−−−−夢を見た。
何処か遠い、蜃気楼の様に曖昧な記憶の残骸。
けれど、絶対にあった。大切な、大切な筈だった、忘れられない出来事。
自分を構成していた掛け替えのないモノ。
−−−−まぁ、今の俺には必要のないモノだ。
目的を果たすために、そんな綺麗な残骸な必要ない。
俺を構成していたものは見えなくなる程に擦り切れてしまった。
必要なモノは、もう何もない。
−−−−最期の仕事をはじめよう。
依頼人は世界ではなく、人理焼却を目論む魔術王。
舞台はネオンの光る現代ではなく、神の気配が色濃く残る古代メソポタミア。
役者は一流の英雄から俺みたいな三文英雄、はては天文台の魔術師まで。
−−−−役者は揃い、舞台は整った。
後は、つまらない演目をこなすだけだ。
−−−−全ては、人理を焼却し霊長の世の終幕のために。
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「〜〜〜♪」
砂地の混じる茶色の地面を軽い足取で歩く。その地面には枯れ果てて茶色になった草が未練たらたらに蔓延っている。
そんな中を、鼻歌混じりに歩く人物がいた。燦々と太陽が出ているにもかかわらず、茶色のベンチコートを地面すれすれに引きずっている。身長は140cm程で顔は童顔。一見すると、ただの子供と見ることが出来るだろう。
「…お、やってるやってる。相変わらず壮観だねぇ」
桜でも見ているような気軽さだが、その眼下には凄惨な光景が広がっていた。遠目からでも聞こえる怒号や悲鳴。この距離からでも鼻に付く濃厚な鉄混じりの匂い。
遠くには頑強な茶色の壁『ウルクの北壁』が聳え立ち、その壁のを守る為に数多の兵士。『賢王ギルガメッシュ』に仕える『ウルクの兵士』が壁を覆っている。
対するは、大小様々な大量の魔獣。『女神ティアマト』を母体に持つ強力な獣達は、自身の本能の赴くままにウルクの兵士を襲っている。
個体としての力はウルクの兵士の何倍もある魔獣だが、それらをウルクの兵士達は強力な連携を持って襲いくる獣を次々と狩って行く。
「いやぁ。『絶対魔獣戦線』なんて、よく言ったもんだよホント」
少年は一人丘の上でその様を見物していると、耳元に流麗な声。けれど、悪意に満ちたそれが聞こえてきた。
『何をやってる『守護者
「『キングゥ』か。けど、今回は手を貸す前に全滅しそうだけど?」
『獣達は別に気にしなくて構わない、どうせ直ぐに増える。それよりも、君は今後邪魔になりそうな人間を殺してくれ』
少年に『キングゥ』と呼ばれた存在はやや不機嫌に声色を変える。中性的な声に、怒りが込められる。
『わかっているとは思うけど、手を抜くことは許さない。もし手を抜いたら…』
「わかってますよ。まだ死ぬわけにはいかないんで、最大限努力はしますよ」
『…ふん。なら、精々頑張ってくれ。『守護者もどき』』
悪態と共に耳元の声が遠くなっていき、最後には途切れた。少年は軽く伸びをした後、手元に黒塗りの物体を出現させる。
「よし、さっさとおっ始めますかね。どうやら、天敵たる『花の魔術師』はまだお出ましではないようだし」
『バレットM82』
米国産バレット・ファイアーアームズ社製造の対物ライフル
装弾数10発、口径は驚異の12.7mmを誇り、射程距離は2000メートル
湾岸戦争、イラン戦争に用いられ『M82A2』『M82A3』などのカスタムも存在する世界でも有数の対物ライフル
その全長は1447.8mmであり、それは少年の身長よりも高い。けれど少年はまるでおもちゃの様に『バレットM82』を取り回している。構えは愚か、地面に置くことすら無くそれを肩に構える。
両目でスコープを覗く。けれど、指は引鉄には掛けない。『バレットM82』の銃口を遥か遠くにいる魔獣や兵士達に向け、口を開く。
『起動せよ』
その一言とともに、バレットM82に異形の模様が走り出す。所々緑色に脈動するそれは、銃に張り巡っている血管を思わせる。
『命を燃やせ、異形の花よ。その身を焔に捧げでもなお咲き誇れ、挽歌を歌う仙人の華』
『
宝具の解放と共に『バレットM82』の銃口から真紅の光が放たれ、寸分の狂い無く戦場に向かっていった。
殲滅の光は戦場へと着弾し、眩い程の紅い光の玉を大量に撒き散らす。大量の光玉は雨の様に戦場の全域に満遍なく降り注ぎ、獣
その様を見た少年は、忌々しげに口を歪め悪態をつく。
「あれは…天文台の魔術師か』
スコープから目を離し、目の前に広がっている『白亜の城』に目にやる。
その城の城壁は全てのウルクの兵士を光玉から守っている。決して破られない壁として、その威光をありありと示している。
「…待てよ?天文台の魔術師が来てるって事は…。っ!来やがったか‼︎」
輝く城壁から、三対の光が此方へと真っ直ぐ向かってくる。遠目からだとただの光としか見えないが、段々と距離が近づいてくるとその正体に気付く
槍だ。かなり遠くから空気を割いて直進してくる、その数は3つ
少年は『バレットM82』を霊体化させて格納すると、ひらりと高台から飛び退く。飛び退いてから数秒後に3つの槍がさっきまで居た高台を抉る。
「おぉ、怖い怖い。対物ライフルより威力高いんじゃないか?」
再度『バレットM82』を展開し、空中から打ち返して来た地点に向かって高速でで3発ほど撃ち込む。連なる12.7mmの銃弾は空間を切り裂きながら目標を向かうが、途中で甲高い音を立てて弾が切り落とされて行く。
弾を空中で切り落とすという人間離れした芸当を見せた人物は迷いなく少年へと突っ込んでいく。
2000mの距離を僅か20秒程で走破するのは、露出の多い白い服を見にまとう侍の様な幼女だった。
「げぇ、露出狂」
「誰が露出狂か!その首、貰い受ける‼︎」
この距離を走破した幼女はそれでも疲れる様子を一切見せる事なく、懐の刀を抜刀し勢いのまま少年に上段から斬りかかる。
少年は『バレットM82』を即座にしまい、腰元のホルスターから軍用のコンバットナイフを取り出し、上から斬りかかってきた刀を横へ受け流す。
何度か切り結んでから距離を取る。ナイフは既にボロボロになっており、そこらへと投げ捨てる。
「無茶苦茶な速さだな。八双飛びの伝承は伊達じゃない、か」
「ふん、命乞いか?悪いな、貴様の首は手土産に丁度良い。主人殿に渡すには丁度良い物になるだろう」
「残念。人理を焼くまで、この首をくれてやる訳にはいかないな」
「…ほう?私にここまで近づかれているのに?」
幼女の言葉と共に刀を肩の上に構える。太陽の光が刃に反射する姿から、その切れ味は決して衰えて居ない。その刃が首元に届けば間違いなく胴体と首が永遠にお別れする事になる事は間違いない。
けれど、少年は決して笑みを絶やさない。なぜなら、こいつに俺は殺さないと確信しているから。そして、彼は既に目標を達成しているからだ。
「なぁ。さっき俺が放った宝具。あれ、見事に防がれたよな」
「…何が言いたい?」
少年の言葉に幼女は怪訝な顔を浮かべる。その様子を見ると少年は凄惨な笑みを浮かべてこう言い放った。
「さっきの宝具、『
「……‼︎不味い‼︎‼︎」
少年の言葉を聞いた突如、幼女は脇目も振らず最大限の速さで壁へと向かって行く。あまりの速度で地面には土埃が舞い上がっている。
「じゃあな、『牛若丸』。精々頑張れよ?」
「!貴様、何故私の真名を…」
幼女の事を『牛若丸』と呼んだ少年は一言も返す事なく、彼女の作った土埃の中に紛れて、何の痕跡も残さずに消えて行った。
「くっ、消えたか。だが、今はそれどころではない!」
彼女は力の限り荒野を疾走する。遠目からでも異様な変化は一目でわかる。
先程まで茶色一色だった北壁の前が一面若い緑色に変貌しているの見て、牛若丸はより一層走る速度を高めるのだった。
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「マスター!早く避難を‼︎」
「マシュ!けど、まだ兵士の殆どが…」
北壁の前は、異様な事態に見舞われていた。
先程突如遅いかかった紅い閃光。それ自体はマシュの宝具である『
突如、壁の周りに植物の芽が生え始めたのだ。その植物の成長速度は常軌を逸しており、芽が生えてから30秒程で既に花を付け始めた。
兵士は既に避難を始めているが、戦線が延びていた所為で全体の1割程度しか完了していない。魔獣もまだ残っているのも、避難を妨げている所以の1つだろう。
「『立香』殿!早く壁の向こうに避難を‼︎」
「『レオニダス』さん‼︎避難はどこまで⁉︎」
重装備を身にまとった筋肉隆々の男性が此方に向かってくる。手にはラウンドシールドと槍を持っており、歴戦の勇士である事がうかがえる。
「まだ完了していません!しかし、貴方も早く避難を‼︎」
突如生えた植物は既に花を枯らし、そこに種を作り始めた。その種は発光を始め、その光は徐々に明るさを増している。
「主人殿〜!ご無事ですか‼︎」
「牛若丸さん!相手は?」
「説明は後です!早く避難を‼︎これらの植物は、あの宝具の影響を受けています‼︎」
植物は既に爆発寸前まで発光している。もう、爆発まで後5秒とないだろう。辺り一面に広がる植物の1つ1つは、既に時限爆弾として機能を始めている。360°一面に広がる緑に、死角など何処にも無い。
「先輩、逃げて‼︎」
『鳳仙花』と言う名前の植物の種子は今まで一番発光し、あまりの眩しさに思わず目を閉じる。それと同時にマシュが身体に覆いかぶさってくる。
(あぁ、このまま終わるのかな…)
もしかしたら大爆発せず、くす玉やクラッカーの様な爆発かも知れない。そもそも爆発自体しないかも知れない。
なんて、どうしようもない程の楽観思考が頭を過る。そんな事有り得ない、と頭で理解しているはずなのに、
身体が変な浮遊感を覚え、そのまま襲いくるであろう衝撃に備えると…。
(…あれ?)
いつまで経っても爆発が起きない。もしかしたら、本当に爆発しないのかも?
けど、目を開いた瞬間爆発なんて起こったら。なんて思うと迂闊に目を開くことも出来ない。しばらくの間、緊迫した静寂が辺りを支配する。
「あれ?なんでこんなに静かになっているんだい?」
「…マーリン。もっと皆んなを労わるべきだと思います」
そんな静寂の中、穏やかな、けれどどこか面白がっている様な声が響く。その後、別の声が小馬鹿にした声を諌める声が聞こえる。
聞き覚えのある声が聞こえたので目を開けると、そこには二人の人物がいた。
一人は大量の白髪を携え、杖を持っている白いローブをまとった不審者。顔には胡散臭い笑みを浮かべている。
もう一人は黒いローブを着て、顔をフードで隠している少女。顔が隠れている所為で表情を読み取る事は出来ないが、不審者に呆れている事が手に取るようにわかる。
「『マーリン』さん!『アナ』!無事だったんだ‼︎…あれ?爆発は?」
「やぁ立香ちゃん。花の事なら心配要らないよ。僕が元の形に戻してあげたからね」
周りを見ると、植物は発光を辞めて普通の植物の様に風にたなびいている。どうやら、脅威は無くなったらしい。
少し安心していると、視線に見慣れたディスプレイが映り見慣れた顔が出てくる。今まで一緒に戦ってきた戦友であり、ちょっと抜けている友人の『ロマニ・アーキマン』だ。
『どうやら、危機は去ったみたいだね。言いたくないけど、どうやらマーリンのおかげらしい。けど、どうやったんだい?』
「僕がやったのは、植物に本来の姿を思い出して貰っただけだよ。大した事はしていない。けど、やはり…」
マーリンは近くに咲いている花の1つを摘み、手に持つ。小さい頃学校で育てた記憶があり、それが『鳳仙花』である事がわかる。
「うん。やっぱり、彼は花が好きなんだね」
「…はい?」
どうやら、またこの不審者が変な事を言い始めたらしい。
「…何を言っているんですか、マーリン。花を愛しているのなら、こんなことに使うはずがありません」
アナが最もな事を言ったので、私も相槌を打つ。マシュもアナの言葉に同意している。
「いやいや。こんな綺麗に花を咲かせられる人が、花を愛していない筈が無い。武器として使うだけなら、こんなに綺麗に咲かせる必要は無いからね」
マーリンはさっき摘んだばかりの花を此方に見せてくる。たしかに、葉っぱは綺麗な形を保ったまま等間隔に並び花は太陽に反射して色が良く映えている。
もし花壇で咲いていたら、思わず目に止まってしまう程綺麗だ。たしかに、武器として使うだけならここまで綺麗に咲かせる必要は無いだろう。
「だからこそ、彼は厄介だね」
『たしかにさっきの宝具は強力だけど、マーリンで無力化する事が出来るのなら…』
「彼は大切に思っている物を簡単に捨てる事の出来る人物だ。そんな彼に美学やプライドは無い。どうだね?厄介じゃないと言い切れるかい?」
『それは…。取り敢えず、あの英霊についてはこちらでも調べておく。立香ちゃんも、無理はしないでね』
Dr.ロマンはそれだけ告げると、ディスプレイは消えた。どうやら、また厄介な敵が現れたらしい。
「…そうか。君は、そっちの道を選ぶのか。…それは、愚かな選択だよ」
そんなマーリンの独り言が、何処か遠くの様に聞こえた。
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「あーあ。『花の魔術師』の到着は流石に想定外だな」
先程よりも遠くから事の顛末を見守っていた少年は、残念そうに肩を竦めその場を後にする。
「おまけにあのフードの女…。こりゃ、『三女神同盟』が堕ちるのも早いかもな」
考え事をしながらその場を後にしようとするが、途中で足を止める。乱雑に頭を掻くと、辺りを見回す。
「おいおい、まじかよ」
そこには、先程までウルクの兵士を襲っていた魔獣が何十と並んでいた。その全ては、少年の事をじっと見ている。
どうやら、逸れた魔獣たちが俺を襲った。と言う
「…はぁ。悪戯に戦力を消耗してどうするのかね、あの人は。あぁ、人じゃなかったか」
まぁいいや、と少年は呟くと両手をポケットの中に突っ込む。その様子を見た魔獣達は舌なめずりをした後、一切に少年へと牙や爪を突き立てる。
が、魔獣は突如地面から突き出た大量の草木によって串刺しにされる。脳髄や眼球、内臓が辺り一面に飛び出し茶色の地面を真っ赤に染め上げていく。
その様を見た少年は忌々しげに口を開く。
「まぁ、所詮は泥人形か。こんな嫌がらせで『守護者』を狩れるとは思わない事だな」
『
植物の杭が収まったのを見ると、ポケットに突っ込んだ手からハーブの様な葉っぱを取り出す。それを口の中に放り込み、よく噛んでから魔獣の死体に吐き捨てる
すると魔獣の死体に大量の草木が生える。欠損した部位には草が伸び、失った目には赤い花が咲く。すると死体だった魔獣は徐に立ち上がり、虚ろな瞳で少年をじっと見つめる
「そこらの死体を全部眷属化しておけ。終わったら俺の拠点まで来い」
少年の命令にこくりと魔獣はうなづくと、転がる死体に噛みつき始める。噛まれた死体もまた同じように草木が生え始め、鼠算式に動く死体が生え始める
「それじゃ拠点に帰りますか」
戦力を集めよう。『三女神同盟』もキングゥも信用ならない。
連中には信念がある。尊厳がある。美学がある。
そんな物は必要ない。そんな不純物は必要ない。
必要なのは手段だ。必要なのは武器だ。
求めるは、非の打ち所がない結果だ。
英霊設定
真名 ????
クラス アーチャー
出典 Fate/◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎
身長/体重 142cm/42kg
地域 日本
属性 中立/中庸
性別 男性
精神崩壊済み