ハイスクールD×D ~Pagan Gods from the Old Testament~   作:カイバル峠

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すみません、リアルで色々と用事が立て込んでいた為に遅くなってしまいました(汗)


堕天使、そして・・・・・・

堕天使、そして……

 

 

私は私の『女王』、姫島朱乃と共に私の根城である駒王学園旧校舎裏の木立に来ていた。

彼女の報告によると、堕天使らしき気配がすぐそばまで来ていたというからだった。

先程のイッセーの言によれば最近この町に入り込んだ堕天使共は今夜アーシア・アルジェントというシスターを使って何らかの「儀式」を執り行うつもりらしい。

恐らくはそのシスターが持っているという神器で何かを企んでいるのでしょう。

 

だとするとこのタイミングで現れたことを考えても今現れた堕天使と言うのはその連中の一味と考えて間違いなさそうね。

 

……他人の領地で本当に舐めた真似をしてくれたものだわ。

 

私もイッセーが襲われて以来、堕天使がこの街に入り込んで何やら不審な動きをしていたことを察知したから探ってみたところ、複数の堕天使、それにはぐれ悪魔祓いが関与していることが発覚した。

 

最初は堕天使の中枢、グリゴリの計画だと思って不干渉でいるつもりでいたわ。

 

それを裏付けるように、イッセーを殺した下手人、そして先日相見えたはぐれ神父の口から彼を殺すよう上から命令を受けていたという旨の発言がとれたというから。

 

けれども使い魔を遣ったりして調べていくうちにどうやらその限りでないことが分かった。

 

この街は裏の世界では一般的にグレモリー家の縄張りとして通っている。

 

それにイッセーが悪魔に転生したことは向こうも何らかの方法で既に知っていたようなので向こうからすれば既に標的は存在しないも同然。

 

彼が悪魔になった時点で下手に手を出せば悪魔と堕天使の間で戦争が再発しかねない。

 

にも拘らず連中は一向に撤退する様子を見せない。

 

加えて堕天使総督のアザゼルは聞くところによれば戦争を嫌っているというから、仮にシスターの神器が目的だとしてもこの街で事を起こすのはリスクが大きいと判断するはず。

 

それなら冥界の堕天使領に連れ込んでしまった方が確実。

 

だというのに……

 

 

 

「部長!」

 

 

 

思考に没頭していた私は突如響き渡った朱乃の声で私は反射的に身を逸らす。

私が身を逸らしてほどなく、私の顔があった場所を空を裂く音と共に光の槍が通過する。

 

早速お出ましのようね。

 

「ふ~ん、さすがにこの程度は避けれるかぁ。」

 

そして私の考えを証明するように声が聞こえてくる。

声のする方に目を向けると木の上に腰掛ける二人の堕天使。

両方とも女だった。

 

一人はゴスロリ衣装でもう一人はボディコンスーツを身に纏っていた。

 

「あなたたちね?最近私の領地に入り込んで好き勝手やってくれた堕天使は。」

 

「いかにも。貴様の言には少々異論を覚える部分もあるがこの街に入り込んでいたことは間違っていないとは言っておこう。」

 

「まァ、ぶっちゃけウチらが好き勝手したっつーよりアンタらの管理がいい加減だったってだけじゃね?」

 

「……言ってくれるわね。それで、一体何が目的なのかしら?」

 

私が尋ねると二人は顔を見合わせた後、口を開く。

 

「我らの直属の上司がこの地でとある計画を遂行するよう命じられていてな、私達は任務遂行に協力しているだけだ。」

 

「随分すんなりと答えてくれるのね。それはグリゴリからの命令かしら?」

 

「その通りだ。上曰く、碌に扱えもしないのに危険な神器を所有することは世界の害悪にしかならないそうだからな。」

 

「それなのによりにもよってどっかの悪魔に下僕に転生させられちまったってワケで。あー、やだやだ、ホント最悪~。お蔭でアタシらの顔に泥塗られたってカンジ?」

 

「そう。それはごめんなさいね。けれど、最後に一つ聞いても良いかしら?」

 

「?何だ?」

 

「あなたたちのところにいるっていうシスター、アーシア・アルジェントの件についてはどうなのかしら?昼間うちの『兵士』があなたたちのお仲間から気になる話を聞いたらしいのよね。何でも儀式がどうとかこうとか。」

 

私の言葉に今の今まで余裕めいた笑みを浮かべていた堕天使二人の表情が急に険しいものとなる。

 

「……ほう?どうりで。最近どうも我々のことをコソコソ嗅ぎまわっている連中がいるとは思っていたが、貴様らだったか……」

 

「それで、どうなの?それとも答えられない理由でもあるのかしら?」

 

「その計画なんだけどさ……」

 

ゴスロリの方の堕天使が口角を吊り上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「“上”からの命令っつったらどうするよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「?!」」

 

 

嘘……?

 

私達が調べた限りではどうみてもこの連中の計画はグリゴリの方針とは合わないハズのものよ?

 

「どういうこと?」

 

背中に嫌な汗が伝う。

 

「言った通りだ。我らは上からの命で動いているに過ぎん。」

 

「あっれぇ?もしかしてアンタら、ウチらが単独で動いているとでも思ってたワケ?アハハハハハ、バッカじゃないの?単独ならいくらウチらでも敵地のど真ん中で態々そんな計画堂々と実行するわけないっしょ?」

 

でも気になることが一つ……

 

「……参考までにその“上”というのは誰か、聞かせてもらってもいいかしら?」

 

するとボディコンスーツの方の堕天使が不気味な笑みを浮かべて言う。

 

「無論、我らの総督閣下だ。」

 

「?!」

 

 

 

「我々の上司がとある興味深い神器の所有者を発見した為総督閣下に保護の申し立てを行ったところ偶々我らが実行役に選ばれたということだ。」

 

「保護?それにしては随分と手荒く扱っていたみたいだけれど?」

 

「ああ、神父共の中に過激な者がいたようだからそれで誤解を生んだのやもしれんな。連中の中には取り分け酷く悪魔とそれに関わった人間を憎悪する輩もいる。恐らく貴様の下僕と親しく接していたのを見て許し難く思ったのだろう……それよりいいのか?貴様は我らの独断だと判断して下僕をあちらに向かわせたようだが……それがどういう意味か言わずとも分かるな?」

 

「ッ!」

 

なんてことッ……!

 

「部長、彼女たちの言っていることが本当だとしたら非常にマズいですわ……」

 

「……ええ、分かってるわ。」

 

やられた……

 

この堕天使たちの言葉を信じるのならイッセーを殺した下手人は経過はどうであれ総督の命でシスターを確保していたということになる。

 

どれだけ親しくてもイッセーっとそのシスターの関係は極めて私的なモノ。

 

いくら教会を追放されていたとしても堕天使が手を付けていた以上公の立場の面では敵同士。

 

仮にそのシスターがどんな扱いを受けていたにせよ、ここでイッセー達が救出と称して教会に乗り込めばこちらがシスターを攫いに来たと見做されてしまう。

 

そしてそれは即ち悪魔側による堕天使組織の計画の妨害。

 

 

 

 

……最悪戦争の引き金にもなり得る……

 

 

いくらトップが戦争を忌避しても主戦派の気運が高まれば抑え込むのは困難。

 

私は判断を誤ったというの?

 

やはりあの時イッセー達にシスター救出を認めるべきではなかった?

 

「(リアス)」

 

朱乃がそっと耳打ちして来る。

 

「(すぐに教会に向かいましょう。向こうにも悪魔側の土地で計画を進めていたという事実がある以上今ならまだ自体が悪化する前にイッセー君達を連れ戻すことが出来る筈よ。それにさっきの光力と感じられる波動から相手は下級の堕天使。追撃されても撒くか、或いは正当防衛で迎撃することも十分可能よ。)」

 

くっ……確かに。

 

敵、それも格下の相手に背を見せるのは屈辱だけど今は何より時間が惜しい。

 

「(……分かったわ、そうしましょう。朱乃、ジャンプの用意を。)」

 

「(はい。)」

 

私達が教会へジャンプしようとした丁度その時

 

「ちょ~っと待ちなよ?」

 

「「!」」

 

私と朱乃の丁度真ん中に光の槍が突き刺さる。

 

「……どういうつもり?私達にもあなたたちにも今この場で争うメリットは無いはずよ?そんなことをするくらいなら現地へ急行すべきではなくて?寧ろこちらとしてはこの場で消し飛ばされないだけ有り難いと思って欲しいくらいなのだけれど。」

 

「はぁ?!アンタそれガチで言ってるワケ?うわ、そりゃ無いわ~。元はといえばアンタんトコの下僕っちがウチらんトコのシスターにちょっかいかけたからっしょ?どういう躾してんのか飼い主の顔が見てみたいって思ってたけど、やっぱり下僕が下僕なら主も主ってワケね。コレだから悪魔ってやだわ~。でも、せっかく来てくれたんだし、このまま手ぶらで帰るのもアレっしょ?というわけでコレ、プレゼントフォーユー。」

 

ゴスロリの方の堕天使はそこまで言うとパチンと指を鳴らし、それと共に現れる魔法陣。

 

……一体何をするつもりなの?

 

「やっぱ悪魔な問題は悪魔が解決するべきっしょ?てなワケで、出でよ、ミュータントちゃ~ん!!」

 

「「?!」」

 

堕天使の掛け声で魔法陣がより一層強く輝き現れたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グゥオオオオオオオオッ!!」

 

 

 

全長4~5メートルはあろうかという人型のはぐれ悪魔だった。

 

両肘と両膝からは大きな棘が生えており、手足の指から生える鉤爪もまた鋭い。

 

そして改造を施された個体であることを示すあの杭のようなものが全身至る所に打ち込まれていた。

 

「ッ……はぐれ悪魔を改造していたのはやはり堕天使!」

 

私の隣で朱乃が苦々しい表情で呟く。

 

「あなたたち!何てことをッ!!自分達が何をしたか分かっているの?!」

 

「勘違いをしてもらっては困る。我らはただはぐれ悪魔を収容していたのみ、故に改造したのは我らではない。それに貴様ら悪魔にそれを言われるとは心底遺憾だな。これは貴様ら悪魔が無秩序に、己が欲望のままに下僕を増やしていった結果だろう?そもそも種の存続の大義名分の下生命の理を犯した貴様らがそれを口にすること自体おこがましい。」

 

……随分好き放題言ってくれたものね。

 

でもこの状況は非常にマズいわ。

 

下級堕天使二人だけならどうとでもなったけどこんなところでミュータントが出てくるなんてッ!!

 

ただでさえ時間が無いっていうのに……

 

「アハハハハハ!さぁ~て、ミュータントちゃん。あの目障りな悪魔共を殺っちゃってちょーだいッ!!」

 

「「!」」

 

ゴスロリの方の堕天使がはぐれ悪魔に告げる。

 

来るッ!

 

私達が反射的に身構えたその時

 

ズシュッ

 

目に飛び込んできたのは信じられない光景。

 

「う、嘘……なんで……」

 

声の主は散々私達を小馬鹿にしてくれた金髪ゴスロリの堕天使。

しかし声の調子は先程とは打って変わって弱弱しい。

 

彼女の腹部を鋭い棘――――はぐれ悪魔の爪が貫通していた。

 

「ミッテルト!!」

 

もう一人の堕天使が叫ぶ。

 

「カラ……ワー……ナ……」

 

ゴスロリの堕天使――――ミッテルトは今にも消え入りそうな声で相方の名を呼ぶ。

 

しかしはぐれ悪魔は歯牙にもかけずそのまま口を大きく開く。

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――ミッテルトを喰らった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思わず目を覆いたくなるような、おぞましい光景。

 

肉が断たれ、骨が砕かれる嫌な音が鼓膜を通して頭の中で響き渡る。

 

「お、おのれェーーッッ!!!」

 

相方を惨殺されて激昂したもう一人の堕天使―――――カラワーナは持てる全ての力を注ぎ込んで光の槍を創り出し、はぐれ悪魔に斬りかかる。

 

 

 

 

ズバッ

 

 

 

 

 

しかし現実は非情だった。

 

カラワーナの槍が届くよりも早く、はぐれ悪魔の腕が振るわれ、彼女の体は両断される。

 

「レイ……ナーレ…様……申し訳…あり…ま……」

 

グシュッ

 

カラワーナが言い終わらないうちにはぐれ悪魔は宙を舞う彼女の上半身を掴みとるとそのままミッテルトと同様にその身を喰らった。

 

そしてグチャグチャという血肉が砕かれる耳障りな演奏が止んだ後、はぐれ悪魔の体に変化が現れる。

 

バキバキと言う音と共に背中が盛り上がり、二対四本の巨大な腕のような骨格が出現するとそこから鴉のような黒い羽毛が生え、翼を形成する。

 

「ヴォオオオオオオオオオオッッ!!」

 

大気を震わす咆哮。

 

それだけで一時的に三半規管が狂ってバランスを崩してしまう。

 

二対四枚の翼を広げたはぐれ悪魔はさながら堕天使と何か得体のしれない異形が混ざったようなおぞましい生き物だった。

 

そしてはぐれ悪魔がこちらを向く。

 

そして翼をはためかせて宙へ繰り出すとそのまま突進する体勢を取った。

 

「ッ!来るわよ、朱乃!!」

 

「ハイ、部長!!」

 

私は滅びの魔力を、朱乃は雷を撃ち出す。

 

この前の戦いでは大いに苦戦を強いられた。

 

正直私達だけではかなり厳しい。

 

それを証明するかの如くはぐれ悪魔が視界から消え、私と朱乃が放った魔力は虚しく虚空に消える。

 

「リアス!!」

 

木霊す朱乃の叫び。

 

!!

 

反射的に幾重にも防御障壁を展開する。

 

「「きゃああああああっ!!」」

 

刹那の後、何かが砕ける音と共に凄まじい衝撃が私達を襲う。

 

そして衝撃に耐えきれず私達は弾き飛ばされてしまう。

 

ふらつく足に鞭打ってなんとか体を起こす。

 

まだ立ち上がれるのは上半身と下半身が繋がっている証拠だ。

 

さきほど防護障壁を展開したのはやはり間違いではなかったようね。

 

もしあと一秒でも反応が遅れていたら、と想像するとゾッとする。

 

そして顔を上げ、はぐれ悪魔の方に向き直ると……

 

 

 

 

 

 

「嘘……こんなことって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐれ悪魔の前には無数の光の槍が浮かんでいた。

 

 

 

 

「これは……喰らった相手の力を吸収して自分のものにしたというの?!」

 

そう漏らした朱乃の額には冷や汗が浮かんでいた。

 

槍を形成する光力は悪魔とは相容れないものであり、本来悪魔は持ちえないものだ。

 

悪魔に転生する前が天使か堕天使でもない限り、あの力の元はおそらく先程はぐれ悪魔が喰らった堕天使のものということになる。

 

しかも運の悪いことに浮かんでいる光の槍はその一本一本に先程の堕天使とは比べ物にならないレベルの光力が込められているのが見て分かった。

 

流石にこれを防ぎ切るのは不可能だ。

 

回避しようにも数が多すぎる。

 

「ヴォヴァアアア!!」

 

しかし無情にもはぐれ悪魔は私達に向かって光の槍を一斉掃射する。

 

 

 

 

 

 

私は……こんなところで終わるの……?

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、ここまで正確に予想しておいでとは。流石は主様ね。」

 

 

「?!」

 

 

突如として響く聞き慣れない女性の声。

 

声と同時に私の眼前で闇が湧き出す。

 

そして闇は大きく帳の如く私達の前方を覆い尽くす。

 

そして闇が晴れると飛来してきた光の槍が全て闇に飲まれて消失していた。

 

気付けば私達のすぐそばに、巨大な存在感を放つ女性が。

 

外見上の年齢は20前後くらいだろうか。

宵の明星の輝きを体現したかのような金色の髪に、鮮血のように深い紅の瞳。

白のワンピースより覗く白磁の如き白い肌。

その顔立ちは同性であっても例外なく見惚れてしまうであろう、何一つ欠点の存在しない極上の造形美を誇っていた。

 

しかしただただ見惚れているわけにもいかなかった。

 

現れる時の静かすぎる程の気配。

 

この気配を私は知っている。

 

 

 

 

これは……吸血鬼(ヴァンパイア)

 

 

 

その証拠に月明りがあるにも関わらず、彼女の足下には影が出来ていない。

 

でもどうして?

 

吸血鬼はとりわけ閉鎖的な種族として有名で本拠地はルーマニアにあり、とりわけ純血の上位の者になると滅多にそこから出て来ないハズ……

 

それに今私が感じ取れるだけの力を鑑みても彼女の力は少なくとも最上級悪魔相当……いえ、もしかするとそれ以上かもしれなかった。

 

「あなたは……」

 

私は思わず口にする。

 

すると彼女は私達を一瞥して一言。

 

「まだ動かないで」

 

「?」

 

つい先ほど耳にした凛として、澄み渡った声。

 

私は彼女の意図が分からなかった。

 

確かに光の槍は消滅したがまだはぐれ悪魔は健在だ。

 

「グルルルルル……」

 

現にはぐれ悪魔は突然現れた闖入者に視線を向け、今にも臨戦態勢に入ろうとしていた。

 

なのに動くなとはどういうことか、私が真意を問おうとしたその時。

 

「っ?!これは……」

 

眩い光が辺り一面を照らし出す。

 

まるで夜が昼になったと思えるくらいの強烈な光。

 

思わず腕で目を覆ってしまう。

 

そして次の瞬間、轟音と共に光がより一層強く爆ぜ、風が爆風の如く吹き荒れる。

 

「オオオオオオオオオオッッ!!……」

 

途中、はぐれ悪魔の断末魔らしき音が聞こえた。

 

それから暫くして徐々に光が消えていき、辺りは元の静寂を取り戻す。

 

はぐれ悪魔はもう影も形も見えなかった。

 

「ハァ……少々やり過ぎではないかしら?」

 

吸血鬼の彼女は天を仰ぎ見て溜息を吐く。

 

「いや、すまない。敵は堕天使の光力を吸収したものだから多少は光への耐性を身に着けていると思ってな。」

 

上空からまた別の人物の声。

 

けれども今度は聞き覚えのあるものだった。

 

それを示すように視界に映る漆黒の羽。

 

そして舞い降りてきたのは

 

「オリヴィア……」

 

そう、以前私の眷属を同族の手から救った堕天使、そして彼、有馬崇哉の部下である彼女だった。

 

「久しい、とでも言っておくべきかな?リアス・グレモリー。」

 

彼女は私達の姿を認めると口を開く。

 

「……何故あなたがここに?それにそちらの彼女は誰?見たところ吸血鬼よね?」

 

私が問いかけると二人は互いに顔を見合わせると、最初にオリヴィアが口を開く。

 

「まず最初の質問に答えようか。既に気付いていると思うが私達がここへ来た理由は我らが主の命だ。“どうにも嫌な予感がする”と仰っていたよ。尤も、何もなければそのまま静観しているつもりだったが。因みに二つ目の質問、彼女もまた我らの主の命の下ここへ来た。」

 

「……それは彼がこうなることを予想していたということかしら?」

 

「さあ。正直あの方がどこまで見据えておられるのか我らには皆目見当もつかない。ただ一つ言えることは悪魔と堕天使という争いの構図が出来上がらないよう動いている、ということだけだ。」

 

?!

 

それはつまり……

 

「……曲りなりにも彼は悪魔と堕天使の衝突を回避しようとしているというの?」

 

「曲りなりにも、というのは少々語弊があるが大体はその通りだ。どうにもここの所末端クラスを使って争いの火種を作ろうとする輩がいるみたいなんでね。」

 

「ッ?!それじゃあさっき彼女たちが“総督命令”と言っていたのは……」

 

「十中八九そのパターンだろう。今度のことはあの戦争嫌いな総督が聞いたら間違いなく顔を真っ青にするだろうな。仮に本当に総督が命じたのだとしてもそちらと出くわすような真似はするなと事前に触れこんでいるはずだからな。おそらく連中の直属の上司あたりが命令内容を改竄した可能性もあり得る。」

 

「それじゃあ敢えて私達に接触してきた理由は……」

 

「恐らく考えている通りだろう。」

 

っ……

 

全ては最初から仕組まれていたというの?

 

私達の知らないところで何者かが動いている。

 

そして彼――――有馬崇哉は間違いなく何かを知っているとみていい。

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやら彼にはまだ聞き出さなければいけないことがあるようね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

町外れ、鬱蒼と広がる木立の中。

打ち捨てられた教会は既に日が落ちて久しいこともあり、内部より滲み出る殺気も相まって禍々しい雰囲気を醸し出す。

 

「何つー殺気だよ……」

 

溜まらずにイッセーが漏らす。

 

「神父も相当集まっているみたいだしね。気配からしてこの中に堕天使がいるのは確実だよ。それと、はい、これ図面。」

 

そう言って微笑しながら教会の図面を差し出す木場。

 

「……他にも何かいます。」

 

「ああ、いるな……それも神父だの堕天使だの以上に厄介なヤツが。」

 

「「っ」」

 

神父と堕天使以外に得体の知れぬ者がいることを感じとった子猫と崇哉の言葉にイッセーと木場は息を呑んだ。

 

「マジかよ……アーシアを助けなくちゃならねえってのに……来てくれて本当に助かったぜ。」

 

「何言ってるんだい?仲間じゃないか。それに、個人的に神父や堕天使は好きじゃない……憎いと言ってもいいくらいに。」

 

「木場……」

 

そう忌々し気に漏らす木場にイッセーは微かな戸惑いを覚える。

その時の木場の瞳には確かな憎悪の色が浮かんでいた。

 

「……どうします?神父と堕天使だけならまだしもそれ以上に厄介な相手がいるとなると正面突破は危険です。」

 

子猫の言葉に一同は顔を見合わせる。

 

「まいったね。はぐれ悪魔祓い組織の特徴を鑑みても一番怪しいのは聖堂なんだけどこの図面を見る限りだと地上からの出入り口はここしかない。これは予想以上に厳しい展開になりそうだ……。」

 

木場は当初予想していた以上に厄介な現実に形の良い眉根を寄せる。

 

しかしここで予想外の一言を口にする者がいた。

 

「いや、正面から攻めよう。」

 

「「「?!」」」

 

イッセー、木場、子猫の3人は絶句する。

 

何故ならその言葉を口にしたのが……

 

「オイ崇哉、本気で言ってんのかよ?!」

 

余りの動揺に思わず食って掛かるイッセー。

 

無理もない。

この場で最も正面突破などという言葉を口にしそうにない人物、有馬崇哉がそう言ったのだから。

 

「本気さ。見たところ恐らくその儀式とやらが執り行われているのはここの地下だ。それもここの中から地下に通じる道があるはず。となれば少々の危険は承知の上で攻勢をかけた方が確実だ。それとも地面ごと崩落させて生き埋めにするという手でも使うか?これはあまりお勧めしないよ。少なくとも神父の方は殲滅できるし堕天使に関してもある程度時間を稼げるだろうが多分にシスターも巻き添えを食うからな。どのみち乗り込んだ時点で危険は覚悟せねばなるまい。それに……それを選んだのはお前自身だろう?」

 

「ッ……」

 

イッセーは押し黙る。

確かに、自分がアーシアの救出を主張したが故に今自分達はここに居るのだから。

 

「……随分教会の構造に詳しいみたいだね。」

 

そしてイッセーの代わりに口を開いた木場の声音は多分に訝しげなものだった。

 

「今まで狂信者や背教者の類は腐るほど見てきたからな。連中にお決まりのパターンだ。それに感じないか?地面のかなり深いところにある禍々しい魔力の気配を。」

 

「……ッ!これは……」

 

感覚を研ぎ澄まし、言われるがまま意識を地下深くに集中させた木場は“ナニか”を感じ取り苦虫を噛み潰したような表情になる。

 

「そう、先日お前達が遭遇したはぐれ悪魔と同質のものだ。逆に、そんな厄介なヤツを置いておくということはそれだけ下に何か重要な秘密があるともとれる。」

 

「っ?!冗談じゃねぇ……!!あんな化け物のところにアーシアがッ!!」

 

アーシアの置かれている状況が自分が思っていた以上に危機的であることに焦りを感じ、今にも駆け出しそうになるイッセー。

 

「突入する前に言っておくことがある……全員、目的を果たしたら即離脱だ。くれぐれも敵を殲滅しようなどとは考えるな。」

 

崇哉がそう言うと木場と子猫が怪訝な顔をする。

 

「……それは私達では力不足だということですか?」

 

すると睨むような鋭い視線を向けてくる子猫を一瞥すると一言。

 

「……勝てるのか?ミュータントに?」

 

「……」

 

子猫は閉口する。

そうせざるを得なかった。

事実、改造されたはぐれ悪魔の力は以前嫌と言うほどに見せ付けられ、己の無力を噛みしめることとなったのだから。

 

「今回の目的は飽くまでも件のシスターの救出だ。堕天使やはぐれ共とやり合う事じゃない。そしてそれはリアス・グレモリーも望まぬところだ……そうだろう?」

 

崇哉がそう問いかけると全員が真剣な面持ちで頷く。

 

「それともう一つ、言うまでもないが……ミュータントと遭遇したら目的の達成如何に関わらず逃げろ。」

 

「ッ?!おい、その場合アーシアはどうなるんだよ?!」

 

彼の言うことは味方の生存を確保する上では正論だった。

しかしそれでは納得のいかない者がいたのもまた事実。

 

「なら聞くがイッセー、お前がそのシスターを助けるためにここに居る面子が一人でも犠牲になったとしたらどうするつもりだ?それにお前は先程死んでもシスターは逃がすと言っていたがもしお前が死んだらその後そのシスターはどうなる?追放されたとはいえ公の立場上お前とそのシスターは敵同士。身寄りもない上にグレモリーにも助ける理由が無い。それどころか早々に再び堕天使に捕まるのが関の山だ。」

 

「で、でも!」

 

何か言いたげなイッセーに向かってだからと言って続ける崇哉。

その顔には微かに笑みが浮かぶ。

 

「その為に俺がいるようなもんだろう。安心しろ。万一最悪の状況に陥っても殿とシスターを連れ出すだけのことはできる。それ以上にお前に死なれたら元も子もないんだよ、今回の件は。」

 

「崇哉……」

 

いつしかイッセーの表情は歓喜に打ち震えるようなものになっていた。

 

「……いつの間にかすっかり先輩のペースです。」

 

「あははは……」

 

二人のやり取りを見ていた木場と子猫は呆れつつも苦笑を浮かべる。

 

 

 

 

 

「さて、随分と話し込んでしまったな……では、行こうか」

 

 

 

 

 

そして三人の悪魔と一柱の異教の神は聖堂の扉を潜ったのだった。

 

 

 

 




今回もgdgdです、はい^^;

細かい描写を入れつつも早く書ける方法ってないんですかね?


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