ハイスクールD×D ~Pagan Gods from the Old Testament~   作:カイバル峠

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前回から2週間ぶりの投稿となりました。
書いてて思ったけれど、今回も正直賛否が分かれそうな展開です。。。


戦火の果てに

戦火の果てに

 

 

 

 

「―――ここは、どこだ?」

 

目を開くと、まず視界に入るのは見たことのない天井だった。

でも何でだろう?

俺はどうしてこんなところで仰向けになって寝ていたんだ?

確か俺は皆と部長の婚約を賭けたゲームに出て――――

 

「そうだ!!ゲームは……いッつッ!!」

 

身体を起こそうとしたとき、全身を激痛が襲う。

 

「なんだよ…これ……?!」

 

俺はそこで初めて、自分の身体の状態を悟った。

身体、両手足、そして顔。

全身が見える範囲だけでも包帯に包まれ、左手には何枚もの呪符と魔法陣が付与された枷と何本ものチューブが取り付けられ、それが周囲に並ぶ計器類に接続されている。

そして広々とした空間の中、鏡面のように磨かれた床には紫色に光る巨大な魔法陣が敷かれ、俺はその中心に置かれたベッドの上に寝かせられていたのだった。

 

「お目覚めになりましたか。」

「!グレイフィアさんッ?!」

 

見覚えのあるメイド服姿の女性、グレイフィアさんがこちらに歩いてくるのが見えた。

 

「グレイフィアさん、教えてください!ゲームは、ゲームはどうなったんです?!部長は勝てたんですか?!!」

「落ち着いてください。一度に複数の質問をされても答えかねます。ですがその前に一つ、こちらからも確認させていただきます……本当に、何も覚えていらっしゃらないのですか?」

 

「……え?」

 

俺は聞かれていることの意味が分からなかった。

俺に何を聞こうとしてるんだ?

むしろ何も知らないのは俺の方なのに。

だがそれでも、グレイフィアさんは俺から何かを探り出そうとするように、まじまじと視線を投げかけてくる。

 

「では、質問を変えましょう。あなたはご自身の意識がなくなる直前のことを覚えていますか?」

「!」

 

……意識がなくなる直前…そうだ……

 

俺は、俺はあの時……

 

脳内で≪≪あのビジョン≫≫がフラッシュバックする。

 

全身を悪寒が走り、体中の汗腺からは冷や汗が噴き出し、動悸も激しくなり、しまいには手足が震え出す。

 

「あ…ああ……」

 

その時だった。

部屋の照明が突然赤色に変わり、警報音が鳴る。

 

『患者の容体変化を確認。極度のパニック症状と断定、鎮静剤を注射します。』

 

周りに置かれた計器から電子音声が告げられ、プシュッという音と共に身体から力が抜ける。

 

「まだ、時期尚早でしたか……。」

 

俺は周囲に警報音が鳴り渡っているにも関わらず、意識はまどろみの中にゆっくりと沈んでいく。

最後に目にしたのは、険しくも、とこか悲しげな様子でこちらを見るグレイフィアさんの顔だった。

 

 

 

 

◇◆    ◆◇

 

 

 

 

「っ……」

 

再び目が覚める。

 

目に飛び込んできたのはまた同じ天井だった。

 

一体どれだけの時間眠っていたんだろうか……

 

 

「気が付いたようだね。」

 

「!」

 

声がした方向を見ると、緑色の髪をオールバックにした、どこか妖艶な雰囲気を纏う男性がこちらを見ており、隣にはさっきもいたグレイフィアさんが控えていた。

 

「……あなたは?」

「一誠様、こちらは現四大魔王がお一人にして、冥界の最高技術顧問でもあらせられる、アジュカ・ベルゼブブ様です。」

「なッ?!魔王様?!!……ぐっ」

 

驚きのあまり、反射的に身を起こそうとして再び痛みに襲われる。

 

「落ち着いてくれ。今の君はかなりの重体なんだ。それもこうしてはっきり意識が戻ったことが不思議なほどにね。」

 

俺は魔王様に言われたとおりに、再びベッドに身を横たえた。

 

「それと、さきほどはすまなかったね。グレイフィアに試すようなことを訊かせたのは俺だ。」

「そう…なんですか」

「それから君が気になっているゲームの勝敗についてだが……勝ったのはライザーだ。」

「……!」

 

嘘、だろ……?

 

それじゃあ、部長はあいつと…ライザーと……!

 

 

「だが同時に、今回の一件でリアス・グレモリーとの婚約が進むかどうかも不透明になった。」

「!!」

 

 

告げられた一言はあまりにも意外なモノだった。

 

「どういうことですか?!あのゲームが最終手段だって……あのゲームに勝てないと部長は自由になれないって…!だから、俺たちは……ッ!!」

「ああ。確かに、ゲームが何事もなく進んで決着がついたのであればそうなっていた。」

「?」

「口で説明するよりも実際に見てもらった方が早いだろう……ああ、そうだ。今から見せるものはもしかすると君の気分を著しく害するかもしれない。その時は遠慮なく言ってくれ。」

「…わかりました。」

「よろしい。グレイフィア、頼む。」

「承知いたしました。」

 

魔王様の言葉でグレイフィアさんが小型の魔法陣を展開するとスクリーンが現れ、そこに先日のゲームと思しき映像が映っていた。

映像はちょうど俺が火柱の中に突入したところから再生される。

火球の中に閉じ込められた部長とアーシアを助けようとしたところ、背後から忍び寄るライザーが俺の頭を掴み、持ち上げた。

ここまでは俺も記憶に残っている。

そして数秒の後、映像の中の俺は何かにうなされるように苦しみだした。

 

『うぐぐぐ…』

 

それからさらに数秒後、俺の左手から赤い靄のようなものが漂い始め、次の瞬間、莫大な質量のオーラとなって四方八方へ噴き出した。

 

『イッセー?!!』

『ぐっ、まだこんな力を秘めていたのか……ククククッ、だが面白い!!ただの未熟なガキだとばかり思っていたが、確かにこいつは『赤龍帝』だってことか!!』

 

噴き出したオーラで俺を掴んでいた片腕を消し飛ばされた焼き鳥は飛びのく。

しかし失われた片腕もすぐに再生を始めており、恐れるどころかかえって獰猛な笑みを深める。

 

『……!…や、やめ……やややややめ……やめめめめ…やめ…ややめめめ……』

 

放り出された俺の身体は宙に浮かび、白目を剥いたままうわごとの様に言葉にならない何かを叫び続けている。

オーラの噴出はなおも続き、そのうちに体が限界を迎えたらしく、至る所から鮮血が噴き出し始めた。

 

『イッセー!!しっかりして!!ライザー!あなたイッセーに何をしたの?!!』

『なぁに、少し夢を見せてやっただけさ!ここまで寝相が悪いとは予想外だったがな!……む?』

 

俺の左腕が一度大きく脈動すると、籠手の内側から肉が盛り上がり、肥大して異形のそれへと瞬く間に変貌していく。そうして出来上がったのはまさしくドラゴンの腕。だがそれは異常なほど長く、赤い鱗の間から棘や翼、籠手に嵌っていた宝玉などが生えたひどく歪で不気味なものだった。

そしてそれらの宝玉が強く輝くとオーラの噴出量はさらに増え、やがてフィールドの結界までもが悲鳴を上げ、疑似的に作られた空にはミシミシと音を立てて亀裂が走る。

 

『なにっ?!この力は……フ、フハハハハ!すごい!すごいぞ!これは最上級悪魔、いや、もう少しで魔王クラスだ!!まさか、奴の力がここまで跳ね上がるとは思いもしなかっ……ごふッ?!!』

 

ライザーは俺の姿を見て狂喜していた。

だがその時、異形と化した俺の左腕が意思を持ったように動き、目にもとまらぬ速さで伸びる。そして興奮気味のライザーを鋭利な爪で鷲掴みにすると、そのまま地面に叩きつける。

それも何度も、何度も。

普通の相手なら今のでミンチになっていてもおかしくない。

だが奴は不死鳥だ。さすがというべきか、無数の火の粉が集まってすぐに奴は再生を果たした。

 

『化け物め……腕だけになってもなお俺をつけ狙うか。』

 

奴は忌々し気な瞳で意識のない俺を睨み付ける。

炎と赤いオーラの嵐の中で、宙に浮かんで微動だにしない俺の周囲を漂うように、異形と化した左腕が宝玉を輝かせながら不気味にうねっていた。

 

『いいだろう……貴様が力に身を呑まれてでも俺を排除しようというのなら、俺も絶対の力を以て貴様を葬ってくれよう……』

 

ライザーは瞑目する。

 

『ライザー?!あなた、一体何をするつもりなの……?!』

 

部長が戦慄した表情でライザーに問いかけるが、奴は一切答えない。

そして何か呪文のようなものを唱え始めるが、それが何を意味しているのか、悪魔の言語変換能力を以てしても理解することはできない。だが、ひどく重々しく、耳にした瞬間からずっと、悪魔としての本能が強い警鐘を鳴らしていることだけは分かった。

奴の身体から黄金のオーラが現れ、全身を覆うと、奴は瞬く間に黄金の炎に包まれる。

そして炎に包まれた奴の姿かたちはゆっくりと、人の形から別の姿へと変わっていく。

 

「そんな、これじゃまるで……」

 

映像を見ていた俺は思わず声を漏らしてしまった。

 

そう。

 

奴の姿は、黄金の炎を迸らせる、不死鳥そのものだった。

 

 

《……貴様ごときにコレを使うことになるとは、全く以て遺憾だ。だが、これで貴様の死は決定的なものとなった……受けるがよい。》

 

 

火の鳥となったライザーはそのまま天高く飛び上がると、溢れ出る黄金の炎は一層激しく燃え上がる。

そして俺を目がけて彗星のごとく落下を始める。

 

当然、俺――の左腕も大人しくしているはずもなく、今まで無秩序に放っていたオーラのビームを全て上空のライザーに向ける。

しかし隕石のような凄まじい速度で地表目がけて落下するライザーの前には全くといっていいほど効かず、弾かれるか、あるいは放たれる光の束を斬り裂きながら進む。

 

 

《無駄だ!!その程度の攻撃、今の俺には一切通じん!!不死鳥の怒りを受けて消え去るがいいッ!!―――――『ゴッドフェニックス』!!!!!》

 

 

火の鳥は異形の左腕を触れた先からバラバラに砕き、消し飛ばす。

 

それでも奴はなおも進む。

 

そして遂に、奴が地表に達した。

 

その瞬間、眩い閃光が画面全てを白に染め、全ての音を消し去る。

 

遅れてきた轟音、そして衝撃波が伝わり、その直後、映像は途切れ、画面は砂嵐へと変わった。

 

 

 

 

「……これが、事の顛末だよ。」

 

沈黙を破ったのは魔王様の一言だった。

俺は、自分が意識を失っている間に起きた出来事の、予想以上の大きさにただただ唖然としていた。

魔王様はさらに続ける。

 

「ちなみにだが、この映像の段階では名目上まだ勝敗は確定していなかった。だが両眷属の≪≪『王』の状態」≫≫を比較したことでライザーの勝利が確定した。」

 

……!

 

そうだ、確かめなければならないことがあるじゃないか…!

 

俺は食い入るように魔王様に問いかけた

 

「それで、部長は、リアス・グレモリー様は今どうしているんですか?!」

 

俺がそう言うと、ベルゼブブ様とグレイフィアさんは一瞬顔を見合わせる。

そこでグレイフィアさんが何事かに合点したように頷くと、二人とも俺の方に向き直る。

 

「それについては私から。お嬢様は現在、グレモリー家の本邸にてご療養中です。幸いお身体の方は無傷でしたが、一方で精神に大きな傷を負うことになってしまいましたから…。」

「っ……そんなに、酷いんですか?」

「はい、それはもう酷いものでした……」

 

それからグレイフィアさんは、ゲームが終わってからの部長の様子をポツポツと話してくれた。

あれ以来、部長はずっと部屋に閉じこもりっきりで食事もろくに摂らない状態が三日三晩続いたという。その間、朱乃さんたち先に復活した眷属の皆が付き添って周りの世話をしていたが、時々なにかに怯えたり、うなされるようにパニックに陥ったりして困難を極めたらしい。だがついさっき、俺の意識が戻ったことを伝えると、それまでの心労が一気に噴き出したのか、安堵したような表情で眠りについたという。今は落ち着いているそうだ。

 

「それから時折、こんなことも漏らすのです、『イッセーに会いたい』と。」

「!!それなら「ですが」……?」

 

グレイフィアさんはそこで一旦言葉を区切ると、俺の目を射抜くような視線で見据えながら、はっきりと告げた。

 

「今お二人を面会させることは認められません。」

 

なっ?!

 

俺は一瞬、冷や水を浴びせられたように思考が停止した。

俺がなぜ、と問う前に、ベルゼブブ様が付け加えるように続けた。

 

「実は、君自身の今後の処遇について伝えておかなければならないことがある――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――上層部が今回の件で君を最重要監視対象に認定。それに伴い、無期限の拘留処分に付されることになったんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆    ◆◇

 

 

 

 

 

「それで、話とはなんだ?」

「はい。ですがその前に、まずお話しておくことがあります…先日のゲームでリアスが負けました。その際にちょっとしたトラブルがあって、リアスがしばらくの間人間界を離れることになったのです。」

「……噂以上に重症なようだな。」

「っ?!知っていたのですか…?」

 

ソーナ・シトリーは目に見えて驚愕した。

当然と言えば当然だ。魔王の妹であるリアス・グレモリーがそのような状態になっていると知れれば現政権にとっては大きなスキャンダルとなる。恐らく冥界では相応の規制がなされているはずだ。それが既に外部に漏れているとなれば、それは由々しき事態である。

 

「裏の界隈ではもうそれなりに有名になってるわよ。『グレモリー家次期当主は婚約ゲームに負けたショックで塞ぎ込んでる』って。どこの誰が言い出したかまでは知らないけどね。」

 

アスタルテが付け加えるように言う。

どれだけ規制を敷いたところで、やはり人の口に戸は立てられぬということか、詳細はともかくとして、裏の世界では既に広まっているのだ。

ソーナ・シトリーはその事実に一瞬苦々しい顔をするが、一度コホンと咳払いをするとすぐに切り替えたようだ。

 

「そうですか…でも、知っているのなら話が早いです。今日来ていただいた理由はほかでもありません、あなた方にお願いがあるのです。」

「聞こうか。」

「ありがとうございます。実は……あなた方のお力を貸していただきたいのです。」

「……どういうことだ?」

「現在リアスの眷属の皆さんは彼女に付き添って冥界にいるのですが、近日中に帰還する予定です。しかし、その際リアス当人とアルジェントさん、そして兵藤君の3人は引き続き冥界に留め置かれることになりました。そうなったことで一つ問題があります。」

「この町の管理のことかな?」

「はい。」

 

彼女は頷く。

 

「ご存じのように、学園は私たちが、そして治安維持などそれ以外のこの町のこと全般はリアスたちが担当してきました。けれどもリアスや赤龍帝である兵藤君が不在となれば単純に人手が足りなくなるだけでなく戦力としても大きな低下を余儀なくされます。」

 

そして彼女はこうも続けた。

 

「無論、できる限り自分たちで対処するつもりですし、極力あなた方のお手を煩わせはしないように努力いたします。必要とあれば相応の対価もお支払いいたします。私たちだけではどうにも手に負えない事態が起きた時だけで構いません。だからどうか、この町のためにも、私たちにお力を貸してくださいっ」

 

「ちなみにだけど、グレモリーたちがいない今、この町は誰の管轄になるの?」

 

アナトが問う。

確かにそれは重要な問題だ。

連中の中でこの町の管理者とやらに誰が位置付けられるかでこちらの出方も変わってくる。

あくまで今の段階では、という但し書きがつくが。

 

「それについては一時的に私が総責任者として引き継ぐことになっています。名目上は、ですが。リアスの眷属は『女王』の姫島さんがまとめるとは思いますが、それでもあちらは3名。私たち生徒会と共同で事に当たるのが現実的でしょう。」

「なるほど、つまりはこれから先総ての責任は君が負うという解釈でいいわけだな?」

「はい、その通りです。」

 

その瞳に宿るのは明確な意思。

だがそれは自身の名声や利益よりも、与えられた義務を果たすことにあり、そしてそのためにはあらゆる手段をとるという覚悟の表れだ。

であるからこそ、名門シトリー家の次期当主という肩書を持ちながらも素性の知れぬ者にこうして首を垂れることも厭わぬのであろう。

 

「…いいだろう、その依頼、引受けよう。そちらの身柄の安全は契約の重要案件だからな。」

「本当ですか?!」

「ただし、条件がある。」

「?」

 

「何度も言っていることだが、俺たちは政治的に悪魔に利する行為や私的な紛争には一切関与しない、これは変わらない。もっとも、街の住人として介入させてもらうことにはなるかもしれんがな……恐らく両成敗となるからそのつもりで。」

 

これだけは譲れない。

そもそも俺たち本来の立場を考えれば今でさえ十分にあり得ないことなのだ。

先のグレモリーとの接触や堕天使の一件も正直相当グレーだ。しかし一般人としての兵藤一誠やアーシア・アルジェントの殺害はこの世界の、人の世界の領分を冒す行いに他ならない。

だからこそ、介入を決めた。

 

「!はいっ、ありがとうございます!!」

 

そう言って、ソーナ・シトリーとその眷属たちは皆頭を下げた。

 

だがこの時、図らずもこの地に大いなる災厄を齎す悪意の手が、静かに、だが確実に迫りつつあったのだ。

 




はい、ライザーでとことんやらかしました。
どう考えてもオーバーキルだし不相応だし。。。
何より、悪魔なのに”ゴッド”って単語使うのはいかがなものか、とは思いましたがこの際開き直って使わせていただきました。
そのことに反省も後悔もしていないッ!(え

というわけで、かなりあっさりとした展開になてしまいましたが、フェニックス編はこれにて終了です。
次回から3巻突入、ようやく本格的に主人公たちを動かせます!

それでは!




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