ARMORED CORE VERDICT DAY ユーラヌスの人形たち 作:D-delta
汚れた空を青いエンブレムを付けた大型ヘリ――シリウスの大型ヘリが飛んでいる。
その大型ヘリたちは十二機ものACを連れており、部隊別に分けるとACの部隊が三小隊も輸送されていた。しかも輸送されているその部隊全部のACがUNACであり、AIであるため恐れを知らない戦力を進行中のシリウス部隊が有していた。無論そういう戦力を有しているのはシリウス部隊だけではない。シリウス部隊が雇ったUNACを主力とする傭兵団『ユーラヌス』も恐れ知らずの戦力を有していた。それもシリウス部隊のUNACよりももっと機体構成を考えられ、AIはシリウスのUNACより判断が速く機体をうまくコントロールしてみせることが出来るのだ。
≪もうすぐで第19支部前線基地が見えるはずだ≫
女部隊長を乗せた大型ヘリから通信が入り、アルバとプリンは指揮車のフロントガラスの先を見つめる。すると彼らの視界に基地らしき建物が見えてきた。彼らの視界に映ったもの、それが第19支部前線基地だ。
「本当だ、見えてきた!」
「あれがEGFの攻撃で陥落された基地か……」
二人の視界にも第19支部前線基地が見えてきたところでシリウスの軽量二脚UNACを輸送している四機の大型ヘリは他の大型ヘリより先行して第19支部前線基地に偵察に出向いた。
先行して偵察に出向いた大型ヘリから軽量二脚UNACが次々と投下され、四機の軽量二脚UNACが第19支部前線基地内に降り立つ。
≪U1、オペレーションを開始します≫
一機のUNACがオペレーションを開始すると他のUNACもオペレーションを続々と開始し始め、ブースターを起動して基地内の地上偵察を始めた。
女部隊長が乗る大型ヘリからビーコンが投下され、基地内をA地点、B地点、C地点、D地点と区切った。そのまま女部隊長はオペレーションを開始したそれぞれのUNACに指示を行い、各地点に一機ずつUNACを向かわせた。
≪U1、異常なし、オペレーションを継続≫
ただのブースター移動でA地点に到着したU1は辺りを見回して、こと細かく偵察を継続している。A地点にはACや通常兵器を収容する格納庫があり、今となっては派手に壊されており、もはや格納庫としての機能を失っている。そしてその周りに防衛を担当していたと思われる戦車の残骸が転がっていた。
≪U2、異常なし、オペレーションを継続≫
兵舎があったと思われるB地点に到着したU2は原型の分からない残骸たちを見ている。
≪U3、異常なし、オペレーションを継続≫
無残にも壊された基地の司令部を見つめるU3も異常を認めず、ブースターを吹かして辺りの偵察を続けた。
≪U4、ターゲット確認、戦闘開始≫
≪敵か! 総員戦闘準備≫
U4が敵と思われるものを見つけたことにシリウスの女部隊長は通信越しに全員に指示し、その場にいる全員に緊張が走る。
U4の持つライフルから戦車砲並みの弾丸が発射され、発射音が基地中に大きく響いた。
「この発射音、敵がいたの?」
「ヴェニデの伏兵か……まさかここにいるとは」
アルバとプリンは緊張した面持ちで戦闘が発生したと思われる第19支部前線基地に向けて指揮車両をフルスロットルで運転し、UNACを乗せた無人大型トラックも全力で走らせた。
ライフルの発射音が何発も響く。そして二十発近くライフルの発射音が響くと発射音が収まった。
「終わったのかな」
「シリウスの隊長さん、戦闘はどうなったんだ? 終わったのか?」
アルバはフロントガラス越しに見える第19支部前線基地の様子を伺い、指揮車両の窓から覗いた。その間にプリンはシリウスの女部隊長に通信で呼びかけていた。
通信越しからノイズが鳴り、少しして女部隊長の声が聞こえ始めた。
≪戦闘は終了した。ただのUNACの誤判断だ、ACと同じくらいの熱量を持ったコンテナが原因だそうだ≫
「そうか、それなら仕方がない」
「プリンの言う通り誤判断はしょうがないねー、僕のUNACもたまに同じように誤判断起こすことあるから」
UNACの誤判断――これは仕方のないことなのだ。UNACは光学センサーやソナーで確認した対象の熱量や味方信号の有無で敵か味方かを判断しており、ACと同じ熱量を持つ無人のコンテナは味方信号を出す術がないため度々UNACに敵として誤判断されてしまうのだ。
コンテナを破壊し終えたU4は地上偵察を再開する。
UNACたちは順調に基地内の偵察を続けた。
U1はブーストドライブで格納庫の残った壁を駆け上がり、格納庫の上から光学センサーとソナーによる偵察を続ける。U2は倒壊した建物や兵舎の周りの偵察を続けている。U3とU4は同じ場所を何度も回り、偵察を継続した。
UNACが偵察を継続している間にシリウスの大型ヘリたちは第19支部前線基地の上空へ到着した。
≪基地全域の偵察が終わりました、隊長どうしますか?≫
≪分かった。では偵察を終えてUNACを帰還させろ≫
≪了解です≫
シリウスのアーキテクトと女部隊長の会話が通信越しからアルバたちに聞こえた。
シリウスの大型ヘリが軽量二脚UNACを回収している間にアルバは「シリウスの偵察が終わったね」と一言言い、プリンは「まずは一つ目だな」と言いながら指揮車両の運転を続け、シリウスの大型ヘリたちに遅れてようやく第19支部前線基地に到着した。
≪総員に告ぐ! これから偵察を終えた第19支部前線基地を離れ、第16支部防衛基地へと移動する。総員準備はよろしいか?≫
大型ヘリが特徴的な騒音を立てて、軽量二脚UNACを回収し終えたところでシリウスの女部隊長がそう通信で呼びかける。
周りは通信越しに≪了解≫と次々に言っていく。
「こちらは大丈夫だよー」
「あぁ、アルバの言う通りこちらも準備は出来ている」
アルバたちも準備が出来た
全員の確認を取れたところでシリウスの大型ヘリたちは第19支部前線基地を離れ、アルバたちの乗る指揮車両と無人の大型トラックはシリウスの大型ヘリに付いていく。
汚れた雲の間から太陽が顔を出し、第16支部防衛基地に移動する彼らを照らした。
しばらく荒れた大地の上を移動していると彼らの目に第16支部防衛基地が見えてきた。
≪まもなく第16支部防衛基地に到着する。UNAC部隊を偵察に向かわせろ≫
≪了解しました。フォーミュラブレイン起動、全機オペレーションを開始します≫
再びシリウスの大型ヘリから四機の大型ヘリが先行して第16支部防衛基地に到着。先ほどと同じく軽量二脚UNACが上空から基地内に投下された。
重々しい着地音を立てて、投下された四機の軽量二脚UNACは地上偵察を開始。UNACたちは大型ヘリから基地内各所に出されたビーコンにそれぞれ一機ずつ向かっていく。
U1は完全に倒壊した基地司令塔の周りを偵察していく。U1のセンサーにはなにも映らない。
綺麗に並ぶ格納庫の横を進んでいくU2。U2の光学センサーには十個ある内の格納庫の半分が倒壊した光景が映し出されていた。
U3とU4は基地周辺を偵察している。この二機の光学センサーやソナーにも特に反応はなく、UNACたちによる基地内の偵察は順調に進んだ。
UNAC部隊を基地内に投下してから180秒が経った。
180秒が経った今、UNACたちは既に基地内全体に目を通しており、敵や異物などは発見しなかった。
≪UNACが基地内の偵察を終えました、どうやら敵はいないようです。この基地は安全と思われます。隊長どうしますか?≫
基地内の偵察を終えたUNACたちは動きを止め、偵察を終えたことを確認したシリウスのアーキテクトは女部隊長に訊く。女部隊長は軽く笑い、口を開く。
≪よし、UNACを帰還させろ。この基地で一旦補給するぞ≫
≪了解しました。全機オペレーション終了、これより帰還させます≫
先行していた四機の大型ヘリがそれぞれ輸送していたUNACの近くに着陸する。UNACは完全に停止しており、大型ヘリから作業員が出てきて補給作業を行った。
先行したUNAC部隊が偵察を終えて安全だということが分かった状況になると他の大型ヘリも基地内に次々と着陸して物資の捜索を開始。
シリウスの部隊が基地内に着陸している間、アルバとプリンが乗った指揮車両はようやく第16支部防衛基地に到着した。
≪各員に通達。これよりこの基地で一日を過ごす。この基地に到着後、各代表は仮設したブリーフィングルームに集まってくれ≫
シリウスの女部隊長がそう言うと、一緒に乗っていた隊員が仮設テントを広げた。広げた後はそこに大きなテーブルや作戦地図などを持ち込んでいく。そうしてブリーフィングルームの完成である。
ブリーフィングルーム完成後、それぞれの代表とアルバたちが仮設したブリーフィングルームに集まった。
シリウスの女部隊長はテーブルの上に作戦地図を広げた。
「よし、集まったな。では再度作戦を確認する。我々はこの基地で補給と野宿した後、第18支部防衛基地を襲撃し、我々の補給基地に変える。敵の戦力はおそらく通常兵器の防御型に、多数の遠距離型砲台、そして重武装を施したACであろう」
なにか引っかかったアルバは作戦確認をしている間に「ふーん」と言った。
それを聞いた女部隊長は機嫌を悪くして「なにか質問でもあるのか?」とアルバに不機嫌な表情を向けた。
アルバはそれに動じず、ただ質問した。
「なんで一度もその基地に訪れてないのにそう言えるのかな? って思っただけだよ」
「ふ、私はこれまでいくつもの基地を陥落し、奪ってきた人間だぞ? ヴェニデの防衛基地のパターンなどお見通しだ。甘く見ないでもらいたい」
「経験則ってやつだね」
「そうだ。分かったら、黙って作戦確認を聞いていろ」
シリウスの女部隊長が表情に威圧を乗せて言う。
すると、プリンの目が鋭くなってシリウスの女部隊長に殺意が向いた。その殺意を警告と受け取ったシリウスの女部隊長はそれ以上なにも言わず、作戦確認を続けた。
「第18支部防衛基地を奪った後は、後方部隊と合流する。合流した後は我々シリウスだけでヴェニデの本拠地を潰す。以上だ。再度質問を受け付けるが、なにかあるか?」
その場にいるそれぞれの代表は問題がないと踏んで頷く。
アルバも問題がないと判断して「全然問題ない」と言った。
問題ないことを確認したシリウスの女部隊長は「これで作戦確認を終える。各自明日の作戦に備えてしっかり休んでくれ」と言って、作戦地図を片付けた。
作戦地図を片付けたところで皆ブリーフィングルームから出て行った。
出て行く皆に紛れてアルバたちも出て行く。
「うー、お腹減ったー」
「はいはい、指揮車両に戻ったら美味しいご飯を作ってあげるからしばらく我慢してくれ」
「うん、分かった! プリンのご飯楽しみだなー!」
アルバははしゃぎながら一足先に指揮車両に戻った。プリンはその様子を見ていて微笑んでいた。
「全く、可愛いな。だから愛したくなるんだよ」
プリンも指揮車両に戻っていく。その表情は笑顔を浮かべていた。
太陽が地平線に沈んでいく。
夕焼けは彼らを赤く照らし、そして彼らが見ている世界に暗闇が広がっていく。
太陽が沈み切ると、暗闇は世界を覆った。
しかし、空には綺麗な星々と月が見えた。それらの光が僅かながらでも暗闇が覆った世界を照らした。
「星、綺麗だね」
食事を取り終えたアルバとプリンは基地のコンクリートの上に寝そべり、輝く星々を見ていた。
「あの星なんだろう?」
アルバは一際目立つ赤く輝く星を指差した。
アルバが指差した星をプリンも見た。
「なんだろうね、火星ってやつかな?」
「火星かー、赤いから間違ってないかも!」
「ふふ」
赤い星に興奮して元気なアルバの元気な声を聞いたプリンは少し笑っていた。
なんでもないただの会話。ひと時の安らぎ。
「そういえばプリンのところのおばあちゃん元気かなー?」
「あのババァのことだから、今でも元気にしているだろうさ。今頃運び屋として危険な代物でも運んでいるんじゃないか?」
「おばあちゃん元気だもんね。この前会った時なんて腕相撲でプリンに勝ってたし」
「それ以上は言わないでくれ……ババァになんて負けたなんて思い出したくない」
「あはは、分かったよ」
二人してどうでもいい会話を続け、夜が深まってきた。
周りのシリウス兵たちやシリウスのアーキテクトたちは寝静まっていく。
「ほわぁー、僕たちも寝よっか」
上半身を起こして指揮車両に戻ろうとしたアルバをプリンは押し倒した。
互いの心臓の鳴る音が聞こえるくらい二人は密着した状態になっていた。
お互い心臓の鳴る音が大きくなっていく。
「変態プリン……」
「悪いけど、もう我慢できない」
「むぅ、分かったよ……僕のこと好きにして良いよ」
「ありがとう」
深い夜の中で唇が触れ合う。
肌と肌を密着させて、小さく僅かな他の誰にも聞こえない音が二人の耳をいっぱいにしていく。
今日の夜はより一層深みを増していった。
活動報告でちょっとしたアンケートを取ります。
読んでくださった方は是非ともアンケートにお答えください。
それと、タグにボーイズラブ入れます。
追記:ボーイズラブタグを外しました。理由として、それが主な要素ではないからです。あくまで一部分だけの表現なのでタグにまで出すことはしなくて良いかもと思いましてね。