魔銃使いは迷宮を駆ける   作:魔法少女()

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第一四三話

 貴賓室(ビップルーム)の最奥の賭博卓(カジノテーブル)にて行う事となった賭博(ゲーム)は『フロップポーカー』。

 自分のみの手札を2枚、それと卓中央に置かれる参加者(プレイヤー)全員が使用できる共通(カード)5枚の内の3枚を組み合わせて手役(ハンド)を作る。

 参加者(プレイヤー)はセルバンティス、彼の共謀者4人、リューさん、俺の計7人。

 一人当たりの賭札(チップ)枚数は500枚、卓上の合計3,500枚となる。全てを掻っ攫えば勝利、手元の賭札(チップ)が無くなれば敗北。

 開幕直後から不正(イカサマ)していないかの睨み合いをしているリューさんとセルバンティス側の黒服達に溜息を零しかけつつも賭博(ゲーム)開始(スタート)

 

「では、手始めに20枚から賭けるとしましょうか」

「私はその倍を」

 

 進行役(ディーラー)切り混ぜ(シャッフル)に違和感は無し。初期確認の時に切札(トランプ)の欠けも無し。配られた(カード)も予測通り。

 ふむ、普通の進行役(ディーラー)だ。特に操作してきてる感じもしない。

 リューさんの方は真剣な表情で相手の意図を読み取ろうとしているが、無意味だ。

 

上乗せ(レイズ)

 

 初っ端から『駆け引き』で勝負を仕掛けていってるリューさんに若干呆れざるを得ない。まだ相手の手の内も分かっていない状態で勝負に出るのは不味い。

 卓をそれとなく見回していると、太っちょの奴が飲み物を注文(オーダー)した。

 

「アルテナワイン三〇年モノを」

 

 …………手役(ハンド)は『フルハウス』で『アルテナワイン三〇年モノ』。まあ、無いとは思うが飲み物の注文(オーダー)で仲間内に手役(ハンド)を知らせてる可能性もあるし、記憶しとこ。

 リューさんの手役(ハンド)は『スリー・オブ・ア・カインド』だし負けだな。俺は『ワンペア』で勝負にすら出れない。当然『下りる(フォールド)』だ。

 それにしても、やる気を感じられない欺瞞(ブラフ)だ。セルバンティス側の全員が上っ面だけの欺瞞(ブラフ)をしており、勝負する気が感じられない。

 

「では、手役開示(ショーダウン)を」

「フルハウス、私の勝ちですね」

 

 予測通りの手役(ハンド)が出てきた。何と言うか、ズラされてるかもしれないと警戒はしてるんだが、どうにもそんな技術は無いみたいで二度目も予測通りの手役(ハンド)だ。

 そんでもって、二巡目でも別の一人が飲み物を注文(オーダー)してる。『フォー・オブ・ア・カインド』で『蜂蜜酒(ミード)』。

 …………そしてリューさんやい、相手の上っ面だけの欺瞞(ブラフ)を読んで駆け引きしても意味無いよ?

 

 

 

 

 

 貴賓室(ビップルーム)はテリー・セルバンティスの領域(テリトリー)だ。

 彼に逆らうような愚か者には『洗礼』を行い、借金を課し、金と女を奪う。一度でも彼に(こうべ)を垂れた恭順者には手厚い待遇を。

 『洗礼』の旨味────貴賓室(ビップルーム)に招かれる程の資産家であり、『洗礼』を浴びて苦境に立たされた新参者に恩を着せ、懐柔する事で自分たちの懐が潤う事を知った招待客(ゲスト)は、彼に従順に従う共謀者へと成る。

 何より最大賭博場(グラン・カジノ)ではギルドですら介入を許されない。

 もし力で訴えかけてきたとしても、高い金を払って雇った『黒拳(こっけん)』ファウスト、『黒猫』ロロの二人、上級冒険者ですら(おのの)く程の実力者が屠る。

 これほどの力と地位を手にした彼は、自身を『賭博の楽園の絶対王者』と────否、『迷宮都市(オラリオ)の王』とすら自負している。

 そして、そんな彼の前で『洗礼』を浴びる二組の愚か者が居た。

 

上乗せ(レイズ)

 

 片や真剣な表情を浮かべ、セルバンティスのみせかけだけの欺瞞(ブラフ)を読み取ろうとするお高くとまったエルフの若造。王を自称する彼からアンナ(モノ)を奪おう等とした、その身一つで悲劇の娘を助けに来た騎士(ナイト)気取りの愚か者。

 そんなエルフの手元の賭札(チップ)は既に半分を切っていた。

 

同賭け(コール)

 

 片や小さく欠伸をしてやる気を感じさせない小人族(パルゥム)の冒険者。戦争遊戯(ウォーゲーム)で名を上げ、その時の(えいぞう)越しに見てセルバンティスが興味を持った娘。

 派閥に所属する冒険者、賭博場(カジノ)とは無縁そうな雰囲気を持つ娘でもあった彼女は歯がゆくも手が届かない所に居た。しかし何の因果か彼女はこうしてこの場に足を運んでいる。

 彼の支配下(テリトリー)に、招かれた。

 

「……私の勝ちですね」

「マクシミリアン殿はお強いですねぇ~」

 

 騎士(ナイト)気取りのエルフは叩き潰し、目の前で伴侶を奪い去る。今まで彼に歯向かおうとした愚か者共と同じ末路を辿らせてやるつもりである。

 小人族(パルゥム)の方はまだ手を出していない(アンナ)と、これから奪う伴侶(シレーネ)と共に食ってしまおうとほくそ笑んでいた。────それが、三〇分前の出来事。

 

「ぐ……」

「また、やりやがった」

 

 取り巻きの招待客(ゲスト)の言葉に内心舌打ちをしながらも表面上は笑みを浮かべるテリー・セルバンティス。

 

「いやぁ、本当に……お強いですな」

 

 最初の所持賭札(チップ)は一人500枚。

 セルバンティスの現在の所持賭札(チップ)は200枚しかない。それは彼の取り巻きも同様だった。

 騎士(ナイト)気取りのエルフの所持賭札(チップ)が300枚、そして────やる気の無さそうな小人族(パルゥム)は2000枚を超える賭札(チップ)を保有していた。

 彼女、ミリア・ノースリスの勝率がおかしい。それに気付いたのはかなり早い段階であった。当然、セルバンティスは不正(イカサマ)を疑い、彼の取り巻きや護衛の者達も全員でその不正(イカサマ)のタネを明かそうとした。

 しかし、結果は白。怪しくはあれど証拠がない。

 彼女の手は小さすぎて(カード)の入れ替え等出来る筈も無く。他の参加者(プレイヤー)の手札を盗み見る動作も無い。

 彼女の背後に立ったまま微動だにしない傭兵が何かしている訳でもなかった。つまり不正(イカサマ)は一切行われていないのだ。だというのに、ミリア・ノースリスという娘は次々に勝利を飾っていく。

 ────だが、例外があった。

 

「また、マクシミリアン様に負けてしまいましたか」

「…………その様ですね。それと、一人脱落ですか」

 

 激しい上乗せ(レイズ)合戦。それに挑んでいた取り巻きの一人の所持賭札(チップ)が底をついた。項垂れる一人を他所に、残念そうにマクシミリアンに渡される賭札(チップ)を見送るミリア。

 そう、例外だ。彼女はマクシミリアンにだけは負ける

 セルバンティスが周囲の招待客(ゲスト)と目配せを行う。残っているのは彼を入れて四人。

 

「では、参加費(アンティ)を」

「10枚でいきましょう」

「わ、私も10枚で」

 

 セルバンティスを皮切りに、全員が参加費(アンティ)として最低額を賭け(ベット)する。当然、ミリアやマクシミリアンも参加してくる。

 手札となる二枚の(カード)が配られ、二度目の賭け時間(ベッティングタイム)が始まった。

 

「んー、上乗せ(レイズ)40枚」

「……降りる(フォールド)で」

 

 小人族が一気に釣り上げ、エルフが下りる。

 この時点では共通(カード)は場に出ておらず、手役(ハンド)がどうなるかわからない。

 しかし、この時機(タイミング)でミリア・ノースリスが上乗せ(レイズ)してきた場合、必ず彼女が勝利する。

 進行していく賭博(ゲーム)、共通(カード)が開示された所で、招待客(ゲスト)の一人が手を上げた。

 

「アルテナワイン、三十年モノを頼むよ」

 

 これが彼、テリー・セルバンティスと共謀者が定めた暗号。内容は『フルハウス』。

 自身の手役(ハンド)に応じて注文(オーダー)を行い、最も強い手役(ハンド)のみが勝負に出て、他は適当な欺瞞(ブラフ)を用いて降りる。

 単純に人数が多いセルバンティス側は手役(ハンド)が揃う確率が高い。それを用いる事で今まで『洗礼』を浴びせてきていた。────しかし、今回は上手くいかない。

 

上乗せ(レイズ)で」

「おや、【魔銃使い】殿と一騎打ちですか……どうします?」

 

 彩光異色の瞳を言葉を投げかけた招待客(ゲスト)に向け、にこりと微笑み、彼女は宣言する。

 

「当然、上乗せ(レイズ)50枚で」

 

 置き場(ポット)に追加される賭札(チップ)の山。

 招待客(ゲスト)が怯んでいるのを見て、セルバンティスは表情を僅かに顰める。

 

「だ、だいぶ強気ですな……同賭け(コール)で」

「あら? 弱気ですね。最後も上乗せ(レイズ)しますよ」

 

 下りてくれ。内心そう叫びながらも四度目の賭け時間(ベッティングタイム)を終え手役開示(ショーダウン)

 

「フォー・オブ・ア・カインド、私の勝ちですね」

 

 相手が乗ってきたら共謀者の中から最も強い手役(ハンド)の者が勝負に出る。そんな単純な仕掛けではあっても、欺瞞(ブラフ)仮面(ポーカーフェイス)を用いて馬鹿正直に戦いを挑んでくる間抜けは簡単に倒れていく。

 だというのに、この小人族(パルゥム)は何でもない様に『勝つ時だけ勝負に出てくる』。

 

「……少し、待っていただけますか?」

 

 既に、我慢の限界であったテリー・セルバンティスが声を上げる。周囲の招待客(ゲスト)も彼が何をしようとしているのか理解しているのか黙り、マクシミリアンとミリアを見た。

 

「何か?」

「…………ようやく、ですか」

 

 すまし顔を続けるエルフに、呆れの表情を浮かべた小人族。

 この二人は共謀者(グル)だ、とセルバンティスは睨んでいる。

 マクシミリアンの所持賭札(チップ)が減るたびにノースリスがわざと負けて賭札(チップ)が無くならない様に配慮しているのだ。怪しくないはずがなかった。

 

「いやはや、【魔銃使い】殿も人が悪い……まさか不正(イカサマ)をお使いになるとは」

「……っ」

「…………はい?」

 

 ほんの僅かにマクシミリアンが目を見開き、ノースリスはきょとんと呆けた表情を浮かべる。

 前者の反応から自身の考えが間違っていないと判断したセルバンティスが静かに立ち上がり、ノースリスを指さす。

 

「お前は不正(イカサマ)をしている」

「……私が、不正(イカサマ)? ふむ、理由を聞いても?」

 

 酷く落ち着いた態度で返答する彼女に対し、周囲の黒服が逃げ場を潰す様に囲む。

 このまま糾弾して彼女を不正(イカサマ)を使用したとして捕縛してしまおう。あわよくばそのまま首輪まで付けてしまえば良いとセルバンティスがほくそ笑み、他の招待客(ゲスト)も彼女を捕まえる事で得られる利益に目を暗く輝かせる。

 

「随分と図太い態度ですな。流石冒険者と言ったところですな」

「御託はいりません。率直に、私が不正(イカサマ)をしている証拠を提示してください」

 

 椅子に腰掛けたままセルバンティスを見上げる小人族。生意気な態度だと彼が睨み返すが、彼女に動揺の気配は感じられない。酷く落胆したような、興味を失った様な視線がセルバンティスに向けられる。

 

「【魔銃使い】殿は勝負に出たとき、必ず勝利していますよね」

「ええ、明らかにおかしい」

「それに、マクシミリアン殿以外に負けていない」

「もしやマクシミリアン殿と共謀者(グル)なのでは?」

 

 招待客(ゲスト)達が追撃する様に言葉を重ねれば、エルフが僅かに身を固くした。対し、小人族は呆れと軽蔑の表情を浮かべて肩を竦める。

 

「まさか、私が勝ち過ぎているから不正(イカサマ)を疑っているのでしょうか?」

「ええ、その通りですとも。【魔銃使い】殿、貴女の勝ち方はおかしい」

 

 そうでしょう? そうセルバンティスが声をかけると、彼女は目を細めて彼を睨み返した。

 

「私がどんな不正(イカサマ)を行っているのか、説明できると?」

 

 生意気な態度だ。明らかに不正(イカサマ)をしている癖にとセルバンティスが内心吐き捨てると同時、彼女の不正(イカサマ)のタネがわかっていない彼はそれを悟らせぬ様に笑みを張り付けて口を開く。

 

「我々の手役(ハンド)を読んでいる。そうでしょう? そして、マクシミリアン殿に賭札(チップ)を分け与えている。つまり共謀者だと睨んでいるのです」

 

 どのみち、不正(イカサマ)を行った彼女をそのまま返す積りは無い。此処で大人しく負けていればそれなりの扱いをしただろうが、変に噛み付いてくる様な小娘は大人しくなるまで(しつけ)をしなくてはいけないのだ。

 セルバンティスの嗜虐的な視線で射抜かれた小人族は────盛大な溜息を零した。

 

「はぁ、なるほど証拠は無いけど状況から不正(イカサマ)だと疑われた訳ね────大正解。私は不正(イカサマ)をしてるわ」

 

 両手を上げて降参を示しながらの、唐突な暴露。これから不正(イカサマ)を認めるまで黒服に取り押さえさせる積りであったセルバンティスもこれには唖然。マクシミリアンも驚愕の表情を浮かべて固まり、傍らに居たシレーネがその腕を掴んでいる。

 

「まさか、認めていただけるとは」

「まあ、否定できないし」

 

 興味無さげにグラスを傾ける小人族。己の不正(イカサマ)を暴露にしたにしては余裕の態度だ。

 流石におかしいと違和感を感じていると、彼女が賭札(チップ)を一枚手に取り弄びだす。

 

「まあ、流石にどうやって不正(イカサマ)してたか説明はした方が良いわよね?」

 

 ピンッと弾かれた賭札(チップ)がクルクルと回転しながら宙を舞う。何かする気かと黒服が身構え、仮面の傭兵と小人族の娘をいつでも拘束出来る様に気を張る。

 

不正(イカサマ)と言っても、大した事ではないのよ? ただ────セルバンティス様達が使っていた暗号を読み解いただけ

 

 彼女の言葉に、場の空気が凍り付く。

 暗号を読み解いた。彼女はそう口にしたのだ。暗号、そう言われて真っ先に反応したのは、セルバンティス本人。僅かに目を見開き、彼女が口にしようとしている内容に思い至る。

 

「手札が出揃う度に飲み物を頼む人が最低でも一人以上居て、なおかつその人物以外が勝負を降りる。そしてその人だけが勝負に出てくる────飲み物の種類が暗号となっている

 

 この場に至って、テリー・セルバンティスは気付いた。

 彼女はいつからか気付いていたのだ。セルバンティス達が使っていた暗号────不正(イカサマ)に。

 

「アルテナワイン三〇年モノが『フルハウス』、蜂蜜酒(ミード)が『フォー・オブ・ア・カインド』、全部説明すると長くなるけど、必要ならするわよ?」

 

 逆に、利用していたのだ。

 何故、彼女はセルバンティス達との勝負に負ける事は無かったのか。

 何故、彼女はマクシミリアン相手にだけ負ける事があったのか。

 何故、彼女は自らの不正(イカサマ)を認め、明かす真似をしたのか。

 ────暴かれても、痛くも痒くも無いからだ。

 

「で、どう? 貴方たちがやっていた不正(イカサマ)ってこんなモノでしょ

 

 わざわざ手役(ハンド)を伝えてくれる相手に、負ける事等無い。

 そして、不正(イカサマ)を疑われても問題ない。相手がしている暗号を利用しただけだから。

 

「正直呆れるわ。わざわざ手役(ハンド)を教えてくれるなんて。おかげでこんなに勝ててしまったもの。あ、マクシミリアン様とは共謀してないわ。だってあなた達と違って手役(ハンド)を教えてくれないし」

 

 不正(イカサマ)を疑い、暴いてやろうと糾弾したセルバンティス本人が、他の招待客(ゲスト)共謀者(グル)だった事を暴露されたのだ。

 

 

 

 

 

 ミリアの不正(イカサマ)を疑われた時、リューは盛大に焦った。

 嵌められたのに気付き、『駆け引き』や『欺瞞(ブラフ)』で勝負に挑んでいた自身の勝ち目が無かった事に気付いた時には既に手遅れ。暴れようかと腰を上げかけるも、ミリアを巻き込んでいる事に気付いて自制した

 このまま負ければ何をされるか────シルに向けられた下種な視線から想像は容易い。

 

 焦燥しながらも勝負していたリューに対して助け舟を出したのは、ミリアだった。

 

 全ての(カード)の位置を記憶、予測して勝負している彼女は単純に強かった。そして、リューが勝つ数少ない機会において彼女はあえて勝負に乗ってきて、大量の賭札(チップ)をリューに擦り渡す。

 それがなっていたからこそ、勝負にならずに潰されるはずだったリュー・リオンは勝負を続けられた。

 だが、やはりその不自然な行動はセルバンティスの目に留まり、不正(イカサマ)を指摘される事になる。当然だ、あまりにもわかりやすすぎるやり方で荒稼ぎをしていたのだから。

 暴れて有耶無耶にすべきかと身を強張らせるリューに対し、ミリアの方は驚く事に自らの不正(イカサマ)を認めた────だけではない。

 

 セルバンティス達に必ず勝利していた理由。暗号でのやり取りに気付いてそれで勝つ時だけ賭けた。

 リューにわざと負けて賭札(チップ)を渡していた理由。わざとではなく普通に勝負していただけ。

 己の不正(イカサマ)を認めた理由。相手がしていた暗号のやり取りを利用したと糾弾するため。

 

「すごい……」

 

 傍らのシルが口元を扇子で隠して呟く。

 リューもまたシルと同様に感心し、納得していた。

 

「これが、彼女のやり方か……」

 

 よほどの事が無ければ発覚しない記憶と予測と言う禁じ手に近い技能。それを使って荒々しく稼ぐ姿は若干らしくない。最初の方は大人しかった彼女が途中で急変した様に荒い勝ち方で目立ちだしたのだ。

 当然、指摘される事を予測しきっていたのだろう。

 事を起こす前に、それに対して反撃の手札を用意しておく。事前に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それを徹底していたのだ。

 

「な、わ、我々が共謀者(グル)だと?」

「証拠はほら、貴方たちの暗号を読み解いて勝ち続けたこの賭札(チップ)の山」

「ぐ、偶然ではないですかな?」

 

 獣人の貴族の言葉にミリアの口角が歪む。ニィと擬音が着きそうな程に凶悪な笑みを浮かべた彼女は、ゆっくりとした仕草で卓を撫でる。

 

「偶然、そうですか偶然でしたか────でしたら私の不正(イカサマ)は無かった事になりますね」

「なっ────何を、言って!」

「だってそうでしょう? 貴方たちの暗号がただの偶然だったって言うのなら、それを読み解いたと思い込んだ私の読みもまた偶然そうでしょう?」

 

 上手い返しだ。リューは内心舌を巻いた。

 相手が共謀者(グル)だった事を認めれば、その時点で勝負の公平性が疑われて無効試合。

 もし認めなければ、彼女が自身で語った不正(イカサマ)はただの偶然。思い違いとなる。

 どちらに転んだとしても、自身の利にしかなり得ない。たとえ此処で彼女が大暴れして貴賓室(ビップルーム)を滅茶苦茶にしたとしても、正当性は彼女に有る。

 ただ暴れてアンナを連れ戻す事しか考えていなかったリューと違い、たとえギルドやガネーシャファミリアに拘束されても何事も無いように手を打っているのだ。

 

「で? セルバンティス様…………コレは偶然? それとも、必然?

 

 手元の山となった賭札(チップ)を指し示し、ミリアが艶やかな笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

「いやー、参りましたな。不正(イカサマ)を疑って申し訳ない。ただの偶然だったご様子」

 

 そういって、セルバンティスは静かに椅子に座り直した。うわ、この状況で偶然って言い張りやがったよコイツ。

 下らない暗号なんて使って数で袋叩きとか、やり方が下手糞過ぎんだよ……つか、滅茶苦茶警戒してたのに出てくるのこれだけ? ちょっとしょっぱすぎない? 

 他の共謀者(グル)も俺の返しにどう返答すれば良いのかわからずに黙っちまうし。ちょっと詰めが甘すぎるんだよなぁ。

 黒服共も下がり、シャクティさんが小さく『凄いな』とか呟いてる。確かにすごいわ。

 

「それで、賭博(ゲーム)を再開しましょう。ああ、そうだ、【魔銃使い】殿に勘違いさせてしまった注文(オーダー)は今後無しにしましょうか」

「お、おお、そうですな勘違いされても困りますしな」

「そうしましょう。それが良い」

 

 セルバンティスの言葉に即座に反応する招待客(ゲスト)共。むしろこの空気でよく賭博(ゲーム)を続けようと思ったな。

 まあ、もう暗号は使ってこないだろうし、リューさんが切り返していけるはずだ。彼女に目配せすると、小さく頷いてくれた。

 今まで『駆け引き』とか欺瞞(ブラフ)の掛け合いで勝負してきてたリューさんが割を食い、俺が卑怯な方法で敵から巻き上げた賭札(チップ)をリューさんに渡す形で拮抗させてきたのだ。

 わざわざ相手から噛み付かせたのは警告兼様子見だったんだが、予想以上に嵌ったというか、勝手にはまってくれた。

 

「私は10枚賭けましょう。【魔銃使い】殿はどうします?」

「…………はぁ、じゃあ10枚で」

 

 いや、なんかもうやる気失せたわ。

 一応、予測は続けていくが今まで通りにド派手な勝ち方はしない様にしよう。

 

 二度、三度と賭博(ゲーム)を続けていくが、暗号を使えなくなった相手は、なんというか酷い。

 基本、下りる(フォールド)で様子見しているが、リューさんの駆け引きが強いのだ。

 まあそうだよな。暗号についてどつかれて動揺してる状態の欺瞞(ブラフ)なんてあってないようなもんだし。

 

 やっちゃえリューさん。勝ってアンナさん引き取って帰ってくれ。




 『ボーダーランズ3』『State of Decay 2』『The Surge 2』『ダーケストダンジョン』
 やばい、やりたいゲーム一杯あって作品書くのきっつい。

 平均評価下がったのを理由に更新速度を下げますーとか適当に理由(たてまえ)使ってゲームやってちゃダメだろうか。
 ……わかってる。大丈夫、週一更新は絶対だからね、此処で更新速度落としたら戻ってこれないだろうし、頑張るよ……でもゲームさせて()

 ダーケストダンジョン、ずっと積みゲーにしてたけど日本語化入ってたのに気付いてやりだしたら止まんねぇ!
 奇襲……強撃ランバー……クリティカル………即デスブロー……うぅ頭が……
 ちょっと樹海にブライト・ジャイアントぶち殺しに行ってくる。ディスマスの仇討しないといけないんだ(鋼の意思)

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