魔銃使いは迷宮を駆ける   作:魔法少女()

13 / 218
第十二話

 ははっ、こっちへおいで、手の鳴る方へ。なんちゃってな。

 

 ほら()()()()()()()()()()()()()()してやっから。大人しくしろよ……糞っ、腕で顔面防御すんじゃネェよ畜生。

 

 割と死にそうな一撃をぶっぱなしてくるミノタウロスに『ファイアッ』してるが、はっきり言っていい?

 

 レベル差の影響でかすぎぃ……

 

 唐突だがファルナについてちょっと話をしようか。

 皆は『レベル』って言われるとどんなのを思い浮かべる?

 最高レベルは大体『99』か『100』だろう。ダメージが億単位まで上がってレベル最大値が『9999』とか言う日○一のゲームもあるが。まぁ大体は『99』か『100』だろ。

 『255』? ちょっとまて、とりあえずここではそこらはあんま関係無い。

 

 通常のRPGでレベル差って言えば多分『5~10』ぐらいはなんとかなると思う。

 ただ、ファルナで言う『レベル』ってのは多分だが『クラス』の事だと思う。

 もっと詳しく言うなれば『基礎アビリティ』が一般的なRPGの『レベル』に当たるんだと思う。

 レベル上限が『500』で、ランクアップ条件に最低レベル250の制限がかかってる感じ。ランクアップで既存のレベルを基礎として更に500上げれる様になるといえばいいだろうか?

 

 今の俺が『ランク1 レベル10』ぐらいだとするなら、ミノタウロスは『ランク2 レベル300+250』ぐらいなんじゃないか?

 

 低く見積もってもレベル差250ぐらいだと考えて良いだろ。

 エイナさんの説明だとミノタウロスって一般的なレベル2冒険者も避けて通る様な危険な奴らしいし、もしかすると通常のRPGにおけるレベル差500以上はある。

 

 ……そりゃ勝てねぇわ。ファルナについて考察は色々あるが。とりあえずこれだけ言わせろ。

 

 理不尽過ぎワロス。

 

 初期ダンジョンでラスボス現れて強制敗北イベントですか? 今時そんなRPGは糞ゲー扱いですよ。しかも今はソレが現実っていう。やっぱ現実って糞だよ。

 

 

 

 

 

「『ファイアッ』」

「キュイキュイッ!」

 

 曲がり角から姿を見せたミノタウロスの顔面に指先(銃口)を突き付けて『ファイアッ』。

 『ショットガンマジック』はゴブリンやらコボルト相手には完全に威力過多で魔石吹っ飛ばすし。ぶっちゃけ散弾はベル君と一緒に居る時にぶっぱすると巻き込みかねないから自重してたが。今は遠慮する必要は無い。

 

 ミノタウロス(テメェ)はもっと自重しろ糞牛頭がっ!!

 

 振るわれた岩石の棍棒が壁や床を打ち付けるが、その度に衝撃が地面を走り抜ける所為か足がもつれそうになる。

 

 ヤバイヤバイ。死ぬ死ぬ。とキューイがきゅいきゅい咆えてるが黙ってくれ。回避で忙しい。

 

 曲がり角からこんにちはー。そして死ね。顔面ショットガンだぞ畜生。腕ガードとかないわー。

 というか、腕で『ショットガン・マジック』を防ぐとか卑怯過ぎぃ。

 

 まぁ、俺が長生きすればする分だけベル君の生存率が上がるんで死力を尽くしますかね。

 

 岩石の棍棒を振り抜いた姿勢のミノタウロスから全力で距離をとろうと足を動かすが、ミリアの足は短すぎる。

 

 今までの冒険の最中、動き回らずにその場で魔法を使って敵を倒していた弊害だろう。俺の敏捷は絶望的に低い。I9と言う時点でお察しである。

 

 魔法が便利すぎたからね、しょうがないね。こんなことならもっと敏捷上げるために走り回っとくんだった。

 

 なお、一番低いのは耐久な模様。I2だからな、遠距離戦闘しかしてない弊害だよ。まあ、耐久が高くても多分即死(ワンパン)致命傷(ツーパン)になるだけだろうがな。

 

 『マジックシールド』でワンチャン?

 

 壁にめり込むような恐ろしい一撃を防げるかなぁ。いや、無理だろ。

 

 そんな風に頑張ってるうちに残り弾薬が1マガジンになってしまった。後15発しかないのか。意外と弾薬欠乏が早かった。

 

 ベルからかなり距離はとったしもういいだろうか。

 

 きっとベルが、ヘスティア様にミリアはかっこよく死んだと伝えてくれ――――

 

「ほわぁああああああああああああ!?」

『ヴォオオオオオオオオオオオオオ!?』

 

 は?

 

 遠くから聞こえた悲鳴と咆哮に足が止まる。

 

 え? 待って、いや待て。ミノタウロスはこっちに居るだろ? なんでベルの悲鳴とミノタウロスの咆哮が()()()()()()()()()()

 

 慌てて後ろを振り返っ――――目の前に岩の壁があった。

 

「なっ、グブッ!?!?」

 

 硝子の砕ける音と共にすさまじい衝撃が全身を打ち据えて体がぶっ飛ぶ。

 

 ゴロゴロと転がってからなんとか半身を起こしてみれば、岩石の棍棒を振り抜いたミノタウロスが遥か彼方にいた。

 

 なにがおきた?

 

 ベルの悲鳴とミノタウロスの咆哮。そして振り替えったら目の前に壁。

 

 あぁ、俺はミノタウロスの一撃で吹っ飛んだのか。壁と棍棒でサンドイッチされてたら死んでたわ。間違いねぇ。

 

「キュイキュイ!!」

「コブッ、ゴホッ……」

 

 キューイが大丈夫? みたいなニュアンスで騒ぐので返事をしようとしたら思いっきり噎せた。

 

 というか……これ、ヤバくね?

 

「ほわぁああああああああああああ!?」

 

 遠くから聞こえる二回目のベルの悲鳴に意識を持っていかれかけるが、全身の痛みを理解して意識が飛びかける。

 

 あー、多分ですが致命傷かな? 立てねぇや。

 

 さっき俺が壁だと思ったのはミノタウロスの持っている棍棒だったのだろう。

 

 ミノタウロスの手にある棍棒にベッタリと血が付いている。あれ、俺の血か?

 

 おぉ、『マジックシールド』のお陰で即死しなかったぞ。

 

「ゴボッ、ゴブッ……ペッ」

「キュイ!! キュイキュイ!!」

 

 怪我してる、治さなきゃ、逃げなきゃ。とキューイが騒ぐが……

 

 俺の足、どうなってんだこれ。千切れてるわけじゃ無さそうだが。あらぬ方向に爪先があるぞ。こんなに体って柔らかかったっけ?

 

 太ももの辺りからヤバい方向に曲がって――あぁ、折れてんのか、これ。

 

 割りと冷静に自分のことを分析できるなぁ。まぁ現実逃避してるだけだけど。

 

 これはなぁ、死んだよなぁ。

 

 足があらぬ方向に曲がり、何とか上半身を起こした姿勢のまま動けない。

 

 左手は完全にぶっ壊れてるのか? 動かそうとしても動きゃしない。右手が無事と言えば無事か。まぁ、なんとか動く感じだけど。

 

 なんのため頑張ったんだっけ?

 確かベルを逃がすために……そのベルは別のミノタウロスと出会ったみたいですがね。

 

 ベルの悲鳴はもう聞こえてこない。

 

 まぁ、ベルの足なら逃げ切れるだろ?

 

 と言うか、そうじゃなかったら俺は何のためにって話だろ。

 

「キュイ!!」

 

 おー、体が持ち上がった。高い高いてすかね。牛頭人体の怪物さんに高い高いされるなんて、夢みたいだ。

 

 くそったれな悪夢の方だけどな。

 

 

 

 

 

 血を吐いて幼い容姿の少女が呟く。

 

「コフッ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 その矮小な存在の言葉など理解する必要もないだろう。

 

 小さな少女の胴体を両手で掴み、ミノタウロスは愉悦の笑みを溢した。

 

 その矮小な少女の胴体はミノタウロスが両手で掴めばすっぽりと胴体が手の中に収まってしまうほどの大きさでしかない。

 

 小賢しくもちんけな魔法で抵抗してきた矮小な存在は、今やミノタウロスの手の中でぐったりとした人形のようだ。

 先程までの苛立ちを思い出してゆっくり、ゆっくりと力を加えていく。

 

「ガッ!? ギィッ!!」

 

 ポキッボキッと何かが折れる音が手の中で響き、幼い少女が目を見開いて不様な声を響かせる。

 

 この瞬間を待っていた。

 

 うめき声を上げ、無様に潰れていく矮小な存在。

 

 あの恐ろしい人間達に恐怖を抱き、不様に逃げるはめになった。

 

 無様に、情けなく、後ろに迫る強者に追われながら、必死に足を動かした。

必死に足を動かした。

 

 この、狩る側に立っているはずのミノタウロスが、である。

 

 だが、その怒りも腕の中で血を吐いて苦しんでいる矮小な存在のお陰で払拭できそうである。

 

 そう、自身は決して狩られる側ではない。恐怖を抱く側ではない。

 

 手の中で潰れ行く矮小な存在がそれを証明してくれる。

 

 そう、ミノタウロスは狩る側であり、恐怖を抱かせる側の存在なのだ。

 

 愉悦の笑みを浮かべつつも少しずつ、少しずつ。力を加えていく。

 

 ビクンビクンと痙攣している矮小な存在は今にも死にそうだ。

 

 このまま、時が止まればいい。そうすれば永遠にこの愉悦感を、狩る側の快楽を享受し続けることができるのに。

 

 ふと、手の中の矮小な存在の痙攣が止まった。

 

 ああ、死んでしまったのか。勿体ない。もう少し――

 

 目の前に突き付けられた矮小な存在の指先を見てミノタウロスの動きが止まる。

 

「ショットガン整形手術、なんてね。『ファイアッ』」

 

 目の前で光が弾け、激痛と共にミノタウロスは光を失った。

 

 

 

 

 

 顔面に一発お見舞いしてやったら思いっきり投げ飛ばされた。

 

 ははっ、ざまぁ見ろ。

 

 最後っ屁って奴だ、顔面整形で多少は見れる顔になったろ。感謝しろ糞牛。

 

 きっと、キューイがいなかったら最後っ屁も出なかっただろうに。

 

 スキルリンク、忘れてたがミリアが使える魔法は一応キューイも使えるんだった。

 

 『レッサーヒール』をキューイが使ってくれなかったらもっと早くにくたばってたんだろうが、何とか一発ぶちこめた。

 

 まあ、致命傷ではないし、ただの目潰しでしかない。

 

 件のミノタウロスも、近くに転がしてあった岩石の棍棒をやたら目ったらに振り回している。

 

 ふーむ。反撃開始、といきたかったが……無理。

 

 さっき握りつぶされかけて瀕死だったのがキューイの回復のお陰で重傷になったんだが、投げ飛ばされて叩きつけられたせいでまた、瀕死だ。要するに動けん。

 

 しかも、マインドダウンだったか。

 

 精神力が切れたっぽい。身体中の激痛が曖昧になり、意識が薄れていく。

 

 キューイに回復魔法を、なんて、俺が魔力切れしてちゃ使えっこない。

 

 詰みだな、ミノタウロスのがむしゃらな攻撃が俺を潰すのが先か、それとも俺が死ぬのが先か。

 

 まぁ、その前に俺はマインドダウンで気絶するっぽいけどな。

 

 気絶寸前のまま、ミノタウロスを見て……うぇ?

 

 ……うわぁ、何か幻覚が見えるわ。

 

 金髪のショタっ子王子様がミノタウロスを槍で細切れにしてるのがみえるぞ。

 

 いや、夢か?

 

 慌てたように駆け寄ってくる金髪のショタっ子王子様。

 

 あるぇ? こんな金髪のショタの王子様に助けられたいとか言う願望でもあったのか?

 

 まぁ、俺の秘めた金髪ショタ王子様に助けられたい願望はどうでもいい。

 

 ベルは無事に逃げ切っただろうか?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。