魔銃使いは迷宮を駆ける   作:魔法少女()

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第一〇六話

 ベルとアイズさんのダンスが終わったのを見計らい、俺とフィンもダンスを終えて神ヘルメスのもとへ向かった。

 最後までしっかりとエスコートしてくれたフィンに軽く感謝の礼を述べ、その手を放す。ベルが名残惜しげにアイズさんの手を放して自分の手を握ったり閉じたりを繰り返し、アイズさんは緊張していたのか肩の力を抜く。

 流れる様にタケミカヅチ様やミコト、ミアハ様にナァーザさんまで次々にやってきてはベルを微笑ましげに見ているのを見つつもベルの腰をたたく。

 

「どう? 楽しめた?」

「うん、その……夢みたいだった」

 

 夢みたいだった。ね、そりゃ良い事だ。……背筋がぞわっとして思わず周囲を見回す。

 神ヘルメスにアスフィさん、ファルガーさんの眷属二人。アイズさんにフィン、ミアハ様にナァーザさん、タケミカヅチ様にミコトさん。離れたところから近づいてくる桜花。周囲の視線がねっとりと絡みついてくる。

 いつの間にか、囲まれていた。商人連中と、アポロンファミリアの派閥構成員達に、だ。

 

「あの、助けて頂いて、本当にありがとうございました。ミリアもありがと」

 

 やばい、何かが始まる。四方八方から突き刺さる粘っこい視線。まるで()()喫茶店に居るかの様な、異空間に取り残された様な感覚に囚われ、鳥肌が立ち、冷や汗があふれ出す。

 

「ミリア?」

「ッ……!? ぁ、その、ごめん。なにかしら?」

 

 肩を掴まれ、悲鳴が口から飛び出しそうになり。思わずその手を振り払って叩けば、周囲の者達から訝し気な視線を向けられてしまった。なんとか口から絞り出す様に返事を返すも、ベルが心配そうに顔を覗き込んでくる。

 

「大丈夫? その、顔色が……」

「ミリア、少し休んだ方がよい」

 

 ミアハ様が優しく手を差し出してきたのを見て、思わず一歩後ずさった。いや、ヤバい、グルグルする。視界も、音も、ごちゃ混ぜになったみたいで気持ち悪い。

 

「ミリア、本当に大丈夫?」

「……調子が悪そうだな」

 

 何とか言葉を絞り出そうとするも、か細く荒々しい吐息が零れるのみ。喉が干上がって言葉が出てこない。

 心配そうに俺を囲む人たち。そのすぐ外側に広がるドロドロとした絡みつく欲に塗れた視線。そして、掛かった獲物を前に舌なめずりをしているかのような商業ファミリアの者達。これからテーブルの上のパイを切り分ける様な感覚で此方を見つめている。笑顔の仮面の下にうっすらと見える、欲に濁った俗物的な顔が一瞬浮か────パンッと手を叩く音が響いてぐちゃぐちゃになりかけた思考が一瞬だけ真っ白になった。

 

「いやぁ、ベル君、最っ高のダンスだったよ」

「え? あぁ、その、ありがとうございます」

 

 素っ頓狂な調子でベルを褒め称えたのは神ヘルメスであった。その横のアスフィさんが此方を見て眉をしかめており、ファルガーさんの方は周囲に警戒心を向けているらしい。

 

「あの、ヘルメス様も、ありがとうございました」

「喜んで貰えたようでなによりだよ」

 

 破顔したヘルメスが更に言葉を続けようとしたベルを遮る様に手で制し、引き攣った笑みを浮かべて震えながら言葉を紡いだ。

 

「じゃあ、オレはこのあと死んじゃうから」

『『ヘルメスゥ~~~~~~~~~ッ』』

 

 ヘルメスの両肩が同時に掴まれる。背後にはヘスティア様と神ロキが居て、それぞれが左右の肩を掴んでいた。

 次の瞬間には碌な抵抗をしなかったヘルメスの体が広間の片隅に引っ張られていき、ぎゃあああああああっという叫びが響き渡った。ベルが顔色を悪くしながら震え、俺は今の一連の動きのさ中に割れた包囲の外を見た。

 何かを楽しみにしているかのような、期待の眼差しを向ける、対岸の火事を眺める野次馬の如き神々の姿を、見てしまった。

 喉が干上がった。

 

「ミリア、ねぇ、ミリア……」

「ぇ……ぁ……」

 

 ベルに肩を揺さぶられ、ようやく視線を引っぺがせば、ミアハ様が此方を覗き込んでいた。

 

「過呼吸気味だ、ゆっくり息を吐くと良い。そう、ゆっくりとだ」

 

 ミアハ様の言う通りに、なんとか息を吐いて、吐いて……吸う。爆音を上げる心臓が煩く、周囲の喧騒がいつのまにか不自然に消えているのに気づく。再度視界がグルグル回り出し、吐き気が込み上げてきたところで、頭を撫でられた。タケミカヅチ様がどうしたと聞いてくるのを見ながら、近くに見えたベルの袖をつかんだ。

 

「ミリア、大丈夫?」

「えぇ、なんとか」

 

 視界がグルグル回るし、吐き気は酷い。頭の中では警鐘がガンガンと打ち鳴らされ、今すぐこの場を去るべきだと勘が────過去の経験が告げている。

 ダダダッと勢いよく駆けてきたヘスティア様の姿を見て思わず手を伸ばした。

 

「ベル君っっ、今度はボクと──ミリア君、どうしたんだい?」

「アイズたんもうちと踊ろーッ!! 拒否権はなしやァ!」

 

 ベルに伸ばしていた手を俺の方に向け、覗き込んでくるヘスティア様。神ロキはアイズさんに詰め寄り、フィンは周囲を見回してロキの肩を掴んで止めた。

 

「なんやフィン、邪魔すんなや……ん?」

「ロキ、離れよう」

 

 救援の手を差し出す事は無い。か……規模が規模だ、ヘスティアファミリアを救援する理由がない。周囲の皆も異変に気付いて身を寄せる。離れていくのはロキファミリアの面々と、ヘルメスファミリアの眷属の二人。

 残ったのはヘスティアファミリアのヘスティア様、俺、ベルにタケミカヅチファミリアの主神と眷属二人、ミアハファミリアの主神と眷属一人。

 不自然にぽっかりと空いた円形の中心。周囲を取り囲むのは商業ファミリアや商人連中。そしてアポロンの眷属たち。

 その外周には、今から始まる()()()をワクワクと期待の眼差しで見つめる神と、それを諫める眷属達の姿。

 いつの間にか舞台の上にあげられた────いや、処刑台か────俺たちに、大業な仕草で歩み寄ってくる一柱の男神の姿があった。

 

「────諸君、宴は楽しんでいるかね?」

 

 宴の主催者という体はとっている。だが、その張り付けられた笑みの下にドロドロとした執着心が見て取れる。まるであの女の目を彷彿させる色合いに一瞬で胃の中身が逆流する。嘔吐(えず)いた瞬間、袋状の何かを掴まされ、思わずそれの中にぶちまけた。

 

「ミリア君!?」

「ミリアっ、大丈夫っ!?」

 

 背中をさすられ、グルグルと回る視界。嘔吐物がぶちまけられた袋状の物────桜花が着ていた燕尾服の上着だった────から視線を上げれば、哀れみの視線を此方に向けるアポロンと視線が合った。

 喉が干上がり、悲鳴が零れそうになる。────何か失敗をしでかした時にあの女が向ける視線だ。

 

「ミリア、どうしたの?」

「ミリア君、しっかりするんだ」

 

 哀れみと軽蔑の混じり合った視線。さらに嘔吐(えず)いて酸っぱい液体が喉を焼き、痛みと吐き気、眩暈に────過去の光景が走馬灯の様に駆け抜ける。死ぬ? いや、ただのフラッシュバックか────気持ち悪い。

 

 

 アルミアタッシュケースいっぱいに収まる札束。あの女が笑みを浮かべている。無機質で空っぽの雑居ビルのテナント。誰もが一般人を演じる不気味な喫茶店。崖から転げ落ちていく乗用車。ニュース番組で報道されている死亡事故。母親と息子、二人が山道で事故を起こし死亡した。作り物の身分証明書。新しい名前、趣味。美しい美女と交わす接吻、作り物めいた笑みが特徴的な美女だ。札束を投げ渡して部下に後始末を命じる。金属バットでボコボコにされて倒れ伏した糞女。狐耳の狙撃手が放つ銃声。目まぐるしく上下が反転する景色。ビルの側面を駆け抜け、森林を一気に突き抜ける。自然に飲み込まれた住宅街。うるさい蝉の音。飛び散る光の粒子。氷の入ったグラスの奏でる涼しげな音色。ガードレールを車が突き破る音。誰かが誰かを褒め称える言葉。貶す言葉。嘘吐きと誰かが泣いている。だれかが、うそつきってだれかを糾弾している声。

 

 

 目の前がぐるぐると回る中、歯を食いしばって息を整える。

 一瞬か、それとも数時間か。なんとか呼吸を整えた。顔を上げれば、侮蔑の表情を浮かべた神アポロンの視線が飛び込んできて────誰かが俺の視界を遮った。映ったのはヘスティア様の背だった。

 

「やぁ、アポロン。先日は僕の眷属が世話になったみたいだね」

「ああ、私の眷属が大層世話になった様だね」

 

 ネチャリと音が聞こえそうな程の不気味な声。込み上げてくる吐き気を何とか抑え、背中をさすってくれているベルの袖を掴んだ。未だに頭の中は幻聴で一杯だ。蝉の音色は激しく、うるさく。金属の拉げ、擦れる音は耳障りだ。糞女の嘲笑と、他の部下の失笑の旋律。グルグルと掻き回す様に脳内を犯す過去の音が響く。

 

「随分と失礼な眷属(こども)を連れている様だねヘスティア」

「……ミリア君の事かい?」

(ひと)の顔を見て嘔吐するなんて、失礼にも程があるとは思わないのかい?」

 

 嘲笑と失笑が響く。これは脳内で響いてる奴か? それとも周囲の商人と神アポロンの眷属連中のモノか? 判別が付かない。神タケミカヅチやミアハ、ナァーザさんに桜花、ミコトが壁になって出来る限り視線を遮ってくれるも、それでも隙間からねちっこくこちらに視線を向けてくる周囲の者達。

 

「それは悪かったね。ミリア君は調子が悪かったみたいなんだ、無理にダンスをしたせいで体調を崩したみたいなんだよ。な、ミアハ」

「さようだ。今は安静にしておくべきだ」

 

 消えない失笑。蝉の音がうるさい。ベルの服の袖をぎゅっと掴んでいると、優しく手を掴まれた。

 ベルと視線が合う。心配そうで、不安そうで、どうすれば良いのかわからずに動けない困惑した色合い。────あの人が、よくしていた目だ。おとうさんが、ふあんそうに、おれを、みて────なんとか、しなきゃいけない。

 

「ふむ、そうか」

「話はそれだけかい? だったら僕はミリア君を送っていかなきゃいけないんだ。悪いけど────」

「おおっと、まだ話は終わっていない。そちらの眷属(こども)の自己管理能力の低さには驚かされるが、それとこれとは話が別だ」

 

 嘲笑が響く。現実か、幻聴か、判別が付かない。あの女が嗤ってる気がする。でもあの女はもう死んだはずで、でも目の前にあの女と同じ目をしたやつがいて。

 

「私の子は君の眷属()に重症を負わされた。代償を貰い受けたい」

 

 だいしょう。だい、しょう? 代償。そう、代償だ。何か失敗したら代償を支払って、それで……お金? アタッシュケースいっぱいにおかねをよういして……。

 

「言いがかりだっ!? ボクのベル君もミリア君も怪我をしたんだっ! ミリア君なんて無抵抗で一方的に攻撃されたんだぞっ!!」

「手を出したのはそちらの派閥(ファミリア)ではないか? 構成員であるその小人も同罪だろう?」

 

 いいがかり、言いがかり。そう、これは言いがかりだ。胸を押さえ、演技臭い仕草で態とらしい大根役者染みた動きをしているアポロン。あの糞女とは比べるまでもない、演技が下手くそで、別人。吐瀉物塗れの上着がそっと退けられた。桜花が扱いに困ったようにそれを持っている事に申し訳なさを感じつつ、何とか立ち上がってアポロンを見据えた。

 

「それに、ミリア・ノースリスは軽傷であったのであろう? 現に今傷一つない姿を晒しているではないか。それに比べ、私の愛しいルアンの怪我といったら……あの日、目を背けたくなる姿で帰ってきた……私の心は悲しみで砕け散ってしまいそうだった!」

 

 出来の悪い演劇の様な仕草を繰り返すアポロン。胸を手で押さえ、かと思えば両手を大きく広げて、大げさに、まるで滑稽な道化の様な演技。左右に控えていた従者達のわざとらしい泣き真似。もはや笑いすら出てきそうなぐらいだというのに、喉が引き攣って笑いも出てきやしない。

 ちらちらと粘っこい視線を投げかけてくる神アポロン、あまりにも、気持ち悪い。

 気が付けば、よろよろと何かが歩み寄ってくるのが見えた。小人族らしき影が寄ってくる。

 それに気づいたらしい神アポロンが「ああ、ルアン!」と駆け寄っていく。わざとらし過ぎる。

 ルアンと呼ばれた奴、酒場でも見た小人族の奴に違いないそいつは、木乃伊(みいら)の様に全身に包帯を巻き、杖を突いてふらふらと歩み出てきて、呻く。

 

「痛ぇ、痛えよぉ~」

「まさか、ベル君……本当にボッコボコに……」

「してませんっしてませんっ!?」

「待ってください」

 

 大声を上げて、注目を集めた。周囲の視線が集まる中、吐き気を堪えてルアンを指さし、口を開く。

 

「彼はそんな怪我は負っていませんでした。顔面中央部をヴェルフ────ヘファイストスファミリアの鍛冶師に蹴り飛ばされて昏倒していたところを、私が治療しました。その後は安全地帯に運んで放置したので、もしその怪我が事実だというなら少なくとも、ヘスティアファミリアに非はありません」

 

 嘘は何一つ言っていない。真実だけを口にした途端。アポロンがネチャリと粘り気のある笑みを浮かべた。周囲を取り囲んでいた商人から嘲笑が響く。あぁ、アウェーな状況過ぎるな。

 

「なるほど、【ドラゴンテイマー】はそれが事実だと言うのだな?」

「はい、神に誓って」

 

 鳴りやまぬ嘲笑。侮蔑の色を含んだアポロンが失笑を零し、此方を見下ろした。粘っこい、貪欲な視線。喉が引き攣る。

 

「そういえば、最近、街中で発生した小火騒ぎは────そなたの連れている竜が原因だと聞く。本当にそなたの言葉は信用できるのか?」

 

 ────なぁッ!?

 

「ガネーシャはそなたを信用できると謳っていたが、実際の所。私は疑わしく思っているのだ」

「なっ!? そもそも君は緊急の神会(デナトゥス)に出席していないじゃないかっ!」

 

 は? あぁ、そうだ。この神アポロン、俺の記憶に一切ない。あの神会(デナトゥス)の時に出席した神なら、少なくとも顔だけは覚えていてもおかしくないのに、覚えてなかった。つまり参加してないくせにガネーシャ様を疑う様な真似をしてるのか。

 

「ああ、あの緊急の……私は外せぬ用事があったのだ。暇を持て余す者達と違ってね」

 

 それに、と神アポロンは続ける。

 

「どのみち、先に手を出してきたのはそちらであろう?」

 

 話をぶった切りやがった。糞、ダメだ……回避できない。どんな正論をぶつけたところで、相手は言いがかりで押し通すつもりらしい。こうなったら手がつけられない。

 

「待ちなさい、アポロン。貴方の団員に最初に手を出したのはうちの子よ? ヘスティアだけを責めるのは筋じゃないわ」

「ああ、ヘファイストス。美しい友情だ。だが無理はしなくてもいい。ヘスティアの子が君の子をけしかけていただろうことは、火を見るより明らかだ。現にベル・クラネルも直ぐに喧嘩に参戦したそうじゃないか」

 

 あぁ、やっぱりヴェルフが手を出すのも不味かった。ベルがヴェルフを止めなかった事で拍車がかかってる。暴論だが、正論が通じない。

 証人達────商人で証人か、何かの親父ギャグかと言いたい気分だ。()()()()()()()()()()()()────に証言してもらってもいい等と宣う神アポロン。

 事前に味方を用意していた神アポロン側が有利過ぎて、ヘスティアファミリアに出来る事は無い。部外者に等しいタケミカヅチ様、ミアハ様とその眷属は口出しできず。ヘファイストス様は意図的に封じられ、孤立無援状態となっていた。────手腕が、どこまでもあの糞女に似ている。

 

「団員を傷つけられた以上、大人しく引き下がるわけにはいかない。派閥(ファミリア)の面子にも関わる……ヘスティア、どうあっても罪を認めないつもりか?」

「くどい! 僕の眷属()だって同じぐらい傷つけられたんだ! 認めるものか!」

 

 言い分をはねのけるヘスティア様に、神アポロンの顔が────醜悪に歪む。

 あの、糞女と同じ。端麗な容姿とは不釣り合いな、悍ましくも不気味な嫌らしい笑みを深め、口角を吊り上げる。

 

「ならば仕方ない。ヘスティア────君に戦争遊戯(ウォーゲーム)を申し込む!」

 

 目を見開いた。

 『戦争遊戯(ウォーゲーム)』。

 対戦対象(ファミリア)同士で定めた規則(ルール)上で行われる。派閥同士の決闘。眷属を駒に見立てた盤上遊戯(ボードゲーム)のごとく、対立する神と神が己が神意を通すためにぶつかりあう総力戦。

 言わば、神の『代理戦争』。

 勝者は敗者から全てを奪う事が出来る。()()だ。そのファミリアが保有する本拠も含む財産を奪われるのは当たり前────当然、その奪われるモノには、眷属も含まれる。

 すべての眷属、財産を奪われ。挙句の果てに────主神に天界への送還()を命じる事すら出来る。

 

 嘘だろ、絶対に無理だ。こちらの総戦力はベルと俺の二人。+αでキューイ、ヴァン、クリスが居るが──ガネーシャ様との兼ね合いもある。きっと対策されて参加すら許されないだろう。

 対する相手は中堅以上の派閥だ。勝負にならない。

 

『アポロンがやらかしたァーー!!』『すっっげぇーイジメ』『逆に見てみたい』

 

 絶句する俺たちを他所に、期待の眼差しを向け続けてきた周囲の神々の反応は、信じられないモノだ。見てみたい? 一つの派閥が呆気なく砕け散って藻屑と消えるのを? ふざけんなっ!

 

「我々が勝ったら────ベル・クラネルとミリア・ノースリスは貰い受ける」

 

 あぁ、どちらか片方じゃなくて()()()()だったか。こりゃ俺が頭下げて『なんでもするんでヘスティアファミリアには手を出さないでください』っていう最終手段が使えない。

 

「最初からそれが狙いかっ……!」

 

 仮面が、外れた。あの糞女と同じ、一途に欲望を煮詰めて、煮詰めて、煮詰まった。悍ましい笑みを浮かべる。

 ああ、なんて醜い。なんで醜悪で、なんて悍ましい。そんな目が────ベルを見ていた。

 

「だめじゃないかぁ、ヘスティア~? こんな可愛い子を一人占めしちゃぁ~」

 

 ベルの手を掴む。気圧されちゃダメだ、その目を向けられる悍ましさは俺も良く知っている。一度でも飲まれたら、二度と這い上がってこれなくなる。抵抗する気力を徹底的に削られ、潰され、何もできなくなる。言いなりのお人形になりたくなけりゃ、抵抗するしかない────きっと無駄だけど。

 

「この変態めぇ……!」

 

 変態だろう。間違いない、こいつは控えめに言って変態だ────けれど、その行動力は本物だ。

 

「酷いなぁ、ヘスティア? 天界では愛を囁きあった仲じゃないか?」

「嘘を言うな嘘をおおおおッ!? 二人とも勘違いするなよ!? あの頭がお花畑の神がしつこく言い寄ってきただけで、速攻でお断りしたからなっ! この処女神(ボク)が守備範囲広すぎな変神(へんじん)の求愛なんて受け入れるものかァ!!」

 

 ギリシャ神話で、そんなのあったなぁ。確か、ニュンペーだかなんかを追いかけて、木になるまで追いかけ続けたんだっけ? だとするならベルも俺も木になる以外に抜け出す方法はないな。あはは、笑える。

 アポロンファミリアの団員は、神アポロンが気に入らなければなれない。逆に、気に入った者は何をしてでも手に入れようとする。その過程で────命を絶つ者が出る程に、壮絶な()()が行われるのだ。

 行き過ぎた恋の情熱、まるで輝く太陽の様な。

 ────【悲愛(ファルス)

 喜劇にもなりかねない求愛を繰り返し、狂乱を巻き起こす傍迷惑な神だ。そして、巻き込まれた者は否応なしに無傷に済まない。

 家族も、友人も、周囲の知人も、次々に被害に遭う。求愛相手を取り巻く全てをぶち壊してでも、その過程で幾人もの死者すら出したとしても────欲する者が絶望し命を絶つ結果になろうとも────アポロンは決して諦めない。

 

「やっぱり、罠でしたね」

「くそう、最初っから全部これが目的か!」

 

 既に周囲の神々はアポロンの()()()()()()()に注目し、ヘスティア様に期待の眼差しを送っている。そう、弱小ファミリアが踏み潰されて消えるのを、神々は()()()()として見ている。喉が干上がった。

 

「それでヘスティア、答えは?」

「受ける義理はないね!」

 

 もし、仮に、『戦争遊戯(ウォーゲーム)』に持ち込まれた場合。

 条件次第だがキューイ、ヴァン、クリスの三匹を突撃させればもしかしたら勝てる()()()()()()。だが、勝負内容次第であるし、現状だとヒュアキントス一人出てきた時点で勝てない。

 断固拒否したヘスティア様がばっと振り返り、俺とベルの手をがしっと握って人垣を掻き分けて歩き出す。引っ張られながらも後ろを振り返れば────アポロンの目が此方を見ていた。舌なめずりをし、獲物を既に捕らえた気分らしい男神。端正な顔立ちも全てが吹っ飛ぶ悍ましい笑み、喉の奥から悲鳴が零れかける。

 

「後悔するぞ?」

 

 耳から脳髄に至るまで、ねちっこく侵す様な声が背中に投げかけられる。あの時と、一緒だ。あの女が、俺にかけてきた言葉。

 あぁ、始まった。これが終わりな訳がない。始まるんだ、あの夢と同じ────悪夢が現実になろうとしてる。




 SANチェック連発どころか初っ端から失敗してるぅ……。
 ミリアちゃんの明日はどっちだ……!

 予測可能、回避不可能な災厄が迫る!





 TSロリ増えろ増えろ……私が書くTSロリ、皆が書くTSロリ、いっぱいあればいっぱい幸せ。違うかい?

 お気に入り4000超え、評価人数280人越え、総合評価8000超え。すごーい。
 みんなありがと。やっぱみんなTSロリが好きなんやなって。
 え? 戦力バランス? ストーリーが良い? 家族愛?
 そんなもんよりTSロリやろ!
 皆もっとTSロリすこれ!
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