魔銃使いは迷宮を駆ける 作:魔法少女()
轟々と燃え盛る城塞。
運び込まれていた無数の火薬樽が衝撃で起爆した事と、南側の城壁を融解させるほどの熱量を持つ強烈な魔剣の一撃によって発生した火災は、東側、西側に大きな混乱を巻き起こしていた。
「火事だ!」「水をっ」「熱っ、
傭兵として雇われた者。自ら売り込んで勝ち馬に乗ろうとした者。多種多様な冒険者が集まる東側では、杖を片手に老エルフの男が目を細めて周囲の喧騒を眺めていた。
「ふむ、騒がしいな」
レベル3、都市外の魔術師の中では相応の実力を持つ老エルフ。西側の城壁の守りを任された彼は小さく呆れの吐息を零すと、その老体に見合わぬ声量を以てして、周囲の冒険者を落ち着かせるべく声を上げた。
「皆落ち着け。氷の魔剣を持つ者は火を消せ、風の魔剣を使い熱を退けよ」
落ち着きのある、重厚な声に押されて周囲の者達が氷の魔剣を使い南側から迫る熱風を冷やし、足りぬ分は風の魔剣で押し返しはじめる。十二分な数の用意された魔剣によって東側が徐々に落ち着きを取り戻し始めているさ中、西側では収集の着かない混乱が発生していた。
「やばい、物資貯蔵庫が……」「おい、腕が飛んできて……うぇっぷ」「嘘だろ……何が起きたっていうんだっ」
城塞内部の物資貯蔵庫は城砦西側の端に位置していた。結果、貯蔵庫起爆によって西側の中庭には吹き飛んだ瓦礫などが降り注ぎ、西側城壁の防衛隊に多大な被害を出している。数人は当たり所が悪く気絶したりし、貯蔵庫近くの壁に凭れ掛かっていた者等は爆風の直撃で重症。周囲を警戒していたアポロンファミリアの正規団員が爆散して飛び散る等、至近距離で凄惨な場面をも目撃した彼らの混乱は留める事が難しい。
加速する混乱の最中、西側城壁の上から負傷者が発生した中庭を見下ろしている青年は鉄製の手甲を打ち合わせて嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「いいねぇっ、楽しくなってきたじゃねぇかっ」
「おい、テメェなに言ってんだよっ」「あんたレベル3だろ! なんとかしてくれよっ」
西側の城壁の防衛を任されたレベル3のヒューマンの青年。鈍い色合いの茶髪を揺らした年若い彼の周囲にはこの混乱のさ中、レベル3の肩書を持つ彼の周囲に集まってその強さに助けを乞うている。
鬱陶し気に群がる冒険者を一瞥して、彼は舌打ちと共に口角泡を飛ばす獣人の冒険者を一人、殴り飛ばす。吹き飛び城壁に叩き付けられた所で、周囲の冒険者が口を閉ざす。
「うるせぇんだよ、ったく面白くなってきてんだろ? 雑魚を潰すより敵は強ぇ方が良い」
「何を言ってんだアンタ……」「おいやめとけ、そいつ喧嘩屋だぞ……」「糞、なんで西側にはまともな奴が配置されてねぇんだよ」
指揮をとるでもなく、レベル3の彼はニヤニヤと周囲を見回して何かを探し始める。それを見ていた冒険者達は彼が当てにならないと判断して各々の判断で動こうとしはじめ────優男風のエルフが駆け上がってきて短剣片手に声を上げた。
「空を見ろっ、深紅の飛竜が近づいてくるぞっ」
「なっ!」「
優男風のエルフに指摘され、冒険者達が空を見上げれば赤い特徴的な飛竜────
慌てて西側城壁上に設営された
軽薄そうなエルフの指示に従い、全ての
「真正面から殴り合いは……出来なさそうだな」
空を駆る飛竜の背には、白髪のヒューマンらしき少年と金髪の小柄な少女────小人族の少女だろう人物、それに赤髪の青年。都市外でも噂になっていた
乗り込む積りなのかと青年が目を細めるさ中、その飛竜は徐々に旋回を交えながら城に近づこうとし────放たれた
幾本も連続して放たれる矢。一射する度に空気が震えるその矢は、大きな弧を描いて飛竜に届かずに大地に着弾しだす。西側の森に着弾して大量の土埃を上げる矢を見つつ、彼らの狙いを見定めていた彼は────
『おぉぉぉぉぉぉっと、これは、何が起きているんだぁっ。内側から爆発が発生したぞぉっ!』
実況者の声が盛大に響き渡り、オラリオから戦況を見ていた者達の頭には多数の疑問符が浮かんだ。
飛竜の登場と、背に乗るミリア・ノースリスの右腕がある事に違和感を覚えた神々が『義手か?』『義手だろ』と話し合いを始めた直後、西側と東側の城壁が
城塞内部から飛び出し、西側に二人、東側に二人。合計四人による内側からの強襲……おかしな話である。
西側には両腕の白いアマゾネスの少女と若いドワーフの男。東側にはエルフの少女とアマゾネスの女性。各々の手に握られた二振りの魔剣が振るわれる度、紫電や爆炎が弾け、多量の土煙が立ち上る。
外側に向けられた
指揮を執り行っていた東側の老エルフは察知したのか回避し内側からの奇襲に対応すべく短文詠唱魔法で応戦しはじめており、それに呼応する様に散発的にではあるが東側では反撃が行われていく。
西側の指揮官だったヒューマンの青年は初撃を食らい行方不明。上空の赤飛竜の対応をしていた影響か彼らの反応は遅れており西側は内側から壁が粉砕寸前に至っている。
内側から出現した者達の顔を見た瞬間、アポロンが絶叫を上げた。
「あれはっ! ロキィッ! あれは貴様の眷属ではないかっ」
アポロンの絶叫を聞いた神々の視線がロキに集まるさ中、ロキは感心した様に吐息を零して『なるほどなぁ』と呟きを零す。
太陽神が憤る中、ロキは肩を竦めた。
「あれはヘスティアん所にやった眷属やぞ。もう
「は?」「
都市内でも有名なロキファミリアに所属した冒険者。レベル2の者達の顔こそ、ごく一部の者しか覚えておらずともレベル3ともなれば誰しもが一度は目にしたことがある有名な者達だ。数ヶ月前に手足を欠損し、冒険者を引退したという情報は、一部の神々の中でも共有されている。
「あのアマゾネスの子、レベル3の【双拳乱舞】でしょ? 確か盲目になって冒険者やめたって……赤眼だっけ?」
「なんか普通に戦って……ていうかあの子らの使ってる魔剣、威力高すぎね?
「あのドワーフ、片腕と片足無くして引退した【不動城塞】じゃね? 義手と義足……じゃないな、あの動き」
神々が考察を進めるまでもなく、西側城塞が粉砕されかかり────通常の魔剣では考えられない程の威力を以て、西側の城門が粉砕されて大穴が開いた。
城壁上に残された数少ない者達や、負傷を負いながらもなんとか反撃を行おうとする中庭の者達。西側のドワーフの男と両腕の白いアマゾネスは魔剣が壊れると同時に城塞内部に駆け戻る。
「なんで内側から出てきたん?」
「ガネーシャファミリアが穴掘って城塞攻略したんじゃなかったか? 穴が残ってたとか?」
「それはないな。しっかり埋め立てただろうしアポロンファミリアも確認しただろ」
あまり奇策の数々。オラリオの観客にも何が起きているのかわからずに混乱が広がるさ中、アポロンは目を見開いて西側城壁の先────林を踏み倒しながら一直線に迫る
西側城壁の上部。設置されていた大型弩の半数が破壊され、半数近くにまで減った防衛隊。
中庭に居たドワーフの男と両腕の白いアマゾネスが魔剣を放つだけ放って城塞内部に再度戻っていった直後、隅の方で隠れていた優男風のエルフがちらりと視線を向けた先、西側に広がる林から一匹の重厚な黒色の竜が真っ直ぐ突撃してくる姿があった。
「作戦通り……っと、そろそろ北西の塔を占拠しないとだな」
彼が背を向けて北東の側防塔の入口から内部に侵入した直後、轟音と共に
北側で起きた攻撃隊壊滅。南側で起きた特大規模の魔剣の一撃。空を飛び注目を集めた
混乱が極まりまともな統制もとれなくなった西側城壁は、想定していたはずの重装竜の突撃を防ぐこと叶わず、加速する混乱の中で竜によって蹂躙されていく。
東側城壁では、魔剣によって無数の
老エルフの魔術師の指揮によって混乱は落ち着き、中庭に現れた赤目のアマゾネスとエルフの少女に向かって矢を雨の様に降らした事で撤退に追いやる事に成功していたのだ。
「うむ、おかしいな……あれは、敵だろうな。話によると欠損した冒険者なのだろうが」
老エルフが唸るさ中、彼の周囲に集まった傭兵冒険者が慌てた様に空を指さす。
口々に叫ぶ言葉を聞き、老エルフは目を細めて感嘆の吐息を零した。
「なるほど、本命はあれか……いかんな、
彼が鋭く睨む先、空を駆る赤飛竜が陸上の孤島と化した玉座の間に一直線に迫る姿があった。
「じょっ状況報告しろぉ!? 今何が起きているっ!?」
────城塞北側の中庭では。
怯え切った一五〇人の攻撃隊と、五〇人の防衛隊。いつの間にか猫人の青年とヒューマンの青年が居なくなっている事にも気付けない程に、リッソスは当惑し判断に窮していた。
これがヘスティアファミリアの作戦だと考え付かない程に、混乱極まった城壁内部にて、唐突に城門が開きだす。
「何が起きたっ!?」
「逃げろっ!」「こんな所で死にたくねぇっ!」
混乱の最中、開く門を目にしたリッソスと少数のアポロンファミリアの正規団員が見たものは、恐怖に怯えた増援の冒険者達が勝手に門を開けて散り散りに逃げ出していく光景であった。
城壁上部の防衛に当てられた────
「糞っ、このままでは……」
「大変だ、南側城壁が壊滅して、西側から竜が侵入してきてるっ。東側の
逃亡者が続出し、統率のとれなくなった北側の中庭に駆け込んできたのは、初回の強襲で放心していたルアン・エスペルであった。彼は駆け込んでくるなり他の城壁部がどうなっているかの状況を報告し始める。
話を聞いた団員が当惑する中、彼は開いた門を指さして叫んだ。
「今すぐ全員で出撃しろ!? 相手の旗をぶっ壊せば良いだろっ!」
「ぜっ、全員だとっ!?」
ただでさえ逃亡者が出て防衛隊人数が激減している今、守りを捨てるに等しい彼の台詞に驚く周囲だったが、次のルアンの言葉に反論を封じられた。
「この
やられる前に、やれ。どのみち、既に防衛する意味は無いに等しい。ここから立て直して防衛に専念する事等、不可能なのだからさっさと旗を破壊してしまえばいい。むしろそうしなければこのまま城塞は粉砕されて終わりだ。
「考えてもみろっ、透明化は出来たとしても数は増やせないだろっ! 赤飛竜は空を飛んでやがるし、重装竜は西側で暴れてる! 今ならあの座禅組んでる奴しか防衛してる奴がいないんだから余裕だろっ!?」
彼の言葉にリッソスが目を細め、残された数少ない者達を見回す。
残っているのは、僅か八〇人程しかいない。半数以上が逃げたとはいえ、残っている者達は怯えながらも武器を片手に戦う意思を見せている。
相手の旗の防衛状況を考えれば十二分だろうと彼が判断し、声を張り上げた。
「これより出撃するっ! 身軽にする為に馬車は使わない、出られる者は私に続けぇっ!」
彼らの出撃を見送ったルアンは目を細めて呟く。
「ミコト様、後は任せます……」
混乱の続く城塞に視線を向け、ルアンは顔を上げて城塞内へと走っていった。
融解する程の熱量によって完全に破壊された南側城壁は言うまでもない。
西側は指揮官が頭の良くない喧嘩屋染みたヒューマンと言う事で西側を積極的に攻撃させてもらったが、狙い通りであった。
空に注意を釘づけにしてからの、内側からの破壊工作────最初の攻撃隊撃破時に煙幕と共に、
彼等にはあらかじめ砲撃位置を知らせておき、その位置から遠い場所で待機してもらい、折を見て内側から持ち込んだ『クロッゾの魔剣』を使って西側と東側の
実際、北東の装甲型
内側では足の速い獣人の少女が『クロッゾの魔剣』を使って通路を次々に爆破しているのか、城塞内部からは途絶えぬ爆音が響き続けている。
空を駆るキューイの背にしがみ付きながら、背後のベルとヴェルフに視線を向け、呟く。
「準備は良い?」
「良いよ」
「…………」
作戦も大詰め。後はあの玉座の間に乗り込んで、親衛隊諸共全員をぶっ飛ばしてから旗を切り裂いて終いだ。
空中廊下には人はいない。彼らも下の階層の混乱を止めるべく場を離れたのだと思う。
城塞内部は今や火災と襲撃で大混乱。アポロンファミリアの正規団員とはいえこの混乱は想定外なのか対応が完全に遅れている。消火に当たる者、侵入者を撃退しようとする者、崩落した通路に翻弄される者。
狼人の少女が指示通りに城塞内部の通路を魔剣で吹き飛ばしたおかげで、一部区画の封鎖や通路の限定化などが発生し、アポロンファミリア側の団員は迷路の様に入り組んだ城塞内部で迷子状態に陥っている事だろう。
「ヴェルフ?」
ふと気づけば、ヴェルフが南側の焼土と化した区域を見て目を細めていた。やはり、あの魔剣には思うところがあるのだろう……申し訳ないがあの魔剣があったからこそ、最も厄介だったレベル3の冒険者────都市外のレベル3であり、冒険者とは異なる傭兵集団の統括を務めていた牛人を消し飛ばせたのだ。彼ら傭兵団は三〇人ほどの集団で、統率のとれた厄介な者達だった。本来なら魔剣数本使って吹き飛ばす予定が、ヴェルフの作った強烈な魔剣で吹き飛ばせた。それがなければ彼らによって敗北していた可能性すらあるのだ。
「はっ、大層な威力じゃねぇか……あの人は無事なのか?」
「リューさんなら大丈夫。きっと……」
彼の魔剣の一撃を放ち、撤退して以降音沙汰が無いリューさんの事は心配だが、今は目の前の事を片付けなければ。
轟音と共に西側の城門を完全に粉砕してヴァンが城壁内部の中庭に侵入。装甲型の
南東と南西の側防塔は強烈な魔剣の一撃で倒壊。一台は塔諸共崩れ落ちて叩き付けられて沈黙し、もう一台は溶けて飴細工の様に歪んでいる。
北側では恐怖に負けた逃亡者が現れ、それの影響で城壁上部の
「うっし、ヴァンも突撃したみたいだな」
「うん……」
緩やかに
このまま接近し、玉座の間に突撃。ベル、俺、ヴェルフの三人で陸の孤島と化した玉座の間で、ヒュアキントスと親衛隊メンバーを相手取る。下ではロキファミリアの増援五名が城塞内部を掻き回し、城壁内部に侵入したヴァンが暴れ回り攪乱。ガネーシャファミリアの増援の二名が鎮圧した側防塔の装甲型
接近を開始した直後、北側の攻撃隊が動き出したのが見えた。
叶うなら、全員が散り散りになって逃げてくれれば万々歳だったのだが、それでも八〇人程が残ったのか。
彼らが走るさ中────爆音と共に攻撃隊の中央部に
装甲型の
攻撃隊壊滅────じゃない、まだ二〇人程の小隊が駆けて行っている。
あの攻撃隊の残りを壊滅────させている時間は無い。早く玉座の間に突っ込まなくては。
「じゃあ────キューイ、突撃っ」
「キュイッ!」
準備万端。
邪魔する物はなにもない。城壁上部の
一気に玉座の間のある塔に近づいてガラス張りの窓から突撃を────出来なかった。
窓の内側に見えたのは、此方を向いた騎乗槍の穂先────旧型の
「なっ!? 回避ぃぃぃっ!!」
「キュイッ!?」
緊急回避とほぼ同時、放たれた大きな鉄の矢が片翼を抉り飛ばして墜落する。
リリの諜報では、玉座の間の情報は得られなかった。ルアンはあくまで下級団員。
下っ端扱いの彼や、外部冒険者として侵入したガネーシャファミリアの増援では貯蔵庫の場所はわかっても、玉座の間の様な幹部のみが立ち入りを許される場所の情報は得られなかったのだ。
何故、初撃を外したのか。何故、肝心な場所で読み違えるのか。何故、ここぞという場面で失敗するのか。
バカバカしい読み違えだ。あんな高い所なんだから、
『あぁっ、惜しいっ!』
『ふむ、玉座の間に設置されていた
墜落していく
アポロンに賭けている冒険者達は歓声を、ヘスティアに賭けている
実況の声が弾む中、バベル三十階の広間では、ヘルメスが唸り声をあげていた。
「速過ぎる」
「確かに、ヘスティアファミリアは速いですが……速過ぎるとは?」
唐突に口を開いたヘルメスに問いかけるアスフィ。
優男神は『鏡』の中の戦況を見ながらも口を開いた。
「アポロンファミリアさ、随分とちぐはぐで、一部が異常に速い……襲撃されて守りが無意味になったと判断した瞬間に北側の攻撃隊が出撃してる。其処に内側からの
「その通りですね」
内側に見事に侵入を果たした工作員。その働きによってズタズタに引き裂かれ続けている指揮系統、それでありながら、アポロン側の一部はまるで誘われる様に反撃に移っている────その反撃すらヘスティア側によって予定調和の様に叩き潰されているのだ。
「
「騙し合いですかね」
相手が何を思い、どんな風に考え、どんな風に動くのか。読み解き、相手の求める
性格の悪さが滲み出た一方的な殲滅戦。
「まあ、アポロン側はまだ人数が二百近く残ってるし」
「ですが、八十程逃げ出してますが……」
統率のとれない増援に振り回されているとはいえ、最後の大詰めともいえる
「ベルくん達が空中廊下に堕ちたねぇ」
「あの飛竜、片翼を千切り飛ばされたのに空中廊下に狙って堕ちた様に見えましたが……」
崩落しかけの空中廊下。その天井を突き破ってボロボロの赤絨毯の上に瓦礫と共に叩き付けられた飛竜と、その背に乗っていたベル・クラネル、ミリア・ノースリス、ヴェルフ・クロッゾの三人。彼らは素早く身を起こすと周辺警戒をし始め、下の階に続く階段に視線を向ける。
彼らが視線を向ける先。小さな円形の『鏡』に映し出された其処に、箱を担いだルアンと獣人の少女が駆けていく姿が見えた。
アポロンが驚愕に目を見開き、驚くさ中にもルアンと獣人の少女が手薄になった空中廊下に堕ちた飛竜と、それに乗っていた三人に駆け寄り────敵対しているはずの彼らにルアン達が
『裏切りだぁーーっ!?』
観戦していた市民も、冒険者も一瞬だけ理解が及ばずに棒立ちになる。
大通りも、ギルドの前庭も、
『アポロンファミリアの団員が裏切ってるぞっ!?』
『あれはそういう事だったのか! 全部あの
『回復薬とか渡して……あの横に立ってる狼人の女、どっかで……』
『ロキファミリアからヘスティアファミリアに改宗した冒険者だ!』
まさかの寝返り。ルアンが城砦内で
付け加えて言うなれば、彼と共に現れた獣人の少女がロキファミリアから改宗でヘスティアファミリアに移籍した冒険者────両足の欠損で冒険者を引退したはずの狼人────である事も場を騒然とさせる。
城塞内部にはアポロンファミリアの団員が詰めていたが、空中廊下に居た者達は別の場所に移動しており人気は無い。とはいえ、彼らが空中廊下に墜落したのは誰しもが目にしていただろう。直ぐにでも彼らは駆けつけてくるはずであった。通常ならば。
続いて階段を駆け上がってきたのは、赤眼のアマゾネス。続いてエルフの少女、ドワーフの男、両腕の白いアマゾネス。次々に現れたのは、城砦内部を攪乱し、通路の大半を崩落させる事で迷路の様に複雑化させたロキファミリアからの増援部隊。
全員が、元欠損冒険者で構築された者達。有り得ない者達の登場、嘘か真か、欠損を治した者達が勢揃いしたのだ。
北西の側防塔から内側に向けて装甲型の
中腹を破壊され、玉座の間への道が塞がれた塔。そこに続く空中廊下につのったベル、ミリア、ヴェルフ、ロキファミリアの増援五名。そしてアポロンファミリアの裏切り者のルアン。片翼を潰された赤飛竜。
中庭で暴れて注目を集める重装竜。
ヘスティアファミリアの旗の前で未だに座禅を続けるミコト。
ヘスティアファミリア側の役者の殆どが表舞台に姿を現した。
カサンドラちゃんが居なかったら話が成り立たないまであったし、カサンドラちゃん最高ぅ!
あの子、メタ的な視点でオリ主の弱点を打ち抜く対策しても『予知夢で見た!』で済むから扱いやすいのよねぇ。
殆どの作品でカサンドラちゃんが『