魔銃使いは迷宮を駆ける   作:魔法少女()

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第一八九話

「えー、(わたくし)、ヴェルフが解説実況を担当させていただきます。ユージン島ヘスティア・ファミリア水着大会! どんな水着が出てくるのか今からどきどきとわくわくが止まりません」

 

 どきどき、わくわく、ユージン島水着大会~……の前のお着換えタイム。

 砂浜と森の境に鎮座する巨大な岩塊を隔てた向こう側で一人ずつ着替える、という事で覗き等をしない様に俺とリューさんで見張り、ベルは荷物番、ヴェルフは……何処から引っ張り出してきたのは真っ赤な燕尾服を着て、其処らに生えてた天然のバナナを収音器(マイク)の様に握って自称『解説実況役』に徹している。

 ……ヴェルフ曰く、ヘルメス様から頂いた荷物の中にあったそうな。

 あのさ、ヘルメスは何がしたいんですかね?

 

「ぬっふっふ……水着大会、勝つのはこのボクさ!」

 

 自信ありげな様子のヘスティア様がいの一番に岩の向こう側へと消えていく。

 

「おっと、一番手、ヘスティア選手。個室へ移動です……少し覗いてみま────」

「ヴェルフ、それをしたら貴方の両目を抉り取ります」

「……冗談だよな?」

 

 何のために見張り立ててると思ってんのよ。流石に抉りはしないが目潰しはする。

 腕組をして覗こう等と考える不届きなヴェルフに威嚇しつつ、リューさんの様子を伺う。

 キューイについては木箱から救出済み。窮屈な木箱の中で不機嫌さが爆発仕掛けていたが、オラリオに帰ったら林檎を山ほど供えるという約束で機嫌を取る事に成功したのだ。しかし、リューさんには告げて無いし、姿を見せても居ない。

 ……癪ではあるが、ヘルメスが渡してきた水着を着させて大会にしれっと参加させる事でリューさんには受け入れて貰おうと思う。それまでは奥の方で静かにしててくれる様に頼み込んでおいたのだ。

 

「……どうかしましたか?」

「いいえ、なんでも。リューさんも水着、どうです?」

「いえ、私はあまりああいったモノは……ん、これは……?」

 

 首を横に振って否定するリューさんの頭にひらひらと布切れが飛来した。

 

「……水着、ですか。これはヘスティア様のものだと思われますが」

「……みたいですね」

 

 群青色をした三角刑の布地が二つ合わさり、残りは紐で構成された────割と攻めてる水着(ビキニ)だ。何処かで見た事があるな、と思っていると岩の向こう側からヘスティア様の独り言が小さく響いてくる。

 

『ふんっ、あんなぬるい水着で勝てると思うなあ、サポーター君たち。ボクとベル君はあの子達とは比べものにならないぐらいの時間を共有しているんだ。今日一日ベル君と遊んだら……最後にはきっと……!』

 

 以下、岩の向こう側から聞こえたヘスティア様の妄想が口から零れ落ちた内容だ。

 

 

 

 沈む夕日に照らされた海、細波(さざなみ)の音が響く砂浜。朱く染め上げられたボクはベル君と共に遊び疲れて岩場の影で一休み……。ふと、ベル君は急に立ち上がってボクを壁に押し付けてこう言うんだ────

 

「神様、僕、一緒に居たいです」

 

 そしてボクは言い返すのさ。

 

「ボクもだよ、ベル君……」

 

 良い雰囲気になるけど、ベル君は真剣な眼差しでボクを真っ直ぐ見て、口にする。

 

「違うんです神様、僕、今夜一晩一緒に居たいんです。()()()()()で」

 

 きゅんっ、と高鳴る心臓。そのまま、夕日を背景にボクとベル君の唇が迫って────。

 

 

 

「なぁーんてことになったりして! なったりして! なったりして────!!」

 

 ぶんぶん、と何かを振り回す音が岩越に聞こえる。いや、本当に何をしているんだろう、とリューさんと二人で顔を見合わせた。

 

「ミリアさん、今のは聞かなかった事にしましょう。そうするのが最善だ」

「そうですね」

 

 ほんと、もう何を考えてるんだか。そのまま夜戦に突入って、ベルの貞操の固さは知ってるだろうに。

 呆れつつも耳を塞いでヘスティア様の着替えが終わるのを待っていると、ふわりと頭の上に生暖かい布地が降ってきた。

 今度は何なんだよ。

 降ってきたそれを手に取ると、妙な生暖かさを残した手触りの良い三角形の────女性用下着だった。というか、ヘスティア様の脱ぎたてだった。

 

「…………主神の脱ぎたてパンツを頭に乗せられた私は、どんな顔をすれば良いんでしょうか」

「申し訳ありませんが、私にもそんな経験が無いのでわかりません……」

 

 気まずげにリューさんが視線を逸らしたので、無くさない様にそっとその下着はローブのポケットに捻じ込んでおく。遠くの方でサメを焼くイリスさんがヴェルフにサメ肉の毒見をさせているのを尻目に、溜息を零した。

 

「ヘスティア様、着替えたのなら早くしてください。次はリリが着替えます!」

「ああ、こら! 待ちたまえ。まだ完全に着替え終わってないんだ!」

「早くしてくださいよ! いつまで待たせるおつもりですか!」

 

 急かす様にリリが膨れ上がった袋を持って岩の向こうに押しかけていき、しばし姦しい問答が繰り返されると、タオルで体を隠したヘスティア様が小荷物抱えて小走りで森の方へとてとてーと駆けていくのが見えた。

 今度はリリの着替えか……。

 

「リューさん、ちょっと席を外しますね」

「わかりました」

 

 ヘスティア様に下着返して来なきゃいかん。つか、興奮し過ぎて自身のパンツを投げ飛ばすって流石にテンション上げすぎでしょうに。

 それとなくヘスティア様の荷物にポケットに捻じ込んであった下着を捻じ込み、そそくさと帰還。

 ヴェルフとベルがサメ肉をもそもそと食べているのを尻目に、リューさんの横に並んだ。

 

「どうですか」

「…………また、ですね」

 

 若干疲れた様な表情で眉間を揉むリューさんの台詞が終わるより前に、岩の向こうから甲高いリリの声が響いてきた。

 

「ヘスティア様は過ごした時間如きで優位性を自慢し(マウントをとり)過ぎです! このまま『神様』ってだけで好きにされてたまるもんですか! ……それに、きっとベル様はリリを選んでくれます」

 

 ぶつぶつと文句を零しているかと思えば、ベルに対する信頼を語りだす。

 ちょっと、無人島に来て皆気分が高揚してるのか考えが口から零れ過ぎてる気がするんだよなぁ。

 

「そしたらきっと────」

 

 もはやぐったりした様子のリューさんと互いに視線を合わせ、岩の向こうから聞こえるリリの妄想劇を聞く。

 以下、岩の向こう側から聞こえる耳年増系サポーターの口から零れる妄想劇。

 

 

 

 沈む夕日に照らされた海、細波(さざなみ)の音が響く砂浜。朱く染め上げられたリリはベル様に壁ドンで迫られて、けれども恥ずかしさから口にするんです。

 

「リリはちんちくりんで、トラウマを隠す様に強気で接して、信頼している人にしか涙を見せない様な一面のある()()()ですが! それでも良いんですか!」

 

 ベル様はリリに言うのです。具体的にはカッコよさ割り増しな感じで!

 

「勿論、そのままのリリが大好きさ」

 

 きゅんっ、と高鳴る心臓。夕日を背景にリリとベル様の唇は徐々に距離を詰め────

 

 

 

「はぅ~、これです! これこれ~!!」

 

 大興奮した様に荒い鼻息すら聞こえてきそうなリリのテンションに、リューさんと視線を交わすと、互いに無言で耳を塞いだ。

 もう突っ込みどころがいくつかあって、気分は最悪だ。というか、自分で『美少女ですが!』と言い切る当たりがね、事実だけど、事実だけど自分で強調して言ったらあかんでしょ。

 離れた位置でサメの頭に齧りつくイリスと、それを見てドン引きしてるベルとヴェルフの様子を、リューさんと二人で眺めてる内にリリが大きく膨れ上がった荷物を持って岩場から出てきた。

 そのままヘスティア様同様に森に隠れるのを見送った後、今度は若干頬を朱に染めた春姫がちょこちょこと小走りで岩場に駆け入る。その後から半眼のミコトが続いて岩場に入っていった。

 二人同時に着替えるらしい。

 まあ、流石にあの二人で耳を塞ぐような事にはならないだろう。……ならないよな?

 リューさんに視線を送ると、首を傾げられた。いや、まあリューさんは春姫と接点が無いし仕方ないか。

 

「つい参加してしまいましたが……」

 

 若干気落ちした様な春姫の声が岩の向こうから微かに聞こえてくる。羞恥が勝っている分、ヘスティア様やリリよりマシだろう、とサメを丸まる平らげて骨だけにしたイリスが腹をさすっているのをみて溜息。

 ちょっと、あの人マジでサメを喰いきったんだけど。

 

(わたくし)等ではベル様の寵愛をいただく事は……ですが! せめてお情けの一絞りでも……!!」

 

 ────固い決意に満ちた春姫の言葉が聞こえた途端、リューさんは何も言わずに耳を塞いで口笛を吹きだした。

 ぴーぴー、と何処か調子のズレた口笛を聞きながら、眉間を揉む。

 

「春姫殿、その言動が()()()()()と言われてしまうのです」

 

 あ、やったぁ、常識人が居た。

 そうだよ、引き留め役(ストッパー)のミコトがいるじゃん。他の面子と違って止める役が居る分、春姫ははるかにマシになるだろう。なると良いな……。

 

「ベル殿が欲しいなら、堂々とそう言えばいいではありませんか」

「はぅっ……ほ、欲しいだなんて……ミコトちゃん、何を言って……」

「あ、あぁ……え?」

 

 春姫らしき声が響く。またしても妄想劇が始まり、止めるに止められなかったミコトの呆れた様な溜息が響いてきた。ちゃんと止めてよ、その脳内ショッキングピンクの淫乱狐。

 

 

 

 沈む夕日に照らされた海、細波(さざなみ)の音が響く砂浜。朱く染め上げられた春姫はベル様に壁際に追い詰められながらも、こう問いかけるのです。

 

「あの、ベル様……どうして水着を持ってこなかったのです……?」

 

 ベル様はその問いかけにほんの少し驚くと、こう返します。

 

「ごめん春姫さん。でも()()()()()()

 

 次の瞬間、ベル様はベルトを外し、上着を脱ぎ捨て、肌着も脱ぎ去って生まれたままの姿で……。

 

「どうせ全部脱ぐんだから」

 

 きゅんっ、と高鳴る心臓。ベル様の手は自然と春姫の体を抱き寄せ、そのまま夕日を背景に二人の()は重なって────

 

 

 

「きゅぅ~……」

「うぇ? は、春姫殿ッ!? 春姫殿、春姫殿しっかりしてください!!」

 

 トサッ、と誰かが倒れる音が響いた後、驚愕した様子のミコトの叫びが岩の向こう側から響いてくる。何事かとこちらを見やるベルとヴェルフに何でも無い、と手を振りつつ横に居たリューさんに視線を向ける。

 一瞬だけ此方を見返した彼女は、小さく呟いた。

 

「随分と、その、逞しい娘ですね」

「はぁ……」

 

 溜息を吐きながらも、しっかりと二人が着替え終わるのを待ち、次の人が岩向こうに行ったのを確認する。

 今度はきゃっきゃと楽し気なサイアと、頭をバリバリと掻いて欠伸してるフィアの二人だ。ある意味安心できる組み合わせである。

 少なくとも妄想劇を繰り広げたり、唐突に未成年者視聴禁止な内容にカッ飛ぶことは無いだろう。

 

「水着大会かぁ、ロキも同じことやりたがってたよね~」

「あ~、確かに。ロキは団員全員分の水着用意したけど着させる時期が来ないーって嘆いてたなぁ」

 

 ────何だろう、本当に安心できるやり取りをしている二人にほっこりするわ。

 あ~、癒されるんじゃぁ~。

 とはいえ、その癒しの時間は短時間で終わってしまった。というのも、妄想劇を繰り広げて着替えの手を止めるでもなく、談話しつつもさくっと着替えた為、時間が全くかからなかったのだ。

 

「次はミリアさんですね」

「あー、じゃあ、着替えてきますね……」

「そちらは森の方ですが……?」

「あ、ちょっと、その荷物とってきます」

 

 リューさんに言い訳しつつも、森の方へ小走りで駆けていく。

 荷物をとってくるのもそうだが、それよりもキューイを回収して水着に着替えさせなくてはいけない。

 木々に隠れる様にキューイが漫画表現染みた鼻提灯作って寝ているのを見つけてしまった為、適当に叩き起こして頭からタオルをかけて岩場へと手を引いていく。

 

「キュイ?」

「着替えますよ」

「キュイキュイ?」

「……着るのは手伝いますから」

 

 なんで着替えるの? とか、着るの面倒臭い。とか、そもそも着なくても良くない? とか適当な事言いまくるキューイを言い包めつつ、鱗で水着が破れない様に注意しながら彼女に水着を着せていく。

 ……なんつーか、肌綺麗だな。俺の右腕の病的な白い肌を省いても、俺に比べて健康的な肌色をしている。というか俺が白過ぎるのだろうか。紅い竜鱗との対比のおかげで白く見えていた肌も、俺と並べてみれば一目瞭然だ。

 それに、俺よりも身長は高いわ、胸も大きいわで……。

 

「キュイ?」

 

 ……なあ、お前の胸、ちょっと抉っといた方が良いんじゃないか? 邪魔だろ?

 

「キュイッ!?」

 

 

 

 

 

「さぁ~、始まりました! 【ヘスティア・ファミリア】、水着大会ィイイイイッ!!」

 

 華々しく咲き乱れる花畑を背景にした岩の前。

 直径が7М(メドル)程だろうか、周囲の砂地から一段高くなっているその岩の上面は多少の凹凸が見て取れるが、ほぼ平らに整えられており、あたかも演目を披露する高座(ステージ)を思わせる。

 左右にはまるで脇幕の様に縦に伸びる大岩。内側から見ると粗削りながらも階段状に削られているのが見て取れた。どう考えても人の手の加えられた痕跡がある即席舞台である。

 以前この島を訪れた【ファミリア】がわざわざ作っただろうなぁ。

 正面にいくつかの流木と岩で作られた観客席が見て取れる為、この場所はこういった目的に作られているのは確定だろう。

 いつの間にか水着に着替えたヴェルフが、またしてもノリノリで司会者を気取っているのを見やりつつ、後ろに並ぶ面々を見やる。

 審査対象外、ミコト、サイア、フィアと、後ついでに俺

 その後に控えるヘスティア様、リリ、春姫……そして隠し玉のキューイ。合計八人の参加者が舞台裏とも言える場所に募っている。

 

「えー、司会のヴェルフです! 解説として、今回はな・な・なんとぉ~、【疾風】のリュー・リオンさんにも参加していただきます。リューさん、一言どうぞ」

「レベル4として恥ずかしくない解説をさせていただきます」

「あの、解説にレベル4って関係あるんですか……?」

 

 ────いつの間にかリューさんの頭のネジが外れてるじゃん。

 ちらりと高座(ステージ)前の様子を伺うと、リューさんが真剣な表情で席に着き、直ぐそばに木切れに『解説 リュー』とナイフで刻まれたモノが立ててあるのが見える。

 

「さらに~、解説役としてこの方、【戦場の女主】レーネ・キュリオさんにも参加して頂きます」

「私、もう少し寝てたかったんだけど……?」

 

 リューさんの横には仏頂面のレーネが座っていた。此方も同じく木切れに『解説 レーネ』と刻んだ木切れが置かれていた。

 

「更にこの方々、観客のディンケとエリウッド、メルヴィスそして【鮫を狩る者(シャーク・スレイヤー)】イリス・ヴェレーナさんもお迎えしております!」

「あー、まあ、目の保養になるから良いか」

「……ふむ、少し楽しみではあるな」

「あの、【シャーク・スレイヤー】って何ですか……?」

「けっぷ、中々食べ応えのある鮫だったわ」

 

 若干一名、妙な異名を獲得してる人が居るんですが、それは?

 いや、もうテンション爆上げ状態で若干空回りしてるんじゃないかっていうヴェルフの解説にベルが目を白黒させて戸惑っている姿が見えた。

 もう、なんかこの高座(ステージ)に出たくねぇな。

 

「そして、超重要人物。此度の大会の審査を務める、ベル・クラネルゥウウウウッ!!」

「ね、ねぇヴェルフ、なんかやり過ぎじゃないかな……」

「お前はちゃんと順位をつけるんだぞ」

「順位なんてそんな────」

「さぁー、練習代わりに審査対象外のこの方からどうぞ!」

 

 言いかけたベルの言葉を遮り、ヴェルフがノリノリで高座(ステージ)中央から退いた。それを合図と言わんばかりに、気合を入れたミコトが脇幕の岩から中央に堂々とした仕草で歩んでいく。

 下半身は紺と白の縦縞模様の木綿のハーフパンツ。上半身には濃紺色の木綿上着。そして腰に磯ナカネの様な布帯を巻き、頭部はこれまた木綿の布で髪を纏めている。

 

「おぉ……」

「…………」

 

 審査員であるベルが僅かに反応して声を漏らすのに対し、リューさんは真剣な表情で高座(ステージ)の奥から堂々とした仕草で歩み出てくるミコトをつぶさに観察していた。

 上着はおおきさがあっていないのかぴっちりとしており、腹巻のおかげで大きな胸がより強調されて、端的に言って超ダサい水着なのにそれなりに着こなしていた。

 ────水着っていうか、海女の恰好な気はする。確かに海に入るなら間違いではないけど、なんか違うくないか?

 

「なんとぉおおおおおっ! 勝負に関係無いからとこの、ダサダサ水着! おばあちゃんの箪笥の奥から引っ張り出してきた、これがぁ、極東の神秘なのかァア!!」

「おお、なんか変な格好だが極東の民族衣装か」

「そう言われれば確かに、神秘的なモノを感じる……」

 

 解説のヴェルフも熱狂(ヒートアップ)して適当に盛り上げ、ディンケとエリウッドの二人がなるほど、と納得した様に頷いている。

 そんな極東の神秘で良いのか……?

 

「という訳で、解説のリューさん、レーネさん一言お願いします!」

「ダサいからこそサイズの小さいもので体の線を見せる。男性心理を突いた高等技術と言えます」

 

 ────リューさんがクッソ真面目に解説してるんですが。あの人大丈夫か? さっきの見張りの際にヘスティア様、リリ、春姫の三連()喰らって頭のネジ外れちまってるだろ。誰か叩いて直せ。

 

「リューさん詳しいっ!」

「レベル4ですから」

 

 凄く真剣そうな表情で解説を下したリューさんの真面目な返事にベルが「レベル4って凄い……!」と間違った知識を蓄えるのを見やりつつ、残る解説のレーネに視線を向けた。

 ちょっと、ほんのちょびっとだけ常識人枠に居る彼女の解説は気になる。

 

「んー……それってアレでしょ? 素体が可愛ければ何着ても似合うって奴だと思うよ。ほら、ドエロい水着をフリュネが着てたら吐き気するじゃん? 逆に可愛い女神とか女の子がダサい恰好してても似合うって奴。要するにミコトちゃんが可愛いだけなんじゃない?」

 

 ────うわ、一切容赦なくマジレスしやがった。

 いや、確かにレーネの言う事は尤もだ。あの恰好をフリュネがしてたら爆笑モノだが、アイズさんがしてたら、美少女がダサい服を着ているギャップで可愛く見える事だろう。

 要するにミコトが可愛いから似合ってるだけ、っていう評価になる訳か。

 

「これはマジレスだァッ、読めてない、空気を読めてないマジレスッ! やる気はあるのかレーネ・キュリオ!」

「いや、なんかいきなり叩き起こして解説やれとか言ったそっちが悪いじゃん。なんで私責められてるの?」

「さぁて、次の審査対象外はこの方ァア!!」

 

 レーネの文句をヴェルフがぶった切りやがった。若干目付きが悪くなったレーネが無事な方の手で立ててあった木切れをゴシャッと握り潰しているのが見えた。ちょっと、怪我人叩き起こすのはかわいそう過ぎるでしょ、寝かせといてやれよ。機嫌悪すぎて性格変わってるって。

 審査が終わったミコトが高座(ステージ)を降りて観客席の方に回ったのを陰から見ていると、とんっと背中を押された。

 

「次、副団長行ったら?」

「……サイアさんとフィアさんは?」

「フィアが尻尾の毛が気になるって、私はフィアと一緒に出たいし」

「ああ、そう言う事ですか」

 

 キューイと一緒に、出るのは良いや。俺一人で行こう。

 キューイに合図があるまで待機する様に指示を出してから高座(ステージ)の中央に歩み出る。

 こういった大会(コンテスト)の場合は綺麗な歩き方やら見せ方やら、仕草というのもがあるのは知ってるし。知識として覚えているのでやれなくはない。しかし面倒なので普通に歩み出る。

 歩み出た所で、遅れて気付いた。キューイの事で頭がいっぱいだったが、よくよく考えると俺の右腕って結構目立つよな。まあ、もう遅いが。

 

「あっ…………」

 

 歩み出ると、僅かな沈黙が場に満ちる。

 ベルとヴェルフの視線が俺の右腕に集まった。【アポロン・ファミリア】の強襲によって一度は失われ、未完成の『再生薬』で再生した片腕。

 赤い水着と白い肌の対比、その中でも右腕の異常な白さは陽光に照らされてさらに強調されてしまう。気にするな、と腕を振って合図をしようとした所で、ヴェルフが声を張り上げた。

 

「これはァ! 気高く、力強く、それでいて可憐ッ! 普段の彼女を知っているからこそ、このギャップには抗えないィイイッ!! 普段のダボダボダサダサローブ姿からは想像もできない華奢な体躯、小さな背丈も合わさり、抱きしめたいッ! 抱き締めてあげたい冒険者ランキング堂々の一位ィイイイッ!!」

 

 いつの間にそんなランキングが出来てたんですかね。いや、まあ暗くなりかけた雰囲気を一気に熱狂させようとする努力は認めるし、その辺りに関してはヴェルフの事を好きになれそうだ。

 ────それはそれとして、普段のローブはダサいって言い切りやがったぞアイツ。

 

「さぁて、解説のリューさん。どうぞ!」

「普段の恰好があのダサいローブである事に加え、活躍やそのサバサバした性格も合わさって気高く、そして力強く、無茶をしがちな印象が強いです。それ故に忘れがちかもしれませんが、ミリアさんは十二分に美少女と言える人物。小柄な体躯も合わさって『守ってあげたい』という普段からは考えられない程に庇護欲を誘っています。これはレベルが高いですね」

 

 いや、リューさんの頭のぶっ飛び具合に比べたら全然ですよ。

 本当、糞真面目な解説してくれちゃってまぁ……若干疲れるわ。

 

「なるほどなるほど、それではお次に、解説のレーネさん!」

「えー……そうだね。何て言うか、今までのミリアの印象って頼りになりそうな雰囲気あったけど、この格好見ると華奢過ぎて『頼って大丈夫?』って心配になるかなぁ」

「ああ、確かに。それは俺も思った」

 

 レーネの率直で真剣な返答にヴェルフが腕組をして頷きだす。

 というか観客席に座っているベルやディンケ達も全員が大いに同意だと言わんばかりに首を縦に振ってるんじゃが。そんなに俺が頼りないか!

 ……いや、まあ、原作のミリアちゃんって確か、部下から密かに性格面で頼りになる隊長だけど小っちゃくて可愛いから色んな衣装を着せ替えさせてみたい。って言われてたしなぁ。

 ……俺も着せ替え人形にしたい。とか思われてんのだろうか? 嫌なんだが。

 

「はぁ……まあ良いでしょう」

 

 暗い雰囲気になるのを華麗に回避し、場を盛り上げてみせたヴェルフとリューさんに感謝はしてやる。だがな、普段着のローブをダサいと言った事だけは忘れんからな。

 壇上から下りつつ、ベルから少し離れた席に腰掛ける。ベルがちらりと此方を見ていたので軽く手を振っていると、ヴェルフが声を張り上げた。

 

「さぁーて、お次はこの方、どうぞ!」

 

 ヴェルフの合図と共に、胸を張ってすらりと長い足を見せ付けながらフィアが高座(ステージ)へと姿を現す。それに続いて、きゃっきゃと楽し気なサイアも出てきてフィアの腕を抱き寄せて二人で前へと出てきた。

 フィアは群青色のビキニを身に着けており、欠けた片耳や異常に白い両足を恥じるでもなく堂々と晒している。サイアの方は異常な白さの両腕に視線がいくが……なんというか、それ以外に変わりが無い。

 いや、水着は着ているのだが、普段から布面積が少ないアマゾネスなのでビキニを着てもなんか変わった気がしないのだ。

 

「これは、フィア選手、サイア選手、同時入場だ!」

 

 ヴェルフが若干戸惑いつつも即座に声を張り上げて場を取り繕う。

 

「荒々しくも力強い狼人(ウェアウルフ)野性味(ワイルド)さを前面に押し出しつつも、腰の曲線は美しく女性らしさも伴う。そしてサイアは……えっと、普段と変わらなくないか?」

 

 駄目みたいですね。

 流石のヴェルフもサイアの恰好が普段のアマゾネスの恰好とそう違いが無い事に気付いたのだろう。一応、腰巻やアクセサリー等の装飾品が少ないことが挙げられるが、それぐらいだしなぁ。

 

「まずは解説のリューさん、お願いします」

「ふむ、なるほど。フィアさんは獣人らしい荒々しさ、それでいて女性らしい肢体の曲線美。獣人でありながら男を獣に変える才能の持ち主でしょう。そしてサイアさんはその恥ずべき所が無いと言わんばかりの普段通りの態度。種族故の性格ではありますが、その普段通りの態度と水着が組み合わさり相乗効果が出ていますね」

「リューさん、ちょっと無理してません?」

「全然問題ありません。レベル4なので」

 

 リューさんの頭が湯だってる気がします。大丈夫?

 

「さぁて、続いては解説のレーネさん、どうぞ!」

「んー、そうだね。まずフィア・クーガの方はなるほど、引き締まったお尻とか腰回りは確かに脚力に優れる狼人(ウェアウルフ)らしい引き締まり方をしてると思う。一時期は両足欠損で冒険者人生を閉じたって言われてたからもっと崩れてるかと思ったけど、足が無くなってる間も欠かさずに鍛錬を続けてきた証拠だと思うよ。その引き締まり方は数週間で取り戻せる訳ないだろうし」

 

 ────どうしよう、レーネのマジレスが本当にマジレス過ぎて皆が黙り込んでしまった。

 言われた本人のフィアも一瞬だけぽかんとした後、ほんのりと頬を染めて照れた様に尻尾を丸めてサイアの後ろに隠れてしまった。

 

「それでサイア・カルミの方は逆かな。上半身は少し衰えが見えるね。だけど腰回りの引き締まり方が尋常じゃない。腕が無いなら足でって感じだと思うんだけど、両腕を無くしてから足技を主軸(メイン)に切り替えてでも冒険者続けようと鍛錬してたんじゃないかな?」

「わぁ、凄い。わかるんだね! どっちも正解!」

 

 ぱちんっ、と手を叩いて喜ぶサイアが背後に隠れて照れるフィアを引っ張って壇上から下りてくる。どうやらレーネの見立ては正解らしい。フィアの方は足が無くても足に拘り、サイアの方は腕が無いなら足で、と自身の目標を持ってはいた様子だ。

 ある意味、彼女の観察眼はかなり頼りになりそうだ。

 

「レーネさん凄いですね!」

「え? あ、うん。ありがと」

 

 称賛の言葉をベルに送られ、ぽりぽりと頬を掻いて答えるレーネを見て、リューさんがほんのりと拳を握り締めて呟く。

 

「レベル4の私が負けた……? …………やりますね、レーネ・キュリオ」

 

 何を張り合ってるんですか、リューさん。




 この後メインディッシュの女神&サポーター&天然ド淫乱が残ってるんですよね。 え? キューイ? ミリアちゃんの胃が死んじゃうから思い出させるのやめてあげて。


 ちなみに、OVAでリリの妄想の中のベル君はまるで少女漫画の様なイケメン画風のベル君になってましたね。
 襟が立ってて顎が尖って……あれ、これって(ry

 そして春姫の……うん、まあ、その、天然ド淫乱と言われる意味がわかるよね。というかミコトがOVAで言ってたし
 ベル君が水着を忘れた理由=『どうせ全部脱ぐんだから』というね、どんな発想してるんだ……。


 と言いますか、OVAベル君(春姫の妄想)の『どうせ全部脱ぐんだから』って台詞がね、なんか再生する度に笑えてきてお腹痛いです。
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