ハイスクールD×D ~Pagan Gods from the Old Testament~   作:カイバル峠

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断罪

断罪

 

 

 

「よくもまあやってくれたわね……」

 

レイナーレはその美貌を怒りと苛立ちに歪めていた。

 

その憎悪に染まった赤紫の瞳が捉えるのは三人の侵入者。

 

あと少し、もう少しで完璧に事が進むはずだった。

長年の雪辱を晴らす数少ない機会だった。

その為に前以て、危ない橋を渡ってまで準備してきた計画。

なのに今、たかが半世紀も生きていないような憎たらしい子供のエゴでそれが脆くも崩れ去ろうとしている。

 

アーシア・アルジェントを餌に兵藤一誠をおびき寄せ、始末する。

彼が悪魔として蘇ったことを知った時、“あの女”から指示された算段

今度失敗すれば本当に後がなくなる。

悪魔ばかりでなく同族からも追われる身となるのは間違いない。

今の計画を持ち掛けられた時、危険な賭けだが、自分達が組織の中の最下層から抜け出すための唯一の方法としてそれに縋るより他なかった。

それで上の欲求を満たせさえすれば不確定ではあるが彼女の地位が上がる可能性が生じる見込みがあった。

 

しかし彼女は知らなかった。

 

これが彼女らに破滅をもたらすことになることを……

 

 

 

「特にそこのあなた」

 

レイナーレから放たれる殺気が膨れ上がり、視線はより一層憎悪の色を増して崇哉に注がれる。

 

「そんなに情熱的な目で見つめられても困るね。」

 

一方の崇哉はまるで微塵も動揺した様子も見せず、ただ肩を竦めて苦笑するだけだった。

しかしそれがレイナーレの怒りに更なる火を付ける。

 

「そうね、さっきのガキと違ってあなた悪魔ではないし、それにかなり良い男だからとっても残念だわ。何でこんな下賤な悪魔なんかと一緒にいるのかは知らないけど私の計画をここまで台無しにしてくれたからには代償はきっちり払ってもらうわ。」

 

レイナーレは床に手をつき、何やら怪しげな魔法陣を展開し出す。

 

そして魔法陣は拡大し、やがて二つに分かれ、思わず目を覆うほどの眩い光が発せられた。

 

光の中から何か巨大なシルエットが浮かび上がる。

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「グオオオオオオオオオオッッ!!」」

 

 

 

 

 

 

大気を震わせる轟音の如き咆哮。

 

光が止み、やがて現れる巨大な異形。

罪人の如く全身に杭を打ち込まれたその姿は異形の中の異形、正しく怪異。

行く手を阻む様に現れた二体の禍々しい姿の異形はさながらこの頽廃した祭儀場の門番としてその飢えた瞳をぎらつかせる。

 

 

「はぐれ悪魔……やはり堕天使が絡んでいたのかッ……!」

 

金髪の騎士は苦虫を噛み潰したような顔で忌々し気に漏らす。

 

「アハハハハハ!!今更説明するまでもないけどソイツらは上級クラスよ?正直至高の存在であるこの私がこんな醜い低劣なケダモノの力に頼らなければならないなんて屈辱だけれどね。その分まであなたたちには償ってもらうわ。無論死という形でね。あなたたちが手も足も出ずに蹂躙されて苦しみ悶えて死んでいく様を見たいのは山々だけど私にはまだしないといけないことがあるから残念だけどここで失礼させてもらうわ。せいぜい悪魔同士で殺し合ってちょうだいな!じゃあね、悪魔の皆さん。永遠にさようなら!!」

 

レイナーレはそう言うが否や光の槍を投げつけ、槍は着弾と同時に爆発して土埃を舞い上げ、視界を塞ぐ。

 

そして土埃が晴れた後、そこにはもうレイナーレの姿はなかった。

 

「……逃がしてしまいましたね」

 

子猫も表情を険しくしながら呟いた。

 

「ハハハハ!形勢逆転だな、悪魔共め!!」

 

「大人しく我らに滅せられよ!!」

 

既に半数以上が戦闘不能に追い込まれているも、残っていた神父たちも切り札たるはぐれ悪魔の登場で士気を回復させ、光の刃を握り締める。

 

「参ったね……思いつく限りでも最悪の状況だ。」

 

呻く木場。

額に汗を浮かべながらも、自分達が生き残る術はこれしかないとばかりに剣を構える。

 

 

 

 

 

 

「グガアアアアアッ!!」

 

 

 

 

 

 

咆哮と共にはぐれ悪魔の内一体が大気を切り裂きながら突進を仕掛けてくる。

その巨体に似合わぬスピードは大砲を連想させる勢いだった。

 

「クッ」

 

三人は回避するが、その背後から凄まじい音と共に土煙が舞い上がる。

 

「ぐああああっ?!」

 

「ヒイィッ?!」

 

「痛い、痛いッ!!」

 

祭儀場に響き渡る悲鳴。

 

今のはぐれの突撃は一応味方であるはずの神父たちの一部をも巻き込み、ある者は四肢を飛ばされ、体に風穴を穿たれ、またある者は原型を留めぬ肉塊、或いは肉片へと変えられた。

おまけにクチャクチャという肉を咀嚼し、すり潰すような嫌な音が聞こえてくる。

おそらく神父たちの死体を喰らっているでろうことは容易に想像できた。

 

「……敵味方関係なく襲う、この上なく厄介なタイプですね。」

 

「まったくだよ。その上こんなのがもう一体いるなんて……本当に冗談だと思いたいよ。」

 

木場と子猫は今し方突進してきたはぐれ悪魔に注意を払いつつももう一体の方に視線を送る。

 

「?」

 

しかしここで二人は奇妙なことに気付く。

 

もう一体の方は顔を上げ、一向に攻撃して来る様子を見せない。

 

何か術式を仕込んでいる様子も見受けられない。

 

そして次の瞬間にははぐれ悪魔の足下に現れた時と同じ魔法陣が展開され、眩い光に包まれるとそのまま消えてしまった。

 

「?!どういうことだ?!」

 

「……逃げた?」

 

はぐれ悪魔が自らこの場を去るという予想外の展開に二人とも動揺を隠せず、怪訝な顔つきになる。

 

「もしや……そうなると非常にマズいな。」

 

しかしただ一人、有馬崇哉のみは違った反応を示すのだった。

 

「どうかしたのかい?」

 

「二人は先に上に行っていてくれ。俺はここを片付けてから行く。今なら行く手を阻む者は何もないからな。」

 

「……大丈夫なのかい?」

 

崇哉の返答に木場は困惑する。

¥確かに彼の力は先日のはぐれ悪魔の一件でも見たが自分達が手も足も出なかった相手を全くの無傷で屠った。

しかし今回は相手がはぐれ悪魔ばかりでなく、それより戦闘力はかなり下がるがまだ神父も残っている。

未だに彼の力が未知数なこともあって、彼なら大丈夫だと思う一歩出でどこか不安を拭えない部分もあるのもまた事実だ。

しかし彼が次に紡いだ一言はそんな木場の懸念を遥かに上回るものだった。

 

「奴が見ていた方向、覚えているか?」

 

「見ていた方向?……!まさか?!」

 

「そう、上だ。アレが地上に出たら事だからな。何より今上にはイッセー達がいるだろう?」

 

「「っ」」

 

二人は絶句する。

今上の階ではイッセーとアーシアがいる。

更にはレイナーレも今し方イッセー達を追って上階に向かって行ったのだ。

運が悪ければ、否、既に戦闘に鉢合わせて戦闘になっている可能性も否めない。

もしそこへ更に先程のはぐれが現れでもしたら……結果は火を見るよりも明らかだ。

 

「かといってコイツらをこのままにしておけば確実に邪魔をしてくる。それに、さっき言ったはずだぞ?はぐれのことも考慮して目的を果たしたら即時離脱だと。」

 

二人は思考を巡らせる。

確かに、はぐれがいることは最初から分かっていた。

そしてそれを前提にアーシア・アルジェントを救出したら即時撤退するという手筈になっていた。

そして木場は口を開く。

 

「……頼めるかい?」

 

それを聞くと崇哉は待っていたとばかりに笑みを浮かべる。

 

「無論だ。」

 

「ッ、分かった。僕たちは先に行かせてもらう。でも一つだけ約束してくれないかい?」

 

「約束?」

 

木場は一泊置く。

そして

 

「必ずキミも追いついてきてくれ」

 

木場の言葉を聞き、一瞬唖然とする崇哉。

しかし次の瞬間

 

「クスクス、ハハハハハッ!!」

 

崇哉は高らかに笑い出す。

余りに突然のことだったので、木場も子猫も面食らってしまう。

 

「ぼ、僕、そんなに可笑しなこと言ったかな?」

 

木場は苦笑しながらも尋ねる。

 

「いや、すまんな。まさかお前の口からそんな言葉を聞くことになるとは思わなかったからね。約束するよ。必ず追いつこう。」

 

 

 

 

「グゥオオオオオオオオッ!!」

 

 

 

 

「「!!」」

 

神父の肉を喰らっていたはぐれ悪魔が振り向き、咆哮を上げる。

 

「どうやらこれ以上ゆっくりしている時間が無いようだ。奴がこっちに来る前に早く行け。」

 

「ああ、それじゃあここは任せたよ!!」

 

「……死んだら承知しません。」

 

二人が地下祭儀場から出て行くのを見届けた崇哉は改めて祭儀場の奥、はぐれ悪魔と神父の方に向き直る。

 

 

 

「グルルルルル……」

 

 

 

「たった一人で我らを相手取るとは、なんと愚かな!!」

 

「貴様も悪魔共々滅してくれるわ!」

 

低く唸り、はぐれ悪魔は狙いを定める。

そして残っていた神父も光剣を構え直す。

 

「やれやれ。元とはいえ、やはりあの神の信者だな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く以て不愉快だ。」

 

 

 

 

 

 

「「!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祭儀場の空気は一変する。

 

変わってしまった。

 

その一瞬を境に。

 

空間そのものが軋み、震える。

 

頽廃した場が醸し出していた禍々しく背徳的な空気も、渦巻き澱んだ神父やはぐれ悪魔の殺気も全て飲み込んで尚余りある、文字通りに押し潰されるような重圧。

 

宙を舞う微細な粒子から、見るも恐ろしい風貌と巨体を誇る異形の悪魔に至るまで、生物・非生物、有機物・無機物も関係なく、今この祭儀場に存在するもの全てがただ一つの例外もなく空間そのものごと支配されるような感覚。

 

命あるものにはあたかも今、この祭儀場という空間は自分達の知る世界の有り方、少なくとも先程までとは明らかに違う“理”に支配されている、そんな錯覚さえ抱かせる。

 

神父の握る剣の光の刃さえも謎の振動現象を起こして不安定になり、やがて形を保てなくなって消失する。

 

それまで一度として感じたことのない程の“ナニか”に神父も、悪魔も、皆例外なく、全身から凄まじい量の冷や汗を流し、指の一本たりとも動かせないどころか呼吸一つ満足にできていなかった。

 

意識を手放すことが出来たならどれだけ楽だろう、皆が皆、そう思わずにはいられない。

 

しかしこの場に君臨する冷厳なる支配者はそれさえも許さない。

 

恐ろしい程の美貌は今や作られた仮面以上に表情を映しておらず、相対する者は更なる畏怖と恐怖を抱き、魂に至るまで完全なる隷属を強いられる。

 

神父も悪魔もただ一点、この重圧の主である一人の青年に括目し続ける他なかった。

 

五感の全て、第六感にまでひしひしと伝わる、余りにも巨大な存在感に神経が焼き切れる寸前で、もはや生物としての本能すらもが逃走ではなく隷属、或いは自死を選ばせるかもしれないほどに彼らは心身共に限界を迎えつつあった。

 

 

 

――――もはや自分達が生きて此処を出ることはない―――――

 

 

 

そのような極限状態の中でただ一つ、彼らが共通して抱く確信であった。

 

或いは敵としてこの場で相見えた時点で既に詰んでいたのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、そろそろ頃合いか……さっさと終わらせることにしよう。しかし消すのは簡単だが資源を無駄にするのはよろしくないな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

口を開く支配者。

 

その言葉は終わりが近いことを愚かな敵対者に悟らせるには十分であった。

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『砕け散れ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

下される裁き。

 

 

極光が爆ぜる。

 

 

場を満たすは神々しくも破壊の理を秘めた近付くこと叶わぬ光。

 

 

あらゆるモノが今のカタチを失い、全ての根源たる大元の姿へと還元され、愚かなる背徳の存在も己の死の瞬間を悟ることなくこの世から姿を消す。

 

 

やがて光は収束する。

 

 

地下祭儀場“だった”場所は跡形さえ残っていない。

 

背徳の輩は既に抹消され、かつてここに渦巻いていた頽廃と欲望の空気は吹き飛んだ。

 

 

 

 

そこに広がるは虫の一匹さえ立ち入らぬ滅びの世界だった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

ふう、これでとりあえず雑魚は片付いた。

 

神父もはぐれも、ついでに祭壇も纏めて原子レベルまで崩壊させておいたが……少々やり過ぎだったか?

 

用が済んだのでさっさとアイツらと合流しようかと思っていたが……どうもその前にもう一つ面倒事ができたらしい。

 

雑魚の掃討を終えるのとほぼ同時にこの祭儀場のすぐ近くに転移してくる気配を感じた。

 

「いつまでも隠れてないでそろそろ出てきたらどうだ?」

 

「やはり気付いていたのね。」

 

俺が振り向き声を掛けると不機嫌そうな声音の返答と同時に物陰から四人分の人影が出てきた。

堕天使と吸血鬼、それに悪魔が二人。

堕天使のオリヴィアと吸血鬼のアカーシャ……彼女もまた訳アリで俺達の所にいるが二人は俺の身内、そして残る悪魔二人は紅色の髪をしたグレモリーの次期当主、上級悪魔のリアス・グレモリーとその『女王』の姫島朱乃。

 

「お疲れ様です、主様。」

 

「ああ、お前達も良くやってくれた。」

 

アカーシャが俺に労いの言葉を掛けてくれる。

 

「イッセー達は?」

 

周囲を見渡して、先に教会に向かったはずの自身の下僕の姿が見えないことに気付いたグレモリーが尋ねてくる。

 

「先に上へ行かせたよ。ついでに堕天使がシスターを連れたイッセーを追いかけていったから木場と搭城も上に向かわせて俺が残って雑魚の始末を引き受けた。それより急いだ方が良い。例の堕天使が召喚したはぐれ悪魔の内一匹がどこか別の場所へ転移していったからな。」

 

「「ッ?!」」

 

『はぐれ』という言葉を聞いた途端グレモリーと姫島は動揺を露わにする。

俺はオリヴィアとアカーシャを連れて上階へ向うことにした。

 

その時

 

「待ちなさい。」

 

俺達の行く手にグレモリー達が立ち塞がる。

 

「……何の真似だ?」

 

俺はグレモリーを見遣る。

 

体からは不機嫌という言葉を具現化したようなオーラがユラユラと立ち上り、姫島も表面上は笑顔を取り繕っているが、明らかに目が笑っていない。

 

……まあ、理由は大体想像がつかなくはないが。

 

「それはこちらの台詞よ。あなた、今回の件について知っていたのよね?おまけにあの堕天使の彼女に加えてまだ戦力を秘匿していたなんて……あなたこそ一体どういうつもりかしら?」

 

横目でアカーシャを見つつ、如何にも不満たっぷりといった様子で応えた。

 

やっぱりね。

今回の件はあまりにも胡散臭かったからオリヴィア達に有事に備え付近で待機するよう言っておいたのは正解だったな。

グレモリーのことだから介入してきた彼女達に当然詰問したのだろう。

その場合も想定してある程度までは喋ってもいいと許可しておいたが当然その程度で納得するとは思っていない。

そこで事が済んだらグレモリー達とここへ飛んでくるよう言っておいたのだった。

 

「知らなかった、といえば嘘になるかな?だが俺達が知っているのは最近進んで揉め事を起こそうとしている連中がコソコソと何か企んでいるということくらいなものだ。大方あの二人にも聞いたのだろう?もう少し詳しく説明するなら件の堕天使連中、正確にはその上にいる奴らの、だが、狙いはこの地で問題、具体的に言えばいざこざを起こすことだ。だがそのためにはあのような下っ端を動かすだけでは末端の暴走で処理されてしまい期待するほどの効果は得られない。そこでより事を大きくするために体裁を整えることにした……ここまで言えばもう分かるだろう?」

 

あまり今必要以上の情報を与えてしまうのは得策ではない。

俺達としては今回の首謀者にはもう少し泳いでいてもらいたいからな。

ここで悪魔共に下手に動かれては少々都合が悪い。

 

……そいつの更に後ろにいるであろう輩の尻尾を掴むためにもね……

 

「ええ、そうね。先程あなたの下僕の二人から聞いたわ。総督の名を使ったのよね。」

 

……下僕?

 

まったく、これだから悪魔は……

 

「正直、彼女らとの関係性を悪魔のそれと一緒にされるのは気に食わんが……まあいい、その通りだ。因みに戦力を秘匿していたというが別にそのことでそちらが不利益を被ったわけでもあるまい。何より今まで開示する必要性もなかったものだからな。ああ、ついでに言えば魔王にも断りは入れてある。」

 

 

実際必要最低限のことはセラフォルー(アイツ)に伝えてある。

 

下手に隠して他の悪魔共に目を付けられること、特にサーゼクス・ルシファーとアジュカ・ベルゼブブと相見えることだけは避けたい。

 

最悪の場合連中には感付かれる恐れがあるからな。

 

自分達には開示する必要が無いと言われたのが余程気に食わなかったのか、グレモリーから滲み出るオーラに怒りの色が混ざり始める。

 

「あなたね……前にも言ったはずだけど忘れたのかしら?ここは私の管轄、よって私の許可なしに勝手な真似をすることは認めない、と。これ以上勝手なことをするようならこちらもそれ相応の対処をさせてもらうわよ?」

 

グレモリーのオーラがより攻撃的な色に変わり、殺気立つ。

 

ハァ……まだそうやって脅せば思い通りになると思ってるのかね?

 

「貴様……」

 

グレモリー達の敵対意思を確認したオリヴィアとアカーシャも一瞬構えようとしたが、俺は目で二人を制した。

 

あまり悠長に構えている時間は無い。

 

今のところ先程のはぐれの気配は感じられないが、いつまでもそうとは限らない。

 

それに木場と塔城がどうなったかも気になるところだからな。

 

本当はこんなことをしている時間さえ惜しいくらいだ。

 

「お前、今の状況が分かっているのか?」

 

「誰にものを言っているのかしら?私の下僕があの程度の堕天使如きに簡単にやられる筈ないでしょう。それ以上にあなたを放っておいたら後々厄介なことになりかねないもの。それにあなた、セラフォルー様にさえ話していないこともあるんでしょう?だったらそれも含めてここで洗いざらい吐いてもらうわ。勿論あなたたちの正体も含めてね。それでも嫌だというなら……少々痛い目見てもらうしかないわ。」

 

チッ……

 

正直ここまで面倒だとは思わなかった。

 

本当にグレモリー達には状況が分かっているのかと問い質したいところだが、それでは問題の先送りにしかなるまい。

 

……あまりこういう手は使いたくないがこの状況では止むを得ないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうぞ、ご勝手に。やりたければやればいい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「っ」」

 

さすがにこれは予想外だったのか、グレモリーも姫島も目を見開く。

 

「……正気かしら?」

 

「至って正気だよ。どうした?やらないのか?それとも……結局見栄張ってハッタリかましただけか?まあ、やったところで無駄なことには変わりないけどね。」

 

「……いいわ、そこまでいうのなら身を以て思い知らせてあげる!!」

 

とうとう堪忍袋の緒が切れたグレモリーは攻撃を宣言する。

 

やれやれ、こんな安い挑発に乗るようでは先が思いやられる。

 

それにしても、滅びで俺に挑もうなどとは実に滑稽だ。

 

正体を知らないからとはいえ舐められているようにしか思えない。

 

当たれば大抵のモノが消し飛ぶからと言って己のチカラを過信し過ぎだ。

 

対処する方法などいくらでもある。

 

そしてグレモリーから滅びの魔力が放たれる。

 

俺は瞑目する。

 

 

 

 

 

まったく……

 

 

あまりにも……

 

 

 

「滑稽だな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全てを滅する、禍々しき赤黒い魔力の塊が放たれる。

 

紅髪の悪魔は勝利を確信した。

 

全てを無に帰す自身の力は並ぶもののない力。

 

そして自身の髪色と共に“紅髪の滅殺姫” たる所以。

 

悪魔の中でも指折りの名家に生を受け、兄はその力で魔王にまで上り詰めた。

 

誇りだった。

 

自身の、魔王たる兄と同じ力こそが最強だと信じて疑わなかった。

 

しかしその幻想は脆くも崩れ去る。

 

 

 

「今、何かしたか?」

 

 

 

「そんな、なんで……」

 

リアス・グレモリーは動揺を隠せなかった。

 

自身が今まで誇って来た絶対なる滅びの力を受けてなお、目の前の相手は消滅はおろか、掠り傷、それどころか服の汚れ一つ見当たらないのだから。

 

否。

 

厳密には彼女が放った攻撃は消失していた―――――彼に触れることさえ叶わずに。

 

彼に届く寸前、滅びの魔力は突如として跡形もなく消滅したのだった。

 

「これで分かっただろう―――――その力は俺には通用しない。」

 

涼しい顔をして告げる崇哉をリアスはキッと睨みつける。

 

「ウソよ、あり得ないわ……あなた一体何をしたのよ?!」

 

彼女は激昂した。

屈辱だった。

相手は態々こちらに攻撃させるチャンスを与えてきた上にそれを受けてなお平然とした様子で無意味だと告げてきたのだ。

それは自身が誇ってきたモノを、ひいてはグレモリー家が培ってきたモノを否定されることにも等しい。

だからこそ目の前の認めるわけにはいかなかった。

 

「別に、俺は何もしていない。ただお前の力は俺には効かなかった、それだけの話だ。」

 

「ふざけないで!!そんな話を信じろとでも言うの?私がお母様より受け継いだ力は触れたもの全てを滅するのよ?!それが効かないなんて何もしてないわけがないでしょ!!」

 

しかし、なおも怒気を滲ませるリアスに対して崇哉は心底憐れむような視線を向けるだけだった。

 

「ほう?自らの常識を覆すような現実からは目を逸らしあまつさえ他者に対して激昂するとは何と愚かな。それでは事実を受け入れたくないと駄々をこねているのと何ら変わりない……まるで赤子だな。」

 

「ッ!!黙りなさ――」

 

怒りで完全に頭に血が上ったリアスが再び滅びの魔力を放とうとした時

 

「いい加減にしろよ?」

 

「「?!」」

 

突如として聞こえた、身が凍るほどに冷淡な声にリアスも朱乃も絶句する。

 

声がしたのは自分達のすぐ後ろ、崇哉は丁度二人の間をすり抜けたような立ち位置にいた。

 

「つくづく甘いな。二度目などあるわけがなかろう?一度目は甘んじて受け入れたがそれでもお前は仕留め損なった……俺が敵だったなら今の間に貴様らは最低でも200回は死んでいる。」

 

「「……」」

 

突き刺さるような視線を背に感じながら二人は歯噛みするより他なかった。

 

事実、彼女達には崇哉が動いたことすら認識できなかったのだから。

 

「では俺達は先に行かせてもらう。お前達も急いだ方がいいぞ?下僕のことが大切ならな……行こう、二人とも。」

 

「「御意」」

 

二人の従者を引き連れ、彼は祭儀場の出口へと足を進める。

 

しかし出口のすぐ前まで来ると徐に足を止めて振り返る。

 

「ああ、そうだ。ついでにもう一つ忠告しておいてやる。そうやって自他の力量差も測らずに威嚇行為はしない方が良い。相手が自分と同格かそれ以上ならみすみす手の内を晒す以外の何物でもないからな。」

 

「っ……!」

 

紅髪の悪魔は歯を噛みしめる力をより一層強くする。

 

それも比喩でなく、本当にギリッと奥歯が鳴るほどに。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、イッセーは因縁を断ち切れるかな?」

 

古の神は祭儀場を後にする。

 

まだ幼く、未熟な赤龍帝の雄姿を見届ける為に。

 

 




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