ハイスクールD×D ~Pagan Gods from the Old Testament~   作:カイバル峠

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改めて思いましたがどうしても一人称視点、特に原作キャラだとグダりやすい……

三人称視点の方が書きやすいですね。


救出

救出

 

 

教会の扉は開かれる。

視界に映るのは礼拝に訪れる信者の足が絶えて久しいことを表すかのように埃を被った祭壇や長椅子、頭部が欠けた聖人の像、破壊された十字架――――そして辺りに充満する濃密な悪意と殺気。

それは崇めるべき聖書の神、そしてそれに連なる天使の加護が失われたことを意味していた。

信仰と加護を失った聖域はかくも廃れて背徳的な場所へと変貌するものかと、見た者はそう思わざるをえないだろう。

 

「ひでぇ荒れようだな……」

 

悪魔に転生する以前からあまり教会とは縁のなかったイッセーをしても、目の前の荒れ様には息を呑む。

 

「敬っていたからこそ、愛していたからこそ、捨てられた時の絶望は計り知れない。そして絶望はやがて憎悪に変わり、今まで拠り所としてきた場所で自身が信仰してきたものを打ち壊す……自らを捨てた神を否定する為にね……ッ?!マズい!」

 

イッセーに続いて口を開いた木場であったが、突然の危機を察知して身構える。

 

 

 

 

「オマエら、おはようございマ~スッッ!!!!」

 

 

 

 

声と共に上空から現れたのは光剣を振りかざして斬りかかる一人の男。

 

「クッ!!」

 

直前で敵の気配を察知した木場は持ち前の反射速度を生かして回避する。

他の三人も同様に躱したが、振り下ろされた光剣は軽い衝撃波を発生させ、床を大きく抉り、周囲の長椅子の幾つかが破砕する。

男が振り下ろした剣には自身の膂力に更に高所からの落下による重力加速度が加わって地表に到達する頃にはその破壊力は何倍にも膨れ上がっていたのだった。

 

「テメェ、フリードッッ!!」

 

イッセーが怒声を張り上げる。

 

「どーもどーも、やっぱり覚えててくれたンスねェ?そうです、僕ちん、皆の人気者、日夜悪しき屑悪魔共を切り伏せる正義のヒーロー、フリード・セルゼン君でェ~す!!また会ったねェクソ悪魔のイッセー君とそのお友達のクソ悪魔ズ!!良いねェ!感動の再会だねェ!というワケで、早速オマエらにヘルズゲート直行便くれてやりますDEATH!!アレ?そういやオマエらの巣穴って元々地獄だったっけ?アハハハハ!!!」

 

自己への陶酔と相手の感情を逆撫でするような芝居がかった道化のような口振り。

そう、男は悪魔の三人からすれば酷く鮮明に記憶に残っている人物、以前グレモリー眷属への依頼主を惨殺し、イッセーと木場の二名と戦い負傷させた白髪のはぐれ悪魔祓い、フリード・セルゼンだった。

すぐさま木場は剣を構え、子猫はいつでも動ける体勢をとり、イッセーは自身の神器を発動させる。

 

「アーシアはどこだ?!」

 

「アーシアちゃん?ああ、あの悪魔に魅入られた、シスターとしてもヒトとしてもジ・エンドなゴミクズでごぜェますか。それならこの先の祭壇から通じる地下の祭儀場におりますです。まあ、行ければ、の話ですがねェ。だって悪魔なお前さンたちはここで俺に殺られて消えて無くなるンですから!!……おんやァ?今回初めて見る顔がありますねェ……キミ、悪魔じゃないみたいだけどどうしてこんなゴミ共と一緒にいるのかなァ?」

 

フリードは侵入者の中で唯一悪魔でない崇哉を目にすると怪訝な表情を浮かべる。

 

「別に、ただの付き添いさ。なんでもどこかのバカ面が彼女と教会デートするのに付き合ってくれって言うから着いてきただけだよ。因みにお前さんの言う通り俺は悪魔じゃないからな。」

 

「オイ!!馬鹿面ってのは俺のことじゃねぇだろうな?!」

 

「なんだ、自分がそういう顔をしているという自覚があったのか。別に俺は誰とは言っていないぞ?」

 

「うっ……」

 

崇哉の言葉に激昂するイッセー。

どう見てもこの場にそぐわぬ遣り取り、しかしフリードにはそれで十分だった。

 

「そぉですかい、合点しやした……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ならテメェも纏めて始末してやンよォッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フリードから剥き出しになった殺意が溢れ出す。

 

「悪魔も悪魔に肩入れする奴も存在してること自体ェが間違い同然のゴミなンだよ!!」

 

多分に怨恨と憎悪の籠った叫びと共にフリードは駆け出す。

 

「……お前ら何かしたのか?」

 

「知らねぇよ?!こっちが知りたいくらいだ!!」

 

「随分余裕だなァ?!クソ悪魔共がッ!!」

 

フリードは懐からリボルバー式の拳銃を取り出すと引き金を引く。

発砲音を伴わない光弾が4人を穿つべく迫る。

 

「ほう、光製の祓魔弾か。確かに悪魔には毒だな。だが」

 

その瞬間、周囲の闇がより一層濃さを増す。

それは夜目の効く悪魔の目を以てしても帳が下りたのかと錯覚するほど濃密な暗闇。

放たれた光弾はその全てが暗黒の帳に飲まれるようにして消失した。

 

「なっ?!」

 

「所詮下級クラスの堕天使の光力ではこの程度が限界だな。」

 

フリードは悪魔の弱点であるはずの光が消失したことに驚愕する。

そこに生じるほんの刹那の隙。

 

「すまないが驚いている暇はないよ?」

 

フリードの背後に迫るはグレモリーの『騎士』。

先日の負傷の影響を微塵も感じさせない動きで肉薄し、その雪辱を晴らさんとばかりに剣を振り下ろす。

 

「おォ!!流石は『騎士』、相も変わらずのすばしっこさ、正にネズミ!!やっぱりちょこまかと目障りだなァ!!」

 

そう言い切らぬうちにフリードは最早驚嘆に値する速度で上体を捻り、己の光剣を横に薙ぐ。

 

「悪いね。今回キミの相手は僕だけじゃないんだ。」

 

「?!」

 

切り結ぶかと思われた木場はフリードの刃を受け流して即座に後ろに飛んで距離を取る。

 

「潰れて。」

 

木場の行動にフリードが困惑の色を見せたその最中に聞こえた声。

フリードはほぼ反射的に声のした方に向かって光剣を一閃する。

 

「ハン!!」

 

手応えはあった。

その証拠に両断された長椅子が床に落下する様が確認できた。

 

そしてもう一つ、フリードに迫る影があった。

 

「プロモーション『戦車』!!」

 

「『兵士』か?!クソがあッッ!!」

 

フリードは即座に身を翻すと再び拳銃からイッセーに向けて光弾を連射する。

しかし、以前とは違いフリードの光弾は一発としてイッセーの体躯を貫くことなく弾かれた。

 

「『戦車』の特性はあり得ない防御力!そして」

 

イッセーは拳を固め、上体をフルに使って大きく引き絞る。

 

「馬鹿げた攻撃力だッッ!!!」

 

そしてイッセーは渾身の力を解放する。

イッセー自身の膂力は弱くとも、『戦車』にプロモーションしたことでその力は何倍にも増幅され、十分に決定打たるほどに完成された一撃を因縁の相手に叩き込む。

 

「しゃらくせェッッ!!」

 

しかし敵もさる者。

フリードはイッセーの拳が届くより早く剣と拳銃を交叉して防御の体勢を創り出し、同時に自らも後ろに飛んで衝撃の緩和を試みた。

そしてイッセーの拳は丁度フリードのガードの真ん中に突き刺さる。

 

「チッ!!」

 

咄嗟の防御でイッセーの力の幾割かを受け流すことに成功したフリードは空中で素早く体勢を立て直すと剣を突き刺して勢いを殺す。

 

「クソ悪魔共が……調子こきやがってッ!!」

 

フリードはより一層の殺気を漲らせ、拳銃を捨て、もう一方の手にも光剣を握り飛び出そうとしたその時

 

「頭上注意、ってね」

 

フリードは声に釣られて頭上を見上げる。

 

鼓膜を劈く轟音と共に迫りくる緋い稲妻。

無慈悲なまでの破壊力を秘めた緋い光の矢がフリードを穿たんと迫る。

 

「クッ!!」

 

すんでのところで飛び退いて躱すフリード。

防御は諦めたのは正解だった。

緋い稲妻はフリードのいた場所を大きく砕き、抉りとった。

 

「言い忘れていたが」

 

「!!」

 

再び同じ声。

 

「俺も悪魔と同列に扱われるのは不愉快極まりないんでね。」

 

フリードが振り向くより早く。

彼の顔に強烈な蹴りが入る。

 

「ぐぼォッ?!」

 

そしてそのままガシャンという破砕音と共にステンドグラスを突き破ってフリードは教会の外へと吹き飛ばされ沈黙した。

 

「やった、のか?」

 

あの、悪魔を殺すことに異常なまでの執着を持つフリードがいつまで経っても起き上って来ないことを不思議に思ったイッセーが徐に口を開いた。

 

「さあ?どちらでも大して違いはない。それにさっき顎を狙って蹴ったからしばらくは脳震盪で動けないだろう。それより急いだ方がいいんじゃないか?儀式とやらは進行中なのだろう?」

 

「ッ!そうだった!!アーシア!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってェ……」

 

教会のすぐ外、鬱蒼と茂る木立の中で一人の狂人が目を覚ます。

 

つい今の今まで意識を失っていた彼は未だに視界が霞む中、痛む頭を抑える。

意識が明瞭さを取り戻すにつれ、自分が今このような醜態を晒している理由が鮮明に蘇って来る。

 

「あンの野郎……」

 

彼はギリッと音が鳴るほどに奥歯を噛みしめた。

 

意識を失う前、彼は堕天使側の一員としてとある上級悪魔の眷属数名と刃を交えていた。

悪魔、それは彼から見れば図々しくも人間界に居座り、あまつさえ不法占拠した土地を自身の領土などと抜かしてそこに住まう人間を家畜の如く貪る害獣。

 

しかし今の彼にはそれ以上にとある人物のことが脳裏にこびりついて離れなかった。

 

意識を失う直前、自身を蹴り飛ばした男。

 

あの男は悪魔ではなかった。

 

しかしあの男の所為で、自分は憎き悪魔に一太刀も浴びせることなくこうして無様にも退場を強いられた。

 

それにその男は確かにこう言った。

 

“悪魔と同列に扱われるなど不愉快極まりない”

 

と。

 

「抜かせよクソがッ……!!」

 

思い出せば出すほどに忌々しさが増す。

 

彼からすれば悪魔でなくとも悪魔に与する者は皆例外なく排除すべき対象だった。

 

悪魔と同列に見られるのが不愉快?

 

ならば何故その悪魔に手を貸すのだ?

 

彼にはその矛盾がこの上なく不可解であり、また許せないものでもあった。

 

 

 

「おやおや、これはまた随分と派手にやられましたね、フリード。」

 

彼―――フリードが思考に没頭していたその時、音もなく現れた人物。

 

ローブを纏い、更にフードを被っているために顔は半分以上隠れているが、声からして女性と判断できた。

 

「ああ、姐さんか……」

 

未だ満足に動けない状態のフリードは視線をそちらに向ける。

 

「いかにリアス・グレモリーの眷属とはいえ、下級悪魔相手に後れを取るとはあなたらしくもありませんね。」

 

女性は呆れたような、それでいて少々皮肉交じりな様子だった。

 

「まったく、我ながら情けねェ話だとは思ってンよ……だが連中の中に一人、不確定要素(イレギュラー)なのが入り込ンでやがった。以前見たグレモリーの関係者の中には入ってなかった奴だ。ソイツが盛大に邪魔してくれやがったからな……ッ!」

 

フリードは忌々し気に顔を歪める。

一方の女性の方はその言葉に興味を惹かれた様子を見せた。

 

「イレギュラー、ですか……して、そのイレギュラーとはどのような人物でして?」

 

「どンな、って言われてもなァ……ああ、そういや赤い雷とか祓魔弾の光を消し去ったりしてたっけか。そンで女みてェな顔した男だったよ。悪魔じゃねェのは確かだったがかといって天使でも堕天使でも、まして人間でもなかった。あと、どことなくほんの僅かだが前会ったグレモリーの次期当主と似てたような気がしなくもねェな……」

 

そこまで聞くと、女性は顎に手をやって何やら考えるような仕草を見せる。

 

そして

 

「分かりました。フリード、今回のところはあなたには私と共に撤収してもらいます。」

 

「……いいのか?あの自称至高の堕天使な女王様はまだ中でコソコソやってるみてェだが。」

 

「ええ、構いません。元々今回の件は緊張を呷れればそれで良かったのですから。それにもとよりあの程度の末端を使って出来る範囲など知れていました。……何より当初の予定通りとはいかなくなりましてね。“彼”が直々に動くそうですから。」

 

彼女の言葉を聞いてフリードは僅かに目を見開く。

 

「ほう?あのヒトがねェ……なるほどなァ……ま、妥当な結果だな。今回の作戦は最初から成功率は高く見積もって2割が良いトコだって話だったからなァ。やっぱり思ったほど上手くは誤魔化せなかったな。でもまァこれで俺もあの阿婆擦れのご機嫌取りから解放されるってワケだ……そういや今回の件は俺も責任問われンのか?」

 

「いえ、それはないでしょう。あなたを遣わしたのは飽くまで“保険”のようなものです……尤もあなたからすれば満足に悪魔が狩れずに不満かもしれませんが。それに今度のプランではより一層あなたの力が必要となるので“彼”もあなたを呼び戻すよう決定したのですから。」

 

フリードは息を吐く。

 

「了解だ。確かにあのクソ悪魔共を狩れなかったのは不本意だが仕方がねェ。それに今度の計画の方がより多くの屑を殺れそうだからなァ……」

 

それを聞くと女性は口元を三日月形に歪ませる。

 

「フフ、では決まりですね。」

 

そして彼女は転移用魔法陣を展開し、フリードと共に転移して教会を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃい、悪魔の皆さん。」

 

地下祭儀場は大勢のはぐれ神父でひしめいていた。

そしてその最奥、ひときわ高い位置に設けられた祭壇から黒い翼を生やした女――――堕天使レイナーレが告げる。

 

そしてその横の特殊術式を施した十字架に磔にされた金髪の少女。

 

「アーシアァァッ!!」

 

「イッセー、さん……?」

 

少女に向かって叫ぶイッセーに少女は力なく答える。

 

あの娘が件のアーシア・アルジェント……

 

しかしマズいな。

 

見たところ儀式はほぼ九割方終わっている。

 

……遅かったか。

 

「感動の対面だけど残念ね。儀式はもう終わるところよ。」

 

堕天使がそう言うと十字架が光り始める。

 

「あ、ああ、いやああああああああっ?!!」

 

シスターが苦悶に満ちた叫びを上げる。

 

「クソッ、アーシア!!」

 

「邪魔はさせん!!」

 

「悪魔め、ここで滅してくれるッッ!!」

 

見かねたイッセーが祭壇に向かって走り出すが、当然のことながら神父たちに阻まれる。

しかも先程のフリード・セルゼンと同様各々光剣を握っていた。

 

「どけッ!!テメェらに構ってるヒマなんてねえんだッ!!」

 

余計な戦闘はなるべく避けたかったがこうなっては致し方ない、か……

 

俺は木場と搭城に目配せすると二人とも頷く。

 

そしてイッセーの周りに群がる神父の群れへと飛び込み、祭壇への延長線上にいる神父を一掃する。

 

「皆……」

 

「ここは俺達が時間を稼いでおく。その間にお前は自分のなすべきことをしろ。」

 

「っ!サンキュー!!」

 

イッセーは再び駆け出した。

 

さて、剣術に徒手空拳、いずれも広域殲滅には向かないが何とかイッセーの奴が祭壇に辿り着くまでの間の時間稼ぎくらいは可能だろう。

 

「邪魔をするか、貴様ァ!!」

 

神父の一人が俺に斬りかかって来る。

 

ハァ……面倒だな。

 

俺は神父が振り下ろした光剣の腹に手刀を当てて叩き折る。

 

「なっ?!」

 

まさか光の剣を素手で破壊されるとは思っていなかったのか、覆面からのぞく神父の目には明らかに動揺の色が浮かんだ。

 

「目障りだ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『止まっていろ』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――っ?!」

 

神父は生物から物言わぬ氷の彫像と化した。

 

 

 

 

 

アーシアを助けに教会へ乗り込んだ俺達。

 

そこで再会したのは十字架に磔にされたアーシア、そして――――――あの女、堕天使のレイナーレだった。

 

そして十字架が強く輝き始めると同時にアーシアが苦しそうな悲鳴を上げた!

 

「クソッ、アーシア!!」

 

俺は急いで彼女の下へ向おうとする。

 

しかし祭壇前にひしめく神父たちがそれを許さない。

 

「どけッ!テメェらに構ってるヒマなんてねえんだッ!!」

 

クソッ!

 

数が多すぎる!!

 

早くしないとアーシアが!!

 

しかしその時俺の仲間達が神父を引き受け活路を開いてくれた。

 

そして崇哉の言った一言

 

“お前は自分のなすべきことをしろ”

 

俺は言葉が出なかった。

 

だから短く礼を言うことしかできなかった。

 

ああ、そうだ。

 

俺は行かなきゃならないんだ!

 

立ち止まっているヒマなんてない。

 

皆の思いを無駄にするわけにはいかない!!

 

何より絶対にアーシアを助けるんだ!!

 

 

 

 

 

 

「ああああああああッ!!……」

 

 

 

しかし現実はどこまでも非情だった。

 

アーシアの悲鳴が途切れると同時に彼女の体から緑色の光を放つものが出てきた。

 

!!

 

俺は直感的に感じ取ってしまった。

 

アレは酷くヤバい。

 

アーシアの瞳からはみるみるうちに生気が失われていき、そして糸の切れた人形のように項垂れる。

 

途轍もなく嫌な予感がする。

 

頼む、どうか外れていてくれ……ッ!!

 

『聖女の微笑』(トワイライト・ヒーリング)……そうよ、これよ!!これこそ私が長年欲してきた力……!!これさえあれば私は愛を頂ける!!」

 

レイナーレはアーシアから出てきた光を手に取ると、狂気と陶酔に彩られた表情で抱きしめる。

すると祭儀場が眩い光に包まれそれが止んだ時には全身を緑色の光に包まれたレイナーレがそこにいた。

 

「フフフ、アハハハハ!!遂に手に入れたわ、至高の力!!これで私は至高の堕天使になれる!!今まで私を馬鹿にしてきた連中を見返してやることができるわ!!」

 

高笑いする堕天使。

 

しかしそんなことはどうでも良かった。

 

一秒でも早く、アーシアの下へ辿り着かなくてはいけないような気がした。

 

俺は一気に祭壇へ通じる階段を駆け上がる。

 

「アーシアァッ!!」

 

俺はすぐ横にいたレイナーレに目もくれず、未だに十字架の上で力なく項垂れるアーシアの名を呼ぶ。

 

「ここまで辿り着いたご褒美よ。」

 

レイナーレがパチンと指を鳴らすとアーシアの拘束が解かれ、落ちてきた彼女を俺は抱き留めた。

 

「アーシア、大丈夫か?!」

 

「イ、イッセー、さん……?」

 

目を開いた彼女の声は余りに弱弱しく、生気を感じさせないものだった。

 

「迎えに来たぞ、しっかりしろ」

 

「はい……」

 

くっ……

 

「その子はあなたにあげるわ。まあ尤も、神器を抜き取られた以上もう間もなくその子は死ぬけどね。」

 

何だって?!

 

「ふざけんな!!この子の神器を元に戻せ!!」

 

レイナーレから発せられた衝撃の一言。

俺は堪らずに叫んだ。

しかしレイナーレは相変わらず嘲笑的な様子で続けるだけだった。

 

「馬鹿言わないで頂戴。これは一応上からの命でもあるの。上司から“『聖女の微笑』を回収せよ”って命令を受けてね。」

 

「でも殺す必要はなかっただろ!!」

 

「そうね、その子がもう少し聞き分けが良かったらここまする必要もなかったかもしれないわ。でも……あなたが一番悪いのよ?」

 

何?

 

唖然とする俺をレイナーレはクスクスと嘲笑的な目で見ながら続けた。

 

「意味が分からないって顔してるわね。いいわ、冥途の土産に教えてあげる。前にも言ったわよね?あなたには物騒なモノがついている可能性があるから始末するよう上から命令されたって。まあ、結局杞憂に終わったワケだけれどね。それなのに悪魔なんかに成り下がって生き延びて……それだけならまだよかったわ。別に私達の害にならないのならあなたがどこで何をしようと関係ない。けれどもあなたはその子、アーシアに必要以上に接触した挙句あることないこと吹き込んだ。お蔭ですっかり反抗的になってくれちゃったじゃないの。」

 

「アーシアは優しい子なんだ!!お前らみたいな悪魔も人間も見境なく殺すような連中と一緒にいて良いわけないだろ!!」

 

そうだ。

 

こいつらなんかとアーシアが一緒にいて良いはずない。

 

だからこそ助けに来たんだ!

 

「はぁ?敵対勢力である以上危険因子は早急に取り除くのは当然でしょう?敵と敵に塩を送る奴をみすみす見逃す馬鹿が一体どこにいるというのかしら。まったく、何を言い出すかと思えば……やっぱり悪魔って感情だけで動くような下等な生き物ね。アーシアはこちら側の人間。公の立場上あなたと彼女は敵同士、あなたにどんな感情があってもそれは所詮私的なモノでしかないの。だから本来あなたたちがここでこうしていること自体が筋違いなのよ。」

 

「知るかよ、そんなこと!!公の立場とかそんなの関係ねえ!!俺とアーシアは友達なんだ!!助けに来るのは当たり前だろうがッ!!」

 

しかしレイナーレは相変わらず冷めた目で俺を見据えるだけだった。

 

「ハァ……あなたのオツムの出来の悪さはもう脱帽モノね。それにどの道今更こんなこと言っても無駄よね。だってあなたたちは最後の一線を越えてしまったのだから。」

 

「最後の一線、だと……?」

 

俺が問い返すとレイナーレは口元を歪ませて邪悪な笑みを浮かべる。

 

「さっき私が言ったこと覚えているかしら?今回の件は組織の上層部、即ち我らが偉大なるアザゼル様やシェムハザ様、その他幹部の皆様方より下された指令。それを敵対勢力である悪魔、特にあなたが幾度にも渡って妨害してきた……つまりあなたたちは堕天使全体を敵に回してしまったということよ。」

 

「「「ッ?!」」」

 

なん…だって……?

 

堕天使全体を敵に回した?

 

でも部長は俺が助けに行くことを許可してくれたんだぞ?

 

あれだけ色々考えている部長が間違えたって言うのかよ?!

 

「フフフ、信じられないようね。でも事実よ?あなたが感情に任せて動いたせいで堕天使と悪魔が争う理由が生まれてしまった……もしかしたら戦争になるかもしれないわね?」

 

「っ……」

 

そんな……俺のせいで戦争が……?

 

レイナーレは冷笑を浮かべながら光の槍を創り出す。

 

「心配しなくてもいいわ。どの道あなたはここで死ぬんだから。でもいいでしょう?その子と二人仲良く消えるんですもの。あなたのような下卑た輩が至高の堕天使たる私の手に掛かって逝けるってだけでも身に余る光栄だと思いなさい。」

 

「兵藤君!ここでは不利だ!!」

 

祭壇の下で神父たちと切り結んでいた木場が叫んだのが分かった。

しかし今の俺の耳にはその具体的な内容は入ってこない。

 

「……初めての彼女だったんだ。」

 

「ええ。見ていてとても初々しかったわ。女を知らない男の子はからかい甲斐があったもの。」

 

「……大事にしようと思ったんだ。」

 

「そうね。確かに気を使ってフォローしてくれたわね。でもそれは私がわざとそうなるように仕向けたのよ。だってあなたの慌てふためく顔、とっても面白いんですもの。」

 

「俺、夕麻ちゃんのことが本当に好きで、絶対良いデートにしようと思って念入りにプラン組んだんだ」

 

その時、俺の頬に何か途轍もなく熱いモノが掠った。

 

「ぐっ……」

 

遅れて襲ってくる痛み。

 

これは忘れもしない、光によるものだ。

 

「……笑わせないでくれる?」

 

レイナーレの声音は明らかに今までと違っていた。

嘲笑的な色は消え、代わって身も凍るほどに冷え切ったものになっていた。

 

「私が本当に好き?本気で言っているのかしら?初対面で告白されてその後数回一緒に登校したくらいで私のこと知った気になっていたの?本当に不愉快なクソガキね。あなたのことは殺すにあたって少々調べさせてもらったわ。覗きなど度重なる猥褻行為で学校では問題児、その癖ハーレムだなんて今の人間社会じゃあ非現実的極まりない夢見てたそうね。事実今の学校を選んだ理由も元女子高だからという不埒なもの。要するにあなたは女なら誰でも良いってわけでしょ?そういえば私とデートした時もあなたの視線って本当に厭らしかったものね。もう殺意を抑えるのに必死だったわ。それで本当に好きだって言うなんて反吐が出るわね。そんなあなたみたいなムシケラに好かれるなんて考えただけで鳥肌が立つほどおぞましいことだわ。それに私からしてみればそもそもあなたとアーシアが本当に友達だったかすら疑わしいのだけれどね。それともあなたの言うアーシアの優しさに付け込んで無理矢理迫ったのかしら?だとしたら正に悪魔ね。本当に腐ってるわ。まあでも教会育ちで世間知らずのその娘にはたとえ下心丸出しで迫られても気付きそうもないものね。いえ、それどころか新鮮だったかもしれないわね?“こんなに楽しかったのは生まれて初めてですぅ”とか言ったのかしらね?」

 

 

 

 

「レイナーレェッッ!!!!」

 

 

俺は気付けば叫んでいた。

 

俺のことは何て言われたっていい。

 

でもこの子を、アーシアをこんな目に遭わせた上にコケにするこの女はどうしても許せなかった。

 

 

「腐ったクソガキが私の名前を気安く呼ぶんじゃないわよ!!穢れるじゃない!!」

 

激昂したレイナーレが槍を構え振り下ろす体勢になる。

 

今のでハッキリ分かった。

 

コイツの本性は他人の気持ちを踏み躙って嘲笑うようなとんだ性悪だ!

 

……コイツの方がよっぽど悪魔じゃねえかっ

 

俺はこんなのに惚れ込んでたっていうのかよ……ッ!!

 

レイナーレは槍を振り下ろす。

 

でも俺はアーシアを抱えたまま避け、そして祭壇から飛び降りた。

 

もうこれ以上ここに留まる意味はねえ。

 

「逃がすかッ!」

 

「チッ!!」

 

祭儀場の出口に向かって走り出すが残っていた神父が斬りかかって来る。

 

「兵藤君!」

 

「木場!」

 

すんでのところで木場が剣で受け止めてくれる。

 

「目的は果たした、ここは逃げよう!僕達で道を開くから君は早く行くんだ!」

 

「……早く行って。」

 

木場、子猫ちゃん……

 

「でも……」

 

「良いから行くんだ!!」

 

「っ」

 

俺は弾かれたように駆け出した。

 

皆が切り開いてくれた道をひたすら走った。

 

「行かせると思っているの?」

 

「ッ!」

 

頭上から聞こえた声。

 

見上げると黒い両翼を広げたレイナーレが光の槍を構えて高速で迫ってきていた。

 

空を飛んでいる相手はアーシアを抱えて走っている俺よりも断然速い!

 

マズい!

 

このままだと追いつかれる!

 

 

 

 

「お前こそ思い通りにいくと思っているのか?」

 

 

 

「っ?!」

 

聞き覚えのある声。

 

それと同時に迸る赤い閃光。

 

前に見た朱乃さんの雷より遥かに強力な稲妻が俺とレイナーレの間を駆け抜け、レイナーレは辛うじて躱すが俺を仕留める機会を逃してしまう。

 

「崇哉……」

 

「まったく、世話の焼ける奴だ。ホラ、早く行け。」

 

声の主は先を急かす。

 

相変わらずの皮肉っぷりだけど今はその声がこの上なく心強いぜ!

 

「ああ……!」

 

俺は再び走り出した。

 

全力で、脇目も振らずに突き進む。

 

出口まで来たところで俺は一度だけ立ち止まって振り返る。

 

これだけは今伝えないといけないと感じたからだ。

 

「木場!子猫ちゃん!帰ったら、俺のことイッセーって呼べよ!絶対だからな!俺達、仲間だからな!!」

 

その時、一瞬皆が笑ったような気がした。

 

俺は前を向き、上の階を目指す。

 

 

 

 

……アーシア、もうすぐだからな。

 

 

 

 

 

 

 

 




今更どうでもいいことなんですが、リアスとアーシアの容姿ってなんかクロノクルセイドのサテラとアズマリアに被る……

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