鎮守府の母港では、三人を出迎える為に提督と明石それに、空に消えていった夕立が待っていた。
「ゆ、夕立ちゃん!? もう帰ってたの!?」
驚く吹雪に対し、笑いながら後ろ髪をさする夕立。
「いや~、空に飛んでいった後目が覚めたら医務室のベッドの上だったぽい~・・・」
「正確には、空へと飛んでいく最中に気を失って、イ級と一緒に仲良く回収機に運ばれてきたんだよ」
提督のイ級の発言に辺りを見回すが、どこにもその姿が見えない。それを察した提督が捕捉を加える。
「イ級なら、新設した営倉に運んである。大淀と妖精さん以外立ち入り禁止らしいが・・・まぁ信じるしかないな」
俺、ここの提督何だけどな・・・。と、小さく呟く提督を押し退けて明石が三人の前に出てくる。
「どうですか! フルトン砲の出来栄えは!」
技術者として自分の作り上げた兵器の良し悪しは気になるようでフルトン砲を担いだ吹雪に詰め寄る。
「は、はい! えーっと、フルトン砲自体は特に気になる所はありません。いつも使っている砲と同じ感覚で使えます」
フルトン砲を外し明石に渡す吹雪。
「ふむ。武器自体は本格的に導入しても問題はなさそうだな。夕立、空へ飛んでみて何か問題点はあったか?」
「ん~・・・すぐに気絶したからよくわからないっぽいー」
提督の問いかけに両手を頭に当てて一休さんのようなポーズをとる夕立。だが、あまり有用な情報は得られなさそうだ。
「この辺は、イ級に聴かなきゃ分からんか・・・・。(そもそもアレは日本語を喋れるのだろうか?)
提督が顎に手を当てて思案にふける。
その、傍らで明石達がフルトン砲から砲弾を取りだし「空に飛びたい人~」と吹雪達に話をしていた。そして、誰も手を挙げずに首を横に振るのをみた明石はフルトン砲弾を持ち出し提督へと歩いていく。
「提督。貴方はこの鎮守府の最高責任者であります。なのでこのフルトン鹵獲作戦は、大本営からの重大任務であり失敗は許されません」
提督の背後を取りつつ明石が語る。それを振り替える事なく提督が口を開く。
「何が言いたいんだ? 明石」
「試運転とはデータを取り、より完璧なものに仕上げる事です。そう、【データをとる】んですよ」
明石の台詞を聞き終わるやいなや彼は屋根のある鎮守府に向かって全速力で駆け出した。
だが、目の前に明石以外の四人が既に回り込んでおり逃げ道を塞いでしまう。
「ごめんなさい司令官。でも、【間宮券3日分】はあまりにも魅力的なんです!」
吹雪の叫びに他三人が強く頷く。買収である。
そのまま提督を逃がさないように吹雪が右腕、暁が左腕、青葉が腰、夕方が顔面にしがみつく。全身に感じる女の子特有の柔らかさと良い匂いで完全に腑抜けになる。
それを見逃す明石ではなく見事なピッチングフォームからのオーバースローでフルトン弾を提督に投げつける。
フルトン弾は提督の背中に吸い込まれるように直撃するとワイヤーが飛び出し提督に巻き付き浮かす。
提督に抱きついていた彼女達も尻餅を着くように空から落ちて宙に浮いた提督を見上げる。
「明石てめぇ、後で覚えてろよ!!」
明石は提督に向かってサムズアップをし
「グットラック」
渋い声で言い放った。
「おいおい、マジかあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」
夕暮れの鎮守府に白い軍服を着た男が一人、空へと誘拐されていった。