ARMORED CORE VERDICT DAY ユーラヌスの人形たち   作:D-delta

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いつもの投稿スピードである。


記録9

 大型ヘリはその特徴的でうるさいローター音を鳴らしながら街に来ていた。街は半分近くが壊れているものの都市と呼ぶに相応しく、高層ビルや線路などが街内に設けられている。しかも街から少し離れたところには軍事基地が存在しており、街の防衛力は他の土地とは段違いに高かった。

 この街を統括しているのは中規模のミグラント。

 この街を三大勢力に匹敵しない中規模のミグラントが一から作ったかというと、そうではない。この街は『シティ』と呼ばれていた場所だ。かつて代表が支配していた街。汚染がなく、人が健康的に住める街。しかし企業と呼ばれる組織に街を焼かれ、代表は死亡。支配者も統括する者もいなくなった。『シティ』は無秩序状態に陥り、衰退の一途を辿った。そうして『シティ』は一度滅び、新しい統括者の(もと)復活した。

 

「こちらサリア=ハップ。あんたらのところで燃料補給したい。良いかね?」

≪了解した、客人用のヘリポートが一つ空いているからそこに着陸してくれ≫

「はいよ、通信終わり」

 

 サリアは通信を切り、大型ヘリを着陸態勢にした。大型ヘリはそのまま高度を下げていき、ACを降ろした後に客人用のヘリポートに無事着陸した。

 着陸を終えると、サリアは計器類を確認して異常がないか見た。

 

「大丈夫だねぇ、後は燃料を入れてもらうだけだわ」

 

 サリアは大型ヘリのキャノピーを開き、外に出た。そこに燃料補給をする係員が燃料タンクを積載しているトラックに乗ってやってくる。トラックから降りた係員は「補給員です、燃料補給の任を受けて来ました。燃料補給には時間が掛かりますのでしばらくお待ちください」とトラックから伸びた燃料補給用のホースを携えながらサリアに伝えた。

 

「分かったよ、しばらく待っているわ」

「ん……?」

 

 サリアと補給員の話し声にアルバはゆっくり目を覚ました。そして起き上がろうとすると「痛っ……」と肩を押さえた。まだ傷は塞がっていないのだ。

 アルバは傷に障らないように起き上がり、キャノピー越しに外を見た。

 

「あ、おばあちゃん」

 

 アルバの声に気付いたサリアは「アルちゃん!」と安堵した様子で駆けて、複座のキャノピーを開いた。サリアはアルバの頭を撫で、抱きしめた。

 抱きしめられた拍子に「んにゅー」とアルバが小動物のような声を上げるとサリアは母性を丸出しにして、子犬を可愛がるように撫でまわした。

 

「撃たれていたから心配したんだよ……アルちゃん」

「僕は大丈夫だよ、ちょっと肩を撃たれたくらいだから」

「とにかく良かったさね。アルちゃんが生きてて本当に良かった……!」

「おばあちゃん心配し過ぎ」

 

 アルバはサリアの腕の中に納まりながら笑顔を向けた。サリアは笑顔のアルバに安心しきって、お姫様抱っこでアルバを複座から離した。

 そのままサリアはピリエとプリンが一緒に乗っているACのところに行った。サリアはACの足元にまで来たが、二人が降りてくる気配もコックピットハッチが開く気配もなかった。

 

「なにやってるんだい、プリンとあの娘さんは」

 

 アルバを降ろしたサリアは身動き一つしないACの身体をよじ登って行き、コックピットハッチを開くレバーを引いた。

コックピットハッチがガコンと音を立てて、開き始める。

 

「あらまぁ」

 

 ピリエとプリンが抱き合っている。

 サリアの目に飛び込んできた光景はまさに驚きであった。まさかあのプリンが! アルバに愛を向けていたプリンが! とでも今にも口から出そうな驚いた表情になっていた。

 

「あ、サリアさん」

「ババァ!?」

 

 ピリエは柔らかい表情でサリアに手を振った。

 プリンはサリアに見られたことに驚いて、ピリエからすぐに離れた。

 

「はぁ……なに二人でイチャイチャしてるんだい」

「これには訳が!」

「プリンが傷ついていたようなので、それを癒していました」

 

 ほう、と一言サリアが言う。サリアはプリンの凄惨な過去を思い出していた。

確かにあれは酷い過去だ。だがその過去は乗り越えたはず、今更になってきつくなったのか? とサリアは思っていた。

 

「とにかく外に出な、この機体を修理するからね」

「分かった」

「はい」

 

 サリアの指示でピリエとプリンはACのコックピットから出て行く。

 二人が外に出たのを見計らってサリアはコックピットの中を見た。特にこれと言った損傷や消耗は無く、誰かが修理した痕跡があった。だが、すぐに誰が修理したか分かった。アルバだ。

 アルバの修理には癖がある。完璧に修理する反面、最後に独特の痕跡を残すのだ。例えばケーブルは一つにまとめてしまうなど。それが見られるため、サリアは誰が修理したか予想出来た。

 

「流石アルちゃん、良い修理しているねぇ」

 

 サリアはコックピットハッチを閉めた。そのまま違う機体箇所を見る。

 頭部破損、腕部は左右共々損傷が激しい、脚部は装甲がやられているが奇跡的に関節は生きている、ジェネレーターはアルバの修理した痕跡が残っているものの応急処置程度のものでほとんど使えないと見て良い、ブースターは無事、そして武器は外されている。

 次に内装だFCSは無事、リコンユニットは元々から無かったようで補充の心配はいらない。

 

「これはみんなの協力が必要だねぇ、それに武器の調達も必要になってくるし」

 

 サリアは頭の中にやることリストを作り、動き出した。

 まずサリアはみんなを機体のところに集めた。

 

「全員揃ったね?」

「僕はいるよ」

「俺もここに」

「私もいます」

 

 工具と大型ヘリから持ち出した修理キットを地面に置いたサリアは「よし、修理に取り掛かるよ!」と言って修理を開始した。

 アルバとプリンはなにをするか分かっているように、工具と修理に必要になるものを修理キットから持ち出した。

 

「あのー、私はなにをすれば良いの?」

 

 ピリエはなにをすればいいか分からず、修理を始めようとする三人に訊いた。

 すかさずアルバが答える。

 

「コックピットで機体の状態を見ていて、機体の修理が終わった箇所からお姉さんの方に確認するから!」

「お姉さん、じゃなくてピリエって呼んで」

「分かった! よろしくね、ピリエお姉ちゃん」

 

 笑顔で答えるアルバに釣られてピリエも笑顔になった。

 軽い受け答えが終わると、アルバ、プリン、サリアの三人は修理を始めた。それを見計らってピリエは機体によじ登る手間を省くために常人では出来ないような大ジャンプを繰り出した。あっという間にコックピットに辿り着いたピリエはコックピットに入ってACを起動、機体の状態をモニター上に表示させた。

 

「今時の娘さんは人間じゃないのかね……」

「まぁ事実人間じゃないからしょうがない」

「ピリエお姉ちゃんは確か『強化兵士』っていう兵士らしいよ?」

 

「はー」と低い声で言うサリアは修理のことを一瞬忘れてピリエのAC『カクタス』を見上げた。

 そこにプリンが「ほらほら、修理」とサリアに呼びかける。ハッと修理のことを思い出したサリアは駆け足で修理に取り掛かった。

 プリンとアルバも修理に取り掛かる。

 

「まずは出来る限りの修理だねぇ、修理不可能なところはパーツ交換だからダメなところはメモっておいてさね。後でリストにしてパーツを買いに行くからね」

 

 そう言いながらサリアは脚部の関節周りを修理していた。奇跡的に関節は生きているとはいえ、ダメージは受けている。このダメージを放っておくと戦闘中に故障して動けなくなる等あるため、借りに生きているとしても修理の必要はある。

 修理は続き、間接が問題なく動けると判断したところでサリアはコックピットに届くぐらいの声量で「ピリエちゃん、脚直したんだけどモニターにはどう映ってる?!」と言った。サリアの声が耳に届き、ピリエはモニターを見つめた。モニターには脚部が危険状態のレッドから正常のグリーンに変わる瞬間が映し出されていた。

 

「大丈夫です! グリーンになりました!」

 

 コックピットから身を乗り出したピリエは同じく大声でサリア伝えた。サリアからは「はいよー!」と返ってきた。

 その一方でプリンは左右腕部の修理に頭を抱えていた。あまりの損傷故に腕部パーツ自体は交換するしかないとプリンの頭の中ではそう出ていた。

 

「はぁ……ダメだな、こりゃ。メモしておこう」

 

 プリンは諦めてメモ用紙に腕部パーツの交換と書いて、アルバが修理中のコアに向かった。アルバはコアのボロボロになった装甲に補強用の外装をくっ付けていた。

 

「アルバ、手伝うぜ」

「はーい! 僕は左からやっているから右の方をお願い」

「了解したぜ!」

 

 プリンは補強用の外装を持ち出し、溶接用の工具や外装を打ちつけるための工具で外装の取り付けを開始した。

 それから一時間。コアの装甲の補強は終わった。

 

「終わったぁ~、後はパーツを買って交換するだけだね。これでこの子が喜んでくれると良いけど」

「えーと、まぁきっと喜んでくれるよ」

 

 機械に対してアルバの口から時々出る「この子が喜んでくれる」という言葉に少し戸惑いながらプリンは答える。もちろんそのアルバの言葉に戸惑っているのはプリンだけじゃない、ピリエとサリアもだ。

 

「まぁとにかくだね、二人共メモを寄越しな」

「はーい」

「これだ、ババァ」

 

 アルバとプリンはサリアに、交換が必要なパーツをメモしたメモ用紙を渡した。受け取ったサリアはそのメモ用紙に目を凝らし、どれだけの費用が掛かるか、手持ちのパーツで間に合うのかを計算していた。

 

「UNACの分はアタシの手持ちで間に合わせるとして、娘さんの機体はなるべく元通りにする方が良いねぇ。どうやらこの機体は特殊なようだし」

 

 サリアがそう言うとアルバが喜んだ。「UNACの分」という言葉を聞いて、またUNACを作ることが出来るという喜びである。

 笑顔のアルバにサリアは軽く頭を撫でて、端末からこの街のショップにパーツ購入の問い合わせを入れた。結果、この場に大型ヘリが一機来た。ショップの大型ヘリ。つまりデリバリー用のヘリだ。

 大型ヘリは『カクタス』の近くに着陸。左右のコンテナが開き、若い男性パイロットがキャノピーを開いて降りてきた。

 

「問い合わせありがとうございます、どのパーツをご購入でしょうか?」

「この型番の頭部、左右腕部、脚部の装甲、ジェネレーター」

 

 パイロットが訊いてきたことにすばやくサリアは答えた。

「了解しました」と一言言ったパイロットは乗ってきた大型ヘリに乗り込み、大型ヘリに装備されている作業用アームを動かした。作業用アームは損傷の激しい『カクタス』の機体パーツを取り外し、左右のコンテナから同じ型番のパーツを『カクタス』に取りつけた。これで元通りだ、武器を除いては。

 

「あ、武器……」

 

 と、アルバが呟いたことにプリンとサリアは武器の存在を思い出した。が、サリアは自分の手持ちに武器があったことを思い出して「武器は大丈夫だよ。で、いくらするんだい?」とキャノピー越しのパイロットに言った。

 

「このお値段になります」

 

 大型ヘリのパイロットは電卓をサリアに見せた。額はそれなりに高い。腕部と脚部の装甲、ジェネレーターはそれほどしないが、頭部の値段が一番高かった。

 それもそのはず、性能面では高機動射撃型の機体と相性が良く、そのタイプのACに乗るAC乗りの間ではよく使われているほど人気だった。そしてもう一つ人気の秘密がある。それはかの有名な傭兵の一人〝ブルーマグノリア〟がこの頭部を使っていたからだ。

 

「やっぱり人気の品は高いねぇ」

 

 サリアは懐からパンパンになった小さい袋を出して大型ヘリのパイロットに渡した。パイロットは袋の中身から札束を出して、一つ一つ細かに数えた。

「よし」と、札束を数え終えたパイロットは「ご利用ありがとうございます」と言って大型ヘリに乗り込み、飛び去って行った。

 

「武器はアタシのところから、まぁいっぱいあるから困ることはないさね」

 

 サリアは自分の大型ヘリのところへ向かう。アルバはサリアの後ろを付いて行った。

 

「ピリエ! 機体をババァのところへ移動してくれ!」

「了解!」

 

 プリンの指示にピリエは操縦桿を軽く握り、『カクタス』をサリアの大型ヘリにまで移動させる。

 大型ヘリの燃料補給は終わっておらず、補給用のホースを踏まないようにピリエは慎重に操縦した。

 

「よーし、武器をちゃんと取りなよ!」

 

 大型ヘリに乗り込んだサリアは左右のコンテナを開き、AC用の武装を外に出した。

 ピリエは前に使っていた武器を見つけ、それを装備していった。

 右手にヒートマシンガン、左手にショットガン、右ハンガーにヒートパイル、左ハンガーに丸のこ型のレーザーブレード。

 ほとんどの武器がまるきり同じだが、ライフルだけは同型のが見当たらず、ショットガンに切り替えた。

 

「散弾……上手く扱えると良いけど」

 

 ピリエはそう呟いて、モニター越しから左手に持つショットガンを上手く使えるか不安で見つめていた。

 その時だ。街から警報が響いた。

 なにごとかと、その場にいた全員が警報のなる街の方に目を向けた。

 

「また野良のAC乗りか!?」

 

 補給作業をしていた補給員は叫ぶように言う。それを聞いていたピリエは操縦桿を強く握り、機体を街の方に向かせた。

 

「ピリエ、勝手に行くなよ?」

 

 端末の通信機能を使ったプリンはそう念を入れて言った。

 肝心のピリエはプリンの言葉など無視して、ブースターを起動。グライドブーストで街の方へ向かって行った。

 

「はぁ……」

 

 プリンは溜め息を吐いて、高速で街の方へ向かって行く『カクタス』の背中を見ていた。

『カクタス』はあっという間に街の中に到着し、すぐに暴れているACを発見した。ピリエは操縦桿を傾け、フットペダルを強く踏んだ。

 ブースター光が赤から青に変わる。『カクタス』は異常な推力を放ち、暴れているACに高速で接近。目の前で止まり、ピリエは話しかけた。

 

「ここは暴れているところじゃないわ、だから早めに止まることね」

≪なんだってぇ? よく聞こえねぇぜ≫

 

 話しても無駄だと分かった。

 ピリエは操縦桿を傾け、フットペダルを踏んだ。再度ブースターが起動。

 街に被害を与えないように、暴れている敵ACにブーストチャージを繰り出す。金属同士が激しくぶつかり合う音が響くと、敵ACが吹き飛んだ。その瞬間を狙ってピリエはほぼゼロ距離でショットガンを放った。

 

≪ひ、ひぃ!≫

 

 敵ACの装甲が吹き飛ぶ。敵ACのパイロットは怖じ気づき、機体は動きを止めた。

 警報が止まる。騒然とした街は静かになり、警備隊らしき防御型が暴れていたACに近付いてくる。

 

「この武器、使いやすい」

 

 ピリエは実際に使ってみてショットガンの使いやすさを実感していた。

 戦闘は終わった。ピリエは機体を動かし、サリアの大型ヘリのところへ戻った。

 その遥か上空で天使が見ているとも知らずに。

 

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