刑部姫とひきこもるだけ。   作:鹿頭

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続いた。


その裏側では

 

 

約束された勝利の剣ーー!

 

対城宝具たる星の聖剣が、白鷺の城を破壊せんと極光を放つ───!

 

大地を揺るがす様な轟音と共に、城が光に包まれる。

 

───しかし。

 

「無傷…ですか。力及ばず、申し訳ありません」

 

星の聖剣は届かない。

 

剣を振ったアルトリアは申し訳無い、と言った顔。言葉も相まって、真実そう思っているのだろう。

 

「いえ、正確には損耗が見られます。ただ……」

 

近くにいたマシュがアルトリアの言葉を訂正する。

マイルームを基点として、カルデアの一部を位相を異とする形で作られている城。

 

「姫路城は()()()()()()()()()()()。その事が大きな概念武装、いや、概念防衛となっている、だね」

 

「ハイ、ダ・ヴィンチちゃん。その通りです……」

 

史実において、姫路城は一部の城郭構造は取り壊される事も有った。

しかし、天守閣は刑部姫と言う城主を戴き、今の世まで残っている。

 

「うーん…古代の王様達が力を貸してくれたら良かったんだけどねぇ……」

 

【雑種は雑種だった、と言う事よ】

 

【ここまでだったのだろうさ】

 

【………今は放っておけ。我は忙しい】

 

「ギルガメッシュ王もオジマンディアス王も、この件には不介入を貫いてますし……他のサーヴァントの方々も…」

 

「と言うよりは見放した、と言うべきなのかな?」

 

「ダ・ヴィンチちゃん!」

 

マシュは抗議する。

そんな事はない。無いはずだ、と。

 

「アハハ、ゴメンねマシュ。でも、私たちは彼に相当な負担を強いていたのは事実だ」

 

「ですから……私は…」

 

ここまで気づけなかった自分が恨めしい。

そして、出来る事なら、あの人を救いたい。

そう思っている。

 

「うん、気に病む事は無いさ!取り敢えずこの城を破壊するか、中に入って、()()()()()()刑部姫を倒せばいい話だしね!」

 

「そんな事を出来るアサシンの方がいらっしゃるでしょうか……」

 

アサシンと言えば大抵は闇に紛れて影に潜むのを得意とするサーヴァントのクラス。

彼らなら可能かもしれない。

ただ、あの城の城主本体も強固な硬さを誇る。

ましてや、何処からか手に入れた聖杯を持っている。

一体誰が出来るのか?

そもそも、何処から聖杯を手に入れたのか?

 

「いいや、別にアサシンの力を借りるわけじゃないんだぜ?」

 

その疑問は否定される。ダ・ヴィンチちゃんはそうではないと言う事を言ってきた。

その事がマシュには疑問だった。

 

「はい?」

 

「あの、私。帰っても良いでしょうか。そろそろおやつの時間ですし、私では少々荷が重いようだ」

 

今まで口を閉ざしていたアルトリアが疎外感を感じ、尋ねる。

 

 

「あ、うん。良いよ、ゴメンね?わざわざ付き合わせて」

 

「いいえ、他ならぬマシュ。貴女の頼みでしたから」

 

かの楯を持っている彼女の頼みなら、聖剣を振るうのは惜しくない。

それに、あの二人の行く先はせめて幸福なものであって欲しい。

 

そう願っていたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「宮本武蔵。かつて刑部姫の下まで辿り着いた逸話がある英霊だ。キミなら、あの城へ入る事も可能なんじゃないかな?」

 

「それで私かぁ……うーん、別に私は大した事をした訳じゃ無いんだけど…」

 

武蔵は、今回の事態に呼ばれた理由を説明される。

そんな事もあったような、なかったような。

そんな逸話から呼ばれたらしい。

 

「まあ、それでも()()()()と言うだけで十分さ」

 

「うーん…そう言うものかなぁ……」

 

「武蔵さんだけが頼りなんです……!」

 

マシュが懇願する様に武蔵を見つめる。

その事に揺れ動かされるが……

 

「でもなぁ…マスターくん、自分から籠ってるんでしょ?」

 

「……それは、そうなんですが……」

 

そう。彼は自分から籠っている、状況にある。外から入るのは難航を極めるが、内から出るのは容易い。

それがこの一種の特異点じみた城なのだ。

 

「自由人な私が言うのも何だけど……自分から出てくるの、待った方が良いと思うな。これは、心の問題だし、天岩戸じゃないんだから」

 

「………」

 

沈黙が場を支配する。

 

これは心の問題。自分自身の問題なんだ。

確かに、自分自身は出てきて欲しい。

けれども、無理に引きずり出して、どうにかなるなんて思ってもいない。

 

 

 

 

そんな時。

 

 

 

 

「むむ!何やらお困りのご様子!でしたら〜このBBちゃんにお任せあれ!」

 

「「BBちゃん!」」「え、えっと…?」

 

「はーい!初めましての方も、そうじゃない方も、こんにちはー!後輩系ヒロインの同輩のマシュちゃんのピンチと有って、やってしました私、BBちゃんです!」

 

沈黙を破り、BBちゃんが何処からともなく現れた。

武蔵は、「初めましての方」だったらしく、ノリについていけていない。

 

「……ア、アハハ」

 

とりあえず笑っとけ。けれど頰が引き攣り苦笑いになっている。

 

「何とかする方法があるんですか!?」

 

「はーい!ありますよ、もちろん!」

 

「へぇ、どうするんだい?BBちゃん」

 

「それはですねー、センパイの心の中にズブブー、っと入っていくのです!」

 

方法がある、と言うから聞いてみたら、心に直接入っていく、と言う。

それはどうなのか。

傷ついた人間の心を暴くと言うのは。

 

「えっ!?ソレ危なくないの!?」

 

「ええ、とってもアブナイです♡」

 

「それは流石に容認出来ないかな…」

 

わざと鯉口を鳴らす。

危ない、と言うからには、乗るわけにはいかない。

 

「いやいやいやいや!いやですね、そうでもしないとあのヒキコモリ、どうにも出来ませんよ?それに、別に心をぶっ壊しちゃう、とかじゃないですしー、マシュちゃんにマスターの心と触れ合ってもらいたい的な感じですし」

 

「先輩の心と、ですか……」

 

「ふーん…」「へぇ」

 

 

「はい!……たかだか一介の後から来た系の城主に過ぎないのに、生意気にも聖杯なんか使っちゃって…中の人を護る事に特化させる様に自分の心まで転写しちゃったりして……」

 

「そんな事になってるんですか?BBちゃん」

 

BBちゃんから聞かされる現状にマシュは驚愕する。

 

「はい!……そうですね、マシュさんの宝具のちょうつよーいかんじ〜って思って貰って結構です。方向性は違いますが。ですので、外側から壊すのではなく、内側から出ていただく他ありません」

 

「だから立香くんの心を説得、か……。いやー、私が言うのも何だけど、これを考えた人は相当アレな人だね!」

 

理屈としては叶っている。

ただ、心の方が、完全に折れていた時、その時はどうなるのだろうか。

その事を触れていない。意図的なのだろうか。

違和感を覚える。

 

 

「まあ、マスターに直に触れなきゃ行けないので、そこまで行くのに武蔵さんの力は確実に必要なんですが」

 

「結局城には入るのね……ハァ…うん!わかった!こうなりゃとことん付き合いましょう!」

 

 

「武蔵さん!」

 

花が咲いたような、とでも言わんばかりに喜ぶマシュ。

 

「じゃあ決まりですねー!マシュさん、準備しますので、こちらに来て下さーい」

 

「あ、はい。わかりました」

 

「じゃあ、私も色々準備をするかな。天才は忙しいのだよ」

 

BBちゃんの手招く方へマシュが付いて行く。

去り際に、「武蔵さん、ちゃんと護衛お願いしますね?城の中、どうなっているかわかりませんから」など、不思議な事を言っていた。

 

 

「ええ、まっかせて!」

 

その意味を、その時はまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四人が居なくなった後、陰から這い出てくる様に、一人の男の影。

 

「かくして城へと入っていった、か。フム……」

 

「やれやれ、また君の仕業かい?」

 

そんな男の後ろから、また一人、タバコをふかしながら現れる。

 

「まさか!君、聖杯なんぞ横流し出来るような立場に私が居るとでも思うかね?第一、カルデアにある聖杯は高々力を引き出すだけだろうよ」

 

大袈裟な身振りを交えて否定する初老の紳士。

その所作は、実に優雅で、如何にもこなれている様だ。

 

 

「うーん、それを言われると厳しいね。それに、君のカルデアに於ける信用度は一部を除いて底辺に近いからね。横流し出来るような事も、そもそも君だと知っていて受け取ってもらえるかどうか……」

「真顔でそんな悲しい事言わないで貰えるかな!?」

 

否定する言葉を肯定する探偵。

ちゃんと毒を含ませるのも忘れずに。

 

「ま、良いけどさ。やってないならやってないで」

 

「おや?やけに素直じゃないか」

 

紳士が言うように、探偵は珍しく引くのがやけに早い。

いつもなら、もっと違うだろう?と言わんばかりに追求するはずだ、と思った。

 

 

「名探偵にも人の心までは解き明かせない、って事さ」

 

「………それ、色々大丈夫なのかね?」

 

この空気に、なんとも言えないもどかしさを感じていた。

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