魔銃使いは迷宮を駆ける 作:魔法少女()
ガネーシャファミリアからの三名の改宗、及びに例の
周辺に集まったロキファミリアの冒険者と共にその
ロキファミリアがダンジョンで試験運用をしてくれと依頼された『試作型』
一つの弩のみで一射毎に装填する必要がある『
三つの弩を縦に重ねた三連射を行う機構を取り付けたのが『改良型』
そしてその全てを装甲で覆い隠した『装甲型』
弾倉を取り付け連射可能に改良された『連弩型』
恐ろしい事に数種類の改良型が存在し、思った以上に厄介なのは間違いない。
……ロキファミリアがボロックソに貶した事が原因だと思うんですけど、無駄に改良型が多いの。
「機構は単純……それぞれの弩が独立して射撃する
思った以上に質素な作りをしている。複雑な機構は一切使われていないため、仕組みは簡単に理解できた。
当然ながら、威力を確保する為に総金属製で弦も鋼線であり、弦を弾く為に滑車付きでコンパウンドボウの様に引きやすい様にはされているが、人の手で直接弦を引く場合はレベル3冒険者程の力が必要らしい。
そのためか、大型のバルブハンドルの様なモノで弦を引く機構が取り付けられており、そちらであればレベル2でもなんとか弦を引ける────つまりレベル2あれば再装填できるわけだ。
……レベル2無いと装填もできないってのはちょっとどうなんだろうか?
ともかく、この部分が非常にデリケートなのか怪物の攻撃で高確率で破損するらしい。
破壊しやすい部位があるのは良い事だ。この装填用機構を破壊すればヒュアキントス以外には
装填機構だけなら『ライフル・マジック』でなんとかなるだろう。
ロキファミリアがポンコツ呼ばわりするのもわかる。第一級冒険者や第二級冒険者からすれば確かにポンコツだ。機構そのものが脆弱だというのもわかる────彼らの馬鹿力からすれば、なのだが。
当然、俺やベルの様な第三級冒険者では壊す事も出来ない。特に射出機構の部分だけは
本体部分はクーシー・スナイパーの『スナイパーライフル・マジック』を使ってようやく破壊できる。さすがにニンフ型の『ライフル・マジック』では破壊にまでは至らない。
付け加えると、一発で破壊できるのは三連
「破壊は出来そうかい?」
「破壊はできなくはないですが……全部はきついですね」
アポロンファミリアが今回の
『
『改良型』が16機
『装甲型』が4機
『連弩型』が12機
気合入れすぎだろ……とはいえ、『連弩型』は脅威とは言えない。というのも連射性能の為に威力を犠牲にしているうえ、弾倉に装填可能な最大数はたったの5である。『改良型』の方がよほど脅威なうえ、再装填には3~5秒かかる。要するにロキファミリアではなくとも『連弩型』がポンコツなのは理解できるはずだ。
まぁ、そこらへんよりも問題は────俺の
一機破壊するのにマガジン1個。合計44個のマガジンが必要────ではない。改良型は一機で三発必要なのだ。それで合計は76マガジンが必要だ。
俺の最大保有マガジン数は現在の所24個。魔力から作り出す分も含めた所でせいぜいが50マガジンかそこら。それも『マジックシールド』が攻撃を受けていない無傷の状態での話だ、しかもその後の俺の攻撃行動に使うマガジンまで用意できなくなる。つまり圧倒的に足りてない。
「それにですね、装甲型がどうしようもないんですけど何ですかこれ……」
見た目は完全に戦車か何かとしか言えない『装甲型』。
ちなみにロキファミリアの冒険者はこれを『棺桶』と呼ぶ。いや、わかるよ? 装甲で固めれば怪物の攻撃で壊されないだろと装甲で覆い隠すのは良い。ただ、内部を覗き込んだ感想は……うん、戦車だこれ。
重量は『バカかよ』とベートさんが鼻で笑う程。レベル3冒険者が数人がかりで押してようやく少し動く程度。要するに馬鹿げた重さになっている。固定式ならまだしもダンジョンにこれを持ち込むなんてできる訳がない。
横幅はおおよそ4M、縦には3M、全長12Mに渡る長方形の箱型から
まず、この箱の中に三人の冒険者が入ります。一人は装填。一人は発射、一人は縦軸操作。そして外に居る冒険者が五~六人がかりで横軸の操作。そう、この超巨大大型弩とかいう頭の悪そうな代物は一機で十人近くの人員を必要とするのだ。バカじゃねぇの?
ただ、バカバカ言ってはいるが、この『装甲』がかなり厄介な代物で、これ俺の魔法じゃ壊せねぇでやんの。
5マガジン消費の『アンチマテリアル』なら余裕だろうが、一機壊すのに5マガジンとか……まぁ機動性は皆無で狙いを付けるのも難しいっぽいので最悪無視で構わないのだが、無視した結果、思いもよらぬ所で不意打ち食らいそうで怖い。
「……まぁ、鈍重そうなので最悪無視で良いとは思いますが」
「これは壊すのに時間がかかりそうだし、こんなの当たる方が珍しいと思うよ」
結論から言うと、全ての無力化は厳しい。
というか……どう考えてもアポロンファミリアの総人数と比べて
予備として持ち込む? にしても多すぎる。まだどういった勝負形式か決まっていないのに……。
「調べられることは調べ終わりましたね」
「じゃあ片付けておく」
「お願いします」
ロキファミリアの団員が数人がかりで『改良型』を引っ張っていくのを見送りつつ、『装甲型』を見て溜息。これ、後でガネーシャファミリアの人たちが解体して部品を運んでいく形になるのか。
ガネーシャ様の所の団員、本当に大変そうだ……。他人事みたいに言ってるが俺達の為にやってくれてるんだよなぁ。
鍛錬場が見下ろせる一室。テーブルに並べられた資料を手に取り眺めつつ、盤上を睨みつける。
あ、一人倒れた。削り殺される程ではないが、相手の数が数だ。正面突破は厳しい上に
「はぁ……すいません。一人やられました」
「気にする事は無い。僕もキミの立場なら同じ選択をしたよ」
アマゾネス一人を犠牲に釣り上げた相手方のリッソス隊を撃破。その後に相手の戦力を細切れにしながら各個撃破をしていくも、途中で二人目に獣人がスタミナ切れで倒れ、三人目にエルフが回り込まれて倒されてしまった。後方警戒出来る程の人員がいなかったのが原因とはいえ、
フィンがアポロン側の駒を動かし、俺がヘスティアファミリア側の駒を動かす。
何とか勝ち筋を導き出していくものの、フィンの方は一切手加減なくこっちの駒を削り取っていく。レベル3とはいえ囲まれて連携でぶっ叩かれれば当然落ちる。ドワーフに最前線を支えて貰いつつも『クラスチェンジ』等の隠し手を使わずに対応に追われ────あ、俺が落ちた。
「あ、ああ……あの、ちょっと待ったを……」
「実際の
「…………続けましょう」
あっあっ、俺が落ちた。落ちて……待って待って、ベルとヴェルフが囲まれてる。陽動部隊として動かしてたガネーシャ様の眷属達が罠にはめられて動けない。キューイとヴァンは俺の指示無しじゃ動けないから死んでるじゃんこれ……一応ベルの言葉に従わせて……あ、ダメだこれ。とりあえずヒュアキントスを引っ張り出せはしたのにそのあと囲まれて……相手の
いくらレベル3とはいえアマゾネスとドワーフの二人を酷使すると体力もスタミナも限界に達して対応が遅れだす。対して相手方は
とりあえず陽動隊が引き付けている間にどうにか現状突破を、
「ノースリス、陽動隊が甚大な被害を受けている。このままでは壊滅するぞ」
「えっ……あっ! 回り込みっ!? いや、人数的に……あれ、こっちの戦場で負傷者……減って? もしかして負傷者治療した端から陽動隊の方に……?」
「そうだよ」
おい待て、ガチで潰しに来てるぞ。容赦なさすぎるだろ……。あ、ヴァンが針鼠になって死んだ。キューイも負傷で墜落……次の一手でヴァン同様に針鼠だわこれ。陽動隊の方は、もうどうにもなんねぇなこれ。
治癒士の場所が割り出せん。あと一人、あと一人の治癒士がどこに居るのかさっぱり予測できない。カサンドラ・イリオンを巧妙に隠されているせいでどうにもできない……治癒士としてかなり優秀らしく、彼女一人を隠蔽されたうえ、魔法発動の際の魔力の放出も他の魔術師隊が隠蔽。キューイの索敵能力を使おうにも
あー、あああああああああああああああああああああっ……ベルが倒れた。ヴェルフも重症で戦闘不能。陽動隊が壊滅。残っている駒は……レベル3のアマゾネスとドワーフの二人のみ。対するアポロン側はおおよそ40人程。
ヒュアキントスと一騎打ちをするアマゾネスに、他の冒険者を足止めするドワーフ。ダメだ、ドワーフの殲滅力よりカサンドラ・イリオンの治癒能力の方が勝っているらしく押されて────疲労が溜まって能力の低下。相手方もそろそろ
「あの、相手方の治療魔法が途絶えないんですけど、そろそろ
「
「……あぁ~なるほどぉ~……すいません、参りました」
は……ははは、笑えん。
豊富な物資、高密度な連携。リッソス隊を削り取った後は他の隊が穴埋めをしつつも、巧妙に隠された治癒士が合間合間に仲間を治療。完全に息の根を止めるならまだしも、負傷させただけだと直ぐに復帰してくる。
道具類はこっちも用意はできるが、問題は
いくらレベル3で、相手が下級魔剣とはいえ何百発も耐えれる訳じゃない。
ヘスティアファミリアが持ち込める物資の数と、アポロン側が持ち込める物資の数が天地の差だ。馬車を使って運び込んでも良いが、それだと守り切れない。
詰まる所、『掃滅戦』だと人数差で削り殺される。
「やっぱり『掃滅戦』は厳しいね」
「……明日の形式で『掃滅戦』にならない事を祈りますよ」
『防衛戦』の場合は攻撃側なら勝てるのだが、防御側になると途端に不利だ。
『攻城戦』は……攻撃側だと相手の堅牢な防御を崩せずきつい。内部にリリを侵入させればワンチャンあるが、やはり物資量的に厳しい上、相当に
防御側の場合は最悪である。『攻城戦』の勝敗の決め手の一つに『制圧勝利』というものがある。
城内に居る防御側の派閥の人数に対し、城内に攻撃側の派閥が倍の人数が侵入する事で『城は制圧された』と判定が出て勝敗が決まる訳だ。
ヘスティアファミリア側は、俺、ベル、それから救出すればリリルカ、後は増援の八人。合計で十一人しかいない。つまりアポロン側の冒険者二十二人目が城壁を超えて侵入してきた時点で敗北してしまう訳だ。
ファクトリーで罠を仕掛けていたとしても、二十二人に侵入された時点で負けというのはさすがに……。
「はぁ……戦力増強してもまだ厳しいですね」
「……指揮をとっているのがフィンでなければ勝てていたと思うがな」
リヴェリア様が紅茶を入れつつもそう言ってくれるが……でもなぁ。
そんなんただの言い訳だしなぁ。『争奪戦』は勝てたんだけどなぁ。『掃滅戦』はダメ。『防衛戦』も防御側だとボロ負け。攻撃側でギリギリの勝利。『攻城戦』はそもそも戦いにならない。
もう一度資料に手を伸ばして相手方の人員を確認していく。何度見ても
ロキファミリアからの増援にも、ガネーシャファミリアからの増援にも、
前衛が負傷率が高く、手足の欠損にまで至る負傷するのは基本前衛ばかり。むしろ後衛の
アポロンファミリアに所属する
アイズさんとティオネさんの猛攻に対し必死に防御や回避を組み合わせようとするも、まるで間隙を縫う様にベートさんが蹴りを放ちベルを吹っ飛ばしていた。しかも起き上がろうとしてる所にも容赦なく蹴りが叩き込まれている。ズタボロになっていても死んではいないので
「気になる点はあったかい?」
深く溜息を零しつつ、ベルの痛ましい姿から視線を外してフィンを見た。
「気になる点、というとやはり……資金力ですかね。あの
「それについては今調べてるけど、予測はついてるよ」
『
アポロンファミリアが『
明らかにファミリアの規模に見合わない大金で……まぁ、察しは着くが。
「商業ファミリアですかね」
「それもある。それに加えて商会のいくつかが協力してるみたいだね」
商業ファミリア。商売を司る主神が立ち上げた商売を中心に行っている派閥。
それとは別に地上の人間が立ち上げて運営している商人達の集まりである商会もいくつも存在する。そんな商会も今回の一件に関わっているらしい。
そんな『商会』の方でやっかいな噂が流れていると聞いた。なんでも『都市外』の冒険者を片っ端から『依頼』を出して搔き集めているらしい。
「……都市外から無所属の冒険者を搔き集めてるって噂は本当ですか?」
「ああ、本当だよ。今朝の時点で百とちょっとだったかな。都市外からオラリオにやってきたらしいよ」
都市の出入りを監視しているガネーシャファミリアからの情報。
都市外の冒険者が多数オラリオに入ってきているらしい。彼らが都市を訪れた理由は商会からの依頼なのだという。何をする気なのか、大量の冒険者を集めているのだ。
『都市外の冒険者』は『オラリオの冒険者』に比べて劣る。迷宮という名の
とはいえ、数が数だ。それに第三級冒険者を限定で搔き集めているらしく、その数おおよそ百二十人程……冒険者って結構数が居るらしい? 恩恵を授かってはいても派閥に所属しない『無所属』の冒険者はかなりの数に上るらしい。
「というか、犯罪者まで混じってる感じです?」
「あー……犯罪者って訳ではないけれど、派閥と反りが合わずにとか派閥の定めた
賭け事嫌いな主神に仕えていた眷属が賭け事に手を出して派閥を追放されたり。みたいな感じらしい?
他にも敵対派閥の構成員と恋人になって主神に見放されたりだとか。そういった少し事情がある無所属が結構な数いるらしい。
「神アポロンの気質的に彼らがアポロンファミリアに入る可能性は無いだろうね。あっても、数人かな?」
「オラリオの内部の冒険者の中にも勝ち馬に乗ろうとアポロンファミリアに自らを売り込む冒険者はいるみたいだがな」
勝ち馬に乗る、ねぇ。
まあ、確かに現状を鑑みるにアポロン側が確実に勝つだろう。勝利の恩恵を自分も受けようと派閥に入りたがる無所属の冒険者がアポロンファミリアを訪ねているらしい。
とはいえ、アポロンは『気に入った者』以外を眷属にする気は無いらしく、全員が追い払われている様だが。
商業ファミリアや商会が用意した『傭兵』が派閥に参加する事はまずありえない。
「……ありえない、ね」
「気になるかい?」
都市外から入ってくる冒険者はステイタスの開示が強制される。
ガネーシャ様はこっそりと都市外からの冒険者のステイタスの記録なんかをこっちに回してくれたのだ。その資料に手を伸ばしてみれば……まあレベル2ばかりだわな。
ステイタスは、高くてもCが最高値。時々Bが混じる程度でAやSといった特別な者はいない。
「これが増員で入ったら最悪なんですけど」
「アポロンの気質的にありえないだろうけど、警戒はしておくべきかな」
警戒でどうにか出来るとは思えん。それに……アポロンは油断しても、商人が油断するとは思えんのだが……。
やめだ、やめっ。これ以上考えて不安を抱えても仕方ない。ただでさえ
積み上がった資料、都市外からやってくる冒険者の一覧。オラリオ内からもアポロンファミリアに改宗を望む者が出始めている事。不安の種は消えないが、今はやれる事を着実に進めていこう。
「明日の
「……ヘスティア様なら上手くやってくれますよ」
(訳:準備段階もしっかり描写しようと思ったら長くなりそう)
あとがきで『書き方云々』を語っているのを鬱陶しいと感じる人もいるでしょう。というかただの読者からしたら不必要なモノですし。
何故『書き方』とか『書くときに意識してる事』を書くのかというと、普通に他の作者に参考にして欲しいから、って言えば通じますかね。
『戦闘バランスが良い』『オリ主と原作主人公が共存している』『スキル・魔法の理由がしっかりしている』作品っていうのを書けば良い。と単純に言っても難しいですし、参考になればと、そして面白い作品が増えればと。
面白い作品増えれば(私が)皆が得をしますね。
『戦闘バランス』を良く書く際のポイント。
過剰な能力にしなければ基本オッケーです。
ちなみに『バランスの悪い能力』がどんなものかは読者からもらった『感想』でおおまかにですが判断できます。例えば『○○だけでいいんじゃね?』とか『○○だけで解決しそう』とか。その能力やキャラクターだけで物語やイベントが終わりそうと思われてる時点で、その能力またはオリ主はバランスが悪いと考えて良いでしょう。そういった能力にならない様に注意ですかね。
本作にも当てはまりますが、相手方に『対策』させれば良いですし……え? 『対策』できない能力? そういう能力は『
後ありがちなのは『序盤は良かったのに中盤当りからインフレし出した』っていう奴です。
こちらはー、なぜインフレするのかを把握しないと始まらないかと。
インフレの原因は『強化だけで危機的状況を演出している』からでしょうかね。
オリ主がいる分、敵を強化する。まあ良いでしょう、普通にやる事ですし。
・強化された敵を倒すためにオリ主・原作主人公を強化する。
オリ主を強化するのは良いです。普通の事ですし?
ですがが、原作主人公を強化するのだけはやめましょう。手を出さないのが賢明です。
原作の敵は、原作主人公の力に合わせた能力設定がされてます。そこにオリ主分を上乗せ強化するのは良いですが、原作主人公を強化してしまうと、その後の登場する物語上の敵も全体的に強化しなくてはいけなくなります。
強化された敵に対応すべく、原作主人公とオリ主を強化して……強化された二人を危機的状況に陥れる強敵にする為に敵を強化して……これの繰り返しでインフレが起きます。
繰り返した結果……ベル君魔改造とかいう事に……魔改造はアカン、アカン。
原作のパワーバランスを鑑みて、オリ主がいる分の強化だけで済ませましょう。
原作主人公や原作キャラまで強化しだすと過剰に強化し続けなくてはいけなくなり、歯止めが利かなくなりやすいです。