「アァ、ナギサたんの全部もらったるぅ〜」
と叫んでいる変態が一人ノートパソコンとおしゃべりしていた。
「えっと・・・今大丈夫か?」
エロゲとしか視線をあわせてない彼(変態)にコンタクトを試みたところ
「このシーンが終わるまで待ってくれ」
と待機命令を受けたので、部屋に配達されていた俺の荷物を荷解きして待つことにした。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ふぅ、ひと段落ついたからセーブした。待たせてすまない」
彼のエロゲ―プレーは、俺が荷ほどきを始めてから五分ほどでかたがついた(らしい)。
さっきまで鼻息フンフンして気持ち悪かったのに今は、いたって冷静だ。
しかも声のトーンが2オクターブは低い。
彼はさっきまで起動していたノートPCをロック状態にしてこちらを向いた。
黒髪で背は高一にしては低めで、さっきのナギサたんオタケビさえ聞かなければきっと、かなりの好印象を得られる面構え。
初めましてのはずだが、どっかで見たことあるなこの顔・・・
「はじめまして。僕は君と相部屋になった
「・・・・・」
「ーーーどうした?なぜ黙る?なぜ怪物をみるような呆気にとられた顔をしているんだ?」
ジャンリィチュエイーーー
怪物...彼の例えは正しいかもしれない。
彼は怪物だ。
江 列缺という名を耳にして固まらない国際警察官なんているのか?というレベルで彼は有名な学生。
なぜなら、毎年アメリカで開かれる
そんな人間が俺と相部屋だとしったら、そりゃ誰でも怪物をみるような呆気にとられた顔になる。
見覚えがあったのはきっと、国際警察局ネットニュースで顔写真を見たからだ。
だが、それならそれで好都合かもしれない。調べたい事があったから、情報のプロがいるのは助かる。
それに俺が固まってちゃ話にならないのでとりま脳を再起動して話を続けることにした。
「おおう、悪い。レツ、俺は木場有紀だ。日本人だけど、両親の都合でヨーロッパ生まれで中等部はハンブルクにいたんだ。俺のことも有紀って呼んでくれ」
「OK、ユウキ」
「ところで、レツ。中野教官の宿題の件なんだが...」
「やっぱりユウキも気になっていたか」
「ああ、あんなに
「そういえば、そんな事も言っていたな。明日ではダメな理由があったりするのかよくわからんがーーーーまぁ、安心してくれ。今、このノートPCで俺が作った情報収集AIがすでに情報収集をはじめているからな」
「おぉ~さすがだな。エロゲーやってるだけじゃ無かったんだな」
「まぁ、ノートPC用の機能制限版で、形跡残さないように且つ小一時間で調べられる程度の情報だから、期待するなよ?ーーおっと、早速情報が揃いつつあるな」
レツは早速収集したPDFの一つを開こうと、ダウンロードしたファイルを開くよう操作してくれている。
やっぱり、情報のプロは頼もしい。
PCの壁紙が白濁液に包まれた美少女じゃなかったら完璧なんだが、そこは目をつぶることとしよう。
「そのPDF、申請書の類か?」
俺はノートPCを操作するレツの横から画面に映っているPDFを見ながら、レツに内容の確認をとった。
「そうみたいだな..これは『演習・訓練許可証』だな。えっと」
レツがスクロールして内容を確認する。
「えっとなになに、以下の内容の訓練を許可する。
訓練内容:
訓練場所:名古屋国際警察大学校高等部男子寮209号室。
襲撃対象者:一等保安士 木場有紀、一等保安士 江 列缺・・・」
「襲撃訓練の許可書か・・って、おいおいおい襲撃対象者がなんだって?」
いま聞こえちゃいけない名前が聞こえた聞こえた気がしたんだが、レツ君?
「襲撃対象者:一等保安士 木場有紀、一等保安士 江 列缺」
「それは~つまり俺たち、襲撃されるってことか?」
「まっそーゆうことだな」
「MA JI KA YO」
中野教官のさっさとなにかあるから調べろオーラと性能でデスクトップパソコンに大きく後れをとるノートPCからでも、スグに閲覧できるレベルのザルセキュリティなイカニモ見てくださいと言わんばかりの演習・訓練許可証。
中等部三年間、キチガイ教育を受講してきた俺たちになら、直ぐに推測が立つ。
「なぁ、レツ。それは『先輩達が
「100%同感」
「という事は、中野教官の課題は意訳すると『先輩達来るから、どんな学科か調べて先輩たちの得意な戦闘パターンを分析して対策練ろよ』って意味だな」
中等部では誰もがある『掟』を叩き込まれた。
―――例え不意打ちだろうと訓練は訓練。
いつ何時どんな事件が起きるかわからない不安定な世の中。
それに対処できないヤツは、問答無用で厳しい罰がまっている。
思い出しただけで、トイレに行って吐きたくなるような罰が・・・
だから、自分が訓練参加者だった場合、例えそれが事前に知らされてなくても全力で挑まなきゃいけない。
それが、早期教育幹部候補生の鉄の掟なんだ。
「おっと、ユウキ。ここで悲しいお知らせだ」
「聞きたくないけど何?」
「そのご挨拶開始時刻は明日
「マジカヨ」
「マジデス」
早期幹の訓練は一年一年が物凄い濃い内容で構成されている。つまり、先輩と言うだけでかなりの実力差があるとみるのが普通だ。たとえ、レツみたいにひと分野で卓越してても、なんでもアリの戦いでは総合力で劣る。
「あと12時間もない状況で、先輩達を迎え撃つのか..厳しいな。襲撃してくる先輩達の人数は?」
「4人だ。全員、女。えっと名前は
上等保安士
上等保安士
保安士長
保安士長
上等保安士が二人で保安士長が二人だから、2年が二人、3年が二人ということになるな」
「2vs4でおまけに相手に3年が二人もいるのかよ...かなり、ムリゲーじゃね?それ。・・・そういえばレツの中等部時代の戦闘評価はどうなんだ?」
「拳銃E、小銃E、狙撃銃E、体術E、戦略B、情報戦Sってところかな。どうだ、スゴイだろ?」
「あぁ、ある意味スゴイな、その成績でどうやって中等部を卒業したんだよ。まぁ、薄々予想はしていたが、肉体使う戦闘は実質俺一人じゃねぇか。こんなんで、先輩四人相手どうやって戦うかなぁ」
半分詰んでいると思いながらも、俺は今日の指示がかかれたメールを自分のストラップに表示して、読み直す。
そこには『拳銃』の受け取り手順が記してあったからだ。
拳銃は国際警察官にとっての必携品で国際警察官は非番時にも、携帯が推奨されている。
中等部時代は校外の携行は禁止だったが、警察手帳を授かる高等部の学生は校外携行も解禁される。
ドイツの中等部から名古屋の高等部に移動になった俺は昨日まで中等部の学生で校外携行権限が無かったから、自分の拳銃を警察局の空輸部隊に移送をしてもらっていたので、それを受け取りに行くことにした。
先輩達を迎撃するにも、武器がなきゃ始まらないからな。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「高等部1年13組の木場です。拳銃を受領しにきました」
ここは名古屋国際警察大学校の銃器管理センター。
郵便局みたいにいくつか窓口が並んでいて、拳銃の購入相談や修理窓口、小銃や狙撃銃の貸し出しや
基地と呼ばれる大人数の国際警察官が勤務する場所と大学校には必ず設置されているらしい。
「では、こちらの読み取り口に警察手帳をタッチしてください」
窓口のオジサン(制服と名札から察するに装備部所属の保安上等軍曹三島さん)は俺がタッチした警察手帳の情報から拳銃の預かり記録を検索。
収納されている場所を割り出し、ささっと手馴れた手つきで俺の拳銃が入ったジュラルミンケースを持って来てくれた。
俺はそのケースをあけ、中身を確認する。
ダイヤルロックを解除しカチャッと音が鳴り、ふたが開く。
中から姿を現したのは、見た目を重視しながらも軽さ・精度・剛性どれをとっても抜け目のない黒く美しいシルエット。
ドイツLegende社製、射撃支援システム搭載版ストライカー式9mmコンパクトパラベラム拳銃『P320C』。
中等部時代からの相棒だ。
それを荷解きしてる時に出しておいたショルダータイプのホルスターにシュッとしまって、三島さんにお礼を言い、銃器管理センターをあとにした。
銃と密着しているこの感じ。
一般人とはズレている感覚なんだろうけど、なんか安心するな。
そして、俺が次に向かったのはPX。
正式名称は購買部。
割かしなんでも売ってる便利な商店街みたいなところだ。
チャラララランチャン♪チャラララララン〜♪
耳に残る独特な入店音。FamilyMart名古屋国際警察大学校店に足を運んだ。
「あった、これこれ」
そう言いながら俺が棚から取ったのは、たぶん、米軍と自衛隊と警察局の施設内でしか買えない限定商品『これでバッチリ!自主練用9mmゴム訓練弾(人に向けて撃たないこと!)』50発入の箱、おひとつ2500円!(税込)
それをひと箱もって、レジへむかう。
「Tポイントカードはお持ちですか?」
「いえ」
「おつくりしますか?」
「お願いします」
どうやら、日本ではTポイントというものが溜まるらしい。覚えておこう。
チャラララランチャン♪チャラララララン〜♪
「ありがとうございました~」
次に向かったのはPX内の装備屋『武器屋本舗』。
ファミリーマートと軒を連ねている。
俺の目当ては
真っ向から先輩達とやりあっても勝てないので、非殺傷兵器をばら撒く戦法をとるためだ。
しかし、フラッシュバンコーナーでフラッシュバン(3個パック6000円)を手に取ろうとした時、思わぬ誤算に気づく。
金がねぇぇぇぇぇえー
もうちょい正確に言うと、日本円がないっ。
ヨーロッパから来た俺は
貯金はヨーロッパの口座から、ウェブ上で開設した日本の銀行口座に振り込んで日本円建てにする手続きは済ませているが、まだ俺の手元に『キャッシュカード』がない。
名古屋の男子寮宛に届けるよう手続きはしたが、俺の日本行きが決まったのは三日前で、当然口座を開設したのもその後なので到着まで数日かかるキャッシュカードがまだ届くわけがない。
時刻をストラップで確認したら、もう午後5時半。
銀行に通帳を持って行って、窓口で引き出すことも不可能(そもそも、通帳も届いていない)。
詰んだーーーゴム弾だけで先輩達倒すとか無理だーーーと思ったが...レツがいた。
そうだ、ヤツなら中等部も名古屋だから日本円を持ってるはず!
直ぐにストラップの電話帳を開き、つい先ほどアドレス交換したばかりのレツに電話を掛ける。
『もしもしユウキ、どうした?』
「悪い、レツ。グレネードを買おうと思ったんだが、日本円を切らしちまったんで、貸してくれない?」
『あ~、悪いな..ユウキ。俺も金はねえんだ』
「は?この前の給料はどこに消えたんだよ?」
実は早期幹では中等部の学生に手取り14万円/月の給料が支給している。そして寮暮らしなので、家賃・光熱費・食費はかからないし、訓練で忙しくて外でお金を使う時間がないので無駄遣い症のやつでもいくらかは貯金があるはずなのに...それがない?どういうことだ?
『液体窒素でパソコンのCPU限界を破る競技で『オバークロック』ってのがあるんだけど、高校進学記念に一度やってみたいな~なんて思ってしまって....液体窒素とか必要な道具を買ってたら、福沢様どころか野口君まで俺の財布から滅亡した』
野口君も滅亡!?俺の財布ですらまだ二人ご存命なのに....あいつの財布は俺以下なのか。
もうダメだ・・先輩達に蹂躙されるしかないのか・・
と頭を抱えようとしたが・・
あれ?液体窒素って言った?今
「レツ、液体窒素は手元にあるのか?」
『あぁ、209号室の洗面所に置いてあるぜ』
「量は?」
「そこそこ沢山あるかな」
「そうか、わかった。その液体窒素使うなよ。じゃ、部屋戻るから電話切るぞ」
『あぁ、了解。こっちもお前が出て行ってから新たにわかった情報、まとめとくわ』
ダメかもと思ったけど、液体窒素があれば先輩達にかてるかもしれないーーーぶっつけ本番になるが、やるだけやってみる価値はあるぞ。
そう考えながら、俺は209号室に戻った。
道中でいろはすのペットボトルを5本買いながら―――
作中のエロゲーに登場する人物はすべて18歳以上です。
そのエロゲーをプレイしているレツ君が高一だという矛盾は突っ込まないでください。仕様です。
銃メーカーは未来の銃というこで架空設定です。
本当は一話冒頭の先輩たちが209号室に突入する所まで書きたかったのですが、力尽きました。
なお、次回更新は未定です。鎮守府のつくりかたの更新後となります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました
m(*_ _)m