウトの男達の中から恐怖が消える。

そして、果てのない欲が溢れ出す。

 

スキルアウトの男達は一斉に突如現れた謎の茶髪の青年に攻撃を仕掛ける。

銃を持つ者は銃を向ける。

刃物や、鈍器を持つ者は雄叫びを上げて振りかざす。

 

しかし。

 

それは一瞬だった。

なにをしたのかも不明だった。

 

謎の茶髪の青年に殺意を込めた攻撃をしようとした者達全員の頭部が音もなく爆ぜる。

 

 

頭部のない死体が血塗れの地面に倒れる。

その光景を見ていたスキルアウトの男達から“博士”と呼ばれていた者を大きなため息を吐く。

そして。

 

「⋯⋯⋯⋯⋯武器を渡し、大金を積み、彼らには彼らが望むだけの力を我々は与えてあげたというのに無能力者(レベル0)なんて所詮はこの程度ですか。ゴミはゴミなりの活用方法があると思っていたんですけどね、どうやらそれは私の勘違いだったようです。ゴミはどこまでいっても所詮はゴミでしかない。無能無価値の存在。あなたもそう思いませんか?超能力者(レベル5)・第二位の垣根帝督さん」

 

垣根「⋯⋯お前、暗部の人間だな」

 

「やはり私と同じ世界で生きるあなたにはバレてしまいますか。まあ、別に隠していたつもりはありませんでしたがね。御名答です。私は陽の光が届くことのない裏世界で生きる正義の使者『アマツ』に属する者です」

 

垣根「アレイスターの座を狙っている統括理事会のクソどもが高い金を注ぎ込んで作った『アマツ』か。全員この俺がぶっ殺したと思ったんだけどな。ハッ、まさかあのゴミども以外にも『アマツ』が居たとはな」

 

学園都市統括理事会の一員。

それは学園都市統括理事長の玉座に一番近い席に座する者。

やつらは秘密裏にアレイスター=クロウリーの星の数以上にある計画(プラン)のなにかしらに核となっている超能力者(レベル5)達をすべて抹消するために暗殺部隊を作っていた。

構成人数は7名。

対超能力者(レベル5)暗殺部隊『アマツ』の構成員それぞれ科学技術を惜しみなく注がれた。

しかし、能力者はひとりも居ない。

『アマツ』の者は学園都市に君臨する超能力者(レベル5)に勝てるように人体を改造された人間だ。

 

だが。

 

『アマツ』という暗殺部隊はたったひとりの超能力者(レベル5)に滅ぼされた。

超能力者(レベル5)第二位・垣根帝督。

彼によって滅ぼされたのだ。

 

『アマツ』の構成員ひとりひとりが超能力者(レベル5)に勝てる戦闘能力を有している、らしい。

それを知った第二位はその時期、学園都市最強の第一位、一方通行(アクセラレータ)の弱点を探っていて『アマツ』の構成員の誰かが“あの第一位”の反射の突破を可能とする術を持っているのではないか、と一方通行(アクセラレータ)を楽に倒せるヒントを得れることを期待して『アマツ』の構成員を襲った。

しかし、期待外れだった。

一般人では生涯絶対に手にすることが不可能なほどの多額の金を使われたというのに、ひとりひとりが超能力者(レベル5)に勝てる戦闘能力を持っていると言われていたのに、だ。

 

 

『アマツ』の構成員7名対、超能力者(レベル5)第二位・垣根帝督。

その戦いは第二位の圧勝で終わった。

しかしも、だ。『アマツ』のやつらとの戦いからはなにも得れることはできなかった。

骨折り損のくたびれ儲けだった。

 

もしも無理やり得れるものがあったというのなら『当然の勝利』だろう。

 

「まさかこの私をあの失敗作たちと同様、と思っていますか?だとしたら不愉快極まりないですね。この私はあんな失敗作たちとは違うッ!!この私が、この私こそが本物の『アマツ』なのです!!」

 

垣根「そうか。どうでもいい」

 

とても愉快に語りかける博士と呼ばれていた者に第二位は無関心だった。

 

「フフフッ、ハハハハハハハッ!!どうやらあなた気づいていないみたいですね。既にこの私に殺されてしまっている、ということにッ!!」

 

自信に満ち溢れていた。

今、目の前に立っているのは学園都市に7人しか存在しない超能力者(レベル5)の第二位・垣根帝督。

先程、スキルアウトの男達を一瞬で一度に全員殺害してみせた怪物だ。

それなのに博士と呼ばれていた者は第二位の彼に怯えていなかった。

 

「暗殺とは誰にも悟られることなく殺害すること。それは殺害する標的(ターゲット)にも。それを容易く完遂しまうなんて。フフフッ、やはり私はどこまでも完璧で完全な存在だッ!!なんて素晴らしいのだ私は!!この素晴らしい私と、そして偉大なる我が主が愚鈍な人間どもの頂点に立てばこの世界は私のように完璧で完全なものと生まれ変わるッ!!光栄に思うのです不完全な存在、この世界を変えるためにあなたの能力を私が有効活用してあげましょう!!」

 

垣根「⋯⋯⋯この俺を毒ガス程度で本気で殺せると思っているのか?だとしたらテメェは本物だな。本物の間抜け野郎だ」

 

「────なっ!?」

 

垣根「なんだよその反応。この俺が気づかないと、気づけないと思っていたのか?無臭でも完全不可視だったとしても俺は感知できる。この俺が居る、その時点で一帯に未元物質(ダークマター)は散布されている。異物を混ぜその空間を支配する。俺の能力がただ創るだけだと思っているならそりゃあ大間違いだ」

 

そして、だ。

垣根帝督は退屈な顔をしながらゆっくりと、右手を顔の横まで上げると指を鳴らした。

 

すると。

博士と呼ばれていた者の身体は血飛沫を撒き散らしながら左右真っ二つに裂かれた。

 

垣根「苦痛も感じず殺してやったんだ感謝しろ。って、死体に言ってもただの独り言になっちまうか」

 

第二位の眼前には無数の死体が転がっていた。

そこら辺に血の水溜まりがあった。

 

が、しかし。

 

垣根「⋯⋯はぁ?なんでこんなクソどもの掃き溜めに優等生の風紀委員(ジャッジメント)がいんだ?」

 

無数の死体に冷たい視線を向けていたら、だった。

無惨に殺された者たちが転がっている地面。

そこに風紀委員の腕章をつけている少女が倒れていた。

 

垣根「⋯⋯⋯⋯⋯クソ野郎が」

 

暴行を受けた跡が見える。

しかも、片足は切断されていた。

 

第二位の彼は自身のことは悪だと断定している。

垣根帝督。彼にとっての当たり前の毎日は一般人が当たり前のように送る毎日とはあまりにも懸け離れていた。

 

躊躇なく呼吸をするように人を殺める。

必要とあらば女だろうと、子供であろうと容赦なく傷つける。

 

しかし。

そんな彼でも、まるでゴミのように地面に転がっている傷ついた少女を見れば『胸糞悪い』という言葉が頭に浮かぶ。

 

垣根「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯助けてやるか」

 

ポツリ、とそんなことを口にした垣根帝督は自分が言ったことに顔には出ていなかったが動揺していた。

これまで数え切れないほどの人間を殺めてきたのに。

殺めてきた人間の中には女子供だっていた。

 

心の中で数え切れない悪態を自分自身に吐きながら第二位は、片足が切断され、見るも無惨の姿となった風紀委員(ジャッジメント)の少女のもとへ向かう。

 

垣根「『アマツ』のゴミ野郎が周囲一帯に毒ガスは撒いた瞬間に俺の未元物質(ダークマター)は野郎の毒ガスを飲み込み掻き消した。だからこのガキは恐らく毒ガスを吸ってねえだろう。だが、もしもがあるか。念のためこのガキの身体の状態を調べておくか」

 

気を失っているボロボロの姿の風紀委員(ジャッジメント)の少女の前で垣根帝督は膝を曲げて腰を下ろす。

そして。

うつ伏せで倒れている風紀委員(ジャッジメント)の少女の首筋に手を伸ばす。

 

垣根(クソ⋯⋯。このガキ少量だが毒ガスを吸っていやがったか。それに骨は何本か折れてるし血液もかなり減ってる⋯⋯⋯)

 

重傷。それ以外言葉が見つからないほど花畑のような髪飾りを頭につけている風紀委員(ジャッジメント)の少女は負傷していた。

だが。しかし、である。

 

垣根「───この程度の怪我なら俺の能力、未元物質(ダークマター)で治せるな」

 

ニヤリ、と。口角を上げると第二位は風紀委員(ジャッジメント)の少女の首に触れている指先から未元物質(ダークマター)を彼女の身体に流し込み、まずは毒を消すことから始めた。

 

それは二秒もかからなかった。

 

完全に風紀委員(ジャッジメント)の少女の身体から毒は消えた。

そして次だ。

負傷した箇所、欠損した部分の復元。

 

それを始めようとした瞬間、だった。

 

「手を上げろ!!」

 

垣根「あ?」

 

声のする方へ向くと、そこには銃をこちらに構える者が立っていた。

人数は2人。

どちらも武装していた。

第二位は武装した大人を見てすぐに理解した。

 

垣根(────警備員(アンチスキル)か。まさか、俺が来るよりも前に誰かこの現場を見て通報してたのか?だがスキルアウトのゴミどもと会うまで俺は誰とも会ってねえ、それに人の気配も感じなかった)

 

 

どうして急に警備員(アンチスキル)がこの場に現れたのか?

そんな疑問を抱いていた第二位は地面に倒れている風紀委員(ジャッジメント)の少女に目をやる。

すると風紀委員(ジャッジメント)の少女の手を見た。

いや、彼女が握っているものを見たのだ。

 

垣根(⋯⋯⋯そうか。このガキは最後まで諦めてなかったのか)

 

小型の通信機具。

それで警備員(アンチスキル)へ通報してここに呼んだのだろう。

 

垣根「暴力にも屈せず最後まで諦めねえ、か。なんだよ、そこまで強いなら俺が助けてやる必要はないな。片足がなくても、お前ならまた立ち上がれるぜ。俺が保証してやる」

 

第二位はそうやって呟く。

その時、彼は珍しく頬を緩めていた。

 

「君はこの現場に偶然居合わせたのか、それとも何らかの関与があるのか俺たちはわかっていない。だが無関係だとしてとも、君には我々と一緒に来てもらいたい。お願いだ、素直に俺たちに従ってくれ」

 

人間の遺体と思われるものが複数転がっている場所で平然と立っているホストのような服装の青年に不信感を持つ警備員(アンチスキル)の男はそう言う。

すると、である。

ズボンのポケットに両手を入れたまま立ち上がると、銃を向けられているというのに全く動揺した様子もなく垣根帝督は警備員(アンチスキル)に不敵な笑みを向けた。

 

そして。

 

垣根「生憎、俺は忙しい身でな。お前たちに付き合ってやる暇はねえんだ。悪いが逃げさせてもらうぜ」

 

「⋯⋯天使の羽⋯⋯⋯⋯」

 

第二位はその背中から6枚の白い翼を生やし、そして背中の6枚の白い翼を大きく広げて一瞬でその場から上空へと飛び去った。

 

 

「な、なんだったんだ⋯⋯」

 

 

あまりの出来事に2人の警備員(アンチスキル)は数秒間、呆然と立ち尽くすと、ひとりの警備員(アンチスキル)の男がポツリと呟く。

 

 

その後、2人の警備員(アンチスキル)はひとりの少女を保護すると、急いで救急車を呼び重傷の風紀委員(ジャッジメント)の少女は腕の立つ医者がいる病院へ運ばれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園都市。病院、その長い廊下にて。

ひとりの女子中学生が息を切らしながら全力疾走で駆け抜ける。

 

学園都市に7人しか存在しない超能力者(レベル5)第三位・御坂美琴。

彼女の携帯電話に一つのメールが届いた。

それは『初春飾利が重傷を負い、病院に運ばれた』というものだった。

そのメールを見た御坂美琴は大切な友人が運ばれたという病院へ一目散に駆けていた。

 

大量の汗が流れる。

息が苦しい。

しかし、そんなのはどうでもよかった。

 

大切な友人の笑顔を思い浮かべながら、ただひたすらに第三位の彼女は病院の廊下を駆け抜ける。

 

その途中、病院の看護師に止められそうになったが華麗に躱し『ごめんなさい!!今は見逃して!!』と病院内を走ることをやめなかった。

 

そして。そして、である。

 

遂に御坂美琴は初春飾利がいるという病室、207号室の前に到着する。

大きく深呼吸をして息を整えてから、御坂美琴は207号室の扉を開ける。

 

「⋯⋯まったく、病院内では走らないでほしいね。君の気持ちもわかるが他の患者も居るんだ」

 

佐天涙子と白井黒子は御坂美琴より先に初春飾利のいる病室に来ていた。

そして。カエル顔の医者もそこに居た。

冥土返し(ヘブンキャンセラー)とも言われている凄腕の医者は、ため息混じりで御坂美琴に軽く叱る。

 

しかし。

御坂美琴はカエル顔の医者には目もくれず、ゆっくりと病室内にある真っ白なベッドへと足を進めていく。

 

そして。そして、だ。

 

御坂「⋯⋯⋯⋯初春⋯⋯さん⋯⋯⋯⋯」

 

初春飾利。

御坂美琴のとても大事な友人。自分の身よりも大切な宝物。

 

そんな友人が病院内のベッドに変わり果てた姿で寝ていた。

 

静かに眠っていた。

肩までしっかりとふわふわの毛布をかけてあった。

頭は出ていた。顔は見えていた。

 

が、彼女の頭部には包帯が巻かれていた。

そして、頬や目の付近には痛々しい打撲痕がいくつもあった。

 

しかし。しかし。

それより第三位の彼女が気になっていたことがあった。

 

御坂美琴がベッドの上に変わり果てた姿で眠っている初春飾利を見て最初に感じた“違和感”。

冷や汗が止まらなかった。

嫌な想像が止まらなかった。

 

きっと見間違いだ、と繰り返し繰り返し心の中で呟いた。

 

御坂「⋯⋯⋯う⋯⋯そ⋯⋯⋯⋯⋯」

 

ゆっくり、ゆっくりと近づき、そして御坂美琴は感じた“違和感”を確かめるように意識不明の重体の初春飾利へ手を伸ばした。

 

普通、毛布をかけられていたらその人の形に毛布が膨らんで見える。

が、である。

膨らんでいなかったのだ。一部分だけ。

『ありえない』と『見間違いだ』と何度も何度も、何度も何度も、何度も心の中で呟いた。

 

だが、見間違いではなかった。

 

初春飾利は“右足を失っていた”。

 

 

御坂「────なんで⋯⋯。黒子ォッ!!!!」

 

白井「⋯⋯⋯申し訳ございませんお姉さま。わたくもなぜ初春がこのような姿になったのかわかりませんの」

 

バッ!と。

病室の隅で顔を俯かせたまま立っていた白井黒子へ御坂美琴は顔を向ける。

しかし、いつもなら名を呼ばれれば嬉しそうに返事をしてくれる白井黒子は俯いたまま震えた声で言葉を返す。

 

冥土返し「⋯⋯⋯⋯⋯薄暗い裏路地で彼女を見つけたのは警備員(アンチスキル)の者だよ。そして、見つけられた時にはもう彼女は意識不明の重体だった」

 

カエル顔の医者は御坂美琴を見ながらそう話す。

 

そして。

 

冥土返し「だが、彼女が見つけられた場所はまるで地獄のようだったと彼女を見つけた警備員(アンチスキル)の人が言っていたよ。無惨に殺された人が何人も転がっていて、周囲には大量の血が飛び散っていた。あまりの光景に目を疑い現実ではないと信じたくなるくらいだったらしい」

 

御坂「⋯⋯なんで。なんでそんなところに初春さんが」

 

白井「初春はここ最近ずっと落ち着きのない様子でした。わたくしと一緒にパトロールしてる時も過剰と言えるほど周囲を警戒していましたわ。それにその日は初春は休みだというのに初春が風紀委員(ジャッジメント)の腕章をつけてパトロールをしている姿を見たと風紀委員(ジャッジメント)の仲間から聞きましたし、わたくしも見たことがありました。どうしてそのようなことをしてるのか、初春に聞いても理由を答えてくれませんでした。ですが今日、どうしてあのようなことをしていたのかわかりましたわ」

 

そういうと、だった。

白井黒子は初春飾利の携帯電話の画面を御坂美琴に見せる。

 

携帯電話の画面には学園都市、第七学区の地図が映っていた。

が、所々に✕印があった。

 

御坂「これが、なに⋯⋯?」

 

白井「この✕印がある場所はもう探した場所、ということです」

 

御坂「探した場所⋯⋯?」

 

一秒間。超能力者(レベル5)第三位の御坂美琴は停止した。しかしその後、彼女は『まさか!!』と声を上げる。

 

御坂「初春さんはあれから天使を探していたっていうの!?」

 

白井「はい。本人にまだ確認はできてませんので、憶測ではございますが恐らくそうだとわたくしも、そして佐天さんも思っております」

 

それを聞いた御坂美琴はその場で振り返り、そして病室から出よう足を踏み出した。

が、しかし。

 

白井「お待ちくださいお姉さま!!どこへ行くおつもりなんですの!!」

 

御坂「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

常盤台のエース。超能力者(レベル5)・第三位はその場で止まっていた。

なにも喋らずに。

 

白井「お願いしますお姉さま!!もしもなにか知っているのでしたらこの黒子にもお教えください!!一人でなんでも背負おうとしないでくださいまし!!お姉さまはお強い。そんなこと重々承知しております。それにお姉さまと比べればわたくしの力なんてものは頼りにならないことも知っております。しかし!!それでも、わたくしはお姉さまのお力になりたいのです!!足は引っ張りません!!引けと命じられれば黒子はお姉さまの指示に従います!!なのでどうか!どうかお願いしますお姉さま!!わたくしもお姉さまが背負おうとしてるものを一緒に背負わせてください!!」

 

痛い。

白井黒子のその純粋な言葉が、その純粋な想いが、幾度のなく御坂美琴の心を突き刺す。

 

両拳を固く握る第三位の彼女の前に一人の人影があった。

 

冥土返し「バカなことはやめなさい。君がどれだけ強いのか知っている。そして、その力で多くの人を守ってきたのもね。だけど今回ばかりは相手が悪い。彼は“第三位の君より上なのだから”」

 

カエル顔の医者は御坂美琴にしか聞こえないように小さな声でそう話す。

 

御坂「⋯⋯⋯⋯⋯アンタ、何者?」

 

一瞬、目を丸くして驚いていた御坂美琴だったが、次の瞬間にはカエル顔の医者の顔を鋭い目で睨んでいた。

しかし。

 

冥土返し「僕はただの医者だよ。っというのは君が望む答えじゃないらしいね。君が望んでいそうな答えを言ってもいい、けどその代わりにバカな真似はしないでこれからもずっと彼女たちの側に居ると僕と約束してくれ」

 

カエル顔の医者は表情一つ変えることなく平然と答える。

そして。

凄腕の医者、冥土返し(ヘブンキャンセラー)は落ち着いた口調で話を続けた。

 

冥土返し「賢い君ならわかっているはずだ。もしも彼に挑めば命はないということを。命を捨ててでも復讐をしてほしいなんて彼女たちは思っていないよ」

 

御坂「⋯⋯⋯⋯ごめんなさい。“もう決めたの”」

 

しかし。第三位は止まらない。

彼女ことはもう誰でも止められない。

例え、あの“ツンツン頭の男子高校生”でも。

御坂美琴は強固な決意の宿った顔で自身の前に立っているカエル顔の医者の横を通り過ぎる。

 

佐天「待ってください御坂さん!!御坂さんがこれからなにをしようとしてるのかなんて私はわかりません!!でも、御坂さんが私たちの知らないどこか遠い場所へ行こうとしてるのはなんとなくわかります!!本当に行ってしまうつもりですか!?私たちを⋯⋯、名前を呼んでも返事もできない初春を置いて⋯⋯ッ!!」

 

なにも答えない。

御坂美琴は口を閉ざしたままであった。

 

振り返らない。

もう戻らない。

 

白井「お姉さまッ!!」

 

どこかへ行ってしまおうとしている御坂美琴を追いかけようと白井黒子は駆けていった。

しかし。不思議なことにゆっくりと病室から出ていく御坂美琴に白井黒子が追いつくことはなかった。

 

そして。

 

 

 

 

 

⋯⋯⋯そのまま常盤台の超電磁砲(レールガン)は忽然と姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、超能力者(レベル5)第三位・御坂美琴は彼女が通っている常盤台中学にすら姿を見せることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日も沈み街灯が夜道を照らす時刻。

人通りも少なくなり、静かな学園都市のとある病院の一部屋にて。

カエル顔の医者は“ある人物”へ自身の携帯電話で電話をかけていた。

 

冥土返し「やあ、君とこうして話すのは久しぶりだね“アレイスター”」

 

アレイスター『珍しいな、あなたから電話をかけてくるなんて。なにか私に用か?』

 

冥土返し「ただ君に言いたいことがあるから電話をかせさせてもらったよ」

 

アレイスター『聞かせてくれ。あなたが私になにを言いたいのか興味深い』

 

そう聞かれると、カエル顔の医者は深く息を吐き真剣な面持ちで口を開く。

 

冥土返し「学園都市統括理事長・アレイスター=クロウリー。ここは君が築いた君の世界だ。だが、だからといってここに居る人を好き勝手にしていい訳ではない。彼ら彼女らの自由、人生を奪っていい権利は君にはない」

 

アレイスター『それで⋯⋯?』

 

冥土返し「君がこれまで多くの人間を不幸にしてきたのは知っているが、僕は君を止めようとはしない。ただ、もしも君の被害者たちが僕の前に患者として運ばれてきたら僕は彼らを全力で助けよう。そして、これからも僕は君の悪行を看過する。だが“彼女たち”は解放しろ。彼女たちは真っ当に生きてきた清らかな善人だ。君のような人間が彼女たちの平穏な毎日を奪うな」

 

アレイスター『申し訳ない、あなたがなにを言っているのか私にはさっぱりわからない』

 

冥土返し「⋯⋯⋯⋯最後に警告するよアレイスター。もしも、このまま悪人も善人も問わずただ多くの人を不幸にするだけの計画を実行し続けるというのなら僕は君の“敵”になる」

 

そう言うと、カエル顔の医者は通話を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アレイスター「“あの人が敵になる”⋯⋯か。ふふっ、面白い」

 

窓のないビル。

そのビルの大きく広がった一部屋。

そこにビーカー型の生命維持装置があった。

周囲にはどんな仕組みかわからないが数多くのデジタル画面が浮かんでいた。

ビーカー型の生命維持装置の中は弱アルカリ性培養液が満たされていて、液状が満たされたビーカー型の生命維持装置の中を逆さまで浮いている者、その者こそ学園都市統括理事長・アレイスター=クロウリー。

 

アレイスター=クロウリーは冥土返し(ヘブンキャンセラー)との通話が終わると怪しく笑っていた。

 

すると、である。

学園都市統括理事長が逆さに浮かんでいるビーカー型の生命維持装置の近くに座っている“男子高校生”はアレイスター=クロウリーへ視線を向けながら口を開く。

 

「なに一人で笑ってんだよアレイスター。ってか俺の出番はいつ来るんだ?テメェだろ、俺の“右手”で世界を跡形もなくぶっ壊してほしいって言ったのは。いつ俺はこの“右手”で【幻想郷】とやらをぶっ壊しに行けばいいんだ?ずっとこのなにもねえつまんねえ場所に俺を閉じ込めようとしてねえよな?」

 

アレイスター「⋯⋯君の出番はまだ先だよ私のヒーロー。だがもう少ししたら君の“右手”に頼らさてもらうよ───」

 

そして。

逆さまの者はツンツン頭の男子高校生へニヤリと口角を上げ笑みを向けて彼の名を呼んだ。

 

 

────上条当麻、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御坂「もう皆のところには戻れない。でも、私が闇に堕ちることであの子たちの平和を守れるなら、私は自分からこの身を闇に染めてやる⋯⋯ッ!!」

 

 

 

適当に古着屋で買った動きやすい上下セットの黒のジャージを纏い、黒いキャップ帽を被り超能力者(レベル5)第三位はその日もまた“罪を重ねた”。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(殺してやる。超能力者(レベル5)第二位・垣根帝督⋯⋯ッ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




学園都市に7人しか存在しない超能力者(レベル5)の第二位(怪物)と第三位(怪物)が衝突する。

第二位は未知で形成された6枚の翼を広げる。

第三位はコインに自身の命を乗せて放つ!!


そして⋯⋯。学園都市で新たな悪の華が開花した。


次回・番外の章【闇を穿つ天使】最終話。

【悪党讃歌】


さあ、終末時計の針を進めよう。

この歪んだ世界を破壊するために。

そして、清き新世界を創造するために。

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