ハイスクールD×D ~Pagan Gods from the Old Testament~   作:カイバル峠

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長らくお待たせしました。

話の展開上途中で切るわけにもいかず、ダラダラと書き続けてしまいました(;´Д`A

今回はもう嫌になるほど長いです。

それではどうぞ。


紅の悪魔、白銀の女神

紅の悪魔、白銀の女神

 

 

「やあ、どうも。」

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁ!木場君よ!!」

 

「ホントだ!こっち向いて~!!」

 

放課後、サラサラの金髪に爽やかな笑みを浮かべた男子生徒が教室にやって来た。

イケメン王子こと木場祐斗だ。

 

そして女子の人気を二分する、駒王学園二大イケメンの片割れにして俺達全男子生徒の敵だ!……因みにもう一人は崇哉なんだがアイツはもう色んな意味で次元が違うと見做されているから実質敵意はコイツに集中している。

 

コイツがやって来たお蔭でクラスの女子共が黄色い歓声を上げていてウザったいことこの上ない。

 

ん?嫉妬だって?

 

ああそうだよ、悪いかよ?!

 

木場祐斗(イケメン)がいなけりゃ俺は今頃キャッキャッウフフの薔薇色スクールライフを送っていた筈なのにッッ!!

 

世の中全部イケメンが悪いんだ!!

 

クソッ、爆発してしまえ!!

 

そんな風に俺が心の中で嫉妬と羨望と劣等感が入り混じった毒を吐いていると

 

「兵藤一誠君と有馬崇哉君はいるかな?」

 

木場の野郎がそう言った瞬間、周囲の視線が一斉に俺の方に向く。

 

その大半が信じられないものを見るような目か、もしくは虫けらを見るような目だった。

 

チッ!

 

どうやらイケメンという人種はとことん俺達モテない組を弄ぶことが好きらしい。

 

木場(コイツ)が俺の視界に入っているだけでも腹立たしいって言うのに!

 

そんな俺の心中も知らずに野郎は俺の席までやって来る。

 

「あー、何だよ?」

 

出来る限り不機嫌そうな様子で返答する俺だが奴は爽やかな笑みを崩すことなく続ける。

 

「リアス・グレモリー先輩の使いで来たんだ。」

 

―――っ

 

そうか、コイツが昨日先輩が言ってた使いか。

 

「……OK、OK。それで、俺はどうしたらいい?」

 

「僕に着いてきて欲しい。それと――――」

 

そこまで言うと木場は俺から視線を移す。

 

 

 

 

「有馬崇哉君、キミもいいかな?」

 

 

 

 

木場が視線を向けた先、そこにいたのは崇哉だった。

 

「……2秒で済むならな。さもなくば断固拒否だ。」

 

「に、2秒って……」

 

苦笑いする木場。

 

おおっ、でもイケメンが困っている姿を見るのは中々面白いな。

流石は崇哉だ。

そのブレなさは最早尊敬に値するぜ!

 

「冗談だ。行くならさっさとしてくれ。俺は早く帰りたいんでね。」

 

それだけ言うと崇哉は席を立つ。

 

「え、あ、ちょっと?!」

 

狼狽する木場をよそに、崇哉は教室を出て行こうとする。

完全にアイツのペースだ。

 

追いかけるようにして出て行く木場の後に続いて俺も教室を出る。

するとその時だった。

 

「いやあああああ!!」

 

「木場君と兵藤が一緒に歩くなんて?!」

 

「有馬君となら分かるけど何でよりにもよってエロ兵藤と?!」

 

「木場君が兵藤に穢されてしまうわ!!」

 

「それを言うなら有馬君もよ!!」

 

「木場君×兵藤なんてカップリング絶対に許せない!!」

 

「ううん、もしかしたら木場君×有馬君×兵藤かも!!」

 

「ああ、神よ!何故あなたはこのような残酷な仕打ちをなさるのですか?」

 

「「「「「「「「どうか兵藤(ヘンタイ)に神の裁きを!!」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウゼエェェェェェェェェ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意味分かんねぇ事ばっか好き放題言いやがって、畜生ッッ!!

 

特に何なんだよ最後のは?!

 

そんなに俺が生きてちゃ悪いのか!!

 

やっぱりイケメンなんて嫌いだ!!

 

 

 

俺は泣く泣く二人の後を追ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木場に連れられて俺と崇哉がやって来たのは校舎の裏手にある木々に囲まれた木造の古い建物。

俗に旧校舎と呼ばれる建物だった。

現在は使われていないはずなのだがガラス窓が割れているようなこともなく、手入れが行き届いている感があった。

中に入ると廊下にも塵一つ落ちておらず、当然蜘蛛の巣や積もった埃すらなかった。

そして階段を上がり、二階の最奥まで歩を進めたところで木場が立ち止まる。

 

「ここに部長がいるんだよ。」

 

部長?

先輩のことか?

すると何かの部活に入っているということになのか?

ふと見上げるとそこには『オカルト研究部』のプレートが。

 

「部長、連れてきました。」

 

木場が中に向かって確認を取ると

 

「ええ、入って頂戴。」

 

という返事が返って来た。

 

 

 

 

「……何だこの部屋?」

 

中に入ると床、壁、天井に至るまで部屋一面に見たことない文字や魔法陣らしきものが描かれていた。

 

何か最大級の不気味さと妖しさを感じるぜ。

それから高級そうなデスクにソファーが数台……?!

 

あ、あの子は……

 

「ん?ああ、彼女は一年の搭城子猫さんだよ。」

 

俺の視線に気づいた木場が答える。

するとソファーの上で羊羹を食べていた子がこちらを向く。

 

な、なんと。

 

小柄な体型、無敵のロリフェイス。

一部の男子のみならず女子からの人気も高い我が校のマスコットキャラ的な存在である塔城子猫ちゃんではないか!!

昨日も見たけどやっぱり超が付くほどの無表情だな、この子。

 

「既に知ってるかもしれないけれど、こちら2年生の兵藤一誠君と有馬崇哉君。」

 

木場が俺達二人を紹介すると、子猫ちゃんもペコリと頭を下げる。

 

「あ、これはどうも。」

 

「……よろしく。」

 

俺も頭を下げ、崇哉も軽く会釈する。

 

するとその時、部屋の奥からシャワーのような水音が。

 

ん?

 

シャワー?部室に?

 

思わず音のする方に目を向けるとそこにはシャワーカーテンに映る陰影、それも女性のものだった。

 

「部長、これを。」

 

奥から先輩とはまた違う人の声が。

 

「ありがとう、朱乃。」

 

続いてカーテンの向こうから聞こえてくる先輩の声。

それと同時に衣擦れ音が聞こえてくる。

 

おおっ、なんと!

この向こうでは先輩が着替えていらっしゃるのかッ!!

 

その光景を想像すると思わずにやけてしまう。

 

「……嫌らしい顔」

 

「ああ、全くだ。」

 

ボソリと呟く子猫ちゃんとそれに呆れ顔で同意する崇哉。

 

ぐぅっ……二人の辛辣な言葉が心に突き刺さるぜ。

 

そしてシャワーカーテンが開くと同時に制服に着替えた先輩が出てきた。

 

「ゴメンなさい、昨日イッセーのお家にお泊りしてシャワーを浴びていなかったものだから今汗を流していたの。」

 

ああ、なるほど……

 

それから先輩の隣にいた黒髪の人物に視線が移る。

 

おおっ?!

そこにいるは姫島朱乃先輩ではないかッ!!

リアス先輩と共に『二大お姉様』と呼称されるお方で和風な佇まいと常に絶えることのない笑顔は正に大和撫子!!

この人とも昨日会ったけど、間近で見れるってやっぱりいいな~!!

 

「あらあら、昨日振りですわね。では改めて自己紹介させて頂きます。私、三年の姫島朱乃と申します。オカルト研究部の副部長も務めておりますわ。以後お見知りおきを。」

 

思わず聞き惚れてしまいそうな声音。

 

「こ、これはどうも。兵藤一誠です。こ、こちらこそ初めまして!」

 

緊張のあまりぎこちない挨拶になってしまった。

 

「これはどうも御丁寧に。まぁ、今更言うまでもないかとは思いますが二年の有馬崇哉です。どうぞ宜しく、先輩。」

 

「オイ!流石に姫島先輩に対してそれはないだろ?!」

 

柔和な笑みを浮かべつつも、明らかに芝居がかった調子で皮肉を交えた挨拶を返す崇哉に思わず俺は声を上げる。

コイツつい昨日そんな風にやり取りした所為で先輩達怒らせたの覚えてないのかよ?!

 

「あらあら、余り良い心象は抱かれていないようですわね」

 

「心当たりが無いと仰るのならご自身の胸にお聞きしては?」

 

どこか思わせぶりな素振りを見せる先輩に対して先程のわざとらしい笑みを崩さず答える崇哉。

でも何だろう?

二人ともどこか目に妖しい光が浮かんでいるような……

お蔭で視線をぶつけ合う二人の間には異様な空気……何かこう、本能的に足を踏み入れてはいけないと感じるような領域が形成されていた……。

 

そのせいで俺は崇哉に対して先に挑発したのお前だろ、と思っても口には出せなかったワケだが……。

 

そんな俺達の様子を見ながらリアス先輩は一言「うん」と呟く。

 

「さて、これで揃ったわね。私達オカルト研究部はあなたたちを歓迎するわ―――――悪魔としてね」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「粗茶です」

 

「あ、どうも。」

 

「お構いなく。」

 

ソファーに座る俺達にお茶が出される。

 

うん、流石に毒を盛るような真似はしていないようだな。

 

「美味いです。」

 

「結構なお手前で。」

 

「あらあら、ありがとうございます。」

 

笑みを浮かべる姫島朱乃。

 

姫島に座るよう促すとグレモリーが切り出す。

 

「単刀直入に言うわ。私達は悪魔なの。」

 

それはまた随分と単刀直入だな。

 

 

 

それからイッセーはグレモリーから裏の事情について色々と説明を受けており、初めは信じられないという様子を見せていたが、『天野夕麻』の名を聞いた途端場の空気が凍る。

冗談ならここで終えてくれ、そう漏らした時のイッセーの声には明らかに怒気が込められていた。

 

まあ無理もないな。

 

誰に聞いても返って来る反応は覚えてないという答えか、さもなくば夢だと一笑に付されるかのいずれかだったのだから……

 

「そういえばあなたも当然覚えているわよね?なんてったってより上位の堕天使を従えてるくらいなのだから。」

 

不意にグレモリーがこちらに話を振る。

 

するとイッセーがゆっくりとこちらを振り向く。

 

……なるほど、この女、イッセーの怒りの矛先をこっちに向けようって魂胆か。

 

昨日のことと言い……まったく、大した主様だ。

 

その証拠に奴の目がしてやったりと物語っている。

 

「……なあ、崇哉、お前、あの時覚えてないって言ってたよな?」

 

絞り出すような声。

 

「ああ、言った。」

 

俺の返答を聞くと

 

「あれは嘘だったのか?」

 

「……嘘か真で答えるのなら……嘘だ。」

 

「ッ!!」

 

ガタッ

 

「崇哉ッ、テメェ!!」

 

イッセーが俺に掴み掛って来る。

 

「落ち着け」

 

「これが落ち着いてられるかよ?!」

 

「では聞くが、お前、いきなり悪魔だとか堕天使だとかって言われたら……信じられるのか?」

 

「っ?!」

 

「ついこの前まで普通の人間として生きてた奴がいきなり悪魔になりました、とか言われても当然信じられるわけがない。むしろ混乱させるだけ。それよりかは自身の変化に自分で気付かせる方が良いと考え敢えてしばらく放置することにした。その通りだな、リアス・グレモリー?」

 

「ッ!!……ええ、そうよ。あなた、まさかそこまで読んで敢えて彼に本当のことを言わなかったというの?」

 

「一応は、な。そちらに何らかの思惑がある以上下手に介入するのは得策ではないからな。まあでも俺個人としてはそのような意図があったにせよもっと早くに知らせるべきだったと思わなくもないが。そうすれば昨日のようにイッセーが襲われることも防げたはずなのだから。」

 

さっきのお返しに少々非難じみた視線を送ってやるとグレモリーはきまり悪そうに眼を逸らした。

 

「じゃ、じゃあ、崇哉はそこまで考えて敢えて知らないって言ったのか?」

 

「ああ。それでも納得できないというのなら……俺を殴ってもいい。」

 

「「「「「?!」」」」」

 

俺がそう言うと全員が驚いた顔をしていた。

まあ普段はアイツらがいるからまず言えないことだしな。

 

ああ、因みに言っておくが別にそっち系の趣味があるわけではない。

 

これはあくまでもけじめだ。

 

「……いや、やめておく。お前には助けられたし、それに先輩にもお前にも考えがあってのことだったんだろ?それにお前を殴ったりなんてすればそれこそ杏奈ちゃん達に殺されそうだしな……悪かった。」

 

そう言うとイッセーは手を離した。

 

「……説明を続けてもいいかしら?」

 

機嫌を損ねた様子のグレモリー。

目論みが上手くいかなかったことが気に入らないようだ。

どうでもいいことだが。

 

「そうだな。そもそもの説明の義務はそちらにあるのだから。」

 

「っ……まあいいわ。続けるわよ。」

 

そう言ってグレモリーは説明を再開する。

 

 

 

 

 

それからグレモリーはイッセーに悪魔のこと、それからイッセーが殺される原因となった神器のことについて説明していた。

グレモリーはイッセーに神器発動の際に自分が最も強いと感じるものを思い浮かべろと言ったが……その際の奴の取った行動に関してはノーコメントにしておこう。

 

そしてイッセーは神器を発動したわけだが……

 

「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」

 

イッセーが絶叫する。

イッセーの左腕には赤い籠手のようなものが装着されていた。

 

ふむ……見かけは龍の手(トゥワイス・クリティカル)、力を倍加するというだけの神器の中では極ありふれた部類のものだが……僅かに漂ってくる気配はそんじょそこらのドラゴンのものとは明らかに違う。

 

この気配は……間違いないな。

 

かなり弱い弱しくしか感じられないが――――――赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)ドライグ。

 

どうやらこれは本当に……

 

「さて、一通りの説明は済んだことだし――――聞かせてもらうわよ、有馬崇哉君?」

 

グレモリーの一言でその場にいた全員の視線が俺に集まる。

 

ハァ……本当に面倒だ。

 

「それなら昨日既に話したはずだが?」

 

もうわざわざ敬語使うのも面倒だ。

 

「あのねえ、普通の人間は堕天使を連れていたりしないし、あんな風に威圧できたりしないの。それにあの時あなたから感じた波動は明らかに人間のものではなかったわ。ふざけてないで真面目に答えなさい。」

 

グレモリーは眉を吊り上げて突っかかって来る。

 

苛立ってはいるが下手にキレたりしないあたり昨日の経験は生きてるらしいな。

 

それに免じて少しだけなら教えてやるとするか。

 

「何か勘違いをしていないか?俺は“一般的な高校生”とは言ったが別に人間だとは言っていない。それと昨日からそちらの発言を聞いていると随分と人間を軽んじているようだから一つ忠告しておこう。神器を宿せるのは人間、もしくはその血を引く者のみ。現に元人間であるイッセーが神器を宿しているのが良い証拠だ。そして神や魔王をも屠れる神滅具もまた然り―――――あまり舐めてると足元掬われるぞ?」

 

「ッ――――そう。それなら昨日の答えは嘘ということだったのかしら?」

 

目元を引くつかせるグレモリー。

沸点が低いのは変わらんようだ。

 

「だから勘違いをするなと言っただろう。俺が言ったのは高校生としては一般的だということだ。」

 

「なら具体的には何者だというの?それに昨日あなたと一緒にいたもう一人はどうしたのかしら?私は彼女にも一緒に来いと言ったはずよね?それにあなたが堕天使を連れていた理由、それもまだ聞かせてもらっていないわ。」

 

かなりご立腹のようだ。

勝手な真似を、とでも言いたげな目をしている。

 

「それは言えないね。生憎と俺の正体は魔王でもない、一悪魔が知ってていいようなものじゃないんでな。それについては杏奈も同じだ。それと……堕天使が云々というのであればそちらにも半堕天使(ネフィリム)がいるようだが?」

 

「「ッ?!」」

 

俺がそう言った瞬間グレモリーと姫島の表情が一変する。

二人とも明らかに動揺していた。

 

が、それも一瞬。

 

すぐさまグレモリーの表情は元に戻り、一方の姫島は憎悪の籠った瞳で見据えてくる。

 

最早怒りを隠す素振りさえ見せない。

その証拠に滲み出るオーラが乱れに乱れている。

 

 

「……今そのことは関係ないでしょう……。それにしても舐められたものね。言ったはずよ?私はグレモリー家次期当主リアス・グレモリー、即ち現ルシファーの縁者だと。それでも答えられないと白を切るつもりかしら?」

 

「ほう?これは驚いたな。冥界では魔王と魔王の縁者を同列に扱うのか。しかも本来の魔王の血筋でもない者が王族気取りとは中々滑稽だな。」

 

「ッ……あなた、それは現魔王派への挑戦と受け取ってもいいのかしら?」

 

……よくもまあそんなことが言えたものだ。

 

それ即ち

 

「……最後は結局魔王(兄上)頼み、か?」

 

「ッ」

 

そう言うとグレモリーは押し黙る。

 

実際この女が色々と好き勝手出来ているのは現魔王の一角である兄、サーゼクス・ルシファーの後ろ盾があることが大きい。

魔王の威光を傘に脅しをかけたつもりだろうが俺達みたいなのにとってはそんなモノは無意味だ。

 

第一リアス・グレモリーが昨日見せたあの力。

 

悪魔の大王バアル(・・・)家に伝わる滅びの力。

 

触れたモノを消滅させる特殊な魔力。

 

あれは実態の有るものであれ力を具現化したものであれ触れればたちまち消えて無くなる。

 

聞けば現魔王のサーゼクスもあの力と桁外れの魔力量を武器に新旧魔王派のいざこざで戦果をあげ、現魔王の地位に着いたという。

 

だがもし俺とやりあうのならその力、更に言うなればバアルの血を引くことは逆に大きな障害にしかなりえない。

 

 

 

 

 

なんせあの力を使う者の血筋は全員……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコン……

 

 

 

 

 

「失礼します。」

 

 

 

 

 

 

ふう、あの二人には感謝しないとな。

 

 

 

 

 

ガチャリ

 

 

不意に扉をノックする音が聞こえ、扉が開かれる。

 

そして入ってきたのは……

 

 

 

 

「ソーナ?!」

 

「会長?!」

 

グレモリー達が声を上げる。

 

彼女のみならず俺以外の全員が驚いた表情で扉の方に目を向ける。

入ってきた人物は黒のショートヘアに眼鏡をかけた女子生徒。

3年の支取蒼那、真名をソーナ・シトリー。

この学園の生徒会長にして、シトリー家の次期当主でもある。

 

「どうしてあなたがここに?」

 

グレモリーがソーナ・シトリーに尋ねる。

 

「頼まれたからです。そこの彼と……」

 

「お兄ちゃん!!」

 

続いて入ってきたのは我が妹分の杏奈。

 

杏奈は俺の姿を見るや否や駆け寄って来る。

 

「大丈夫?コイツらに何かされなかった?」

 

心底心配そうな様子だ。

 

「まあ落ち着きなさい。兄さんが無事なことくらいアンタが一番よく知ってるでしょう?」

 

そして杏奈の次に明日香が入って来る。

 

二人が入るのを確認するとソーナ・シトリーは続ける。

 

「……とこちらの二人にです。グレモリーの下僕を助けたら揉めたので仲介して欲しい、と。時々ですが彼らには生徒会の仕事を手伝ってもらったりもしているのでそのお礼と言うわけではありませんが。」

 

「ということはソーナ、あなた彼らと知り合いだったの?」

 

未だに状況が呑み込めない様子のグレモリーが尋ねる。

 

「ええ。正確には私のではなく私の姉の知り合いになりますが。」

 

その言葉を聞いて一同はより一層驚いた面持ちとなる。

 

まあ、セラフォルー(アイツ)と出会ったのは本当に偶然だったが。

 

今のところ魔王の中で俺達のことを知ってるのは彼女だけだろう。

 

それでも素性までは語っていないが。

 

「セ、セラフォルー様の?!それじゃああなたは彼らの正体についても知ってるの?」

 

グレモリーに尋ねられると彼女は首を横に振る。

 

「いえ、私どころかお姉様でさえ彼らの素性は知らないそうです。」

 

そりゃそうだ。

 

言えるワケがない。

 

これは相手が信用できるとかできないとかそういう問題じゃない。

俺達の素性が知られたら間違いなく今の三勢力の均衡は崩壊する。

ただでさえ聖書の神と本来の魔王が消えて色々と影響が出てきているのだから。

いや、それどころか他の神話体系の連中を刺激しかねない。

そうなればセラフォルーにのみ真実を告げたとしてもそう言った事態を防ぐべくして隠蔽せざるを得ないが、そうしたらそうしたで後々公になった際に後々糾弾されかねない。

現に“奴”は知っていた。

現状最も厄介なあいつが。

 

結局のところ話したところで彼女の立場が危うくなるだけ。

それはサーゼクス・ルシファーだろうとアジュカ・ベルゼブブだろうとファルビウム・アスモデウスだろうと変わりはない。

知らない方が互いの、いや、この世界の為だ。

 

時が来るまではね。

 

「それってかなり問題じゃない!!セラフォルー様でさえ素性を掴めていないだなんて!!というか知っていたならどうして私に教えてくれなかったのかしら?お兄様からもそんな話は一言も聞かされていないわよ?」

 

詰問を浴びせるグレモリー。

 

そこはキレるよりも事情を察して欲しいものだが。

 

「それについてはお姉様との間で個人的に色々と取決めがあるそうですから。実際彼らの正体を知ることは色々と問題が付き纏うようです。それ故に彼から自身のことをあまり口外しないよう言われたと聞きます。因みに私も彼のことを姉に尋ねたところ追及は不要だと言われました。」

 

「あの方がそこまで……ますます怪しいわね。それならこの学園にいる理由は何?」

 

そう言うとグレモリーこちらを一瞥する。

 

「なんでもお姉様が勧めたそうです。彼らは三勢力のどこにも属していないけれど実力は確かだとも聞いています。現にこの前も今の私達では到底太刀打ちできないレベルのはぐれ悪魔の討伐も無傷で果たしてくれましたし。」

 

ああ、そうそう。

事の初めはセラフォルーに勧められたからだった。

でもまあシスコンのアイツのことだ。

おそらく真意としては妹の手助けをしろという意味も含んでいたのだろうが。

それもまた一興と思って承諾した。

 

「それならどうしてあなたは知っていて私には知らせの一つもないのかしら?それに彼は堕天使を連れていた。仮に神の子を見張る者(グリゴリ)の関係者でなくとも本当は私達の敵でないという保証はないわ。大体あなたも知っていたならどうして教えてくれなかったのよ?」

 

「私も彼のことを知ったのは偶然でした。最初は私もあれこれ聞きましたが結局詳しいことは分からず仕舞、結果生徒会の仕事を手伝う代わりに彼らのことは追及も口外もしない、という条件で妥協しました。これも一種の契約です。無論悪魔稼業については対象外ですが。あとその堕天使についても説明は受けています。確かオリヴィアさんといいましたか?彼女は彼の直属の部下だそうで、神の子を見張る者(グリゴリ)には属していないそうです。それにもし仮に彼らに私達と敵対する意思があるのならこんな回りくどい上に一文の得にもならないような方法はとらないでしょう。」

 

「ッ……そう。まさかあなたがそこまで言うなんてね……。」

 

一度諦めにも似た表情を見せた後で何やら考えるような様子を見せるグレモリー。

 

「ソーナ、一つ聞きたいのだけれど……彼らは別にあなたの眷属でもセラフォルー様の眷属でも何でもないのよね?」

 

「ええ、そうですが……ッ!!リアス、あなたまさか?!」

 

 

……やはりそう来たか。

 

 

案の定、グレモリーはこちらを向いて言う。

 

「この際、セラフォルー様が追及不要と仰られている以上私もあなたたちのことは追及しないわ。でも私としてはあなたたちのような存在を見過ごすことはできない。それに私は個人的にあなたたちに興味があるの。」

 

まあ、次に何を言うかぐらいは分かっているが……一応念の為聞いておくか。

 

「それで、何が言いたい?」

 

するとリアス・グレモリーは口元に笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

「あなたたち、私の眷属になりなさい。」

 

 

 

 

 

 

 

……やっぱりね。

 

ここまで予想通りだと逆に拍子抜けしそうなくらいだ。

 

 

 

 

 

だが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「断る」

 

「絶対に嫌」

 

「無理な相談ね」

 

 

 

 

 

異口同音、口を揃えて各々の拒否の意を示す俺、杏奈、明日香。

 

「……あら、どうしてかしら?悪魔になれば寿命も延びるし、功績を上げれば上級悪魔に昇進して爵位と領地も貰えるし、自分の下僕を持つことだってできるのよ?それにあなたたちの力ならすぐに認められるでしょうし何よりセラフォルー様とのコネだってあるんでしょう?」

 

余程断られたことが癇に触れたのか、やや不機嫌な様子で聞いてくる。

 

だがこればかりは致し方ない。

 

俺達神格はまず悪魔にはなれない。

 

それになれたとしてもメリットがないどころかデメリットしかない。

 

「理由は色々あるが大きく分けて二つ。一つは悪魔になるメリットがない、そして二つ目は……俺達は悪魔にはなれないからだ。」

 

これにはその場にいた全員が驚いたようだった。

 

「メリットがない、というのも気になるところだけれど……悪魔になれないとはどういうことかしら?」

 

今度はかなり訝しげな様子で聞いてくる。

 

「どういうこともなにも、そういう体質みたいなものだ。なんなら試してみるか?」

 

「ッ……分かったわ、そうさせてもらうわ。」

 

そう言い、グレモリーは赤いチェスの駒のようなものを取り出す。

 

あれが『悪魔の駒』(イーヴィル・ピース)、形状からして『騎士』(ナイト)『戦車』(ルーク)か。

 

そして俺に近づけるが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、嘘……どうして……?」

 

 

 

 

 

駒は全く反応していなかった。

 

聞いたところではそもそも『悪魔の駒』(イーヴィル・ピース)は転生させる対象として神格は対象外としているのだからまあ当然と言えば当然の結果だが。

 

それに悪魔に転生させるには対象の力量に見合うだけの駒数を消費することになるし、中には通常複数の駒数を要する対象を一つで済ませる『変異の駒』(ミューテーション・ピース)なるものも存在しているが、それでも神仏クラスの対象を転生させるにはいくらあっても足りない。

 

「そういうわけだ。それに、自分と力量がかけ離れた者を強引に従わせたところで寝首を掻かれるのがオチだ。」

 

そう言うとグレモリーが眉を吊り上げる。

 

「ちょっと。それ、どういう意味よ?」

 

「そのままの意味だが?」

 

「つまり……私たちがあなたたちよりも弱いと言いたいのよね?」

 

「おや、自覚がないのか?まさか昨日のことを忘れたわけでもあるまい。」

 

あれでまだ分からないというなら本当に救いようがないモノだが。

 

「ッ……、いいわ。そこまで言うのなら見せてもらおうじゃない、あなたたちの力を……!」

 

「……正気か?」

 

「あら、でも昨日あなたは直接戦ったわけじゃないでしょ?それにあなた以外の二人はどうか分からないもの。」

 

不敵な笑みを浮かべ、挑戦的な物言いをしてくるグレモリー。

だがその実自身のプライドをコケにされたと感じて苛立っているに過ぎない。

 

「ふうん……アンタ、私達とやる気なの……」

 

ここへきて初めて口を開く杏奈。

感情の籠っていないその声は完全に取るに足らないものを前にした時のものだ。

 

「昨日お兄ちゃんに軽く威圧されただけですぐに戦意喪失する程度なのに、今度は直接戦えですって?そうしたら……死ぬよ?」

 

杏奈がスッと目を細め、ほんの微かに殺気が滲み出る。

これは警告。

『お前など取るに足らない雑魚だ、失せろ』という言外の通告。

 

「?!リアス!!お止めなさい!!今のあなたたちが太刀打ちできる相手ではありません!!」

 

ソーナ・シトリーは杏奈から発せられる殺気を感じたのか、すぐさまグレモリーに静止を促す。

その額には冷や汗が浮かんでいた。

 

「あら、ソーナ、勝負は水物。実際にやってみるまでどうなるか分らないものよ?」

 

しかし当のグレモリーの方は頭に血が上っているのか、引く気はないようだ。

戦って打ち負かす他折れてはくれなさそうだ。

 

「……もう一度だけ聞いたげる。死ぬ覚悟はできてるんだよね?」

 

杏奈から発せられる殺気が僅かに強まる。

 

これは少しマズいか……

 

アイツは一度戦いだすと歯止めが効かなくなる。

下手をすれば本当にグレモリー達を血祭りにあげかねない。

 

何としても杏奈(アナト)を戦わせることだけは避けたいんだが……

 

「望むところよ」

 

?!

 

おいおい……

 

こちらの懸念を他所に当の本人は完全にやる気だ

見れば主の戦意に呼応して下僕の方もすっかりその気になっているようだった。

 

「ハァ……」

 

グレモリーより改めて宣戦布告を受け、一つ溜息を吐くと、杏奈、いや、アナトが立ち上がる。

その顔はとにかく目の前の雑魚を黙らせたくて仕方がないという半ばうんざりしつつもどこか不愉快そうな色をたたえていた。

 

「決まりね。ならさっさt「ちょっと待って」ッ?!お姉ちゃん?!」

 

「「「「「「?!」」」」」」

 

これからつまらない狩りに赴こうとするアナトを引き留めたのは予想外の人物――――――――――――(アスタルテ)

 

これにはアナトばかりではなくグレモリー達も驚いている。

 

「……何かしら?まさか今更になって戦うなと言うわけじゃないでしょうね?」

 

グレモリーが横やりを入れるなと言わんばかりの様子で問いかける。

 

「まさか。今更何を言ったところで戦うのを辞める気はないんでしょ?だったら……」

 

彼女は一泊置く。

 

そして

 

 

 

 

 

「私がやるわ」

 

 

 

 

「っ」

 

 

 

これまた予想外だったのか、その場にいた者達は息を呑む。

 

「……それはあなた一人で相手をするということかしら?」

 

「そうよ。」

 

アスタルテの返答に顔を顰めるグレモリー。

 

「……どういうつもりなの?舐めてるのかしら?」

 

グレモリーの体から怒りを表すかの如く紅いオーラが湧き出る。

他の眷属達も愚弄されていると感じたのか、表情を険しいものにしていた。

 

「あら、別にそういうわけじゃないのだけれど。ただ私達が全員で戦えばあなたの言う私達一人一人の力は知れないわよ?それに聞いたところだとあなたたちは昨日兄さんには威圧されただけで戦意喪失。つまりその時点で少なくとも兄さんはあなたたち全員が束になっても敵わないレベルということ。それに杏奈もその時同じ場所にいたはずだけれど……あなたたち同様に戦えないような状態だったのかしら?」

 

「それは……」

 

返答に詰まるグレモリー。

その様子を見て満足そうに続けるアスタルテ。

 

「なら杏奈も少なくとも兄さんの威圧に耐えれるレベルだということよ。そうすると今のところあなたたちにとって一度もその力量が分かっていないのはその場にいなかった私だけ。つまりどうでも私達の力を知りたいというのであれば私一人と戦うのがベストだと思うのだけど……どうかしら?」

 

なるほど、アナトを下がらせる代わりに自分一人で打ち負かして黙らせるということか。

 

反論は帰ってこない。

 

そして

 

「……わかったわ。そこまで言うのならあなたの言う通りにしてあげる。ただし負けても言い訳は聞かないわよ。」

 

「フフフ、今度こそ決まりね。」

 

満足気に笑むアスタルテ。

グレモリーの一党は今やすっかり彼女に言いくるめられていた。

 

「よろしいのですか?」

 

釈然としない様子でソーナ・シトリーが尋ねてくる。

 

「ええ。それと審判はお願いできます?」

 

アスタルテは何の躊躇いもなく答える。

グレモリーの方は言わずもがな。

 

「はぁ、分かりました。私が勝負の行く末を見届けましょう。」

 

彼女も承諾した。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

沈みゆく夕日が空を茜色に染める中、旧校舎の裏の開けた場所で紅髪の悪魔率いる悪魔の一団と白銀の女神は相見える。

 

「それでは、始めて下さい。」

 

ソーナ・シトリーの掛け声で開戦が伝えられる。

 

「さあ、私の可愛い下僕たち!!私達の力、思い知らせてあげましょう!!祐斗!!子猫!!」

 

「「はい!!」」

 

先手を取るのはリアス・グレモリー。

味方を鼓舞しつつ、近接戦闘を得意とする下僕二名に指示を出し、相手の動きを牽制しにかかる。

 

主の声と共に飛び出した金髪の『騎士』(ナイト)、木場祐斗は常人なら目視することも叶わぬ速度で確実に距離を詰めていく。

一方、『戦車』(ルーク)、搭城子猫は『騎士』(ナイト)ほどの速度は出ないため、同時に飛び出したにも関わらず彼との距離は開いていくが、それでよかった。

当然、先に敵に肉薄するのは彼。

そしてこれまた当然ながら相手は先に自身のところに到達した木場祐斗の攻撃から対応することになる。

刀剣など獲物を持っているのであれば彼と切り結ぶなども可能なのだが今の相手は獲物となるものは何も持っていない、丸腰の状態。

敵の戦闘スタイルは不明だが、必然的に剣による攻撃の対処は避けることの一択に絞られ、反撃するにも格闘攻撃であれば隙を伺わなくてはならず、魔力の類を使うにしても相手と一定の距離を保ち続けることを意識し続けなくてはならない。

そして敵が彼との戦闘に集中しているところに時間差でやってきた塔城子猫の拳打の応酬というダブルパンチを見舞う。

無論、二人ともただ闇雲に戦う訳ではなく、敵を誘導し、離れた場所から『王』(キング)、リアス・グレモリーと『女王』(クイーン)姫島朱乃による魔力攻撃とを加える。

本来ならここにもう一人の下僕、兵藤一誠が何らかの形で加わるはずなのだが彼は悪魔に転生したばかりで力の使い方すら知らない状態であるが故に戦力外であり、この形が下僕の特性上それが最も理想的な采配であった。

グレモリー眷属の各々がその連携を念頭において進めていた。

 

木場祐斗は加速する世界の中、急先鋒として己が役割を全うすべく、ただひたすらに敵を目がけて直進する。

 

「へえ、流石は『騎士』(ナイト)。結構速いじゃない。」

 

「なっ?!」

 

突如として背後から聞こえた女性の声。

それは先程まで部室で耳にしたもの。

一瞬、耳を疑う。

彼女は目の前にいたはずなのに……

しかしすぐに思考は切り替わる。

僅かに肌で感じた不自然な空気の流れ、遅れて鼻腔に届く甘い香り。

刹那

 

バリン!!

 

「ッッ?!」

 

「でも惜しいわね。筋は悪くないけど動きが単調。そして何より……」

 

響き渡る破砕音と再び背後から聞こえた声、それと共に視界に広がる何かの破片。

その正体が何であるか理解するのに時間はかからなかった。

気付けば手にした刃の刀身が消えていた。

そして先程感じた妙な感覚。

何か特殊な力を用いたような感じは一切しなかった。

となるとそれらを総合して導き出される結論は一つ。

 

彼女は彼の認識限界を超えた速度で彼の前後を移動するという、文字通りの神業をやってのけたということ。

 

「くっ……!!『魔剣創造』(ソード・バース)!!」

 

速度で負ける。

それは『騎士』(ナイト)として己が高め、磨いてきた力を否定されるようなもの。

これ以上の屈辱はない。

即座に振り向き己が内なる神器の力を解放し、破壊された手中の刃の代わりに新たな魔剣を生み出して迎撃を試みる。

しかし天を衝かんばかりの勢いで現れた剣山の中にはどれ一つとして敵を捕らえたものはない。

 

そして視界の隅に白銀が映る。

剣士は目を見開く。

 

「遅い」

 

白銀の女神は地に付けた足に力を籠め、上体を捻り、右肘を叩き込む。

 

ドゴンッッ!!

 

「がはッッ?!」

 

背中より全身を駆け巡る鈍い衝撃。

肘という接する面積が小さい部分であるために力が一点に集中し、破壊力を増す。

無論手加減はしているものの、意識を刈り取るには十分な威力だった。

意識を失った剣士はそのまま崩れ落ちる。

 

刹那の攻防、僅か数秒にも満たない間の出来事であるが故、傍から見れば、何が起きたのか分からず、ただ気付けば剣士がやられていたというようにしか映らないだろう。

 

「祐斗!!」

 

木霊すリアス・グレモリーの叫び。

しかしそれは届かない。

 

搭城子猫は目を疑う。

木場を倒した相手の動きは何一つとして見えなかった。

彼女が辛うじて相手がそこにいると把握できた手掛かりは遅れて耳に届いた音のみ。

そして彼は戦闘を開始したと思われる時から数秒と経たずに彼は倒れた。

 

これが意味することは即ち、眷属内で最速を誇る『騎士』(ナイト)の彼をも上回る速度が出せるということ。

 

「戦闘中に考え事は命取りよ?」

 

「!!」

 

気付けば相手(アスタルテ)は既に目と鼻の先にいた。

高速戦に特化した木場でさえ目の前の彼女の動きに対応できず敗れた。

然らば彼に速度で劣る自分は拳を振り抜くより先に意識を飛ばされる。

そんな思考が彼女の脳裏を埋め尽くす。

 

その時

 

「え?」

 

ほんの一瞬、敵であるはずの彼女が微笑んだような気がした。

それはこれから自分を打ち据えることに悦びを見出す嗜虐的なものでも、どこか含みのある打算的なものでもない、ただただ純粋なもの。

母親が我が子に向けるような慈愛に満ちた笑み。

 

そして彼女は相手が額に指を伸ばしていることに気付いた。

 

「おやすみなさい」

 

その一言と共に体中を何かが駆け抜ける。

だが、不思議と悪い気はしない。

むしろ包み込まれるような安心感。

予想していた痛みはいつになっても訪れない。

 

そしてそのまままどろむ様に意識が遠退いていった。

 

ドサッ

 

『戦車』(ルーク)はここに陥落した。

 

ここまでの経過時間、およそ30秒。

 

「子猫ッ!!くっ……よくもッ!!」

 

ギリッ

 

彼女らの主は歯噛みする。

下僕を倒されたことに怒りを感じないわけではない。

しかしそれと同時に焦りも感じていた。

最初に『騎士』(ナイト)『戦車』(ルーク)の二人を先鋒として行かせたのは自分たちが各々の特性を把握した上で最も効果的と判断し、磨いてきた連携プレーを実現するため。

だがそれは飽くまでも敵の速度が『騎士』(ナイト)の速度で対応可能な範疇であった場合の話。

今回のように相手が余りに速すぎる場合は初手からして既に詰みであったと言う他ない。

そればかりか開始から一分と経たないうちにただでさえ少ない下僕の内全ての近接戦闘要員を下される羽目になった。

残ったリアス・グレモリーと姫島朱乃はいずれも魔力攻撃主体の中~遠距離戦特化型であるが故、接近戦に持ち込まれた際には苦戦を強いられることは必定。

特にゼロ距離にでもなれば、自爆覚悟で相手に一撃見舞うことは理論上は可能でも、間違いなく相手が自分たち以上に速く動いて止めを刺されてしまうので、事実上全ての抵抗手段を奪われ無力化されてしまう。

 

一方、当の相手(アスタルテ)はというと、その気になれば先の二人と同様すぐに沈められるのだがそれでは味気ないと思い一計を案じる。

そして彼女は不意に歩みを止め、残った二人の悪魔の前に姿を現す。

 

「さて、残りはあなたたち二人だけね?」

 

柄じゃないなと思いつつも兄のように皮肉気に笑んでみせる。

 

「くっ……祐斗と子猫の敵、討たせてもらうわ!!朱乃!!」

 

「はい、部長!!」

 

陸上では圧倒的に不利と判断し、二人共悪魔の翼を展開して空へ舞い上がる。

 

「雷よ!!」

 

「消し飛びなさい!!」

 

 

ピシャァァァァン

 

ギュパァァァァン

 

宙より雷と赤黒い魔力の奔流が放たれる。

 

しかし地上で空を見上げる白銀の女神は微動だにしない。

それどころかニヤリと口角を吊り上げる。

 

彼女は手を翳す。

 

ゴウッッ

 

その瞬間、凄まじいまでの暴風が発生し、空中にいた二人を襲う。

 

「「キャッ?!」」

 

余りに激しい気流の流れにその場に留まることができず、風にさらわれた木の葉の如く吹き飛ばされ、やっとのことで姿勢制御が可能になった頃には既に敵の姿を見失っていた。

 

「うっ……彼女は…どこ?」

 

激しい回転を繰り返した所為で眩暈がする中必死に辺りを見渡すが一向に見当たらない。

 

刹那

 

 

 

ブウゥゥゥゥゥン

 

 

 

「「?!」」

 

彼女を探すことに気を取られていた二人の悪魔は自身の身に起こった変化に気付く。

 

「な、何よ……、これ……?」

 

「か、体が……動きませんわ」

 

見ると小さな結界のようなモノで手足、翼がそのままの姿勢で空中に固定され、体の自由が奪われていた。

 

 

 

 

 

「ハイ、捕まえた。」

 

 

 

 

 

「「!!」」

 

ジジジジ、バチッ、ジジジジ……

 

ギュオオオオオオ……

 

聞き覚えのある声と共になにやら不可解な音が耳に飛び込んでくる。

声のする方へと視線を向けると探していた人物が。

そして彼女の頭上には二本の槍。

 

「う、嘘……」

 

「こんなことが……」

 

二人の少女は目を見開き、絶句する。

無論それはアスタルテに、ではなく彼女の頭上に浮かぶ二本の槍――――――それは紛れもなく先程自分達が放った雷と滅びの魔力、それも何倍にも増幅されて。

 

 

 

 

 

 

 

 

王手(チェックメイト)、ね。……己の浅はかさを後悔なさい。」

 

 

 

パチン

 

 

 

ビュオオオッ

 

 

 

アスタルテが冷淡に告げ、指を鳴らすと同時に雷と滅びの槍が主目がけて飛で行く。

身動きの取れない悪魔二人は躱すことは勿論、障壁を生み出すことお叶わない。

 

「「っ……」」

 

二人の少女は轟音を轟かせながら迫りくる自分自身の力によって貫かれる未来を脳裏に思い描き、思わず瞑目する。

その時彼女たちは何を思ったのか。

一人は生まれ持った力を呪い、もう一人は自身のプライドに任せて実力で遥かに勝る相手に力量差を図ることなく挑んだことを悔やんだのか。

 

しかし、彼女らが思い描いたクライマックスは訪れない。

 

いつまで経っても、何の痛みも感じないことを不審に思い、恐る恐る堅く閉ざした目を開く。

 

すると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「!!」」

 

 

 

 

 

 

 

二人はまたもや絶句した。

 

射出された槍は二人のすぐ眼前で静止していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんて、するわけないでしょ。」

 

 

 

 

そして再びアスタルテが指を鳴らすと二本の槍は消滅する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……勝負ありましたね。」

 

 

勝負の行く末を見守っていたソーナ・シトリーが試合終了を告げる。

 

どこからともなく戦場を吹き抜ける風が呆気ない結末をより際立たせていた。

 




まさかの16000字オーバー……

そして時間をかけた割には読み返してみるとかなりつまらないという始末……

はぁ……

余り長すぎても読者の皆様の負担になるだけでしょうから、以後長くなり過ぎないよう気を付けます。

御感想or御指摘等ありましたらお願いします。
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