ハイスクールD×D ~Pagan Gods from the Old Testament~ 作:カイバル峠
気づけば最後の更新からはや二年半…
勢いに任せてリメイクしてみたものの第二章で主人公をどう絡ませるかで行き詰まり、そのまま放置に……
待っていてくださった方、長い間お待たせして本当に申し訳ありません!
久々の投稿なのでところどころおかしいところもあると思いますが、どうぞ生温かい目で見守っていただけると幸いですw
火種
燦々と降り注ぐ陽光の下、色とりどりの植物が天に向かって花を咲かせ、澄んだせせらぎが耳に心地よい。情景を形作るあらゆる要素が五感から入り込み、訪れる者総てを浮世のしがらみから解放する。
そんな延々と続く楽園の中、石造りのコテージの下に二人、設置されたテーブルを挟んで向かい合うように座っていた。
「いかがです?この紅茶は。茶葉はもちろん、土、水に至るまで全てこの園で育まれ、その後の加工も完璧な温度と湿度管理の下行われたものです。手前味噌ではありますが、これ以上のものは恐らくこの世界には存在しないでしょう。」
「確かに、この芳醇な香りと深みのある味わい。今までに口にした中でも最高のものだな。」
テーブルを囲むのは二人の青年。
一人は黒髪、もう一人は緋色の髪をしており、共に古代オリエント文明の壁画に描かれているような衣装を身に纏っていた。
緋色の髪の青年は手にしていたカップを置くと、黒髪の青年に向かって切り出した。
「そろそろ本題を聞こうか。茶会のためだけにわざわざ呼び出したわけでもあるまい。」
「おや、もう少しゆっくりしてもらっても良いのに…ですがまあ、あなたがそう仰るのならお言葉に甘えさせていただきましょう。実は近日中にとある催しを執り行うつもりでいましてね。その案内をしようとキミを呼んだのです。」
「催し?」
「ええ。とりあえずこちらを。口で説明するよりも、これを見ていただいた方がわかりやすいと思います。」
黒髪の青年がそういうと同時に球体が出現し、中にとある光景が映し出される。
まず映ったのは豪華な装飾の施された部屋で優雅にくつろぐ金髪の男女が二人。
二人は兄妹なのか、よく似ている。
そして映像が切り替わり、今度はどこかの山中で、ジャージ姿の高校生くらいの男女が6人。
何かの特訓と思しき活動に取り組んでおり、組手らしき場面では茶髪の少年が白髪の少女の拳を受けて盛大に木の幹とハグする様子が映っていた。
「これは……そういうことか。」
緋髪の青年はその映像を見た瞬間は神妙そうな顔をしたが、それ以上の反応を見せることは
「なるほどな、これが役者というわけか。実にお前たちらしい。それなりに面白そうな演目だ。」
「ふむ、意外ですね。」
「何がだ?」
黒髪の青年の言葉に、緋髪の青年は心底不思議そうな様子で答えた。
「キミは彼らと、特に赤龍帝とは親しい間柄だと聞いていたので、てっきり止めるものかと思っていたのですが……そうではないのですね。」
「ほう?そこまで突き止めていたとはさすがだな。この際だから誤解のないように言っておくが、俺はあの者たちと親しいわけではない。だが、『赤い龍』は別だ。奴自身の力は大したことはなくとも力を呼ぶその性質は健在。おまけにグレモリーの娘――悪魔と結びつくというある意味で最悪の組み合わせだ。近くで様子を見るに越したことはあるまい。それに――」
「奴らはこれから否応なしに困難に巻き込まれることになる。この程度の試練を乗り越えられないようでは到底先はない。」
「……おや、随分冷たいのですね。まあ、こちらとしてもあなた方に手を出されるのは望むところではありませんからね……」
「ならば心配は無用だ。わざわざ悪魔どもの揉め事に関わっていられるほど暇でもないのでな……当日は楽しみにしているよ。」
それだけを言い残して緋髪の青年は席を立ち、園から姿を消した。
「やれやれ……あそこまで気にしていない素振りを見せられるとは、むしろすがすがしいというかなんというか。」
黒髪の青年がため息を吐いたとき、ぼうっとした青白い人影がその場に現れる。
『ご苦労だったね、アメン。それで彼の返答は?』
「恐らく今回に関しては大丈夫でしょう。でも万が一、という場合も考えられますから、警戒するに越したことはないでしょう……ところで、仕込みの方はどうです?」
『順調だよ。これから最後の詰めに取り掛かるところでね。もうあと一息だ。』
「そうですか、それはよかったです。でも、正直今回のような役回りはもうしたくありませんねぇ。彼らを敵に回すのはあまりに厄介だ。」
『ククク、まあそういってくれるな、我が片割れよ。今回の結果いかんで今後の流れが大きく変わる。君たちが動いてくれて本当に助かっているよ。おかげで今回の仕掛け人となる彼らも順調に育ってきている。』
「確かに、彼らを相手取るならアナタが最も適任だ。さて、私はこれから次の計画の段取りに移ります。二人の様子についてもまた報告をお願いします。」
『了解した。健闘を祈るよ。』
話が終わると同時に人影は消滅する。
「ふう、これからもまた一段と忙しくなりそうですねぇ。せめてこれ以上私の気苦労を増やさないでくれることを願いますよ、有馬崇哉、いえ――バアル・ハダド君?」
◇◆ ◆◇
「予想通りの展開になりましたわね、お兄様。」
「ああ、奴らの反応があまりに予想通り過ぎて笑いを堪えるのに必死だったよ、レイヴェル。」
駒王学園での騒動の後、ライザー・フェニックスは眷属を下がらせ、実妹のレイヴェルと二人、冥界の自室にてティータイムを楽しんでいた。
「先方は相変わらずお兄様がリアス様との結婚を望んでいて、一方のリアス様はお兄様と結婚したくないどころか毛嫌いしている、といった認識ですものね。」
「そうだろうな。いや、寧ろそうあってもらわなくては困る。下手に気取られるようなことがあっては全てが台無しだ。そのために態々今日まで『素行不良で女漁りが趣味のボンボンな三男坊』を演じてきたのだからな……。とはいえ」
ライザーはカップの中身を飲み干す。冥界でも最高級の茶葉を使用した紅茶が喉を通るたびにその芳醇な香りが鼻腔をくすぐる。
そしてカップを置くと再び口を開いた。
「さすがに急かされて話し合いに行った先で件の赤龍帝にメンチ切られるとは思わなかったがな。話には聞いてたがまさか本当だったとはね。」
ライザーは自嘲気味に笑った。一方のレイヴェルも事の深刻さを察してか、真剣な面持ちを崩すことなくスッと目を細める。
「ええ。まだまだ未覚醒のようでしたが、内側より感じられた強大なドラゴンの気配。恐らく
問い掛けるレイヴェルは不敵な笑みを浮かべてみせる。
問い掛けられたライザーもフッと息を吐くと背もたれに深く腰掛けて瞑目する。
「どうするか、ね。だがそれは言うまでもないだろうな、勿論――――――――――――摘むよ。」
ライザーは氷のような瞳を見開いた。
そこには一切の感情は映っていない。
「あの男、赤龍帝は今はまだ全ての面において未熟だ。だが放っておけば近い将来飛躍的な成長を遂げるだろう。魔王の身内の眷属ということを差し引いてもゆくゆくは現政権の急先鋒を担うほどポジションにもなりえる。もしそうなれば……」
「……いずれ彼は我々の前に立ちはだかる、そういうことですわね?」
「ああそうだ。そしてそれは紛れもない、あのお方の計略に遅延を齎すということだ。正直ミラをけしかけた直後から胸騒ぎがやまなくてな、こんな気分になったのは
ライザーの語気が強まるにつれて室内の気温が上昇を始めた。
表情も険しくなり、握った拳も力が入り過ぎるあまりわなわなと震えている。
そしてごく微量ではあるが、ライザーの周囲を青い火の粉が舞い、目元にはある特徴的な紋様が浮かび上がる。
「グレモリーとの婚約なんぞ端からどうでも良かった、だが結果として危険因子を排除する機会に恵まれた。この機を逃すわけにh『まあ、少し落ち着きたまえよ』!!!」
突然割って入る第三者の声。
その声にライザーもレイヴェルも弾かれたように立ち上がる。
部屋の空気は一変して根源的な畏怖の念を掻き立てるようにどこか神聖で、それでいて悪魔である二人にとっても限りない幸福感を感じさせ、更には青い羽根―――――恐らく実体のないアストラル体であろう―――――が宙を舞う、そんな不思議な空気で満たされていた。
「あ、あぁ……貴方様は……」
ライザーは魂から歓喜にうち震えていた。
その姿は恰も崇拝する神を目の当たりにした敬虔な信者を思わせる。
見ればレイヴェルも彼と同様の反応を示していた。
二人の視線の先にいる者、それは―――――
『やぁ、久しぶりだね。我が翼と炎を受け継ぎし者達よ。二人共変わりないようで何よりだ。』
―――――黄金に輝く冠を戴いた青鷺の姿をした霊鳥だった。
◆◇ ◇◆
『フフフ、前回会った時よりも二人共霊格が高まっているようだね。非常に良い傾向だ。』
「はっ、お褒めに預かり光栄であります。」
青鷺の前にライザーとレイヴェルは共に跪いていた。
仮にも上級悪魔の子息子女である二人が突然現れた得体の知れない鳥に向って首を垂れるなど、事情を知らない者の目には非常に滑稽に映るだろう。
しかし当の本人達は嫌な顔一つしないどころか、相も変らず当然のように頭を下げ続ける。
その様子にはある種の崇拝、或いは陶酔感すら感じさせる。
そして青鷺もまた、決してただの鳥ではなかった。
放たれる神々しい輝きに相対する者全てを圧倒するがごとき神聖なオーラ。
神性でありながらも悪魔である二人が害されるどころかむしろ至福と歓喜に打ち震える様、この鳥は魔に属する者にも、自ら膝を折らせる。
『さて、先程は何やら随分と私に関することで荒れていたようだが……よければ聞かせてもらえるだろうか?』
「分かりました。では」
ライザーの目元に再び紋様が浮かび、その目を抉り出す。
そして―――
「どうぞ、御照覧ください。」
ライザーは抉り出した自身の眼球を握りつぶす。
潰された眼球は粉末となって辺り一帯に漂う。
部屋全体に充満した後、レイヴェルも、霊鳥も目を閉じる。
紅髪の令嬢
挑発する不死鳥
赤龍帝の青年
そしてこの先起こりうる未来
各々の脳裏につい先ほどの光景が浮かび上がる。
『……なるほど』
一通りのビジョンの展開が終了すると、霊鳥が目を開いた。
『それで赤龍帝の彼を、殺す必要ありと判断したわけか。』
「はい。」
『確かに、これまでにないタイプだ。実に興味深い。もしこれがこの先事実になるとしたら動きにくくなるだろうね。』
ライザーとレイヴェルが憂いと苦渋の混じる表情であるのに対し、当の青き霊鳥は欠片も気に掛ける様子が無い。二人は疑問に思いながらも、どこかでは納得もしていた。自分達は、目の前にいるこの自分達の真の主の姿ばかりでなく、力の一片たりとて目にしたことは無い。しかし初めて分霊の姿を以て自分達の前に降り立ったあの日、二人の人生は変わった。魂の底から畏敬、憧憬、尊崇と、あらゆる情念が湧き起こり、己の存在全てが包み込まれるようにして、それでいてより高みに昇ったことが感じ取れた。このような感覚は超越者と呼ばれ、先代魔王はおろか並の神さえも凌ぐと噂される現魔王と相対してもついぞ覚えることのなかったもの。その名を語られるよりも早く、二人は悟った。
この霊鳥こそ、自分達不死鳥の原点・始原の存在にして最も偉大な存在であると。
「いかがいたしましょうか?必要とあらば此度の戦いで事故に見せかけて処理することも可能ですが。」
ライザーの言葉に霊鳥は暫し考えるように沈黙する。
そして
『分かった。では彼のことは君達に任せることとしよう。だがいかに君たちがその“目”を開眼したとはいえまだ完全ではない。見たモノはあくまで可能性の一端だ。今ここで無理に始末しようとしなくてもいい。むしろ注意すべきは彼に力を与えうる要因の方だ。キミとリアス・グレモリーの婚約を掛けての一戦ということは当然魔王サーゼクスも観戦するのだろう?』
「はっ、恐らくは。」
『ならば尚更だ。キミ達にはまだまだやってもらわねばならないことがある。今不自然な動きをして魔王に感付かれる方が問題だということは分かるね?』
霊鳥の言葉にライザーは沈黙を以て答える。
だがどこにも不満そうな様子はない。
当然だった。
始祖たる不死鳥の眷属として覚醒したライザーらにとっては、自分達の主の意思は全てだ。
ゆえに目の前の霊鳥が必要なしと判断したのであればそれ以上口を挟む理由など彼らにはないのだった。
そしてそんなライザー達の様子に霊鳥は満足そうな様子を見せる。
『理解が早くて何よりだ。やはり君達を選んだことは間違いではなかったようだ……そうだ、確か例の試合は十日後だったかな?』
「左様でございます。」
『そうか、では私も遠くからにはなるが観戦させてもらおう。』
「「!!」」
その一言にライザーも、レイヴェルも息を呑む。
大いなる始祖が直々に見初めたとはいえ、取るに足らぬ悪魔の、それも私的な事案に興味を示すなど、二人からすれば理解の範疇を越えることだった。
困惑する二人に対して霊鳥は語り掛ける。
『おや、随分と不思議そうな顔をしているね。不服かな?』
「っ!いえ、断じてそのようなことはございません。ですがやはり、悪魔の遊戯など貴方様の御時間を頂戴するに値するとは思えないのですが……」
『そういうことであれば心配は要らない。私もキミの言っていた赤龍帝の彼が果たしてこの先本当に脅威になり得る存在か確かめたいからね……そして勿論君たちが如何なる活躍を見せてくれるのかにも大いに注目しているのだよ、ライザー、レイヴェル。』
「「っ」」
その言葉を耳にした瞬間、ライザーとレイヴェルは半ば反射的に胸に拳を当てて膝を着き、首を垂れるのであった。
「有り難き幸せッ!!このライザー・フェニックス、レイヴェル共々、必ずや貴方様の名に恥じぬ戦いを、いえ、勝利を捧げると誓約致します!」
『フフフ、それは頼もしい限りだ。期待しているよ……そろそろ時間だ。それではまた会おう、我が末裔たちよ。』
青き霊鳥は大きく翼を広げると、視界を白く塗り潰すほどの眩い光を発しながら青い炎に包まれる。
光が止んだ時、そこは先程と変わらぬフェニックス家の一室、そして膝を着くライザーとレイヴェルの二人の姿があるのみだった。
ライザーは徐に立ち上がる。
「レイヴェル」
「…はい。」
「10日後は勝つ。何があってもだ。」
ライザーは振り返ることなく告げたので、その表情を窺い知ることはできない。しかし後ろ姿からでもその気迫は伝わって来る。
きっと決意に満ち満ちた表情をしているのだろう。
「ええ。勿論ですわ、お兄様。」
レイヴェルもそんな兄の姿に微笑むのだった。
◇◆ ◆◇
決戦の時を翌々日に控えた日の晩。
神々しく輝く夜更けの月が照らす湖畔の別荘にて、若き悪魔の『兵士』は紅の主の思いを受け止め、彼もまた、己の胸中に渦巻く思いを吐露する。
そして、主の理想を叶えるには今の自分がいかに非力であるかを実感し、悔しさに涙を流すのであった。
「私が、あなたに自信をあげる。だから、今は休みなさい……」
「っ…はい……」
少年は、主たる少女の胸の中でさめざめと泣いた。
自らの無力を噛みしめ、主の夢の実現、そして彼女への想いを抱いて。
二人の姿に恥じ入るように、夜空の月はその姿を雲で隠す。
吹き抜ける夜更けの風は肌に心地よく、それでいて冷たくもあった。
「さあ、そろそろ戻りましょうか。」
「はいっ…!」
顔を上げた少年と、少女は見つめ合ってクスりと微笑む。
その瞳に宿る光は先ほどの弱弱しいものではなく、決意と覚悟を秘めていた。
それぞれの胸に思いを抱き、二人は歩みを始める。
ちょうどそのころ、雲間から再び月が顔を出す。
どこまでも深く、鮮やかで、しかしながらどこか本能的な危機感を呼び起こすような色合いに染まっていた―――彼らの