pixivに先にあげたいって思ってるんですけど、よく考えたら話なーんにも進まず、進んでるのはヒロインの心ぐらい。それって少女漫画の王道で、けれどもヒロアカ本編にすら至っておりません。
具体的に今リップとメルトは何歳なのか。
まだまだ苗字が生まれない。作られない。
地に足が付かないヒロインが、必死に地面に降りる。そんな話になったらいいな。
恋をするって、こんなに大変な事だと思わなかった。
自分の腕を正しく認識出来るようになったリップはその後すぐに姉のメルトが海外留学を決め、事故だったとはいえ怪我をさせたからやはり嫌われてしまったのでは、なんてうじうじと考え込んでいたりしていたのだが自分の腕が人とは違う。普通の女の子の手じゃないのだと知ってから、少し人と話しやすくなったように思えた。
凶暴なかぎ爪も、少女には似つかわしくない怪力も何も前と変わらないのに、ただそれを認識して誰かを傷付けないようにと気に掛けるだけでどうして、どうして、と対人関係で上手くいかなかった時の理由を考えもせずただ不満だけを溜める日々からゆっくりと抜け出せたのだ。
それでもまだまだ進むにはきっかけが足りなくて、変われたような、変われていないような、とまた少し人との関わりに対して消極的になりかけていた時、美しいエーゲ海をバックに得意げな笑みを浮かべる姉メルトの写真が入った手紙が送られてきたのだ。
手紙には驚く事に出会った瞬間ビビッときたヒーローがいて、それなりに調べた後すぐさまアポイントを取り面接を受ける程に尊敬出来る人なのだと、あのメルトが誰かを尊敬するだなんて考えもしなかった。姉が生き生きとヒーローとして成長し、例え両腕が使えずともその棘のある鋭い脚だけでも十分戦えるし、踊れるのだとヒーロー以外の夢であったプリマドンナへの道も着々と進んでいるのだと知った。
おねえちゃん、たのしそう。
漠然と生まれた感情がリップ自身が変わるきっかけとなった王子様の顔を思い出させる。今まで一度も思い出さなかった訳じゃない。けれど彼とまた会える時が来るのが怖かった。会えるかもしれないと彼が所属する事務所の近くをわざわざ偶然に通った時もくるしくてくるしくて、それでも見つかりたくなくて、見つけて欲しかった。あの時の様に。
リップは彼が好きだ。彼を王子様だと確かに思っている。あのひとが、いたから。あのひとが、すきで、だいすきで、でも、だから会えない。会える訳がない。こんなに苦しいのに会って良いのか、会って、この苦しさが膨れるのか紛れるのか、まさか他の感情まで混ざるのか。そう考えるだけで怖くて怖くて仕方がない。
元から憶病な性質で、うじうじと悩んで結局何も出来ないというのがリップだった。出来る事も持ち前の怠惰さで後回しにしてしまう。なんとなく、そういう自分ではあの人に好きになってもらえないんじゃないかって、見て貰えても見たくないって言われてしまうんじゃないかって、リップは怖かったのだ。
恋というのはもっと甘くて優しくて、溺れるように何も見えなくなるはずだ。少なくともリップが思う理想の、想像の、空想の中の恋はそうだった。だからこんな、自分の嫌な、至らない所ばかりが見えるのは、あまりに苦しくて、本当に恋なのかって何度も不安になって、それでもあの人が、だいすき。それだけはいつまで経っても変わらない。変えられなかった。
あのひとに、あいたい。あいたい。日に日に増していく凶暴なまでの恋心をあの時抱いた、いつか自分から手を握れたら、という小さな小さな願いが抑えつける。こんなままじゃ会えない。会っても今度はあのひとを傷付けるだけ。そう。おねえちゃんみたいに。
ぐるぐるとあの日壊してしまったメルトの腕を思い出し、かなしくてかなしくて、それでも自分の恋を喜んでくれた姉の言葉を思い出す。まだ、好きでいたい。あの人を好きだと言いたい。
進む場所もなりたい自分もリップには分からない。なりたいものに進み続けるメルトの姿は眩しくて、そんな風に自分もなりたいくて、きっかけがなくて、探し続けて、結局誰かに背中を押してもらえないと駄目なのかと自分自身に失望しかけた時、知った。知ってしまった。
あの人が英雄の教師になる。いや、もう既になっているはなっている。けれど15歳のリップの、高校一年生のリップの、あの人と同じヒーローを目指したリップの先生になってくれる可能性がある事を知ってしまったのだ。
それはきっかけというよりも焚き火の中にロケット花火を投げ込んだような、それ程の衝撃だった。
合法的に偶然に会いに行ける。自分が出来ても出来なくても見て貰えて、声をかける事が出来て、話をしてもらえて、あの人がどこかに向かう時付いて行っても大丈夫。もしかしたら、もしかしたら、優しくしてもらえるのかも――。
「きゃぁっ!」
ばっちん、と軽快なんだかコミカルなんだか分からない音がリップの頭から鳴った。急な衝撃に耐える為に衝動的に瞑った瞳を恐る恐る開けば、むっすりとした表情でどこから取り出したのか分からない典型的なハリセンを構えた母、BBがいた。
「お、お母様……」
「リップ~?私言いましたよね?言ってないとはいわせませんよ?――ニンゲンは、好きじゃなくても優しくしてくれます。好きだともっともっと優しく甘やかですけど、好きでも優しさを見せてくれるとは限りません。ただでさえ貴方の個性、ピーキーなんですから。優しくされるかどうかは貴方の行動と努力次第ですよ?」
「は、はい!そうでした、ごめんなさい」
「も~、その私と同じ顔でそーんないじめてください。みたいな顔しないでくれます?そんな事しなくても、貴方はもう、見てもらえますし、近付いてもらえるんですから」
認識障害という個性の影響は思ったよりも複雑怪奇で、自分の腕が大きくて凶暴だと気付いた後も、意地悪にしてくる人は多く、友達は上手く出来なくて、それでもちゃんと努力して、ちゃんと仲良くなれるようにリップはリップなりに頑張っていたが、その厄介な個性がリップへの周囲の認識を歪める。今まで自分に向いていた個性を無意識に周囲に向けてしまっているリップは元々の性格が虐められやすい子だったというのが災いして虐めてみたい子。とかそういうものへと変わってしまう。
外を歩けばヴィランに人質にされ、誰かに道を聞けば乱暴な言葉と態度を引きずり出す。典型的な被虐体質。歩くヴィラン、ヴィラン予備軍ホイホイ。犬も歩けばなんとやら。パッションリップも歩けばヴィランに当たる。幸い、BBが傍にいる時ぐらいしかリップは積極的に外出しようとは思わず、いろんな意味で有名なヒーロームーンキャンサーBBを敵に回したいヴィランも多くなく、現行犯逮捕か周囲の警官からの職務質問で事なきを得ている。リップと年が近い子供相手だと、個性の暴走で話を済ませられるから、手遅れにならないまでにどうにか社交性と個性の制御を、と思ってBBから個性制御の手ほどきを受けていたのだが、怠けたがりのリップが段々と明後日の方向に思考を飛ばしているのがバレたのだ。いったいどこからそのハリセンは出されたのか。サクラビームじゃなくて本当に良かった。
「ヒーローになりたい。現役ヒーローの私からすると娘から貰える一番嬉しい言葉の一つではあります。けど、まあ、その努力と行動が合っていれば貴方がなりたいものなんていつだって見つかりますし、雄英に通うっていうのはその努力が正しく正当で、整えられたものがいくつも見つかるっていうのと同じ事です。もちろん、怠けて怠れば全て泡に消えますけど、それが出来るなら貴方がした努力は貴方を何者にだってするんです」
だから――と、途絶えた声が、表情が柔らかかった。優しかった。自分と殆ど同じ顔のBBがこんな表情が出来るのだ。リップだって、何者にでもなれる。その言葉に嘘なんてないのだろう。ニンゲン嫌いを豪語しながら電子の海で無敵を誇るこの母がヒーローという人を救う側に立っているのだ。
「母として、全力で応援、サポートします」
すぐに何かになれなくても、何かになりたいと願うだけで、努力するだけで良い。それが出来るだけであの人に会いたいっていう気持ちがふわふわとやわらかく、ほわほわとあたたかく、とくとくと脈打つのだ。
恋は苦しいけど、恋は、素敵だ。変わってみたいって、簡単に思わせてくれるのだから。
BB 娘のピーキーな個性を根本から矯正するため、まずは性格改善。特に怪しい事もなく、ヒーローちゃんとやってる彼女は娘の指導を頑張っています。サクラメントは足りていますか~?メルトの仕事っぷりはいつだって見てます。実はバットなグッドニュースをオールマイトさんところに持っていきたいんですけど、内容が絞られていません。基本色々把握している彼女をオールマイトさんは苦手に思っています。馬が合わない訳じゃない。隠し事出来ない怖さ。付き合い長いからね。
リップ 個性が被虐体質に進化した。お姉ちゃん頑張ってて焦った。焦った所為でハリセンでぶったたかれる事態に。お勉強は得意。学校に通うのが面倒くさい。王子様が先生やってるってすっごく少女漫画展開。それ自体に興奮しながら、それ以上は求めずに、頑張りたい少女です。トラッシュ&クラッシュはまだ、習得していない。ブラストバレーはなく、けれどキューブになったものは……。ロケットパンチ出来る事にまだ気づいていない。