「私に良い考えがあるんだ」
「良い考え?」
悪い笑みを浮かべる北上に対して古鷹が疑問をぶつける。疑問は、見越していたかのように北上は話しを続ける。
「ひとまず、私の指示通りに動いてくれれば無傷でリ級の回収が出来るんじゃないかな? それはね・・・っと待ってはくれないか」
リ級の砲撃が近くに着弾し各々各地の持ち場へと散会する。
「ようし。まずは、大井っち、アイツの意識を古鷹さんから遠ざけるよー」
北上が大井と共に古鷹からリ級の目線を外させるように砲撃をしながら航行しヘイトを集める。
当然攻撃を受ければ反撃をするのが普通であり、北上・大井に砲を向けるが海面に大きく水しぶきがあがり狙いを付けられずに、イライラが見た感じからも分かる。
「さっき外したのを挽回するのねー!」
「58達のこと忘れてもらっちゃ困るでち!」
水しぶきの正体は潜水艦組の魚雷である。北上の指示通り直撃をさせずにその周辺を爆発させて北上・大井に攻撃をさせないようにサポートを徹底する。
「よぅし。次は瑞鳳お願いね~」
「はい!」
瑞鳳の攻撃機がある程度の高さで巡回を始める。
(そろそろかな・・・)
自分達とリ級と古鷹がちょうど一直線上になるように誘導をし終え、リ級の意識が完全に古鷹から外れているのを確認した北上は古鷹に向けてジェスチャーでフルトン砲を撃つように指示をとばす。
古鷹は当然その指示に驚く。大破状態でなければ回収は暴れまくる為出来ないのもあるが、弱らせなければ回収部隊にどんな被害がでるか分からないからだ。だが、それは北上も理解しているだろう。
「撃て」と指示を出している以上、旗艦の命令に従う事が最善と判断しフルトン砲を撃ち込む。
「!!!?」
意識の外からの砲撃音と身体に巻き付くワイヤーとバルーンを確認したリ級はこの後どうなるか理解しているため全力で暴れまくる。
だが、ワイヤーを切る前にフルトンは上昇準備に入り空へと上がる。
「今だよ! バルーンを撃ち落として!!」
北上の指示のすぐに瑞鳳の攻撃機が空へと上昇していたバルーンを機関銃で割りリ級を地上5mから空へと投げ出される。
そのまま自然落下をし艤装から海面に叩きつけられる。
正直大破よりも酷い大破の仕方をして海面に浮かんでいた。沈んではいないから生きてはいるだろうが、気は完全に失っている。
「えぇっと・・・自分で考えといて何だけどコレは酷いね」
「はい・・・」
「彼女フルトン回収しても良いんでしょうか・・・」
「明石今すぐ、バケツと入渠の準備をしてほしいでち・・・」
全員がリ級の惨状にドン引きをしながらも一応任務であるためフルトン砲から弾を取りだし北上が投げてぶつける。気絶したリ級は再び空へと上がり消えていく。
「さ、さて色々あったけど帰るよ! 私達も帰投してお風呂に入ろう」
何かいたたまれない空気を変える為、北上が普段出さない大声で皆に指示を出して帰投の準備を始める。
「あっ、待ってください。今索敵機から連絡が・・・」
だが、瑞鳳は偵察機からの通信が入ったらしく。帰投をしようとしていた皆を呼び止める。
索敵機からの通信を聞いた瑞鳳はみるみる顔を強張らせていき水平線に眼を向ける。
「多数の駆逐艦と【ル級flagship】にこちらの位置が捕捉されました! 時期に会敵すると思われます!!」
瑞鳳の近くに水しぶきがあがる。この距離の砲撃を可能とするのは戦艦クラスの敵・・・件のル級である。
「ちょ~っと、マズイんじゃないこれ・・・」
ル級を旗艦にイロハ級の多数の駆逐艦の船団がこちらへ向かってくる。どうやら、さっきまでの戦闘で誘き寄せてしまったようだ。今もなおル級の砲撃によって近くに水柱を上げる。早く行動しなければ、駆逐連中の射程圏内にも入るだろう。
「どうします北上さん。迎撃ですか? それとも撤退?」
大井に問われた北上はしばし考え込むがこの状況で逃げる方が危険である。と判断し艦隊に激を飛ばす。
「皆とりあえず迎え撃つよ! 瑞鳳は艦載機を大井っちと潜水艦ズは魚雷の準備に入って~」
空と海中からの波状攻撃を仕掛けるが、敵駆逐艦がル級の盾になるように自らを投げ出して壁を作る。そして、攻撃の間隔を狙われル級の砲撃が瑞鳳を捉える。
「瑞鳳ちゃん!」
「痛たたたた…やるわねぇ」
古鷹が駆け寄り様子を伺う。上手く致命傷は避けたようだが艦載機を飛ばすのは無理そうだ。
「空を潰されたか・・・・。潜水艦ズ、戦艦は狙えそう?」
北上が通信機で海中の二人に話しかける。
「わあああ!! あっちこっちから爆雷が降ってくるのね!」
「こっちは、避けるので精一杯でち! でちいいい!?」
返ってきた返答は叫び声という否定であった。潜水艦の援護も期待できそうにない。
だが・・・この状況を打破する為に北上は頭をフル回転させる。確かにピンチではあるが潜水艦ズが多数の駆逐艦を引き付けてくれている為、実質、相手は一艦だ。
「大井っちあたしはアレをやるよ。古鷹さんももう一度あたしの作戦に乗っかってほしい」
北上さんの頼みならばと大井は一切の迷うことなく頷き。古鷹もこの状況を打破できると自信に満ちた北上の顔を見て頷く。
「じゃあ。行くよー!」
作戦会議を終了した、大井・古鷹・北上の順に縦に並んで、ル級に向けて接近を始める。当然、敵が自分に突っ込んでくれば迎撃を試みる。
三人とも見事な航行でル級の砲撃を紙一重で避けて、徐々に距離を詰める。
そんな中、大井が先行をして列から外れてル級に向かって突っ込んで行く。ル級も大井に向けて砲を構える。
砲を向けられても、なお彼女はただ真っ直ぐル級へと突っ込んでいく。
大井に迷いは無い。自らの愛する北上の策だ。失敗する訳がない。この気迫の突進がル級に一瞬尻込みをさせる。
「古鷹さん! 今だよ!」
ル級が砲撃をする数秒前に古鷹がフルトン弾を大井に撃ち、ル級の前から上へと消える。当然目の前に撃った砲は何もない大井のいた直線上へと虚しく飛んでいく。
「大井っち直伝。【ドロップキック】」
目の前から敵が消えて混乱をしていたル級の顔面に北上の両足の艤装が見事に決まる。グキッ! と鈍い音が響きル級が吹っ飛ばされる。
「流石北上さんです! 素晴らしい策に、美しいドロップキック! やっぱり北上さんはこの世に存在する女神です! 北上さああああああああああ・・・・」
フルトン砲で撃たれて、時間が来たため空へと北上の名前を呼びながら大井が消えていく。顔面を蹴られたル級は大破より中破のようだがこれならフルトン回収しても大丈夫だろう。
「あはは最後まで大井ちゃんは相変わらずだね。でも、本当に凄いよ北上ちゃん。私も自分の仕事をしなきゃね」
古鷹はフルトン砲をル級に撃ち空へと上げる。自分たちの旗艦であるル級が空へと浮くのを見た敵駆逐艦達は先ほどの大井を見て、助からないと判断したのか、散り散りに逃げていく。
『大井さんとル級の回収無事完了です。皆さんお疲れ様です!』
明石の通信を聞き安心する二人。離れていた瑞鳳も合流する。
「死ぬかと思ったでちー!!!!」
「死ぬかと思ったのねー!!!!」
海中で逃げ惑っていた潜水艦ズもほぼ裸のボロボロになりながらも生きており海中から、海面へと上がる。
「敵駆逐艦が逃げていくけど追わなくていいの?」
瑞鳳が北上に質問をするが、北上は首を横に振る。
「いやーターゲットの回収もしたし。皆ボロボロだし。それに、追い込まれたイ級は駆逐棲姫より凶暴だ! って言うしね~」
「初めて聞いたよそんな言葉・・・」
古鷹が呆れた感じで疑問を口に出すと、北上が笑って返す。
「まっ、今あたしが考えたんだけどね~。さてさて帰りますか。は~疲れたー」
皆は笑いながら自分たちの鎮守府へと向けて帰投していく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
「ヘエ、ソンナコトガ・・・」
あの時逃げ延びたイ級が何者かに報告を告げる。
この出来事が後に、鎮守府に大きな事件へと繋がっていく。