元ネタ『人類最強の初恋』
『人類最強』と呼ばれる彼女と出会ったのは偶然であると俺は断言する。
偶然じゃなければ路地裏で『殺し名』匂宮の分家である薄雲姉妹とやらに襲われているときに、
第一声が「あれ?なんか轢いた?」だったし、轢かれた衝撃で地面の染みになりかけてた虫の息の俺を見て「お、生きてるな。よかったー無関係の奴を事故で殺したなんてあたしの評判に関わるからな」と言うくらいには荒事の世界の住人だったのだろう。
なぜ「だろう」という推測系なのかって?
そうだねえ正直な話、その時の俺は財力の世界である『四神一鏡』の連中とマネーゲームで遊んでいて暴力の世界には全く興味のなかった時期だったからねえ。彼女自身は暴力の世界の住人ではないとはいえ『人類最強』という称号がら暴力の世界とはかなり近い所にいたみたいだし、彼女の仕事柄暴力でケリをつけるのが多く、またそういう方法をとったら有名になりがちだしねえ。
……話は逸れたがケラケラ笑ってた彼女が薄雲姉妹を軽くぶん投げて(比喩ではない)俺を病院に連れて行ったのが俺と彼女の出会いだ。
……何を期待してたのか知らんが本当にそんだけだぞ。
因縁?
何の話だ?
あー、あの女あの事を話したのか……。
バレてるなら隠す意味もないか。話すのが面倒くさいだけで本当に大したことじゃないし。一応言っとくが俺もここに勤めてる関係上、あの女と交流があるのはあんまり広まると困るんだよ。
下手したら『哀川潤担当係』とかされかねねえしな。
いや窓口にされるのが嫌なんじゃなくて今やってる新しく都市創るっていう遊びに集中できなくなりそうだし。
いや結構面白いんだぜ?都市育成シュミレーションゲームなんか比にならんぐらい交渉に工作と俺の全力で当たれるからな。今は『四神一鏡』との交渉が一段落したから『匂宮』と交渉してるところだし。都市の警備に使えないかなって思ってよ。金さえ払えば何でもやってくれんだろ?え?違う?
彼女たちが睨んでる?気にしなくていいよ。あの二人なんだかんだ言って俺には絶対服従だからあんたが俺を殺そうとしない限り害はないよ。
話を戻せって?
そうだねえ。やっぱり『玖渚機関』に就職して機関の政治力を利用して遊んでる身だからあんまり政治力を利用できる立場から切り離されたくないんだよねえ。
え?違う?
……あー。因縁の話ね。……チィ。
なんでもねえよ。
話は戻って病院に入院した俺は数日ほど生死の境を彷徨って残念なことに命を取り留めたってわけだ。
そこで目覚めてすぐに見舞いに来たあの女と多少話したんだよな。その時に名乗りを受けて『人類最強』ってフレーズにイラッとして喧嘩吹っ掛けた。
……今考えても狙ったようなタイミングで見舞いに来てるなあいつ。やっぱ狙ってやったんじゃねえか?
考えてもきりがねえから話を進めると当時の俺も似たようなこと疑ったわけだ。依頼がダブルブッキングしたんじゃないかって。『四神一鏡』とのマネーゲームでそこそこ勝ってたところの襲撃だから全方位が敵に見えてたんだよね。
え?それで俺が勝った?
あの女よくそんなこと言えたな……。嫌味かよ。
実際にはまだ勝負中だよ。俺は基本的に最強とか最悪という振り切った称号を持ってる奴嫌いだからな。イライラマックスの時だったから余計にイラついてかなりおかしなこと吹っ掛けたんだよな。今考えてもまともじゃねえんだけど。
ああ、そこは聞いてねえのか?
俺に聞けって……俺、忙しいんだけど……。
で、俺は「お前を1万の手段を使ってぶっ潰してやる!最強を名乗っていようが俺が勝つ!」ってな?
そん時のあの女?
呵々大笑して勝ったら俺が『人類最強』を名乗れとかアホなこと言ってたよ。
退院してから『四神一鏡』なんて完全に無視して『哀川潤』を潰すために今まで積み上げてきたものから、無関係の組織まで使えそうなものは全部使ったよ。
……もっとも1000の手段は薙ぎ払われて2000の手段は蹴り飛ばされた。
一番うまくいったのはあいつのファンを集めて『哀川潤の支援組織』を作った時かな。
お前も知ってるか。まあ有名だしな。
やったことは単純にあの女のファンを集めて扇動し、支援組織として世界中に支援組織がある状態にしたからな。あの時は世界の組織という組織が腹の底から震撼したみたいだからな。
単独でなんとか対応できる『哀川潤』が組織を持ったらパワーバランスが崩壊して、『哀川潤』を頂点とした世界になりかねないって。
比喩でも冗談でもなくありえたからな。
俺が煽ったのもあるけどあの『組織』には予想以上に有能な狂信者と扇動者があの女もある程度浮かれさせたからな。そのまま『世界』を巻き込んで戦争で倒そうとしたけど、結果は知っての通りあの女自身に『組織』が潰されて残党も残らず怖がるようになっちまったからな。
なんでかって?
俺も詳しく知らんが依頼があったらしいぞ?
『組織』を潰してほしいって。
狂信者と信仰者の違いって感じかな。
狂信者は『哀川潤に仕える』自分に酔ってたし、信仰者は『自由気ままな哀川潤』を信仰してたって感じか。
何で知ってるかって?さあなんでだろうねえ?
こんな風にいろんな方法であの女を潰すために行動しまくってその過程で『玖渚機関』に拾われて……話はそこで終了だよ。
え?1万の手段?
9999の手段が返り討ちにあったから最終手段『なにもしない』を実行中だけど?
ここで1万手目を打ったら負けるから、『なにもしない』ことで勝てはしないが結果が出てない=引き分けを維持してるのさ。
千日手ならぬ万日手ってね。
おい姉妹。小声でつまんないとか言うな。傷つくぞゴラ。
それからのあいつとの関係?
んー。強いて言うなら友人かな。
意外か?
俺も意外だ。さっきのことを説明したら気に入ったらしくてな。依頼するなら友人価格で引き受けてやるよみたいなこと言われたし友人なんじゃないか?
俺にまともな友人なんぞいなかったからあんまりわかんねえが。
今じゃ週刊誌の漫画の感想で殴り合う程度の中だ。下手すれば一日に数回は電話で話してるな。忙しいときは無視してるけど。
あいつが?
いやいや、あの女は誰よりも人間だよ。
スペックがぶっ飛んでるだけで、基本的にはお人好しの寂しがり屋さ。
請負人とか人類最強とかそうでもしないと誰もかまってくれないから名乗ってるんじゃねーの?
まあ、俺の偏見だろうけどな。
……改めてなんだよ。
そもそも仕事の話って言うから呼び出しに応じたのに結局雑談しかしてねえし。今までの会話関係ないよな?
なんか嫌な予感がするんだが。
『哀川潤担当係』への就任?
なるほど。
まあ機関長は妹さん関係で関わりあるだろうけどそれ以外にちゃんとした窓口を作っとこうと。前回の包囲網もgdgdに終わったから必要に駆られてねえ。
あっはっはっはっは。
断る。他当たれ。
西尾維新っぽさって難しい