魔銃使いは迷宮を駆ける   作:魔法少女()

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第九話

 時は流れ……世は大迷宮時代。

 人々はモンスターが生まれ落ちる混沌の坩堝に富と栄誉を見出した。

 人々は神々にファルナと言う神の恩恵を授かり眷属となって迷宮に足を踏み入れた。

 数多のモンスター、数多の危険、ソレを乗り越えた先に存在する確かな富と栄誉。

 人々は迷宮に夢を求める。

 そんな中、二人の冒険者がダンジョンの中に潜っていた……

 ヒューマンの少年()()()()()()()()()と、小人族の少女()()()()()()()()()()()の冒険譚がー……

 

 

 変なテンションで誤魔化すのやめよ。今どうしてるって? 普通にモンスターに追われてますが何か?

 

 あぁ、そうそう。実は新しい魔法も覚えたし、基礎アビリティの魔力も伸びたからマガジンサイズも強化されたんだよね。

 

 最初は『10発』×『2マガジン』って感じだったんだけど、今は『15発』×『3マガジン』だよ。魔力は56Iね。伸びパネェ。最終的に999Sが最高らしいし、そこまで伸ばしたらマガジンが『200発』×『100マガジン』とかいきそう。

 

 後、キューイ……あぁ『サモン・シールワイバーン』で召喚したちっこいワイバーンの事ね。キューイの利用法もちゃんと確立した。

 

 服の内側にキューイ用の入る場所を用意してそこに放り込むでしょ? んで、モンスター近づいてきたらキューイが『キュイキュイ』鳴いて知らせてくれる。つまりモンスターレーダー状態……戦闘能力? 小動物サイズのワイバーンだよ? はっきり言うけどゴブリン相手させんのも無理だから……

 

 『キュイキュイ!』となんかやってやるぜみたいな事を叫びつつ、キューイがゴブリンに突撃してー……まるで蚊を叩き落とすかの様にゴブリンにペシッってされてた。その後ゲシゲシと踏みつけられてた。迷わず頭を吹っ飛ばして(ネギトロに)してやって助けた。

 

 なおキューイ本人……本竜? は普通に起き上がってきてパタパタと近づいてきて誇らしげに胸を張ってほめてほめてーみたいに甘えてきた。可愛い……可愛いけど、アホ過ぎる……

 

 キューイについては基本服の中で大人しくして貰って、周りには見せない様にしてる。なんでも【ガネーシャ・ファミリア】と言う所に調教(テイム)された竜種が一匹居るらしいがそれ以外の場所に竜が居るなんて知れたら大変だから、らしい。召喚する前に言って欲しかったなぁ……キューイ、見た目は小動物で攻撃能力が致命的に低いけど、耐久だけは()()()()()()なのか殆どダメージ入らない所為で死なないし……しかも召喚時間とか無い感じ。死ぬまで居続けるタイプ。要するに意図的に戻せない。何それ面倒くさ……

 

 『ミリカン』ではとりあえず召喚してパタパタと必死にプレイヤー(ミリア)に追従するのを眺めて愛でるぐらいしか使い道が無かったが……まぁ『モンスターレーダー』になるならまだマシね。

 

 ベル君もすっかり成長して……ゴブリンやコボルト3~4匹程度なら無傷で倒せるぐらいにはなったし。

 

 俺? 『ピストル・マジック』でパンパンやるだけですよ。『クラフト・マガジン』に関してはオートっぽい。と言うか忘れてたけど『ニンフ型』って初心者用って事で自動で『マガジンクラフト』してくれるんだったな。意識を集中させるとその分短時間で完成するが意識せずとも戦闘中に勝手にクラフトされるっぽい。ミリアちゃんとかだと手動だったし便利だなぁ……初心者向けのアバターなだけはある。まぁ自動クラフトは時間かかるし。

 

 って違う、考え事して意識逸らしてたけど今モンスターから逃げてるんだった。

 

 あ? ベルくん? さっきの分かれ道で蹴っ飛ばして別の方へ逃げさせました。

 

 だってミリアちゃん足遅いしね。一緒に逃げてたら追いつかれちゃうじゃん?

 

 

 

 

 

 

 時を遡ること1時間ほど前。

 

「ねぇミリア、下の階層に行ってみない?」

 

 モンスターを倒し終わり、転がった魔石を拾い集めていると、ベルが唐突にそんな風に口を開いた。

 

 原因は分るぞ。モンスターと戦う内に気が付けば付近と言うか直ぐ近く、見える範囲に下の階層に続く階段があったのだ。其れを見てきっと『下の階層行けるかな?』とか思ったんだろう。

 

 ゆっくり振り返ってベルを半眼で見る。

 

「ベル、今自分が何階層に居るか覚えてますか?」

「えっと……三階層だけど……」

 

 そう、現在二人で三階層でモンスター退治である。

 

 出現するのは3種類のみ。『ゴブリン』『コボルト』『ダンジョンリザード』のみ。

 

 一階層下に下りるだけでもモンスターの強さはかなり違う。一階層のゴブリンが赤ん坊に見えるレベルで動きが違う。見た目一緒だから違和感が凄い。

 

 普通の冒険者なら一週間かけて一階層で慣らし、二週間かけて二階層目で階層ごとの強さの区分を見分ける。

 冒険者になって一ヶ月程でようやく三階層に突入と言うのが普通の冒険者である。

 

 まぁ、ソレは単独(ソロ)で潜る冒険者の話だし。魔法を一つも覚えてない平凡なヒューマンの話だそうだ。小人族(パルゥム)であるミリア(ミリアはこの世界ではパルゥムとかいう種族扱いらしい)が魔法を覚えて後衛として活動できるからこそ、エイナさんも『三階層までは大丈夫だと思うよ……まだ四階層以下は入っちゃダメだからね?』と口を酸っぱくして言ってくる。

 

 冒険者は冒険をしてはいけないらしい。そんなん冒険者じゃネェよって言うかもだが、冒険ってのは要するに命掛けの~と言う接頭語が着く。命を賭ける訳で……失敗すれば死ぬ。だから命を大事にと言う感じで言ってるんだと思う。それに冒険するならちゃんと準備して勝率を上げなきゃなんだよなぁ。

 

 転がっていた魔石を全部拾い集め。ポーチに入れてからベルを振り返って肩を竦める。

 

「エイナさんに怒られますよ?」

 

「でも、ミリアの魔法もあるし……ちょっとなら大丈夫なんじゃ」

 

 ……そう言われると結構アレだ。俺も実はいけそうだなーとは思ってる。

 

 だって三階層のモンスターも容赦なく即死させる威力の魔法だし。はっきり言って燃費も最高である。速射性も悪く無く、『キューイレーダー』があるからモンスターの不意打ちも無い。と言うか『キューイレーダー』が割と優秀で壁の向うだろうが距離的にかなりの範囲をカバーしてくれる。

 

 うむ。ぶっちゃけいけそうだな。

 

「はぁ……行くのは良いですが。様子見にしましょう。モンスターと一度戦うだけ……勝てないと判断したらまず逃げましょう」

 

「うんっ」

 

 ぱぁーっと嬉しそうな笑みを浮かべたベルに苦笑を浮かべる。ヤバイとは思うんだがどうにもベルの意見に反対する気になれない。まぁ仕方ないなとは思う。ベル君の笑顔が素敵過ぎるのだ。無論ヘスティア様も素敵である。但し抱き枕代わりに抱き締めて寝るのはやめろ。それをしたいならその肉袋(おっぱい)削げ。窒息しかけるんだよ割とマジで。どうしてあの女神は目覚めるタイミング辺りでおっぱいで溺死させようとしてくるのか……いや目が覚めるから良いんだけどね。最近は起こさずに抜けだす技術も身に着けて割と問題無くなったし?

 

 ……なんつー変な技術みにつけてんだよ俺は……。

 

 

 

 

 

 少し時を飛ばして。

 

 なんだかんだ、五階層まで下りてしまった。ごめん正直言うと四階層のモンスターも即死させちゃってさぁ……要するに今までの一階層から三階層と変わらなかった。

 

 視認範囲外に居るモンスターも『キューイレーダー』がしっかりキャッチ。あっちからくるーとキューイが教えてくれる。んで俺はソッチに銃口向けて置きAIMしてるだけで良い。来たら『ファイアッ』である。ベル君も割りと問題なく数匹相手してるし。問題は無さそう?

 

 五階層と言えば『ウォーシャドウ』と言う危険なモンスターが出るらしいので、ソイツとエンカウントしたら迷わず逃げると約束して五階層に下りた訳なんだが……

 

「モンスター居ないね」

「なんででしょうね」

 

 完全に拍子抜けと言った感じのベルに同意する。

 

 おかしいんだよな、四階層ではかなりの頻度で出現していたモンスターが全く見当たらない、いや居ない訳ではないのだが……さっきも数匹ほどキューイレーダーのに反応があった。ただし隠れているのか反応は合っても此方に近づいてくることもない。

 

 階層が変わったからモンスターの動作も変わったって事か? エイナさんの話では下に潜るほどモンスターは狡猾になると言っていたし。もしかしたら待ち伏せでもしてるのかもしれない。まぁ、残弾にはかなり余裕がある。というか、現在装填されてる数も含めると60発はある。要するにカンストしてる。

 

 そんなことを考えながら索敵していると、キューイがキュイキュイ言い出した。なんかこっちに来るらしい。弱いのとヤバいの。弱いのが沢山、強いのが少し。

 

 そういえば、キューイの言ってる事がなんとなく分かるのは良いんだが……割と曖昧な感じだし完全には当てにならんのよなぁ。数とか正確にはわかんないし。沢山とか少しとか。数を正確におしえてくれよ……いや、普通にそれだけでも便利何だけどね。

 

「ベル、モンスターがいるみたいです」

「また、気配だけかな?」

 

 そのモンスターについてベルに伝えておく。ベルは先程からモンスターがいると言う報告を何度も聞いているのに一向にモンスターが出ないことで俺の言い分に半信半疑っぽい。仕方ないよなぁ。

 

「いえ、今回のはさっきまでとは違ってヤバいのが居るそうです。とりあえず逃げますか?」

 

 馬鹿な俺はミリカンの魔法を過信してたんだろう。黙ってベルの手をとって一目散に逃げるべきだった。

 

 キューイが『ヤバい』なんて表現をしたのを甘く見てたのもある。ゴブリンにもいいようにやられてしまうキューイだが、ミリカンでは条件さえ揃えば機甲師団程度なら壊滅させれる強さをもっていたし、見た目は小動物的な大きさのワイバーンでも歴とした竜種であり、誇り高く負けず嫌いな所ももっていた。其が怯えた様に『ヤバい』なんて表現をしたんだぞ?

 

 言うなれば()()()()()()なんて考えてたのが悪い。

 

 何があれば中層のモンスターが上層に出てくるんだよ。

 

 ……条件さえ整えれはペット扱いのキューイが無双出来るように。条件さえ整えば中層のモンスターが上層に出てくることも不思議ではないか。

 

 後悔先に立たず。とはよく言ったモノである。まぁ、死に際までずっと後悔し続けていた俺が言うのは片腹痛いって話だがな。


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