ARMORED CORE VERDICT DAY ユーラヌスの人形たち   作:D-delta

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ピリエの裸ぇ……


記録10

「おや、帰ってきたねぇ」

「ほんとだ」

「やっとか……」

 

 外でピリエの帰還を待っていた三人の目にピリエのAC『カクタス』が映る。三人はピリエの帰還にホッと安心していた。無事に生きて帰って来てくれたこと、そして『カクタス』が無傷なこと。それらを合わせてアルバ、プリン、サリアは安心していた。

『カクタス』はその異常なスピードで三人が安心している内に大型ヘリのすぐ近くに到着した。

 

≪戻りました。ごめんね、プリン……勝手に行っちゃった≫

「良いよ、別にさ。ピリエが無事に帰ってきてくれたことが今はなにより嬉しいよ」

 

『カクタス』から発せられるピリエの反省の声が響く。そしてプリンはそれを許した。

『カクタス』のコックピットハッチが開く。コックピットからピリエが顔を覗かせ、申し訳なさそうな表情をしていた。

 三人は許そうという気持ちで険しい表情もせず、ただいつも通りの表情でピリエを見ていた。そんな三人の表情を見てピリエは安心し、人間とは思えない跳躍で機体から降りた。

 

「おかえり! ピリエお姉ちゃん!」

「うん、ただいま!」

 

 ピリエとアルバの元気な声が響く。

 そこに「補給が終わりました」という補給員の声が入ってきた。サリアは大型ヘリの燃料補給が終わったことに気付いて、通貨の入った袋を腰のポケットから取り出した。

 

「燃料代はいくらかね?」

「5000Auになります」

「案外お安いのねぇ」

「ええ、ここではこういうサービスはお安くしているので」

「お財布に助かるわぁ」

 

 言いながら袋から通貨を出し、それを補給員に渡した。通貨を受け取った補給員は一言「ありがとうございます」と言って大型トラックに乗り、去っていった。

 サリアは大型ヘリに乗り込み、計器を確認。本当に燃料が入っているのか、燃料メーターを見た。

 

「ようし、ちゃんと入っているねぇ」

 

 確認し終えたサリアは上機嫌になった。そのまま大型ヘリに付いている作業用アームを動かし、AC用パーツをコンテナから出した。

 

「次はアルちゃんのUNACを作る時間だねぇ」

「やった! よーし、飛びっきりの作っちゃうよ」

 

 アルバはUNACを作る時間が到来したことに喜びを隠せなかった。その手には既にUNACを管理するための端末が握られているほどの喜びだ。

 早速アルバは頭の中で機体の設計図を作り始めた。

 なににしようかと悩んでいる内に、偶然アルバの目についたのがコンテナから出されている軽量逆関節だった。

 

「これだっ!」

 

 軽量逆関節のパーツを見てアルバはすぐさま閃いた。閃いた瞬間アルバの頭の回転は一気に速くなり、設計図が着々と作られていった。

 そして一分が経つ。

 

「出来た、設計図!」

 

 あっという間にUNACの設計図が完成した。それを忘れないように端末上にも設計図を描く。機体コンセプトも固まり、後は実際に作るだけである。

 

「嘘、早くない?」

「アルバはな、ああいうACを作るのがとても得意なんだ。もうそれは一種の天才だよ」

「へー」

 

 プリンがアルバを自慢するように言う。ピリエは設計図を作るスピードがあまりにも早すぎることに驚愕していた。

 そんなピリエの驚愕にも気付かず、実際に作る前にアルバは使うパーツに印を付けていく。こうすることでより作りやすくなる。

 

「おばあちゃん、なに作るか決まった! 僕が印を付けたパーツで機体を組み上げていってみて!」

「はいよー!」

 

 使うパーツ全てに印を付け終えたアルバは身振り手振りでサリアに指示した。そんな可愛い指示に思わずニッコリとしてしまったサリアは、言われた通りに作業用アームを動かし、機体を組み上げていった。

 華奢な軽量逆関節の上にCEに耐性のある一番軽量なコアが乗っかる。そのコアの左右にバランスの取れたCEに耐性のある腕部が取り付けられる。

 

「僕のUNAC!」

 

 UNACが出来上がる様を嬉々としてアルバは見つめていた。浮かべられている表情はいつもの笑顔より純粋な笑顔。十三歳という年齢に最も合った笑顔だ。

 そしてその笑顔が向けられているUNACのコア上部に、CEに耐性のある頭部が付いた。頭部のメインカメラは中心から左に二個あり、メインカメラが向けられている先にはアルバがいた。

 

「ここからは武器の装備だ、俺がACを操縦して武器を装備するよ」

「頼むね、プリン」

「武器の装備ぐらい俺だってやってみせるさ」

 

 意気込むプリンはUNACのコックピットに乗り込み、腕部を動かす操作モードに切り替える。

 大型ヘリの作業用アームが二つのショットガンを掴み、出来上がりつつあるUNACのところへ持って行く。

 

「これくらいは出来ないと……ピリエに良い顔出来ないな」

 

 自嘲気味に笑ったプリンは慎重に操縦桿を動かす。UNACの両腕が動き、作業用アームが掴んでいるショットガンに近付く。そのままUNACの両腕はショットガンのグリップ部分に到達、両手がショットガンのグリップ部分を持った。

 

「よし、ショットガン装備完了」

 

 しっかりとショットガンのグリップ部分を掴むことに成功した。

プリンはホッと息を吐いた。

 

「次の装備は?」

≪次で最後、フラッシュロケットだよ。これ入れ終わったら、機体の最終チェックを頼むよぉ≫

「了解、ババァ」

 

 軽い無線機のやり取りを終えたプリンは、コックピットのモニター上に機体情報と機体の状態を映し出した。モニター上にそれらを映し出したまま、フラッシュロケットが肩部に積み終わるまでプリンは待った。

 機械の駆動音だけが辺りに響く。そしてガコンという積載する際に出る音が、装甲越しにプリンの耳に届いた。

 

「乗っけた?」

≪乗っけられたよ、それより機体の状態はどうだい?≫

 

 無線機越しにサリアに言われ、プリンはモニター上を見つめた。

 機体の状態はオールグリーン。機体の各パーツ情報、武器の情報は問題なくモニターに表示されている。

 

「機体の状態はバッチリだ」

≪はいよー、確認出来たらプリンは降りな。後はアルちゃんの任せるこったぁ≫

「そうだな」

 

 プリンはコックピットから出て、アルバにバトンタッチを促がした。入れ替わるように次はアルバがUNACのコックピットに乗り込んだ。その際にプリンとハイタッチするのは欠かさない。

 

「さぁて、次は僕。君を必ず強い子にしてあげる」

 

 アルバはそうUNACに向けて言うが、当然のことながらUNACは返事を返さない。喜びもしない。そもそもUNACには感情なんてものはない。それでもアルバはUNACを最も信頼して、笑顔を向け続けた。

 

「じゃあ始めるよ、僕のUNAC」

 

 アルバは端末を操作して、フォーミュラブレインの編集画面に移行した。この画面でアクションチップの組み替えやアクションチップ内にあるプログラミングの数値を変えることが出来る。

そこで機体コンセプトに合ったアクションチップを選んだ。アクションチップを全てセットし終わると、次は各アクションチップの数値を変えていく。細かい数値と(にら)めっこだ。だが、その睨めっこもすぐに終わった。

 

「うん、これでOK」

 

 たった数分でフォーミュラブレインのデータが完成したのだ。並みのアーキテクトならばよくて二時間以上は掛かる。それほど複雑で難しい。

 完成した後は持ち込んだ専用装置にデータを流し込む。そしてUNACのコックピット内部に設置した。

 

「完成!!」

 

 コックピットにアルバの喜ぶ声が響く。UNACが完成したのである。

 アルバは機体から降りた。次のUNACを作ろうとコンテナから出されたパーツ群を見つめる。

 

「流石に二機目は無理かな?」

 

 AC用パーツはまだ残っているものの、UNACをもう一機作るには十分な数があるとは言えない。

 アルバは仕方なく作るのを諦めた。それでもアルバは一機作れたことに満足していた。

 

「欲張り過ぎはいけないからね」

 

 そう自分に言い聞かせて端末の機体データを保存、登録する。この登録と保存で外部からでもUNACの状況を逐一把握出来る。

 保存と登録を終えたアルバは端末をポケットにしまった。

 

「登録と保存を完了っと、後はテストだけ」

 

 アルバは目を輝かせて新しく出来たUNACを見上げた。その見上げているアルバの横にプリンが近寄った。そしてプリンが口を開く。

 

「テストするか? 今なら最強のお嬢様がそこにいて、最高のテストになると思うぞ」

「あ、確かに……! ピリエお姉ちゃん強いし、今までよりも良いデータが取れるかも!」

 

 アルバとプリン、二人してピリエを見た。二人の会話を聞いていなかったピリエは首を傾げて、近付いた。

 

「えっと、なにかあった?」

「うん! とにかく『カクタス』のコックピットに乗って待ってて」

「う、うん?」

 

 アルバが元気よく言うと、ピリエはよく理解出来ていないまま頷いた。

 事はあれよあれよと流れて行き、ピリエは『カクタス』のコックピットに納まっていた。

「なにを始めるんだろう」と心中で思っていると、コックピットにある通信機器からアルバの声が流れてきた。

 

≪ピリエお姉ちゃん、早速だけど僕の作ったUNACのテストをするよ!≫

「実戦でやるの?」

≪ううん、ACには必ずVR形式で行われるテストモードが搭載されているから、それを起動してみて≫

「分かったわ」

 

 ピリエは操作パネルをいじり、機体のモードを変更。テストモードに移行した。すると、モニターが映していた現実の景色が消える。そのすぐ後に荒れた大地が広がる空間が、モニター上に現れた。

 しかし現れたのは荒れた大地とその大地を照らす太陽だけではない。

 太陽に照らされ、大きな影を地面に落とす者。アルバの作った五番目のユーラヌス。

 先ほど作り上げたUNACが荒れた大地の上に立っていた。

 

≪テストの内容は簡単。ピリエお姉ちゃんか僕のユーラヌス5、このどちらかが撃墜されたらそこで終了≫

「分かりやすいね」

≪ふふん! テストだもん、分かりやすくなくっちゃね!≫

 

 アルバの得意気な声がコックピット内に響く。しかしその得意気な声を邪魔するように≪そろそろテストを開始するぞ? 準備は良いか、ピリエ≫と、プリンの声が割り込んだ。

 

「いつでも行けるよ」

≪じゃあ、始めようか≫

≪ちょっと僕まだ話しの途中! これからUNACの解説をしようと思ったのに!≫

≪それをしたら長くなるだろう?――≫

 

 通信越しにアルバとプリンが可愛い言い合いをしているのを余所にユーラヌス5は動き出した。

 ピリエは苦笑して、戦闘に集中するために通信を切った。

 

≪U5、戦闘開始≫

 

 ユーラヌス5がブースターを起動。軽量逆関節であるため『カクタス』に近付いていくスピードは速い。

 ピリエは操縦桿を強く握り、思いきり操縦桿を倒した。それと同時にフットペダルを踏んだ。

『カクタス』のブースターが起動する。その推力とピリエの並みの人間には出来ない無理な操作によって、『カクタス』は異常なスピードを発揮する。

 

「一気に……決める!!」

 

 気の籠った声を放つ。一気に撃墜するつもりで武装をヒートパイルに切り替え、音速に近いスピードで接近する。

 ヒートパイルの先端が相手を撃ち抜かんと煌めく。そして距離が10mを下回った時、『カクタス』はヒートパイルの先端を突きだした。軽量級に対してこの一撃が当たれば、いくらCEに耐性があろうと一撃で撃墜出来る。

 

「!?」

 

 しかしそれは〝当たれば〟の話だ。

 ユーラヌス5は逆関節特有のジャンプブースターを使用して、50mを越す大ジャンプを繰り出す。それによってヒートパイルは当たることなく、不発で終わった。

 

≪U5、攻撃開始≫

 

 ユーラヌス5の持つショットガンが『カクタス』に向けられ、散弾が放たれる。発射音が耳に入ってきたピリエは、銃弾を目視する前に瞬間的に回避した。

 

「流石アルバ君の作ったUNAC、怖いわ」

 

 ピリエはユーラヌス5に対して恐怖を感じ取っていた。迷いのない正確な攻撃、巧みな動き、ピリエにしてみれば一度施設のシミュレーターで戦ったことのある伝説の存在『黒い鳥』を相手にしているみたいだったのだ。

 ピリエは武装をショットガンとヒートマシンガンに切り替える。

 

「これで回避しながら攻撃すれば!」

 

 ピリエは操縦桿に付いている発射ボタンを押す。ショットガンとヒートマシンガンから弾丸が放たれ、弾丸はユーラヌス5にヒットした。そのままピリエは発射ボタンを押し続け、ショットガンとヒートマシンガンを撃ち続けた。

 対してユーラヌス5のショットガンはピリエの回避によって、弾丸は装甲に当たることなく地面にぶつかった。

 

≪U5、残りAP70%≫

 

 ユーラヌス5がそう告げると、ショルダーユニットが開く。ショルダーユニットからフラッシュロケットが放たれる。ピリエはすぐに回避した。が、フラッシュロケットは当たらなくてもその効果を発揮する。

 

「くっ、視界が」

 

 フラッシュロケットは地面に着弾し、辺りに眩しい閃光を放った。その影響で丁度着弾点の近くにいた『カクタス』のメインカメラは閃光に包まれ、コックピット内のモニターは一面真っ白になっていた。真っ白になったすぐ後に、装甲になにかが高速で当たる音が響いた。

 モニター上に〝DAMAGE〟と表示されていた。

 

「被弾!?」

 

 反射的に声が大きくなった。それもそのはず、なにも見えない状況なのだ。どこから攻撃されているのか皆目見当もつかない。

 

「とにかく攻撃を回避しないと!」

 

 操縦桿を握る手が汗ばむ。どっちに動いて良いか分からない、もはやここまで来ると運だ。しかし動かなければ被弾する。そう判断したピリエは運に任せてフットペダルを踏む。

 ブースターが起動し、『カクタス』で高速で動き始める。

 

「運が良ければ……行ける!」

 

 数秒適当に動き続ける。すると〝DAMAGE〟の表示数が減っていった。つまり回避出来ているということになる。

 回避している間に徐々にモニターの調子が直っていき、ようやくまともに前を見られるくらいに視界が回復した。

 

「次はこっちの番」

 

 機体を反転させ、静かに集中するように言う。ショルダーユニットが開き、両手の武器はユーラヌス5に向けられる。そしてピリエは発射ボタンを押した。

 放たれた弾丸はユーラヌス5の装甲を削り取っていく。

 対してユーラヌス5の放つ弾丸はピリエの機体にヒットを重ねる。流石に散弾の回避は難しいのだ。

 

「くっ……これで!」

 

 ユーラヌスの攻撃した後のタイミングを狙い、ショルダーユニットからCEミサイルを発射。それと同時に両手の武器から弾丸が放たれた。

 

≪U5、残りAP僅かです≫

 

『カクタス』の攻撃はユーラヌス5に直撃した。しかし最後の一発で撃墜出来るというところで、またジャンプブースターを起動し、迫ってくる弾丸を回避した。

 ジャンプブースターによって『カクタス』の上を取ったユーラヌス5は、ショットガンを乱射する。放たれた散弾は『カクタス』の装甲を削っていく。

 その戦い様はまさしく接戦である。

 

≪稼働限界まで後僅かです、回避してください≫

 

『カクタス』のCOMが淡々と告げる。ピリエは危機感を煽られ、一瞬の判断でグライドブーストとオーバードブーストを使用。目にも留まらぬ高速移動でユーラヌス5の射線から逃げた。逃げると同時に、ユーラヌス5の後ろを取った。

 

「ここだ!!」

 

 ヒートマシンガンとショットガンの銃口から弾丸が放たれる。

 その弾丸たちはユーラヌス5の背面装甲をぶち抜き、ジェネレーターを損傷させた。ジェネレーターが損傷した影響によって内部では小さな誘爆が起こり、次第にその誘爆は巨大な爆発となってユーラヌス5を粉々にした。

 

「勝った……!」

 

 ピリエはコックピットの中で息を荒くしながら呟いた。そしてモニター上に映っていた仮想の景色は消え、元の現実の景色がモニター上に映し出された。

 いつの間にかびっしょり汗をかいていたピリエはコックピットハッチを開けて、外の風に身を当てた。

 

「涼しい」

 

 あまりの熱さに衣服を脱いだ。ピリエの透き通るような肌が現れ、太陽に照らされる。その身体は一種の美とも言えるほど美しく艶があった。

 しかし一層目立つように胸辺りに傷跡があった。まるで手術をしたかのような傷跡だ。

 涼しい風が吹く。その風がピリエの熱くなった身体、そして〝剣豪〟から受け継いだ心臓――小型ジェネレーターを冷やした。

 

「ピリエ、流石に裸はヤバいぜ!?」

 

 ピリエの裸を間近で見ていたプリンは顔を真っ赤にして、目を逸らした。当のピリエは特に気にする様子はなかった。

 テストは終わった。

 ピリエの裸を見ないようにアルバは、UNACの陰に隠れながら戦闘データの整理をしていた。

 

「これからのUNAC作りに役立つデータが取れたのは良いけど、これは想定外だよ!」

 

 ピリエが裸になるという思わぬハプニング、それを見て赤面しているプリン、陰に隠れているアルバ、三人の様子に笑っているサリア、そんな暖かい平和なひと時がこの場を包んだ。

 




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