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めざましの代わりに、スマホのアラームが鳴る。
グットモーニングTOKYO。
今現在、俺は魔法科高校に入学するため、愛しの我が郷土の千葉を離れTOKYOこと東京で一人暮らしをしている。
最初は自宅から高校までの道を考えていた、何しろ千葉から東京までは近い。
むしろ東京に1番近い県だと言ってもいい。
つまり首都に最も近い県であり、転じてニアリーイコール首都ということでもうほとんど首都なのではないだろうか。すごい。ちばすごい。
東京駅までは総武線快速でつるっと一本でいける。
あるいは、京葉線という手もあるだろう。はやい。ちばはやい。
だが東京駅における総武線快速ホームと京葉線ホームの冷遇っぷりはやばく、総武線快速はなにこれ石油でも掘りに行くの?ってくらい地下に潜るし、京葉線にいたっては、これはもう東京駅って呼んじゃいけないでしょ…ってくらい離れた位置にある。とおい。ちばとおい。
なんなら長距離輸送線…以前なら新幹線と呼ばれたモノに乗るときは品川のほうが遠いけど便利まである。
千葉からこんなに遠いとかどんだけ田舎なんだよ東京…
とはいえ、そんな長い俺史(16年前後)において、約束された楽園と謳われた(俺に)千葉であるが、やはり通学という面ではより学校に近い方がよい、それに当時格安で部屋を貸してくれるアパートもあったことも相まって、まあなんだかんだと過ごしている。
起き抜けの頭でぼーっと朝刊を流し読む。今日もコボちゃんは逸材だった。むしろコボちゃんは しか読んでいない。
未だ頭がしゃっきりと冴えないせいか、目の前で動く2つの影。
2つの影とはいってもどこぞの料理長が探している食材ではどうやらないらしい。
…話が変わるが俺は初志貫徹を忘れない男。
それはなにも職業や生活習慣に限った話ではない。
いきなりなんだ、と思われるかもしれないが、今でも解せぬことが多い世の中、今目の前で起こっているおかしな状況を前にしても冷静に、なおかつ慎重になれる男。
そして言ってやるのさ。
一つ大きく深呼吸をして、ゆっくりと口を開く。
「……何でいるの?」
「あら、おはよう八幡。…お兄様、どうぞ」
「ありがとう」
そう、目の前におらすは学年主席兼校内1の美少女(推定)な司波妹とその兄司波達也だった。
司波兄は司波妹に差し出されたコーヒーに口をつけ、深々と腰掛けたソファーの上でノートPCを弄っている。
「はい、八幡もどうぞ」
そう言って差し出されたマグカップには司波兄同様コーヒー。
コーヒー豆の買いだめは昨日で切れていたはずだから、このコーヒーは司波兄妹の持参された物だということがわかる。
「あっ、どうも…」
なんて間抜けな返事がついぞ口先から出る。
しかし、なんで何か喋る前に『あ』ってつけちゃうんだろうな。英単語なの?
とりあえず、入れてもらったコーヒーに口をつける。
「…美味ぇ…」
いや、普通に美味い。
見ると台所にはコーヒーミルとケルトが出されていた。
ホーム・オートメーション・ロボット(HAR/ハル)が普及している先進国では台所に立つ女性はもちろん、男性(ここ重要)も、どちらかと言えば少数派になっている。
本格的な料理ならともかく、パンを焼く、コーヒーを淹れる程度のことに自分の手を使う者は、趣味でもなければほとんどいない。
ということは、司波妹はそのほとんどいない少数派に属しているということだ。
別に機械音痴というわけでもあるまいに…
ああ、愛しい愛しいお兄様がいるからか。
なんて1人で納得していると、勝ち誇ったかのような司波妹の顔。
そして少し、くやしそうに二口目を啜る俺の顔を見て、満足げな表情を浮かべてから自分のカップに口をつける。
そのまま3人でコーヒーを嗜むこと十数分。
誰も口を開かず、無理に会話を作ろうとはしない。
…ちょっぴり、ほんのちょっぴりだが、こんな時間は嫌いではない。
というか、基本俺は1人な時間や静かな時間が好きなのだ。
しかし、どうしても人といると気まずさというのが生まれてしまう。
だが、お互いがお互いに無関心なこの位ならば丁度いいのだ。無関心であれば気まずい思いもしないし、不愉快な気分にもならない。
今日から始める、1人なんて怖くない対策その1、『他人を見たら他人と思え』である。ちなみにその2はない。
要するに、気まずさというのは『何か話さないと』『仲良くしないと』という強迫観念があるから生まれるものなんだと思う。
エレベーターに乗っていて隣り合った人に対して『やばいよー、2人っきりだよー、気まずいよー』と思う奴がいないのと同じだ。
しかし、それも時と場合による。
流石に今回のように寝起き即遭遇というのはあまり気持ちのよいものではない。
…いや、寝起きじゃなくてもこの兄妹に会うのは嫌だけど…。
「で、本当に何の用だよ。…つーかなんでお前らウチのカギ持ってんだ…」
というわけで、この静寂に包まれた中、司波兄に質問することにした。
すると司波兄は持っていたカップをゆっくり机に置き口を開く。
「ああ、師匠との修行ついでに、お前のCADの調整が終わったから届けてやろうと思ってな。
それに、お前の妹から頼まれたことでもある」
そう言って壁にかけてある銀色のトランクケースを顎でクイッと指す。
術式補助演算機(casting assistant device)
通称CAD。デバイス、アシスタンスとも呼ばれている。
この国ではホウキ(法機)という呼称もつかわれているソレは、魔法を発動する為の起動式を、呪文や呪符、印契、魔法陣等の伝統的な手法・道具に代わり提供する現代の魔法技能師に必須のツールだ。
CADがなければ魔法を発動出来ないというわけではないが、魔法発動を飛躍的に高速化したCADを使わない魔法技能師はほとんどいないだろう。
但し、CADがあれば誰でも魔法が使えるというわけでもない。
CADは起動式を提供するだけであり、魔法を発動するのは魔法技能師自身の能力だとか。
つまり、魔法を使えない者には無用の長物であり、CADを所有するのはほぼ100%魔法に携わる者だ。
少し事情あって司波兄にCADを預けなければならなかった俺は、言われて壁にあるトランクに手をかける。
一面銀色のトランクケースを開けると中には、組み立てて使うであろうスナイパーライフル型の特化型CADが収められていた。
組み立て式とは言っても単純で、銃身、銃口部分とスコープ、カードリッジという4つに分けられているだけ。
本体のライフルを取り出し、一通り組み立てて見る。
ただの調整って、見た目丸っ切り変わっているっていうか、別物なんですけど…
確かに以前コイツに貰えるなら新型が欲しいとか言った覚えあるが、コレ前の原型、スナイパーライフル型ってとこ以外なにも無いんですけど…。
グリップ部分にはトーラスシルバーのトレードマークが彫られ、そのマークから伸びる曲線の先にはSILVER HORN の文字。
それらが黒光りする本体に組み合わさりより完全さを表していた…要するにカッコ良さに磨きがかかっていた。
「好きだろう?そういうの」
少しドヤ顔を決め込んだ司波兄。
くそう…くやしい、くやしいけど嫌いじゃないですね、こういうの。
さらに言えば意味のわからない龍が巻きついた剣のマークとか、どこぞの正義の味方が愛用している双剣のマークとかだったらよりよかった。
一通り装着して試運転がてら魔法陣を発動させてみる。
と言ってもやり方自体がそう複雑なワケでもない。
銃身のレバーを手前に引き、自身のサイオン、要するに魔力的なソレを流し込むだけで基本的には稼働する。
そこから何かしらの魔法を弾として打ち出すタイプのCADなのだが…。
「…ちょっと、動かないんだけど」
不良品かしら?それともコレの調整者が不良なのかしら?
そんな俺の疑いの視線を難なく躱すと、司波兄は続ける。
「それはそうだろう。
「ほーん、…で、その専用カードリッジってのは?」
「そうだな…簡単な物であればデパートの魔導具専門店にでも行けば置いてあるだろうが、より専門的な特別な物が必要なのだと、FLT社の第三課まで来てくれればその時、その時によって応じよう」
あー、なるほど、金取るのね。
…なんてセコイんだコイツ…魔法使うのに必要なパーツ別売りとか、任◯堂かよ。
そんな俺の心を見透かしたかのように司波兄はフッと笑う。
「どうせなら新型が欲しいと言ったのはお前だろう、心配しなくとも料金自体はかなり抑えられている。…そんな事よりもそろそろ登校の準備をしなくていいのか?まあ、お前が遅刻しても構わないと言うのであれば放っておくが…」
そう言って時計を指すと、確かに登校に間に合わせるならそろそろ準備に取り掛かった方が良い時間。
なかなか腑に落ちないところを多々残しながらも、1つ重要な事を聞き忘れていた。
「…そういえば、お前今、妹に頼まれたとか言った?」
「………」
「………」
俺の質問に司波兄妹は顔を見合わせる。
妙な間が居間に流れ、どう切り出すのか待ってみると。
「…行こうか深雪」
「…そうですね、お兄様」
シラを切ることにしたらしい。
「おい、まて、何、小町が絡んでるの!?どうりでおかしいと…おいって!!」
俺の問いを返すことなくスタスタと行くドS兄妹(暫定)
小町のことや他にも色々聞きたいことはあるのだが…
1つ言えるのは…何だコイツら…。
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満員電車という言葉は今や死語になっている。
勿論、今でも電車は一般的な通行手段なのだが、昔と比べ遥かに発展していると言うのが正しい。
昔は通勤通学ラッシュというあまりにも恐ろしい一種の拷問より酷い苦行が行われていたという、毎日身動き1つ取れないほどの人口密度の密室に押し込まれ、ソレに乗りながら通勤や通学をしたそうな。
かくいうウチの両親なども、そのラッシュとやらを避ける為に冬場は早めに家を出るようにしていたらしい。
冬の季節、出社出勤ギリギリの時間やちょっと遅めの時間だと余計に混んでいたのだとか。
やはり人間、大人になっても冬の朝には弱いと見える。
誰だってギリギリまで布団のなかでだらだらしていたいものだろう。
それでも、彼らが会社や学校に行かねばならないのには理由がある。
積極的、能動的な理由で行動する人間も確かにいるだろう。
だがまあ、会社がそれを要求するから、他人がそうしているから、流れからはじき出されないようにするためだから、なんて理由の奴だっているだろう。
つまるところ何かを得る為に、そして失わない為に人は行動するのだ。
キャビネットと呼ばれる二人乗り用のリニア式小型車両の中でネットのトピックニュースにサッと目を通し、最後のプリティーでキュアキュアなアニメの新作映画が今夏上映されるというニュースには目を引かれながらも端末のスクリーンを閉じる。
閉じられた端末のスクリーンに画面に映る自分の顔はやはり控えめに見ても並以上に整っていて、それでいながらどんよりとした瞳は並みどころかG級に腐っていた。
それでこそ俺。
これでこそ比企谷八幡。
これまでと変わることのない自分に満足して俺は目線を外に向ける。
しかしまあ…そう考えると便利な世の中になったなぁ…
例えば、今乗っているキャビネットだが、動力はもちろんエネルギーも軌道から供給されるので、車両のサイズは同じ定員の自動車の半分程度。
プラットホームに並ぶキャビネットに先頭から順次乗り込み、チケットから行き先を読み取って運行する。
似たような乗り物で昔はタクシーという運送機関があったそうだが、今はひとまず置いておこう。
要するに、何がいいたいかというと学園モノによくあるような状況やSから始まるナンチャラdaysのような電車の中の出会いが恋愛に発展する…なんてシチュエーションは現代じゃまず起こり得ない。
友人と待ち合わせなんてことも出来なければ、駅を無駄にぶらぶらと散歩するなんてことも出来ない、ただ単に交通だけを目的とする非常にシステマチックなスタイルと言える。
このシステムを考えた人は偉大に違いない。
そういえば以前ラーメン屋でも同じようなシステムでカウンターの一席一席に仕切りを設け、さらには厨房から見えないように暖簾までつけてある一蘭の『味集中システム』というのがあったが、あれは…。
昔は『特許出願中』と書いてあったけど、特許は取れたのだろうか。
話が逸れた。
利便性は目的のためならず、車内に監視カメラ・マイクの類はない。
走行中に座席を離れることは出来ないようになっているし、席と席を隔てる緊急隔壁も装備されている。
それ以上はプライバシーが優先されるというのが社会的コンセンサスだからだ。
まあ、要するに車内は完全なプライベート空間と化していた。
ぼっちにとっては本当にいい時代である。
来たな…
来ましたよ、ぼっちの時代。
これからは常にプライベートタイムを大切にするぼっちが流行る(モテるとは言っていない)
そんなどうでもいいことを考えながらボーっと窓の外を見つめていると、そろそろ学校近辺に到着し、電車は順調に低速レーンへ移行した…
その時だった。
「…さっむ」
突如として吹き上げた極寒の風に、車内では季節外れの暖房が作動する。
何事ぞ!?とあたりを見渡すと前の車両にはまたもや見覚えのある男女のペア…あっ(察し)
男の方が目を閉じて片手で礼儀的に謝罪する。
魔法力の高い魔法師は事象干渉力も強いとは言うが…この距離が離れていても干渉されるとか本当化物レベルだなアレ…。
そんな俺の驚愕とも驚嘆ともとれる感想を他所に、電車は駅へと到達した。
あー、3話目ですね…3話目
というか、この回3話と銘打っても一ミリも話が進んでないという逆に何で!?みたいなところがあるんですよね。(何で?)
まあ、そんなことは置いておいて、ようやく八幡のCADが登場しましたね!!(それでもまだ魔法は使っていない) 実を言うと八幡はもう一つCADを所有しているのですが、まあ、それはそれ。
今回出てきた特化型CADは普段は基本使うことは無いのですが、特化型を使わないと使えない魔法を使用する場合(若しくは特化型を使用した方が良いと判断出来る状況に置かれたとき)のみ補助的に八幡は使ってる、という裏設定というかイメージがありましたまる。
そんな裏話はともかく、今回は話がノズパスレベルで進まない展開になり申し訳ございません。そんな中でここまで読んでくださった心の広さが十師族並の皆様に感謝を込めて、次回もまた読んで頂けることを願っております。
勿論、ご意見ご感想も是非是非お待ちしておりますので、よろしければコメントなど残して行ってもらえると幸いです。(切実)
次回予告!!チーム結成!!司波兄さんチーム!!絶望的なまでにネーミングセンス無い名前!!メカは少年の心を熱くする!!乞うご期待!!(ちなみにそんな話はない)