あまりにも衝撃的な光景に空を見上げてポカーンとしていた四人に、提督の声が通信機越しに入る。
『よーし、無事に捕獲したな。回収機も鎮守府に向かっているようだし、そっちも帰投してくれ』
「ちょーっと、待ってほしいっぽいー!」
帰投命令が出た為、三人は反転し鎮守府に向かおうとする。だが、夕立が速度を上げて三人の前に立ちはだかる。
その目はかつてないほど、キラキラしており本来動くはずのない改二のアホ毛がパタパタと動いているようにさえ見える。
「夕立も空を飛んでみたいっぽい~!」
「『えっ・・・』」
通信機と現場、双方で驚きと戸惑いの声が出る。
その、フリーズからいち早く回復した提督が明石に尋ねる。
「明石、フルトン砲って味方に撃ち込んでもその・・・ケガとか大丈夫なのか?」
提督の問いに同じくフリーズから回復した明石が首を縦に降る。
「はい。フルトン砲の弾は身体や艤装にダメージを与える事はありません。なので、艦娘がフルトンで飛んでも理論上は大丈夫じゃないかと・・・」
明石と提督の話声が通信機越しに聞こえている夕立は、海面をジャンプして吹雪の前に立つ。
「ほら、明石さんの言うとおり大丈夫っぽい~。さぁ吹雪ちゃんお願い!」
いくら理論上大丈夫でダメージを負うことがないとはいえ、何が悲しくて仲間に砲を向けなくてはいけないのか・・・でも、友達がやってほしいと頼んでいるのにそれを無視するのも・・・
思考の渦に捕らわれて眼をグルグルと廻す吹雪。それを見て急いで暁と青葉が身体を揺らし正気に戻す。
『仕方ない。ぽいn・・・夕立はやらなきゃ満足しないだろうからな。吹雪、俺が許可する夕立にフルトン弾をぶつけてやれ』
吹雪は渋々ながらも、提督の命令通りフルトン砲を夕立に向ける。
「もう! 絶対にケガしないでよ!」
砲撃音と同時にフルトン弾が発射され、まだか、まだかとウズウズしていた夕立に直撃する。イ級同様にワイヤーが飛び出し、肩、腰、胸を固定するように巻き付くと、バルーンが現れ夕立を空に宙ぶらりん状態にする。
「おー! すごいすごい!! 夕立、空を飛んでるぽいっー!」
低空状態でキャッキャはしゃぐ彼女。
「おぉー、今の感想はどうですか夕立ちゃん」
青葉がカメラを向けてインタビューをするように問いかける。イ級の時とは違い生の感想を聞くために、張り切って取材をする。
「最高っぽいー!!」
(楽しそうだなぁ夕立ちゃん・・・)
(暁もやりたいな・・・。でも、レディはオネダリなんてしないんだから!)
はしゃぐ夕立に意気揚々とインタビューする青葉。羨ましそうに見つめる二人。
だが、全員忘れてはいないだろうか? このフルトン砲の真価を・・・
低空状態のバルーンが一瞬高度を下げる。ならばこの後、起こる事は必然である。
「ん? ぽいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ・・・・」
空へともうスピードで消えていく夕立。断末魔のようなぽいは、次第に遠くなっていき聞こえなくなる。
((あっ・・・やっぱりやらなくていいや))
空へと消えた夕立を見て先程の羨ましい感覚など完全に霧散した二人。
『提督。夕立ちゃん無事に回収しました。迎えにいきましょう』
その声を通信機越しに聞いた三人は無言で顔を見合せ鎮守府へと帰投していった。