本日も快晴、人理を滅ぼすには良い天気だ。
「それじゃ、今日も地道に仕事しますかね」
人類が補給に使うであろう舗装された道に、麻袋から植物の種を取り出し、それらをばら撒いて行く。
ばら撒かれた種は尋常では無い速さで成長し、あっという間に黄色くて大きい花を咲かせる。
外見だけ見ればそれは『向日葵』に見えるが、その実態は近く存在に対して無差別に攻撃を行う砲台そのものだ。
凡百の英霊にとっては無意味な代物だが、普通の人間にはかなり効果がある。木や食料、情報伝達を妨害するのにこれほど適した物は無いだろう。
「人間を殺すには補給と情報を止めるのが一番だからな」
子供っぽい嫌がらせだが、これであの『賢王ギルガメッシュ』が頭を痛めると思うと世の中わからないものだ。
そんな風に気分良く作業に勤しんでいると、聞き慣れた声が響く。綺麗な声なのに、嫌味が込められているせいで色々台無しな声だ。
『守護者もどき、聞こえるかい?』
昨日、俺に魔獣をけしかけてきた人物だ。どうやら、なんの悪気もないらしい。まぁ、謝られても困るといえば困るのだが。
「聴こえてますよ、雇い主殿。何か御用ですかい?」
『…その言い方は好きではないな。撤回してくれ』
軽く茶化すと、キングゥは声色を低くし不機嫌になる。やはり、揶揄われるのは好きではないようだ。
「あいよ。…で?そんな無駄話をする為に俺に声を掛けたのか?」
『そんなわけ無いだろう、内容はあの忌々しい女神の事だ。そろそろ目障りだから、本格的に殺そうと思うんだが?』
…あの忌々しい女神とは恐らく『女神イシュタル』のことだろう。金星の女神、自由奔放かつわがままなお嬢様だ。そして、『三女神同盟』の行動を妨害する厄介な女神。
俺も何回か超長高度から狙撃(爆撃)を受けた事があるが、あれは最早子供の癇癪の様なものだろう。規模は大きいが、所詮嫌がらせ程度のものだから気にせず放置、が最適だと思うのだが…。
「相変わらず、金星の女神のことが気に食わないんだな」
『…君に言う事では無い。作戦の計画は追って伝える』
耳元の声は不貞腐れた声を出した後、ブチっと音を立てて乱雑に途切れた。どうやら、怒らせてしまったらしい。
「にしても、女神イシュタルの殺害かぁ…」
女神イシュタルを殺すとなると、エビフ山を攻略する必要があるのだろうか?彼女は普段あちこちを飛び回っているせいで居場所を把握する事はできない。
結局の所、やはり山狩りをする必要があるだろう。住処を散々荒らされたら、間違いなくイシュタルは怒り狂って俺を殺しに来るだろう。そこをキングゥに殺って貰えば良い。
となると、俺は陽動と挑発に注力するべきだろう。『
「守護者もどきの本領発揮と行きますか」
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「えぇい‼︎また補給路が塞がれたか!子ども地味た嫌がらせをしおって‼︎」
絶対魔獣戦線の司令塔、ジグラットの宮殿。そこの頂点に君臨する『賢王ギルガメッシュ』は、額に青筋を浮かばせ怒号を上げていた。
「お、落ち着いて下さい王よ!また花の魔術師に駆除して貰えば…」
そんなお怒りの王を嗜めるように司祭長『シドゥリ』は声をかける。賢王はそれを軽く手を振って抑えるが、苛立つ様子は消えない。
「わかっておるわ!…しかし、これで6度目。直ちに影響が出るわけでは無いが、早急に対策が必要だ。だが、今はあの駄女神の懐柔が先…」
指を顎元に当て、少し考える仕草を見せると。突如声を荒げる。
「リッカ達を呼べ!仕事を任せる‼︎」
「はっ!畏まりました‼︎」
賢王は天文台の魔術師を呼ぶ事にする。あの忌々しい駄女神に協力を頼むのは癪だが、戦力の拡充は必須。
「さて、どう転ぶか…」
そう言って賢王は世界を導くために、津波の様な報告に耳を傾けるのであった。
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「それで、私達は今エビフ山に向かっているんですよね?」
「うん。『女神イシュタル』を懐柔…協力を取り付けるのが今回の目的なの」
ジグラットの町から離れた郊外に、その四人はいた。
可憐な身体からは想像も付かない巨大な盾を背負う少女『マシュ・キリエライト』
黒いフードを身に纏い、顔を覆っている少女『アナ』
長い白髪を持ち、白いローブを着込む青年の様な人物『マーリン』
赤い髪をまとめ、どこか魔術師然とした服を着た少女『藤丸 立香』
「王様から宝石を預かって来たけど、これで本当に協力して貰えるのでしょうか?」
「あの王様曰く、『あの駄女神はお金、特に宝石に目が無い』っていってたから大丈夫だと思うけど…」
果たして金星の女神がこんな俗っぽいものに興味があるのだろうか?王様が言うのだから間違いない筈であるが…。
「!見えました、エビフ山です‼︎」
特に魔獣の襲撃に遭うことも無く荒野を歩いていると、目的地である『エビフ山』の麓を目視する事のできる位置に辿り着く。
「…あれ?誰か戦ってないかい?」
だが、その山の麓では戦闘が行われているようだ。遠目からの為詳しく人物の顔を見る事は出来ないが、戦っている相手を見る事はできる。
「あれは…魔獣⁉︎」
「に、しては様子がおかしいね。あの魔獣達、連携して戦っているみたいだ」
魔獣の数は合計で6匹。本能のみで動くそれらは、その全てがまるで軍隊蟻の様に統率された動きを見せている。
動きの速いものが撹乱し、動きの遅いものが周りを囲うと言った単純ながらも効果的な戦法を取っている所から、それを感じる事ができるだろう。
「とにかく、助けないと‼︎」
「わかりました!マスター、下がって指揮を取ってください‼︎」
「やれやれ。どうやら、楽は出来そうもないね」
「…働いて下さい。マーリン」
それぞれが武器を構え、魔獣達に向かって行く。『カルデア大使館』エビフ山遠征の初戦闘が、幕を開ける。
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「このっ!しつこいっての‼︎」
襲いくる魔獣の凶爪を右手の『莫耶』で弾き返し、空間に出現させた剣を射出する。普通の魔獣ならこれで絶命するのだが、これらの魔獣達は普通ではない。
弾き出された剣を別の魔獣が弾き、再び距離を取る。それは、『連携』と言っても差し支えない動きだった。
身体の一部が欠損し、植物に身体を侵されている魔獣の死体達なのだ。その魔獣達は吠えることも睨むことも無く、ただ無機質な瞳を向けるだけだ。
そして、この魔獣達はおそらく彼奴の使い魔だ。私を殺すために、作り上げた使い魔達。
「上等じゃない…!」
イリヤと美遊を助け出す。そして、彼奴をコテンパンにする。それまで、死ぬわけには行かない。
「掛かって来なさい、この人形ども‼︎」
両手の剣を構え直し、魔獣達を睨みつける。すると、魔獣達の全員が右を向く。すると、弾かれた様にこの場から逃げ出す。
「…って⁉︎なによ急に⁉︎」
何かあるのか、と私も右を向くとそこにはこちらに向かって走ってくる四人の人影がある。増援が来たから撤退したのだろう。
…勝ち目の無い戦をしない。ほんと、腹が立つほどに合理的だ。
「けど、取り敢えず…」
けれど、結果的に言えば魔獣達は去ったのだ。なら、私が取るべき行動は…。
「はぁい。貴方達、どこの人?」
まずは、彼らの協力を得るべきだ。悔しいけど、私一人では彼奴に勝つ事は出来ないのだから。
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「うわぁ…。これ、考えられる上で最悪の状況じゃ無いか?」
そんなエビフ山の様子を、少年は遠くから見ていた。魔獣達を逃したのは、勿論の事だが少年の采配である。
いくら連携をすると言っても、魔獣には生存本能という物は無い。こちらが命令を下さなければ、死ぬまで戦っていた事だろう。だが、そんな無駄なことに戦力を割く事は論外だ。
「…この山に来たって事は、連中『女神イシュタル』を懐柔する気か」
おまけに襲撃対象であった彼女も天文台の連中に合流してしまった。これでは魔獣で殺す事は最早絶望的だ。もっと別の方法を取る必要があるだろう。
「考えられる中で最悪に近い状況だ。何か手を打ちたい所だが…」
エビフ山の中には既に天文台の魔術師が居て、かつ花の魔術師もいる。エビフ山に攻撃を仕掛ければ、イシュタルも間違いなくこちらを狙い始める。
ざっと計算して6vs1になる。正直言って勝ち目なんて物は無い、真っ正面から戦えば間違いなく俺が地面を舐めているだろう。
真っ当に戦えば、の話ではあるが。
「にしても、ここまで逃げてくるとは…。あの褐色幼女も大したものだな」
今さっき魔術師と合流した露出の多い褐色の少女、彼女とは前に面識がある。
面識といっても、一度剣を交えたくらいのものなのだが。例の二人をを捕縛する時に取り逃がした存在、ただそれだけなのに…。
「…あいつを見ていると、無性に腹が立つ」
彼女が戦っている姿、いや、正確に言えば彼女らが戦っている姿を見ると何故か苛立たしく思えるのだ。
他人ではなく、自分自身に怒りの矛先が向くという奇妙な感覚。不甲斐ないとか、そう言った感情が頭の奥底で燻るのだ。
俺はその感覚が嫌で今まで魔獣たちに追撃を任せていたのだが、魔術師側に付くと言うのであればそうも言ってられない。
「…結構な規模になるな。今ある戦力は全て投入した方が良さそうだ」
一度被りを振って、余計な思考を頭から遮断する。今必要なのは個々の感情ではなく、相手を確実に滅ぼす手段だ。
現在手元にある強化魔獣の数はおよそ5百。『向日葵』などを配置したとしても、正直言ってはした数だ。だが、ないよりマシだろう。
魔獣は既にここに集結している。キングゥはまだ来てはいないが、戦闘が起これば来る筈だ。後は、俺の準備だけだ。
思考は既に纏まり、作戦も立てた。不確定要素は『花の魔術師』と褐色幼女の二人のみ。だが、優先順位はあくまで褐色だ。
「宝具、展開」
『バレットM82』を出現させ、その標準をエビフ山の守護者が常駐する地点に向ける。
『仙人を名に持つ孤独の花よ。その嘆きを歌いたまえ』
一呼吸置くと、魔力を一度に開放し自身の宝具を発動させる
『全ての盟友よ、この号哭を聞け!『
引鉄とともに放たれた光はエビフ山に直撃し、数多の光と撒き散らす。すると山の一角が一面緑に変わり、それが赤に変わって山の一角全てを吹き飛ばす。
宝具を撃ち込まれたエビフ山は綺麗な稜線を歪め、その有り様を変えた。
その様子を確認し、『バレットM82』を再装填する。再装填とともに真っ赤な薬莢が弾き出され、再び薬莢が装填される。
そのまま間を挟む事なく宝具を
「始めよう。障害は、全て排除だ」
開戦の火蓋は、宝具の紅い光によって開かれた。
『
宝具ランク C −
対軍宝具
レンジ 1〜100名
現代兵器である『バレットM82』を魔術的に補強、強化したものから撃ち出される対軍宝具。植物である『鳳仙花』の規定と概念を抽出し弾薬に付与したものを媒介に発動する。弾着した地点からた辺り200メートル程を『鳳仙花』によって再び爆撃する。魔力そのものを撃ち出すのではなく礼装を魔術で極限まで強化して発動するもののため、魔力消費量は少ない。よって、充実した魔力供給があれば連射も可能