ハイスクールD×D ~Pagan Gods from the Old Testament~ 作:カイバル峠
シスターと悪魔祓い(1)
真夜中の街を俺はチャリで駆け抜ける。
依頼主の下へ行く為だ。
先日のはぐれ悪魔事件の折、部長に俺の駒の種類、つまり下僕としての役割について聞いたら……
「
……だそうだ。
要するに一番下っ端の捨て駒。
それなのに……
俺はひたすらチャリを漕ぎ続ける。
本来なら魔法陣を介して一瞬で依頼主の下までジャンプできるらしいが俺の魔力は何と子供以下。
魔法陣での転移に必要な最低限の魔力すらないらしい。
子猫ちゃんには“無様”なんて言われるし……
はぁ……ハーレム王への道はまだまだ遠いな……
それにしても……上級悪魔になるためにははぐれ悪魔の討伐の依頼をこなしたりレーティングゲームで戦果を上げるなどして功績を上げなきゃならないらしい。
レーティングゲームっていうのは元は大戦で多くの悪魔が亡くなった後、戦争をせずに下僕悪魔に実戦経験を積ませることを前提に始まったものらしいけど、それがここ数百年爵位持ちの悪魔の間で流行し、いつしかゲームでの成績が爵位にも影響するようになっているんだとか。
因みにレーティングゲームには成熟した悪魔でないと参加できないらしく、部長はまだ成熟していないから俺達が出場するのはまだ先、少なくとも部長が大学を卒業してからになるらしい。
それともう一つ、先日実際にやったはぐれ悪魔討伐なんだけど……
どうもここ最近はぐれ悪魔がやたらと凶暴化、異常なほどパワーアップしているらしく、本来なら上級悪魔が一人いれば十分対応可能といわれている相手でもかなり危険度が増しているという。
崇哉曰く
部長たちも色々と調べているみたいだけど如何せん出現し始めたのがごく最近で、情報が少な過ぎて詳しいことは分からないって言ってた。
ただ一つ明らかになっているのは、何者かがはぐれ悪魔を改造して上級悪魔相当にまで強化しているということだけだ。
はぁ……これからもあんなのと戦わなくちゃいけないのか。
なんてことを考えているうちに依頼主の家に着く。
チャリを止めるとインターホンを鳴らす。
……おかしいな、反応がない。
もう一度鳴らしてみる。
それでも一向に家の主は現れる気配がない。
試しに扉のノブを回すと扉が開く。
……鍵がかかっていない。
不用心だな、こんな夜中に……。
そう思いつつも中に入ると、二階建ての一軒家だが人の気配が殆どなく、真っ暗な中に一階の奥の部屋から僅かに明かりが漏れていた。
そしてそのまま一歩踏み出す。
「ッ?!」
……なんだ、今の感じは?
スゲェ嫌な感じだ……少なくとも俺に、悪魔にとって好意的でないことだけは分かる。
本能が警鐘を鳴らしている。
これ以上足を踏み入れるな、と。
――――――私の期待を裏切らないで――――――
だがそんな時、ふと脳裏を掠める言葉。
さっき部長に言われた言葉だ。
俺はこれまでにも数件、召喚されて依頼主の下へ向かった訳なんだが未だに一件も契約を取れていない。
ただ依頼主からの評価は極めて良好とのことで部長も困惑していたが……
ここで帰ったらますます部長に合わせる顔がない、か……
俺は意を決して呼びかけてみることにした。
「ちわーす、グレモリー様の使いの悪魔なんですけど……依頼者の方いらっしゃいます?」
しかし返事はなく、あるのは静寂のみ。
これはいよいよおかしい。
でもこれ以上部長の期待を裏切るわけにはいかない。
「上がりますよ?」
仕方がないので明かりの漏れている部屋まで足を運ぶことにした。
勿論靴を脱いで、だ。
部屋の入り口まで来ると蝋燭の明かりがぼんやりと照らし出す薄暗い部屋がいかにも悪魔を呼び出す儀式をするような雰囲気を醸し出していた。
そして部屋に足を踏み入れる。
すると何だろう?
ヌチャッとした感触、まるで液体に触れたような感触が足に伝わって来る。
何だこれ?
そう思って足下に広がる液体らしきモノを掬い取る
これは……血?!
ハッとして見てみると床に広がっていたのは血の池だった。
そしてその血は引き摺られるようにして壁の方まで伸びており、そこには……
「ゴボッ?!」
胃の中身が体内より込み上げる。
壁にあったモノ、それは―――――見るも無残な人間の死体だった。
遺体はズタズタに切り刻まれ、傷口からは臓物らしきものが溢れ、四肢と胴体には太い釘が打ち付けられ、死体を逆十字の形で壁に固定していた。
何だよコレ?!
明らかに普通の殺し方じゃない!!
死体のそばの壁には血で何やら文字のようなモノが書かれていた。
「……何だよ……コレ……」
俺がそう口にした時だった。
「『悪いことする人にはお仕置きよ』って、聖なる方のお言葉を借りてみましたァ」
突然、背後のソファから声がした。
さっきは気付かなかったがそこには白髪の男が。
年は恐らく十代くらい。
外国人のようで、顔は整っていた。
そして男は俺を視界に入れるとニヤリと笑う。
「んー?おやおや、クソの悪魔君ではあ~りませんか。」
な、何だ、コイツは?!
「俺のお名前はフリード・セルゼン。とある悪魔祓い組織に所属する少年神父でござんす。あ、俺が名乗ったからってお前さんは名乗らなくていいよ?俺の脳容量にクソ悪魔の名前なんざメモリしたくねぇし。聞いたら俺様の耳が腐っちゃう。正直クソ悪魔と同じ空気吸ってるってだけでもう俺どうにかなりそう。はぁ~、切り刻んですり潰して燃えるゴミの日に出してやりたくなってきちゃった~。」
クネクネとした気持ち悪い動きをしながら自分に酔ったような台詞を吐き続ける男。
つーか悪魔祓い?!
部長が絶対に近付くなって言ってた連中じゃないか!!
どうしてよりにもよってこんな時にッ!!
でもそれ以上に
「お、おい、お前か?この人を殺したのは?」
「イェス、コレ~クト。だって悪魔を呼び出す常習犯だったんだもん。そりゃもう殺すしかないっしょ?悪魔なんかと契約する時点で人間としてはジ・エ~ンド、進んで悪魔に魂渡すようなゴミクズはさっさと死んだ方が世のため人のためなんざんすよ。そこんとこお分かり?ユーアンダースタン?無理ぃ?ああ、そうですもんねぇ。初めっからクズなクソ悪魔様には分かるハズあ~りませんよねぇ?」
ダメだコイツ、話が通じる相手じゃない!!
「で、でも人間が人間を殺すってのはどうなんだよ?!お前らが殺すのは悪魔だけじゃねぇのかよ?!」
「ハアアアア?!何それ?!クソ悪魔の分際で俺を説教?ハハハハ!笑える~、お笑いの賞取れますですよ。テメェら悪魔だって人間を食い物にして生きてるじゃねえかよ?悪魔に頼るってのはそんな悪魔に自分から餌遣るようなもんなんだよ!全人類の裏切り者なんざんすよ!だから俺がわざわざ始末してやったってワケ。仕事だし。」
「あ、悪魔だってここまではしない!!」
「ハァ?!何言ってんの?アタマ湧いてんの?人間とクソ悪魔は最初から相容れないの。それになァ、テメェらクソ悪魔が『悪魔の駒』なんてモンで好き勝手見境なく欲望の赴くままに下僕を増やしてくれた所為ではぐれ悪魔が人間界に溢れて罪もない一般ピーポーが死んでいくんだぜ?お蔭でボク達人間は大迷惑なんざんすよ?!それでも悪魔が人間にとって害悪じゃねぇって言い切れんのか?もう胎児からやり直した方がいいんじゃね?あ、でもクソ悪魔に増えられても困るからやり直さなくていいよ。てなわけで」
神父は懐から刀身の無い剣の柄と拳銃を取り出す。
続いてヴゥゥゥンという空気を震わせる音と共に剣から光の刀身が現れる。
なんだよアレ?
ガン〇ムのビー〇サーベルかよ?
「俺的にはオマエがアレなんで……斬って解して撃って穴開けさせて頂きマ~ス!!今からオマエの心臓に刃突き立ててこのイカした銃でオマエのドタマに一撃必殺必中必誅フォーリンラブかましちゃいます!」
そう言うが否や神父は俺に向かって駆け出した!
うわッ?!
光の刃が横なぎに一閃、俺は間一髪で躱す。
「バキュン」
神父の声。
それと同時に右足に激痛が走る。
「ぐ、ぐあぁぁぁぁ?!」
い、痛ェ……
撃たれた?
見れば拳銃から煙が上がっている。
俺は呻き声と共にその場に膝を着く。
そして再び走る激痛。
今度は右膝からだった。
「がはっ・・・・」
この痛みは……
「どうよ?悪魔祓い特性祓魔弾の味はよぉ?銃声なんてしませんぞ?なにせ光の弾ですからねぇ。どうだい?あまりの快感に達してしまいそうだろう?新たな扉を開いてしまいそうだろう?」
そうだ……この痛みは光の痛みッ……!!
悪魔にとっては猛毒。
一撃でも喰らえば全身に痛みが走る。
「ハハハハッ!痛ぇか?痛ぇよなぁ!死んだら速効で楽になれますぞ?無理に生きようとすればするほど痛みが長引くだけだぜ?ホラ!」
神父が俺の背中を光の剣で切り付ける。
「がああああッ!!」
「フン」
「ぐあああああああッ!!」
神父は俺の背中、今さっき切り付けられた傷口を踏みつけ、更に剣の切っ先で傷をなぞる。
ま、マジで痛ェ……
「ハハハハハッ!悪魔の悲鳴とは傑作ですな!最っ高に耳障り!……さっきから五月蠅ぇっての」
「ゴフッ?!」
神父が俺の頭を踏みつける。
「遊ぶのにも飽きてきたしなぁ……よし、殺ろう。」
?!
頭上でジャキッという音。
恐らく神父が俺の頭に銃口を向けたのだろう。
冗談じゃねぇ!
俺は上級悪魔になってハーレム王になるんだッ!!
こんなところで死ねるかッ!
「ほなバイなら☆」
神父が引き金に手を掛ける。
その時
「い、いやあああああああああっ!!」
?!
今、この場には場違いな少女の声。
そして聞き覚えのある声だった。
「おんやぁ?助手のアーシアちゃんじゃあ~りませんか。どうしたの?結界は張り終わったのかな?」
そう、そこにいたのは……
忘れる筈もない、先日俺が教会まで案内した金髪のシスター―――――アーシア・アルジェントだった。
な、何で……アーシアがここに?
「こ、これは……」
見ればアーシアが壁の遺体を見て言葉を失っていた。
「そっかそっか。キミはビギナーでしたなぁ。これが俺らの仕事……クソ悪魔に魅入られた人間のクズをこうして始末するんス。」
「そ、そんな……っ?!」
アーシアの視線が不意にこちらを向き、そして目が合う。
彼女は目を見開いて驚いていた。
「……イッセーさん……?」
「アーシア……」
「どうしてあなたがここに……?」
「……ゴメン、俺、悪魔なんだ……」
「悪魔……イッセーさんが……?」
「騙してたんじゃない!……だから君とはもう会わない方が良いって……」
「そんな……」
……知られたくなかった。
俺は悪魔であの子はシスター。
決して相容れない間柄だ。
「……イッセー?」
すると不意に神父が俺の名を口にする。
「つかぬ事をお聞きしやすが……お宅、兵藤一誠君で?」
神父が俺の名を尋ねてくる。
「……だったらどうなんだよ……?」
俺は精一杯神父を睨みながら答えてやった。
すると
「ク、クククク……アハハハハハハ!!」
?!
……何だ?
突然神父が笑い出した。
「そうかァ、そういうことかよ。どうりで見覚えがあると思ったら……そういやさっきグレモリーの使いとか言ってたもんなァ?……グレモリー眷属兵藤一誠、決まりだ。」
?
そういうと神父は拳銃を懐に仕舞う。
そして……
「それならより確実な方法で仕留めねェとなァ!!」
「「っ!!」」
神父が新たに取り出したモノ。
あれは……ショットガン?!
「上からテメェを見かけたら確実に殺れって言われてっからなァ!死んだところを訳も分からず悪魔なんぞに転生させられちまったって話だ、元人間のよしみでせめて苦しまねェように一発で仕留めてやるからよォ!!……って、あァ?何の真似だよ、そりゃァ?」
気付けば俺の目の前には金色が。
その正体は
「フリード神父、お願いです、この方をお許しください!どうかお見逃しを!!」
両腕を広げ、俺を背にして俺と神父の間に立つアーシア。
何で……
「あー、キミ、自分が何してるか分かってるンですかァ?」
「た、たとえ悪魔だとしてもイッセーさんは良い人です!!それに、悪魔に魅入られたからといってこんな風に人を殺すなんて主がお許しになるはずがありません!!」
アーシア……
「……ざけんな……」
「?」
突然、神父の纏う雰囲気が一変する。
「ふざけんなアアアアアアアアッ!!」
!!
神父が叫んだ。
そこにはさっきまでのおどけた調子は一切なく、ただただ純粋な怒りと憎悪が俺達に注がれていた。
「キャッ?!」
神父はそのままアーシアの腕を掴むと両腕を上げた状態にさせ、服の袖を重ねたところに光の剣を突き刺して壁に繋ぎ止める。
「テメェ……この期に及んで何抜かしてんだァ?!悪魔はクソだ、殺せってっつったのは他でもねェ、テメェの大大大~好きな神サマだろうがよォ?!それとも何だァ?まさか自分が追放された理由を忘れちまったんじゃねェだろうなァ?!答えろや、オイ!!」
追…放……?
どういうことだ?
「フン、本来なら悪魔の庇いだてなんざしてる時点でドタマかち割ってその腹掻っ捌いてやってるとこだが、生憎テメェは傷付けんなって堕天使の姐さんに言われてっからなァ……俺がこの薄汚ェクソ悪魔を殺るところをせいぜいそこで大人しく見てな。」
神父は憤怒の色に染まった瞳でアーシアを睨め据えながらそう告げる。
だがちょっと待て、堕天使?
さっき神父が言った追放って言葉といい、どうなってる?
アーシアもコイツも神様の下で働いているんじゃないのか?
俺が混乱していると神父が俺の方に歩み寄って来る。
「さぁて、準備は宜しいですかな、クソ悪魔君?」
憤怒と憎悪に加え更に狂気と愉悦の混じった視線を俺に向け、ショットガンを構える神父。
「……一つだけ聞いていいか?」
「んあ?」
「どういうことだよ、堕天使って?」
俺が問いかけると神父は少々不機嫌な顔をしながらも考えるような素振りを見せた。
そしてニヤリと口角を吊り上げる。
「ほうほう、クソ悪魔君は堕天使様が気になると。では、ここで問題です。一体全体、どうしてアーシアちゃんのような純真無垢かつ心清らかな少女がボク達みたいなはみ出し者と一緒にいるんでしょ~か?」
……は?
俺は一瞬、奴が何を言ってるのか分からなかった。
だがそんな俺の脳裏を掠めた単語、さっき目の前の神父が放った一言。
―――――――“追放”――――――――
「……まさか……」
何かに思い当たったような俺の様子を見て神父は満足気な様子を見せる。
「おおっと、どうやら分かったようですなぁ。って、そういや俺さっき答え言ったっけ?そうです。その通りざんす!!アーシアちゃんは教会から追放されてしまったそれはそれは可哀想なお嬢さんなのでごぜぇます!!」
そんな……どうしてアーシアが?
そう思ってアーシアに視線を向けると、アーシアは俯き、唇を噛みしめて小さく震えていた。
ッ……
傷付けてしまったのか?彼女を……
クソッ、つくづく自分のデリカシーの無さが嫌になるッ……!!
これは彼女にとっては思い出したくないこと、聞いてはいけないことだったんだ……!!
「では次の問題で~す。アーシアちゃんは何故、教会を追放されてしまったのでしょう?」
「……めろ」
「んァ?何だって?」
「止めろって言ってんだ!!」
ズドン
「う、ぐあああああああああああっ?!!」
「イッセーさん?!」
アーシアの悲鳴。
左肩に走る凄まじい痛み。
さっきの拳銃や光の剣なんかとは比べ物にならないくらい痛ェ……!!
「あ~あ、そういうのマジ白けるんで辞めてもらえます?自分から聞いといて都合が悪くなるとやめろとか言うの。碌に考えもせずに不用意な発言した自分自身の責任っしょ?今のワザと掠る程度にしたけど次はマジ当てるよ?腕ごと吹っ飛んじゃうよ?ああ、そうだ。そこまで仰るんなら質問変えやしょうか。この世界が犯した最悪最大の過ちってな~んだ?」
今度は何だ?
「正解は…………
テメェらクソ悪魔を生み出したことさ……」
その時背筋が凍ったような気がした。
仮面の如く表情が完全に消え失せた顔には、人間に出せるとは到底思えないほどの殺気が凝縮されているのを感じた。
「逝け」
「!!」
ドン!!
「―――――――――!!」
神父は引き金を引く。
アーシアが悲鳴を上げる。
俺は撃たれたのか?
でもおかしい。
いつまでたっても痛みが襲ってこない。
もしかして……俺、死んだのか?
光で撃たれたから消滅したのか?
ハハハハ……俺、こんなとこで死ぬのか。
ちくしょう……
「助けに来たよ、兵藤君。」
フリードのキャラ、書いてみると結構難しい……
感想or御指摘等ありましたらお願い致します。