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そして早くも昼休みである。
授業を終えて教室から出た俺らを待ち構えていたのは司波兄妹であった。
司波妹のニコニコした笑みと、腕を組み、仁王立ちをしている司波兄はさながら死刑執行人のようである。もうなんか軍服着て鞭持たせたら似合いすぎるんじゃないかと思う。
まあ、学校なんて監獄みたいなもんだからこの想像にさして飛躍はないだろう。アルカトラズとかイフ城とかそんな感じだ。早く救世主が来てくれればいいのに。
「さあ、八幡。行きましょうか」
そう言われて自分の血の気がさぁっと引くのがわかった。やべえ、連行される。
何が楽しみなのかは知らないがウキウキと俺を連行して生徒会室に行こうとしている司波妹を尻目にチラリと兄を見る
(…諦めろ)
鬼!悪魔!!シスコン!!司波達也!!
無惨にも目を瞑り首を横に振る司波兄に人のココロはわからない。
むしろこの兄妹は兄妹になったという事実の選定からやり直した方がいいレベル。
だが、司波兄は俺のそんな心中を勘酌するわけもなく、無表情ながらに口を開いた。
「行くぞ」
ふええ…ここには救いが無いよう。
・
・
・
足が重かった。
たかが2階分の階段を上がったくらいで疲れる程貧弱ではないのだが、前に足を出したくないという意味では同じことだ。
4階の廊下、突き当たりが目的地。
見た目は他の教師と同じ、合板の引き戸。
違いは中央に埋め込まれた木彫りのプレートと、壁のインターホン、そして巧妙にカモフラージュされているであろう数々のセキュリティ機器。
プレートには『生徒会室』と刻まれていた。
司波妹がインターホンを押しノックをすると、明るい歓迎が返された。
…行きたくねぇ、かと言ってここまで来て逃げるのも癪にさわる。
要は俺は単なるこの2人のダシなのだ。もうねスーパーに並ぶワカメや昆布に比企谷が追加されるレベル。大人しく三歩後ろで黙っていよう。
引き戸の取ってに司波兄が指を掛け、妹を庇う様に体を傾けながら戸を開く。
「…お前…」
「何か?」
俺の態度が勘に触ったのか、司波妹が静かに怒気を放つ。
すげぇ睨まれた!いや、表情は笑ってるのに怒気放つとか…
というか、ブラコンとかマジでキモいです。肉親にベタ甘とか引くわー。ないわー。
ニコニコと威嚇してくる司波妹を司波兄が押し留めてくれている間に、俺はガラッと戸を開く。
「いらっしゃい。遠慮しないで入って」
正面、奥の机から声が掛けられた。
何がそんなに楽しいんだろうと聞いてみたくなる笑顔で、七草会長が手招きをしている。
司波兄妹を先に通した後とりあえず、気持ち会釈をして彼らの後ろについた。
…しっかし、いつにも増して司波妹の洗練された礼儀作法は完璧に決まっている。
なんなら会長ですら『えーっと…ご丁寧にどうも』とかたじろいでるし。
他にも2人の役員がいたが、すっかり司波妹のかもし出す雰囲気に飲まれている。
…こいつ、何で会長達を威嚇してんの?最近のキレやすい若者なの?盗んだバイクで走りだすの?
「どうぞ掛けて。お話は、お食事をしながらにしましょう」
司波妹の先制攻撃にペースを崩されたのか、七草会長の打ち解けた口調が影を潜めた。
指し示されたのは多分、会議用の長机。
今時、情報端末が埋め込みになっていないのは、飲食用途を見越してのことなのか。
なんにせよ、学校の備品としては珍しい木製の机を前に、司波兄妹は席に着く。
しかしまあ、珍しいな…普段こういう場合大抵無理にでも司波妹は兄を上座に座らせようとしていたのだが、今回は流石に司波妹の方がメインという自覚でもあるのだろうか、司波妹が我慢して上座に座っている。
さて、俺はどこの端っこに座ろうかしら…。
四隅のうちどこかを守ってるとか俺マジ四聖獣の1人、と思っていると強い視線を感じた。
視線の方向を振り向くと、司波妹が司波兄の隣と俺を交互に見つめながら司波兄の隣に着席するよう目線で促している。
「え、いや、俺は端がいいんだけど…」
そう言っても司波妹が目線を外すことはない。
チラチラと催促してその視線から逃れようと試みたが、司波妹は相変わらず俺を見つめたままだ。
何、この子…愛しいお兄様を上座に座らせられなくて不機嫌なのは分かったけど俺に当たられても困るんですけど…。
「…比企谷、諦めろ」
さらに司波兄のトドメである。
「…分かった、分かったからその目やめろ」
まぁ、どこに座っても発言なんかしないんだから同じだ。
なら、ここは司波妹に逆わない方がよかろう。
渋々ながら折れた俺は司波兄の隣に腰をかけた。
「お肉とお魚と精進料理、どれがいいですか?」
メニューが複数あるとおもしき自配機に加えエナジードリンクが各種揃えられている自販機…こいつはヤベエ…ブラックの匂いしかしない。
司波兄妹が精進料理を選び、俺もそれに追従した。
後は待つだけだ。
ホスト席に七草会長、そのとなりに三年の女子生徒、そして俺と司波兄妹の前に風紀委員長と、確か入学式の時に辛うじてで覚えた中条あずさとかいう女子が席に着くと、多少調子を取り戻した七草会長から順々に各メンバーの自己紹介がされた。
丁度、書記の中条先輩たらいう先輩の紹介を終えた後、ダイニングサーバーからの準備完了の知らせが表示され、無個性ながら正確に盛り付けられた料理がトレーに乗って出てきた。
合計6つ。
1つ足りない…と思っていたら、風紀委員長たる渡辺摩利先輩がおもむろに弁当箱を取り出した。
…あらやだ!意外!!家庭的!!
普段ツンケンしてそうな女子がふとしたところで見せる家庭的ポイントにはグッときますね…これがギャップ萌えなのかしら。
「何だ比企谷、私の弁当に何か…ああ、意外だったか?」
「…あ、いえ、別に」
口元をニヤつかせながらからかわれているのは分かるのだが、悲しいかなこういう経験が少ないからかどもった返事になってしまう。
だってほら、七草会長なんてこっちを見ながらニマニマしてる辺りもう本当アレ。
「私たちも明日からお弁当に致しましょうか」
司波妹の一言で視線が外れる。
「深雪の弁当はとても魅力的だが、食べる場所がな」
「あっ、そうですね…まずそれを探さなければ…」
…うわぁ、ほんとなんなのこの2人。
ちょっとアブナイ人なんじゃないの?関わらんとこ…。
「…まるで恋人同士の会話ですね」
会計の市原鈴音先輩の発言に司波兄が続ける。
「そうですか?血の繋がりが無ければ恋人にしたい、と考えたらことはありますが」
ギブ、
さっきのやりとりだけでラーメン無限大どころか次郎三杯完食くらいの重さだったのに、さらにバターギタギタ野菜マシマシ化調マシくらいの重量だわ、これ。
「…もちろん、冗談ですよ?」
「………………お前が言うと冗談に聞こえねぇよ」
小声でつぶやく俺を、司波兄は『余計なことは言うな』という目で睨みつけてくる。だから、目が怖ぇっつの。
閑話休題。
司波兄妹の小粋なジョークタイムも終わり、昼食も大方が片付き終えた。そろそろ本題に入りたい。
俺は会長や司波兄妹達と仲良く昼食を取りに来た訳ではないのだ。
「そろそろ本題に入りましょうか」
高校の昼休みなんてそう多くある訳でもないし、いい頃合いだろう。
俺も何故呼ばれたのか聞いておかないといけない。
フォーマルな口調に直した会長の言葉に、司波兄妹にそろって頷いた。
「当校の生徒会は伝統的に、生徒会長に権限が集められています。一極集中型と言ってもいいかもしれません」
会長の口調は説明調ではありながらどこか諭すように続ける。
「生徒会長は選挙で選ばれますが、他の役員は生徒会長が選任します。解任も生徒会長の一存に委ねられています。各委員会の委員長も一部を除いて会長に任命権があります」
「私が務める風紀委員長はその例外の1つだ。生徒会、生徒会部活連、教職員会の三者が三名ずつ選任する風紀委員で選ばれる」
「と、いう訳で、摩利はある意味で私と同格の権限を持っているんですね。
さて、この仕組み上、生徒には任期が定められていますが、他の役員には任期の定めがありません。生徒会長の任期は10月1日から翌年9月30日まで。その期間中、生徒会ら役員を自由に任免出来ます」
…なんとなく話が見えてきた。要するにこれは司波妹の生徒会への勧誘だ。
司波兄妹もそこは理解しているらしく再度、頷いた。
「これは毎年の恒例なのですが、新入生総代を務めた一年生は生徒会役員になってもらっています。趣旨としては後継者育成ですね。そうして役員になった一年生が全員生徒会長に選ばれる、という訳ではありませんが、ここ5年間はこのパターンが続いています」
「会長も首席入学だったんですね?流石です」
「あ〜、まあ、そうです」
目を泳がせ、僅かに頰を染め、歯切れ悪く会長がドモる。
司波兄のお世辞程度で照れるような人物には見えないが、もし、これを演技でやっているのならば相当の役者レベルである。
「コホン…よって深雪さん、そして比企谷くん。私は貴方達が生徒会に入ってくださることを希望します」
…時間が止まった。いや、勿論比喩だが、頭の理解が追い付ついていない。
ワンクールのアニメで例えるなら3話くらい飛んで見るレベル。
「…は?いやいや、ちょっと待って下さい」
俺の必死な訴えかけに七草会長はキョトんとした顔になる。
いや、そんな『戦争反対。核武装を放棄せよ』くらい当然のことを言ったわよ、私?みたいな顔されても。
「…深雪はともかく比企谷まで生徒会に入れるのは何かお考えがあってのことですか、会長」
流石の司波兄もこの会長の発言には幾らか驚いたのか、興味深そうに口を開く。
すると会長は自身の携帯端末とおぼしき媒体から1つのページを取り出した。
「これは以前私達生徒会が学校側に頼まれて行った入学生用の校内アンケートの中で、ある男子生徒の解答例です。…読みましょうか?」
会長はちらりとこちらを見る。
それを首だけで丁寧に遠慮すると、会長は周りにも見えるように中央に表示した。
ここまでくればもうこのページが何か分からんではない。コレは間違いなく俺が書いたアレだろう。
しかしこうして会長から提示された文章を読んでいると、自分の文章力がまだまだということに気づかされる。小難しい単語を並べれば頭がよさそうに見えるんじゃないかという、どこぞの売れない作家が考えそうなこすっからい思考が見透かされてる気分だ。
さては、この未熟さが原因で生徒会に呼び出されたのか。
勿論違うよね。知ってました。
会長はいちいち芝居がかった風に頭に手を当てながら言葉を続ける。
「この回答を頂き、正直なところ私は驚き、そして考えさせられました。当校にこんな考えを持っている生徒がいるなんて、とか、彼はどのようにすればこの女性に負担を背負わせて当然みたいなヒモ感覚から更正してくれるのだろう、とか!」
ひどい仰りよう。
「いや、それだとただのヒモじゃないですか…俺はヒモじゃなくて専業主夫になりたいんですが…」
「…違いがわからないわよ」
俺の作文を読み先程から頭を抱えていた司波妹が小さく呟いたが、俺も違いがよくわからない。でもまあ、ヒモより専業主夫の方が聞こえがいいじゃないか。というか働きたくない。
すると渡辺先輩が会長の言葉に追従するように口を開く。
「一度はこちら(風紀委員)で更正を引き受けることも考えたが、生憎選任枠の目星い人材は既に埋まってしまっているからな、生徒会推薦枠はまだだが、それはそれ、考えあぐねた結果、一つ君の興味深い部活歴に目がついた」
あぶねー、俺このままだと風紀委員に粛清されていたのか…本当、誰かは知らんが枠を埋めて
くれた人に感謝感激雨霰である。
ん??部活…歴?
俺の苦虫を踏み潰した表情とは別に、司波兄は『ああ、なるほど』と小さく呟くと頷きながら言葉を繋ぐ。
「つまり、''奉仕部''のようなことをこの学校でも始まるのですね」
「まあ!!」
「なっ!?!?」
司波妹と俺の驚嘆と悲鳴が重なった。もちろん後者が俺。
奉仕部。
それは俺が中学時代に入部させられていたワケのわからない部活で''持つ者が持たざる者に慈愛の心を持ってこれを与える''確か、奉仕部部長曰く、''飢えた者には与えるのではなく、魚の取り方を教える''のだとかなんとか。
まあ、ようするにボランティアをする部活だ。生徒のお願いを聞き、その手助けをする部活、それが奉仕部である。
アレを…またやる…だと…!
「ほう、随分と珍しい部活に入っていたようですね奉仕、ですか」
「奉仕って言われてもすぐパッとは思い付きませんよね、一体どんなことをする部活なんですか?」
俺が驚愕に打ちひしがれていると、会計の市原先輩と書記の中条先輩が質問する。
すると、それに答えるように司波兄が続けた。
「奉仕部とは生徒が抱える問題の解決を仕事として、依頼されたものに対して部員が解決する、ボランティアと便利屋が兼用されたような部活です」
「お前が言うのおかしいでしょう?いやまあ、だいたい合ってんだけどさ」
司波兄の説明に渡辺先輩が口を挟む。
「ほう、君は随分と詳しいんだな」
「ええ、俺も深雪も何度か利用していましたから」
何度か…ね、この兄妹の奉仕部利用率は比較的少ないにしても、持ってくる問題の案件はどれもヘビー級に重く、よく悩まされたものだ。
淡々と司波兄が言い終え、渡辺先輩達を納得させると会長は先程の演技地味た口調はなりを潜め、真剣に話を続けた。
「…残念ながら、今、当校において一科生と二科生の間に溝が出来ていることは新入生の3人ももう理解されているかもしれません…そこで少しでもその溝が埋まるように、この奉仕部を通して互いの悩みを解決していって欲しいと考えています」
会長はチラリと司波妹を見る。
司波妹は手元に目を落とし、何か思い詰めた瞳をしていた。
…なんだろう、この先程からの司波妹らしからぬ感じは、何かを言いたそうではあるが、言わずに黙っている。
会長は再びこちらに視線を戻した。
「と、言う訳で比企谷くんには生徒会の直属でこの奉仕部に入ってもらい、問題解決のための手助けをして欲しいのです」
「手助けって…そんな大きな問題の解決なんて出来るんですかね?」
「それは…今後の努力によるところが大きいでしょうね」
「…それって解決方法ですか?」
俺が思う限りでは努力というのは最低の解決方法だ。
もう頑張るしかない、その他のどんな要素も入りえない、それは逆に言えばもはや為す術なしという意味でしかない。
はっきり言って無策と変わらないのだ。いっそ見込みがないから諦めろと放置したほうがよっぽど楽だ。無駄な努力ほど虚しいものはない。だったらその問題は諦めて、その分の時間を他のことに注いだ方が効率がいい。
「努力は立派な解決方法ですよ。何事もやる前から諦めていては何も成し遂げられません」
会長が俺の考えを読みとったように言う。この人エスパーかよ。
こちらからの反論が特に無いと分かると、会長は向き直り改めて告げた。
「それでは2人とも、改めて聞きます。引き受けて頂けますか?」
会長の問いに答えはノーと告げたいのは山々なんだが、やらないと言ったところで、どうやっても逃げられる気がしない。
くっ…このままだとまたこんなところで変な時間を使ってしまうことに…。
俺がそれでもなんとか逃がられないか逃げ道を模索していると、おもむろに司波妹が口を開いた。
「会長は、兄の入試の成績をご存知ですか?」
「ええ、知ってますよ。凄いですよねぇ…正直に言いますと、先生にこっそり答案を見せてもらったときは、自信を無くしました」
…ちょっと、この学校、個人情報管理とか大丈夫なの?ガバガバ過ぎない?べ●ッセでももう少し管理体制ちゃんとしてるぞ。
「…成績優秀者、有能な人材を生徒会に迎え入れるのなら、私よりも兄の方が相応しいと思います」
「おいっ、み」
「デスクワークならば、実技の成績は関係ないと思います。むしろ、知識や判断力の方が重要なはずです」
ふむ、なんとなくコイツが言いたいことが見えてきた。…だが、少し意外だ。俺が知る限りお兄様大好きブラコン少女なコイツがそのお兄様の言葉を遮ってまで自分の主張を通したところを少なくとも俺は見たことが無かった。
「私を生徒会に加えていただけるというお話については、とても光栄に思います。喜んで末席に加わらせていただきたいと存じますが、兄も一緒にというわけには参りませんでしょうか」
当の司波兄は顔を覆い天を仰いでいる。
分かるわーその気持ち、むしろ俺と変わって欲しいまである…ん?変わる??
そうか!生徒会枠を変ればいいのか!!そうすれば司波妹も愛しのお兄様と生徒会に入れてハッピー、俺も余計な仕事をしなくてハッピーラッキーポピパパピポパーとwin winの関係じゃないか!!
「残念ながら、それはできません」
え?ダメなの?
その回答は会長ではなく、隣の人物が答えた。
「生徒会の役員は一科の生徒から選ばれます。これは不文律ではなく、規則です。この規則は生徒会長に与えられた任免権に課せられる唯一の制限事項として、生徒会の制度が現在のものとなった時に定められたものなので、これを覆すのは事実上不可能です」
淡々と、どちらかと言えばすまなそうに、市原先輩は答えた。
どうやら彼女も一科と二科の差別意識にはネガティブな考え方を持っているのだろう。
「…申し訳ありませんでした。分を弁えぬ差し出口、お許しください」
…あの司波深雪が謝罪している。割と珍しいどころか本当に珍しい。
これも市原先輩が二科生に対する理解があったからこそ、すんなり司波妹も謝罪出来たのだろうが、アレ、一度自分が正しいと思ったら死んでも頭下げないタイプだぞ…主に俺に対しては特に。
「ええと、それでは深雪さんは書記として、比企谷くんは…特別生徒会役員として、今期の生徒会に加わっていただくということでよろしいですね?」
「…なんすか、特別生徒会役員て」
なんだかまたワケの分からない役職に就かされそうだったので釘を打っておく。
本当なんだよ特別生徒会役員て…英語で言えばSpecial役員、なんか優れてるっぽく感じるが…(全く英語で言う意味はない)
「特別生徒会役員は今期から導入される役員制度の1つなんだけど…活動内容は深雪さんと同じく後程説明するわね!」
会長は舌をチロッと出しながら満面の笑顔でそんなことをのたまわれた。
おおう…なんなの、なんか俺や司波兄と司波妹の対応に差を感じる気がするんだけど…これが世に言う男女格差なのかしら…
そんな本当にどうでもいいことを俺が考えている間に話は進む。
「深雪さん、もし差し支えなければ今日の放課後から来ていただいてもいいですか?」
俺の意識がまるっと抜かれていた。こんな横暴許されていいはずがない!ここは断固として俺の意思を示す時である。
「あの…」
「比企谷くんも今日放課後に予定とか…ある?」
疑問形だった。というか会長、その言い方だと俺に予定なんてものがあるのかと言われてるようなんですが…日本語って不思議!!
「わかりました。放課後は、こちらに伺いましたらよろしいでしょうか?…八幡もいいわね?」
「…はい」
司波妹に促され頷いてしまった。おい!俺の意思!!全然示されてねぇ!!
などと、俺が諦めムードに突入している最中、渡辺先輩が唐突に口を開く。
「…昼休みが終わるまで、もう少しあるな。ちょっといいか?風紀委員会の生徒会選任枠のうち、前年度卒業生枠がまだ埋まっていない」
「それは今、人選中だと言っているじゃない。まだ新年度が始まって一週間も経っていないでしょう?摩利、そんなに急かさないで」
七草会長が唐突に話し始めた渡辺先輩に注意するも渡辺先輩は続ける。
「確か、生徒会役員の選任規定は、生徒会長を除き一科生を任命しなければならない、だったよな?」
「そうよ?」
ニンマリとした意地の悪い笑顔で見つめるは…ああ、なるほど、生徒会ではダメでも風紀委員ではあれば二科生を採用してもいいわけか。
そんな中俺が気づいたことを察すると渡辺先輩は続ける。
「おや、察しがいいな比企谷。その通り、私達風紀委員は司波達也くんを生徒会枠で指名したいと考えている」
「摩利、貴女…ナイスよ!」
「はぁ?」
七草会長の歓声にいつもの司波兄らしからぬ間の抜けた返事。
ん…まてよ?さっき渡辺先輩は目星い風紀委員枠は埋まってしまったから俺を風紀委員で扱うことはやめた、と言っていた。ということは、もし、奴が二科生じゃなければ今頃呼ばれてたのは…やめよう、これ以上考えていたら恐怖で震えそうだ。ありがとう司波兄。お前の犠牲は30分くらいは忘れない。
「そうよ、風紀委員なら問題ないじゃない。摩利、生徒会は司波達也くんを風紀委員に指名します」
いきなり過ぎる展開に流石の司波兄も動転している。
いいぞ、もっとやれ(手のひらクルー)
「ちょっと待って下さい!!俺の意思はどうなるんですか?大体風紀委員が何をする委員会なのかも説明を受けていませんよ」
司波兄は無謀な抗議に身を乗り出しているが、当の会長や渡辺先輩はどこ吹く風。取り扱われていない。
「妹さんや比企谷君にも生徒会の仕事について、まだ具体的な説明はしておりませんが?」
「…いや、それはそうですが…」
というかもう市原先輩にすら司波兄の抗議は跳ねられているし…もう一周して見ていて哀れなレベル。
だが、まあ、助ける義理も手段も無いし、ここは見物を決め込むことにしよう。
「まあまあ、リンちゃん、いいじゃない。達也くん、風紀委員の仕事は魔法使用に関する校則違反者の摘発と、魔法を使用した争乱行為の取り締まりです。いわば、警察と検察を兼ねた組織ね」
「すごいじゃないですか、お兄様」
「…まあ、お前向きの役職なんじゃねえの、知らんけど」
「いや、深雪…そんな『決まりですね』みたいな目をするのはちょっと待ってくれ…それに比企谷、お前今の説明を聞いていたのか?風紀委員は魔法が使用された場合、それを力ずくで止めなければならない仕事なんだぞ?俺は実技の成績が悪かったから二科生なのにそんな仕事こなせる訳ないだろう」
いや…聞いていたからこそお前向きだと思ったのだが…
そんな司波兄の主張は渡辺先輩にあっさり返されてしまう。
「構わんよ」
「何がですっ?」
「力比べなら私がいる…っと、そろそろ昼休みが終わるな。放課後に続きを話したいんだが、構わないか?」
確かに時計を見ると、そろそろ昼休みが終わりそうな時間である。
司波兄はこの世の理不尽に苛まれながら悔しそうに頷いていた。
うんうん、分かる分かる、本当この世の中って理不尽。
俺もこの理不尽に対し''明日から頑張る''をスローガンに掲げて抗っている。
明日から頑張る。いい言葉だ。毎日でも言いたいくらいに素敵な言葉だよな!!
…それにしても司波兄の横でガッツポーズとか司波深雪さん、愛しのお兄様がほぼ100%風紀委員着任にすげえ嬉しそうじゃねえか…いや、まあいいことなんだけどね。
ボンジュール!!お読みくださいましてありがとうございます!!
あー、7話目ですね7話目。クソ遅ながら7話目です。…ちなみに、フランス語にしたのには何の意味もない。
今回、遅くなった理由??…それは、単に8話目がまだ全然出来て無いからなんですよね…。
どの位出来ていないかというと。
12月10日 スタート
↓
現在 3行のみ進行
このくらい進んでない!!と、いう訳でして7話目もそれに伴い遅れた次第であります!!(進めろ)
と、まあ、こんな裏事情はともかく!!7話目のことですが、なん…だと…奉仕部を…一高で??…
この差別と酒と女と金が全ての一高で…??…なんだよ、一高、芥川の小説かよ!この世の地獄か何かなのかしら??
まあ、冗談はともあれ、二科と一科の溝は七草会長的にもなんとかしておきたい問題なのでしょう。
ここまで来て何だけれど…よく、関係性が不鮮明と言ったご意見を頂いたりするんですが…f●oみたいにマテリアルでも挟んだ方がいいのかしら…
さて、ここまで読んでいただいた皆様に感謝を込めて、また次回も読んでいただけますように。
コメントを残してくださる方、いつも本当お世話になっております!!そこから次回やもう少し先の話のアイデアを頂いたりしております!!…いや、本当、ここでコメントしてくれる人がいるからまだ話が書けるまである。マジ、感謝。本当に。
と、いう訳で、是非、お暇があればコメントしておいてくれると大変助かります。
嘘次回予告
君が比企谷か、七草からは話は聞いているーー
だって、お兄様と正面きった戦闘が出来るのなんて貴方くらいでしょ?八幡ーー
…何やってんだよ、福ちょう…福会長!!ーー
比企谷、聞きたいことがある。お前が以前スラップ同然となった特化型CADの修理を俺に依頼してきた時の話だーー
事故だよ、事故、魔法の使い過ぎによる故障だ、それ以上話すことはねえーー
CAD…特にお前のアレは多少強力な魔法を使ったところで、スクラップになるようなことはない、そうだな、例えば''戦略級魔法''の連続使用なんてことでもしないとな…ーー
…事故だっつってんだろがーー
今回はまだ書いてないから本当に嘘予告。