ARMORED CORE VERDICT DAY ユーラヌスの人形たち   作:D-delta

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UNACは一度ハマると中々抜け出せないですよ~。
楽しくてやめられないですし、自分で操作するより気持ちよく動きますよ



記録1

 汚れた砂漠の上に彼らは立っている。

 その彼らの上に汚れた空はあった。

 砂漠の上に立つ除染スーツを着た二十代くらいの若い一人の男――プリン=ハップはその汚れた空を見ていた。

 

「ここも戦場だったのか」

 

 独り呟き、プリンは標的を次々撃ち落としていく鉄塊のような機動兵器たちに視線を移した。

 その機動兵器たちはAC(アーマードコア)と呼ばれていた。しかし、プリンが見つめているACはただのACではない。

 そのACたちは『UNAC』と呼ばれる無人のACなのだ。

 元々は『財団』と呼ばれる組織が世界中に売り出し、暴走させて世界を混乱させた代物だ。だが、人類は『UNAC』を制御する術を見出して今では普通に運用出来るようになっている。

 

「ここもそろそろ汚染区域になるようだ、『UNAC』の実験でも引き際は肝心か」

 

 プリンは通常兵器である防御型という標的が動かなくなるほどに損傷したところを引き際として手の平に収まる程度の端末から『UNAC』のオペレーション及び戦闘システムを解除した。そのまま端末を操り、遠隔操作で『UNAC』たちを大型トラックに乗せ、彼らは汚染区域なりつつある場所を離れた。

 彼らが離れようとした時、防御型からパイロットが降りてきて大声で悔し気なことを叫びながらここから去る彼らに向かって9mm拳銃を発砲していた。その内にそのパイロットは汚染区域と化したこの場の汚染を受けて倒れ、息絶えた。

 しかしそのパイロットが死んだのは仕方のないことだ。この世界はもう死んでいるようなものであり、息を吹き返す可能性など1mmも残されていないのだから。

 

 

※※

 

 

「実験データはどうだった?」

「ふふん、上々の結果だ」

「ふーん、なるほど」

 

 狭く薄暗い指揮車の中で二十歳で端正の取れた顔立ちの若い男はパソコンに映されたUNACの実験データを見ており、その若い男に背の小さな男の子とも呼べる見た目の幼い人物――アルバ=ユーラヌスが近づいて一緒にパソコンに映し出されていたUNACの実験データを見ていた。

 若い男――プリン=ハップはパソコンを操作して、画面に作戦ファイルを映し出す。

 作戦ファイルには今回行った実験でのUNACの細かい動きが記録されていた。

 ユーラヌス1、ユーラヌス2、ユーラヌス3、ユーラヌス4、計四機のUNACが作戦ファイルの画面上に映し出されたマップの中を動き回っている。

 

「流石僕が調整したUNACだ。ちゃんと動いているね」

 

 アルバは十三歳という年齢相応に嬉々としてUNACの動きを見ていた。

 プリンはそのアルバの様子に少し鼻息を荒くしてアルバを抱きしめた。

 

「一応俺も調整したけどね、リーダー」

「変態プリン、離して」

 

 アルバはプリンの腕の中でもがくが年齢差、体格の差が示す通りアルバはプリンの腕の中から出られなかった。それを良いことにプリンはアルバの若々しい匂いを嗅いで満面の笑みを浮かべていた。まさにプリン=ハップは変態である。

 抵抗できないアルバは諦めてプリンの腕に収まった。

 そのままの状態でアルバは腕を伸ばしてパソコンを操作、UNACの戦闘経過を見続けた。

 高機動中量二脚タイプ、武装は両手にライフルと肩部にKE型の巡航距離が長いミサイルを搭載したユーラヌス1はどの機体よりも早く前線に辿(たど)り着いた。そのまま敵と会敵。敵の目を全て引き付け、その高機動性を発揮して攻撃を回避しながらの戦闘を開始した。

 そしてユーラヌス1が敵を引き付けている間に空中を漂いながら移動してきたユーラヌス4が会敵し、攻撃を開始する。

 高防御高機動四脚タイプ、両手に弾数五十発の先端が丸く尖がっている攻撃力の高いレーザーライフルと肩部にCE型のミサイルを搭載したユーラヌス4による攻撃は敵の防御型のシールドを易々と貫き、本体を木っ端微塵にしてみせた。

 ユーラヌス4が三機の防御型を撃破している間にユーラヌス1は機体を反転させ、敵の高機動型二機に攻撃を加えて撃破する。

 

「やはり僕のオペレーション調整は優秀だ、完璧な動き、素晴らしい命中精度、なにをとっても僕は優秀だ。で、後は……」

「お! 俺の調整したUNACが前線に出てきたな!」

 

 プリンが調整を担当したユーラヌス2とユーラヌス3が遅れて前線に出てきた。

 だが既に敵は戦力を半数も失っており、後からやってきたユーラヌス2とユーラヌス3の出番はない。そうアルバは思い、自身の方が優秀だと愉悦に浸っていた。

 しかしユーラヌス2とユーラヌス3の火力は凄まじく、ユーラヌス1とユーラヌス4が狙っていた獲物を横取りされてしまった。

 定点防御タンクタイプ、両手に攻撃力の高いオートキャノン、ハンガーユニットにガトリングとヒートマシンガンを持ち、肩部にKE型のミサイルを搭載したユーラヌス2。ユーラヌス2が有する火力は他のユーラヌスを圧倒しており、無駄弾はあるが残敵の防御型を五秒も経たずに原型を残さないほど破壊し尽くした。

 そして最後の撃破を飾ったのはユーラヌス3。

 高防御逆関節タイプ、両手にヒートハウザーと肩部にKE型のロケットを搭載した瞬間火力の高いユーラヌス3はヒートハウザーとKE型のロケットを乱射。射線上にいた敵を諸共爆風に巻き込んで全てを木っ端微塵にした。

 戦闘が終了した。

 

「やっぱりプリンの調整した機体は単純で猪突猛進するね。それに命中精度も雑だし、回避だってロクに行わない。僕の調整したUNACと比べて被弾率も多いし、無駄弾も多い。これじゃあ費用のせいで赤字になっちゃうよ」

「でも、敵を撃破してみせたろう? しかもどの機体よりも早く、確実にね」

「むー……でも僕の機体の方が優秀なの! プリンの粗雑なUNACと違って僕のUNACは最強なの! もーバーカバーカ!!」

 

 アルバはプリンの腕の中で騒いでジタバタし始めた。悔しがる気持ちでいっぱいになって表情は半ば泣いているような怒っているような複雑な表情だった。この瞬間は幼い子供と言えるだろう。

 当のプリンはアルバのその様子にニコニコしながらギュッと抱きしめ続け、頭を撫でてアルバを落ち着かせた。

 

「んにゅ……」

「可愛いよ、アルバは小動物的な可愛さがある。ずっとこうしていても苦にならない」

「撫でられるのは好きだけど……バーカ」

「よしよし」

 

 落ち着いたアルバは大人しくプリンの撫でを受けた。上目遣いでプリンを見つめ、子犬のように大人しくしている。

 プリンはそのように大人しくしているアルバが大好きだった。それもアルバをメチャクチャにしたいと心の中で思っているほどにだ。だがそれは同性愛などではない、プリンは懐いてくる小さい子を見ると興奮してたまらないのだ。

 

「アルバ……少し社会の窓にお邪魔していいかな?」

「ダメ」

「はぁ……やっぱりか」

「当たり前だろ、変態プリン。僕にそういう趣味はないからね」

「ACに乗ってパンツを汚してきたのはどこのどいつかなー?」

「くっ……そんな過去の話は出さないで」

「はいはい、ごめんね。少しからかいが過ぎたわ」

 

 プリンは困ったような表情をしたアルバを抱きしめたままベッドに座らせ、アルバから離れて狭い指揮車内にある唯一の扉を開いた。開いた扉の隙間から外の光が差し込む。

 二人は眩しい光を手で遮って、外を見た。

 外は荒れ果てた砂の大地があった。風が吹くたびに砂は巻き上げられ、前方の視界を奪った。

 汚れた空が徐々に晴れてきて、太陽の光は砂の大地と彼らを照り付ける。

 UNACたちを乗せた無人の大型トラックと二人の乗った指揮車は太陽の光を浴びた。

 

「そろそろ来るかな? 契約相手の方々は」

「確か今回の契約相手って、三大勢力の一つ――シリウスだったよね?」

 

 プリンの独り言に反応して防塵マントを羽織り、指揮車から出てきたアルバは言う。

 

「あぁそうだよ、今回の仕事は報酬がデカいからね。まぁ報酬に見合う分のデカい仕事だから騙されるなんてことはないだろうけど」

「ミッション内容は?」

「ヴェニデの防衛基地を潰す。で、俺たちの役割は防衛基地にいるACを相手にすること。破壊しても良いし、防衛基地を潰すまでの時間稼ぎでも良いんだとよ」

「なるほど、敵はACなんだね」

 

 二人共顔をニヤつかせる。対AC戦はユーラヌスの十八番(おはこ)であり、なにより彼ら自身久しぶりの対AC戦に胸を高鳴らせていた。

 激しい戦闘、高い報酬、そして実験データの採取、彼らにとってのデメリットは経費がかかるだけであり、そんなデメリットなど彼らにとって些細なものでしかなかった。

 彼らが胸を高鳴らせていると大型ヘリの特徴的な騒音が前方の遠くからこだました。

 その騒音に気付いた彼らは指揮車から双眼鏡を取り出して騒音が聞こえる方に向ける。

 

「見えてきたぞ」

「ヘリのエンブレムはシリウスのもので間違いないね」

「さぁて仕事の時間だな。準備しようか、アルバ」

「うん」

 

 雇い主のシリウスの部隊が来るまで彼らは指揮車に戻り、激しい戦闘を繰り広げるためにUNACの調整を始めた。

 

 

※※

 

 

「これからブリーフィングを始めたいと思う、よろしいか?」

 

 シリウスの女部隊長はテントを張った簡易的なブリーフィングルームでブリーフィングを始めようとしていた。

 ブリーフィングルームにはシリウスのアーキテクトたちとヘリのパイロットたちがおり、その中に混ざる形でアルバを抱きかかえたプリンが立っていた。

 仮設テントの中にイスはなく、テーブルが置かれており、その上には地図が広げられている。

 

「俺たちは問題ない、どうせ輸送だけが任務になると思うがね」

「無論我々も問題はありません」

 

 シリウスのアーキテクトのリーダーとリーダー格のヘリのパイロットは問題ないと言い、シリウスの女部隊長はまだ返事を返していない気に入らないガキ共――アルバとプリンに視線を移した。

 アルバは問題ないという合図にグッと親指を立てていた。プリンはそれを見て少し笑った。

 

「シリウスの部隊長さん、俺たちも問題はない。さっさとブリーフィングとやらをやってくれ」

「分かった。ではブリーフィングを始めさせてもらう。これから我々が襲撃する基地はここ、ヴェニデの第18支部防衛基地だ。ここを陥落させることによってその後ろにある本拠地を安全に潰すことが出来るのだ、もしもこの本拠地を潰すことが出来ればこの大陸は我々のものとなる!」

 

 シリウスの女部隊長は地図の各要所に指差し、進行経路を指でなぞって作戦の説明を続けた。

 この作戦は過去にEGFが潰した第19支部前線基地を通り、その後ろにある第16支部防衛基地で一度物資の捜索及び野宿、そこから第18支部防衛基地に侵攻して無力化及び後々やってくる部隊の補給基地として機能させ、その後にこの大陸にある全てのヴェニデの部隊を指揮する本拠地を叩くという風になっている。

 

「説明は以上だ。誰か質問はあるか?」

「はーい」

 

 プリンの腕の中に納まっているアルバは手を挙げた。

 シリウスの女部隊長はたかが傭兵が質問するなとでも言いたげに目を鋭くしてアルバを睨みつけた。

 

「僕たちの仕事はヴェニデ第18支部防衛基地のACを引き付けるだけで良いんだよね?」

 

 アルバは本拠地の方もやらなくていいのか気になり、再度確認するように訊く。

「はぁ……」と溜め息を吐いたシリウスの女部隊長は鋭い目付きのまま口を開いた。

 

「我々シリウスを舐めてもらっては困る。たとえヴェニデに力が劣っているとしても数と戦略で押せば良いのだ、知略を駆使すればお前たちのような傭兵などいらん。だが、今は必要だ……本拠地攻略まで今の我々は戦力を消耗することが出来ないからな」

「へー、残念」

「理解出来たらさっさと自分たちの機体を万全の状態にしてこい、このガキ傭兵共が……!」

 

 アルバがむぅっと頬を膨らませて怒った。が、すかさずプリンがアルバの頭を撫でて落ち着かせた。

 アルバの怒った様子を見たシリウスの女部隊長は軽く舌打ちを打った。

 そこでプリンがシリウスの女部隊長とアルバの喧嘩に割り込むように口を開く。

 

「隊長さん、俺のことを侮辱や挑発をしてくれて構わない。ただし、俺のアルバをあまり挑発してやんないでくれ。こう見えてもUNACの調整を主に担当しているのはアルバなんだから、あんまり挑発すると隊長さんらも俺ら『ユーラヌス』の餌食になるよ?」

 

 話していたプリンの口調は優しく冷静だったが、静かで見えざる殺意を視線に乗っけてシリウスの女部隊長に突き刺した。その殺意が乗っかった視線を「これ以上挑発すると殺す」という警告と受け取ったシリウスの女部隊長はなにも言わず、頷く。頷いたことを、自分の出した警告を理解したと受け取ったプリンはいつもの優し気な表情をシリウスの女部隊長に向けた。

 

「作戦の時間だ、各員出撃開始」

 

 機嫌の悪くなったシリウスの女部隊長は一目散に仮設テントから出て行った。仮設テントの中にいたシリウスの人間は女部隊長に付いていくように次々と仮設テントから出て行った。

 アルバたちもそれに続いて仮設テントから出た。太陽の眩しい光が二人に照り付ける。

 

「あの隊長さん、機嫌悪かったねー」

「そうだな、アルバはああいう大人になっちゃダメだからね」

「ふふん! 分かってるって!」

「じゃあ、行こうか」

「うん!」

 

 二人は指揮車両に乗り込み、UNACたちを乗せた無人の大型トラックを随伴させて離陸していくシリウスの大型ヘリに付いていった。

 作戦の始まりである。




ちょっとボーイズラブが入っているかも……でもタグに付けるほどではないのかもしれない。
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