魔銃使いは迷宮を駆ける 作:魔法少女()
シュリーム古城跡地。
森や丘といった戦略上有効な天然防壁となるようなものが何一つない平原の真ん中に堂々と建つ城砦は、『古代』に築き上げられた防衛拠点の一つだ。『蓋』に該当する
城壁には崩れた塔がいくつもあるが、その石造りの堅牢な城壁は十二分に城壁としての機能を残している。高さは10Mを超え、幅も十二分に兼ね備えられた外壁は突破するのは────少なくとも長文詠唱
「引っ張り上げろ!」「糞、なんだよこの板金……何に使うんだ?」「雑に扱うなっ、歪みが出たら組み立てに困る」「装甲
月が高く浮かぶ深夜の時間帯。本来なら静寂が満ちていて然るべき時間帯に関わらず、
三日前から現地入りしていた彼らの総数は百十名。それに加えて後から増員として追加された三百名ほどの人員も加え、総勢四百名を超える者達がひしめき合いながら怒声を響かせていた。
「この火薬樽は何処に運べば良い?」「あそこの城塞の中に運べ、間違っても落とすなよ」「気を付けますよ」「面倒くせぇなぁ」「ったく、正規団員だかなんだか知らねぇがふんぞり返って指示出すばっかで手伝いやしねぇ」「おい、お前たち聞こえているぞ」
アポロンファミリアの正規団員と、後から追加された増援。正規団員の隊長格の指示の元、増援の者達を動かそうとするも、規律のとれた正規団員とは異なり、連携のれの字もとれやしない烏合の衆にも等しい増援の者達は頭ごなしに怒声ばかり浴びせ掛ける正規団員と睨む者も居れば、大人しく指示に従う者もいる。
城壁の上に設営された大型兵装用の台座に
「な……なんという……アポロン様……」
城塞の中でも一際高く目立つ塔の最上階。砦には不釣り合いな玉座の間で団長である美青年のヒューマン、ヒュアキントスは窓から城内に犇めき合う品性の欠片も無さそうな無骨な増援の冒険者を見下ろしながら、片手に持っていた主神が書き記した手紙に目を通す。
『商売神の指示によりファミリアの増員を決定した。彼の神が用意した傭兵だけに飽き足らず、我が門を叩いた者全てに恩恵を授けなくてはならなくなってしまったのだ。
ああ、彼らは余りにも我が派閥に不釣り合いな者ばかりだ。ヒュアキントス、キミが恋しいよ。
好ましくとも思えない者達の背にただ恩恵を授けるだけの日々、余りの苦行に私は気が狂いそうだった。』
手紙の内容に目を通したヒュアキントスの表情が悲し気に歪む。
アポロンの望まない品格の欠片も無さそうな醜男や醜女などの背に望まぬ恩恵を授ける日々。そんな苦行を味わわされたであろう己が主神の苦しみを想像し、ヒュアキントスは胸に手をあててアポロンを想った。
「ああ、アポロン様……もし叶うのであれば今すぐにでも駆けつけてその汚れた手を清めて差し上げたい……」
城内を見下ろす窓から目を背け、階下で行われている醜い増援の冒険者達と正規団員達のやり取りを思考から除外する。現実逃避の様に手紙の続きを読み耽るヒュアキントス。
『この苦しみの先にあるであろうベル・クラネルとの甘美な日々の為の試練だと思えば、耐えられなくはない。
出来得るならば可能な限り早く私の元へ、ベル・クラネルを連れてきてくれ。期待しているぞヒュアキントス』
ほんの一瞬でヒュアキントスの形相は鬼の様に歪む。
「アポロン様……なぜ、私では無いのですか」
主神の苦しみを取り払えるのは、その苦しみを拭いさって差し上げられるのは、我が身を以て他に無い。そう呟いたヒュアキントスは手紙を握り潰し、憎悪の視線を平原の先に突き立てられたヘスティアファミリアの徽章が書き記された旗印に向ける。
「ベル・クラネル……よくも、よくもアポロン様の情愛を……許さんぞ!」
城を守る立場であるがゆえに防衛戦の準備を進めてはいるが、徹底せずとも勝利するのは明確であった。土壇場で人員が増えたらしいが、それでも十人と少し。対してアポロン側は────悪辣な商売神によって────総勢四百名を超える大規模派閥に成り果てている。
攻撃隊に二百名、防衛隊に二百名と半々に振り分ける事が決まってはいたが、たかが十数名如きでは────それも半数は手足の無い足手纏いである────旗印の防衛など出来るはずもない。
「くっ……ベル・クラネル、貴様は私の手で……だが……」
自らの手で少年を八つ裂きにして殺したい。けれどアポロンが示した作戦はヒュアキントス及びに親衛隊全員での旗印の守衛。アポロンファミリアの正規団員で城塞内部の防衛。城壁には外部の増援冒険者を百名。残る二百名の増援冒険者を攻撃隊として出撃させるというモノだった────これも商売神に指示された作戦である────これにより、ヒュアキントスはベル・クラネルと直接対峙する可能性はほぼゼロであると考えていた。
事実、たかが十数名、戦力を考えればたかが五、六名程度の人数での旗印の防衛は不可能。全員が防衛に回って圧倒的な数の暴力にすり潰されて決着が付くに決まっていた。玉座の間にて待つヒュアキントスではベル・クラネルを殺せないのだ。
不満を溜め込む彼は、周囲で動き回っている団員達を無視し、間の奥にある玉座に腰を下ろした。玉座の背後の壁には太陽の弓矢を刻んだファミリアの
王座の間で踏ん反りかえりながら、ヒュアキントスはもう一度鼻をならす。
「ベル・クラネル……私の下へ来い……殺してやる」
「規律が無さすぎる」
堅牢な城塞の射手が控え中庭に向けて弓を向ける為の張り出し櫓を上げながら眼下に広がる惨状から視線をそらしていた
彼女のぼやきを聞いた団員が眉尻を下げながらも再度同じ問いかけを投げかけた。
「それで、いかがいたしましょうか……」
「はぁ、わかった。物資の集積所を一か所に纏めましょう。それでウチの団員だけで警備、管理するの」
彼の報告からダフネが出した結論に表情を歪めたカサンドラが口を開こうとし、ダフネに睨まれて口をつぐんだ。
彼らの話し合いの内容、それは増援でやってきた三百人近い冒険者の行動にあった。彼らの中の一部の者達が物資の中にあった食料や魔剣などをこっそりと盗んだりしていたのだ。それによって魔剣が想定の本数よりも少なかったり、物資の数に不備が生じてギリギリまで確認作業に追われる事となっていた。
無論、盗みを行った不届き者は全員叩きのめし、彼女が見下ろす城壁と城塞の間の中庭の中心に突き立てられた数本の柱に括り付けてさらし者に処した。それでも油断すればまた同じことをする者は出てくるだろう、規律だったアポロンファミリアの正規団員ではなく、外部から数集めとしてやってきた増援の冒険者に規律などあるはずもない。
増援の冒険者に物資類の見張りなんぞ任せた日には、重要な回復薬などの物資を盗まれかねない。現に何人かが盗みを働いてさらし者にされているのだ。すでに彼らは仲間ではなく厄介な集団としてしか見れなくなっていた。
彼らを見張る為に団員が駆けずり回るのも無駄が多い。もういっそのこと、物資類は一か所に集めて正規団員のみで管理。増援の冒険者は決して集積所には近づかせない。そうしておけば規律の整った正規団員の中に恥さらしな真似をする者がいない以上、物資関連でのゴタゴタは防げるだろう。
それ以外の事柄までは対応できないが。
「ですが、よろしいのですか?」
「何?」
「その……一か所に集めてしまうと、もし何か攻撃があった場合に物資が一度に失われてしまうかもしれませんが」
物資類を一か所に集めれば、その分防衛は楽になるだろう。しかし、その防衛隊が抜かれた時の被害は甚大になりがちだ。複数の場所に小分けにして保管した方が
しかし、規律のとれていない増援の冒険者を抱え過ぎている現状、複数の場所に小分けにした結果、数か所で盗みが発生しかねない。それに加えて言うなれば────。
「確かに物資を一か所に集める
「……確かに。わかりました、ではその様に指示を出してきます」
「盗みをやった奴がいたら、アイツらの所に同じ様に並べておいて。反省するかは知らないけど」
ダフネの言葉に納得がいったように男性団員は頷き、駆けていく。
ダフネは苛立たし気な視線で中庭で盗みを働いた結果、柱に縛られている外部冒険者を見つめて呟く。
「バカバカしい、こんなふざけた増員なんて……むしろ混乱の元にしかなってないじゃない」
「ダフネちゃん……」
「さっきから何なの、もっとはっきりと言って」
松明の代わりに魔石灯が灯る張り出し櫓の上、カサンドラが震えた声でダフネの名を呼んだ。
ぼうっとした明かりに照らされた彼女の顔は真っ青になっており、震える手で自らの体を掻き抱きながら口を開く。
「剣も矛も食べ物も、同じ場所に置いちゃダメ……竜に睨まれて腐って使えなくなっちゃうよ……」
抽象的な例えを呟く彼女に対し、ダフネはまたかと溜息を零した。
「何、それも夢? あのミリア・ノースリスが連れてる飛竜は
「違うの……そうじゃなくて……」
うんうんと唸りだした彼女をしり目に、ダフネは中庭に視線を落として先ほどよりも遥かに大きなため息を零した。
騒ぐ外部冒険者、数人の正規団員が棒などで滅多打ちにして柱に括り付けられてようやく大人しくなる。盗みを働いていたところを見つかった間抜けがもう一人見つかり、ダフネは天を仰いでぼやく。
「いい加減にしてよ……これで五人目なんだけど」
彼女が下に降りようと張り出し櫓から立ち去ろうとした所で、回り込んだカサンドラが縋り付く様にダフネの腕を掴んだ
「駄目……ここから逃げよう」
「はぁ?」
「城が、城が滅ぼされる……」
突拍子もない事を言い出した彼女に対し、ダフネはうんざりとした様子でカサンドラの手を振り払う。
「また夢? 今更そんな事出来る訳ないでしょう。いい加減にして」
「お願い、お願いだから信じて……」
全く当てにならない『
ある一点を見つめ、その整った顔立ちは青褪めた表情から土気色の死体の様な色に変化する。
「駄目、受け入れては駄目、まだ間に合う、あれを入れてしまったら……」
彼女が見つめる先では、最寄りの街から取り寄せた最後の物資運搬の荷馬車が、列となって城門をくぐっていく所だった。
「おーい、待てっ、待てったら!?」
鈍い軋む音を響かせて閉じていく城門に対し、ルアンは悲鳴を上げた。
最後列に居た荷馬車を急がせ、ぎりぎりのところで城門をくぐり切る。分厚い鉄門扉は大きな音を響かせて、完全に閉じられた。
「何で閉めるんだよぉ~。オイラがまだ居ただろ?」
「へへっ、居たのかルアン。小さくて見えなかったぜ?」
情けない声を上げるルアンに、大柄な獣人はふざけた笑みを浮かべる。
まだ下級冒険者であるルアン・エスペルという男は、小人族特有の子供の様な体躯もあってか、アポロンファミリアの中でもよく下っ端扱いされていた。今回の
総じて小人族という種族は小さく頼りない外見から偏見をもたれやすい。ヘスティアファミリアに所属する【
「まあまあ、それよりもこの荷物は何処に運べば良い?」
「あん……?」
ルアンの乗っていた荷馬車から降りてきた三人の冒険者を見て大柄な獣人は眉を顰める。
一人は灰色の外套を纏ったヒューマンの青年。一人は腰に半月刀を吊り下げた猫人。一人は笑みの似合うエルフの好青年。彼らを見た大柄な獣人は警戒心を抱きながら腰の剣に手を伸ばしつつもルアンに問いかけた。
「おいルアン、そいつら誰だ?」
少なくとも見た事が無い人員だと警戒心を抱いた彼に対し、ルアンは呆れかえった様に肩を竦める。
「はぁ? 誰って、増援でやってきた冒険者だろ。何言ってんだよ……オイラでも覚えてたのに覚えてられなかったのかよ」
「あ……ああ、そうか。そうだったな……見覚えは無いが、数が多かったからな……おい、お前たち、余計な真似はするなよ」
物資の横領なんてしたらタダでは置かない。そう言って物資の運搬を始めた大柄な獣人に倣い、三人の冒険者も物資の運搬をし始める。その背を見ていたルアンがぽつりとつぶやいた。
「……随分運びこまれたなぁ」
「三日分の武器と
まぁあんな
城壁内には数え切れない程の大量の木箱と大袋が荷馬車から降ろされる所であった。
城壁の上に視線をやれば、崩れかけた四隅の側防塔を修繕して兵装用の台座を固定し、その上に組み立て途中の装甲
城壁の上に設けられた滑車を使った釣り上げ機で矢束を城壁の上に持ち上げていたり、
「ひでぇ……」
「ま、確かにな。どれだけ金がかかってるんだか……」
商売神がもたらした物資と兵器。それの代償として強引に増員させられて乱れた規律。不愉快そうに獣人の同僚が鼻を鳴らす中、ルアンは小さく唾をのみ込んだ。
「調子はどうだ?」
「万全よ」
「うん、問題ない」
「そうか、じゃあ、ほら、約束してた
「ありがとう」
「ヴェルフ殿、忘れ物とは……一体、その木箱は?」
「ああ、これか……まあ、これはアレだ、椿の褒美って奴だ」
「椿……
「おう……と言っても、素材はキューイなんだがな」
「うわ、赤いわね……全身鎧?」
「私が着れば良いのですね」
「ああ、それと、先に言っておくがその鎧を着てても、大怪我で済めば御の字だ……本当に良いのか?」
「構いません。それよりもそっちは大丈夫なのですか?」
「え? わたし? 平気平気、さっきも言ったけど、わたしたちは死んでも恨まない。けれどミリアが死んだら恨むからね」
「……わかりました」
「それでは、リリ達の手筈通りに」
「おお。時間は全く無い、出来るなら────十分であの城を落とすぞ」
「うん、勝とう」「ええ、負けられないわ」
闇の中で、複数の声が響き渡っていた。
VS.アポロンファミリア。
勝利条件は、対象派閥の旗印の破壊。
長い夜が明けようとしていた。
管理下に置くには、アポロンの正規団員数が少なすぎる。一人当たり三人の非正規団員の面倒を見なきゃですしね。
しかも下級冒険者では言う事を聞かない奴も出てくる事でしょう。要するにアポロン陣営は自らの派閥に加わった増員の冒険者の手綱を握り切れる訳が無いんですよね。
物資の横領は当たり前、適当な壁の修繕も当たり前、
ヘスティア陣営から見れば微塵も油断できない相手ですが、アポロン陣営は自らの足場が崩れないかを心配した方が良いんですよねぇ……。
TSロリ増えろ増えろぉ……。
男オリ主チートハーレムモノは飽いた。
TSロリオリ主チートハーレムモノにしようぜ────TSロリの築き上げるハーレムとは何ぞや……?