異世界に冒険を求めるのは間違っているだろうか 作:ヘヴン
大ポカをやらかしたギンジはフェファイスト・ファミリアではなくヘスティア・ファミリアへと入信した。
彼は現在、ヘスティアの自慢と報告の為に応接室から連れ出され、彼の本命であった紅い髪の麗人。
ヘファイストの居る執務室に居た。
「下界には変わった子がよくいるけど……貴方は私が見た中で、一番変わっているわね。
私のファミリアじゃなくて、住居も職もないこの子に入信するなんて……」
「は、ははは。」
高そうな木製の机に肘を乗せ、ジド目でギンジを見るヘファイストの言葉に頬を赤く染めながら苦笑いを浮かべるギンジ。
勿論、彼は女性に虐められて喜びを覚える特殊な性癖はない。
原因は彼の隣に居るロリ巨乳な女神だ。
「ちょっとヘファイスト!!僕の可愛い眷属に変わっているとか言わないでおくれよ!!
ギンジ君は真面目で誠実なんだぞ!!」
プリプリと
彼女の幼い容姿からは想像できない凶悪なその胸は彼の腕をサンドイッチし、ヘスティアが動くたびに彼女の温もりとムニムニとした独自の感触が彼にダイレクトに伝わるのだ。
これで頬を染めない男は恋愛対象が女性ではない人間だけだろう。
彼はだらしない顔を見せないように必死だった。
「ねえ…一応、念のための確認なんだけど……。
貴方、ヘスティアに何か良からぬ事をしようとか企んでない?」
「へ?」
「へ、ヘファイスト!?何を言ってるのさ!!?」
ジド目から鋭い視線へと変化したヘファイストスの質問に呆けるギンジと自分の初めて出来た可愛い眷属にケチをつける神友に憤慨するヘスティア。
まあ、無職で食べ物を食べる時と暇つぶしに散歩に外に出る以外何もしせず、特技も何もないダメな女神に突然、ヒューマンの男が入信したいとやって来たのだ。
神友であるヘファイストスからしたらギンジはよからぬ事を企んでヘスティアに近づいてきた怪しい奴以外の見えないのだ。
そして、ヘファイストスの言いようのないプレッシャーと鋭い視線に晒されたギンジはヘファイストスにビビりながら
「い、いえ、何も企んでいませんが……」
「そう、ならいいわ。
疑ってしまって、ごめんなさい」
ギンジの言葉に追及も疑いもせず、優しい表情になるヘファイストス。
普通ならこの程度の言葉だけでは人は信用しない。
でも…彼女たちは頂上の存在である女神だ。
地上に舞い降りた神々は己の力を封印し、人と変わらぬ不便さを味わいながら地上で生活している。
しかし、最低限の権能が彼らにあり、ギンジが感じている彼女たちの謎のカリスマ…
そして……嘘を見破る力。
この力でヘファイストスは、少なくともギンジがよからぬ事を考えてヘスティアに近づいたのではないと確信したのだ。
「ほらね!!ギンジ君は悪い奴じゃないよ!!
なんたって、僕のファミリアに入りたいって言ってくれた子なんだから!!」
「ハイハイ、ごめんなさいね。
最近、闇派閥が怪しい動きをしているってタレコミがあったのよ」
「分かればいいんだよ!!分かれば!!」
ヘファイストスの懸念も自身の身を心配してくれていると直感で理解しているヘスティアはこれ以上の文句は言わず、上機嫌になった。
そんな神友に呆れた表情を見せたヘファイストスは笑顔でヘスティアに告げた。
「じゃあ、ヘスティア。
眷属も出来た事だし、仕事とファミリアのホームを探しに行かないとね。
もう、ここには泊めて上げる事はできないんだから」
「へ?」
突然の神友の言葉に凍り付くヘスティア。
そして、そんなヘスティアを無視するように笑顔で言葉を続けるヘファイストスに不思議な圧力を感じるギンジ。
「貴女…ここに居候する時に言ったわよね?
眷属を見つけたらすぐに出て行って働くから、それまで泊めてくれって。
覚えているわよね?
勿論…お金は一ヴァリスも貸さないわよ」
「……あ」
過去に言った己の言葉を思い出したヘスティアは背筋が凍った。
地上で神友に甘えに甘えて、ニートをしていた彼女はこのままお金が貯まるまで眷属であるギンジと居候を続け、お金が貯まったら出ていくつもりだったのだ。
もし、彼女が普段からヘファイストスの店でアルバイトでもしていたのなら、ある程度の貯金でボロアパートの一室を借りれたのかも知れない。
だが、地上に降りてから働いた事のない彼女の貯金はゼロ。
文字通りの一文無し。
普段の彼女なら見苦しい程の駄々っ子を披露し、お金を借りようとしただろう。
しかし、初めて出来た眷属の前でそんな無様は晒したくないと踏みとどまった。
彼女は自分の眷属と自分の明日の為にどうやって、目の前の神友からお金を借りようかとギンジの腕を離し、顎に手を当てながら頭をフル回転させた。
「あの…ヘスティア様?住居ならありますから大丈夫ですよ?」
今のやり取りで、目の前の女神たちの関係性を理解したギンジは自分の主神が借金を作る前に声を掛けた。
資金ゼロの状態で-にするのは避けたかったのだ。
「ほ、本当かい!?」
自分の眷属の言葉に頭を悩ませていたヘスティアは喜色満面の表情を浮かべてギンジに詰め寄る。
「ええ。食料もありますので、しばらくは持ちますよ」
「ヤッホーーー!!さすが僕の眷属!!愛してるよギンジくーーん!!」
「はふぅ」
考えはしていたが打つ手が駄々をこねる以外に全く思いつかなかったヘスティアはギンジに飛びつき抱きしめた。
そして、ヘスティアに抱きしめられた事により、今まで感じた事のない極上の柔らかさを全身で味わいながら一瞬だらしない顔と声を晒すギンジ。
そんな二人を微笑ましい表情で自分の子が巣立ちでもしたかのように優しく見守るヘファイストス。
目的のファミリアに入れなかっただけでなく、ニートをしていた女神のファミリアに入信してしまったギンジ。
しかし、彼には不安も悲壮感もなかった。
彼の胸にあるのは、隣の女神とまだ見ぬ仲間達と紡ぐ冒険の物語に馳せる思い……
と、美少女女神との生活にちょっと期待しているスケベ心だ。