魔銃使いは迷宮を駆ける 作:魔法少女()
膝を抱えながら、砂浜で遊び回る【ファミリア】の皆の姿を見て、溜息一つ。
同じく、横で膝を抱えたレーネ・キュリオも溜息を零した。
「で、副団長はどうだった~? 団長とフィアは、まぁ、あの通りだけどね~」
顎で指し示された砂浜にて、頭にキノコが生えたベルやフィアが他の面々に混じってナマコを突きまわしていた。
森の中に入っても安全だとレーネが断言し、それを信じた訳ではないが足を踏み入れた俺に待っていたのは、なんとも言い難い過去の幻想だった。
もし、もっと早い時期にあの幻想に囚われていたら抜け出せなかったと断言できる程の代物であって。そして、今となっては僅かに感傷に浸る程度の代物でしかない。
……嘘、実は結構、胸が痛い。
「別に、見ての通りよ」
青々としていたはずの砂浜は、今や夕日の赤一色に染め上げられている。
俺と同じ様に、キノコの寄生を免れたらしいレーネと共に二人並んで、海を赤く染める夕日を見て黄昏ていた。
「まぁ、副団長はそうなると思ってたよ。他の子、特にフィアは無理だなって思ってたし。団長はー……あはっ、私、団長の事あんまりよく知らないからねぇ」
他の人が見ている幻覚とは違う物を見てるのかもね、とレーネが言葉を濁した。
「で、答えは教えてくれるんでしょう?」
あのキノコの正体。森の中で襲撃してきた怪物もそうだし、この島が何のために作られたモノなのか。少なくとも、彼女が知る限りの全てを教えてほしい。
もっと言ってしまうと、あのキノコがどのような方法で俺の想像の斜め上を超える幻覚を生み出したのか。知りたい。
「んー、まず……昔、とある神様が眷属達と仲良く都市でくらしていました」
一息ついたレーネは、夕日に目を細めながら昔話を語る様に囁き出す。思い出す様に、懐かしむ様に彼女の口から零れる音に、耳を傾けた。
「しかし、その神様の派閥は、事件に巻き込まれて壊滅してしまいました」
事件とは言ったが、その神がちょっとふざけたことが原因で起きた事件である。
数多くいた眷属の殆どを失い、残った少数を連れて都市を去ったその神様は、酷く反省しました。
残された眷属達の多くは心に深い傷を負い、中には自害してしまう程に精神を病む者すらいて、神様は自分の行いを酷く反省しました。
「……なんとなく、なんとなくですよ? 先読みするのは良くないとは思うんだけど、この島ってその神様が作った島?」
「らしいね。ウェヌス様が言ってた事が正しければ、だけど」
自らの眷属を病ませてしまった事を悔いた神は、その眷属達を連れて人里離れた海の孤島に引き籠る様になしました。
その島にいくつもの薬効のある植物を持ち込み、栽培し、精神を病んだ眷属達を治そうとしました。
何年かかろうと、眷属の精神を復活させようと頑張りましたが。医療を司る権能を持つ神を以てしても、人の子の精神を復活させる事は出来ませんでした。
「
「うん。だから、その神様は地上で禁じられた行為に手を染めました」
地上で使う事を禁じられた
「普通なら、神が地上で『
だが、いくつか裏技がある。
例えば、自分の肉体、器を地上に縛り付けて力を行使したり、だとか。
「……ピンときませんね」
「うーん、私も良くわかんないんだけど、モンスターに自分を取り込ませる、らしいよ?」
「…………は?」
モンスターに、
可能なのか? いや、もしかしたら可能なのかもしれないが、実際にそれを行ったとして、神や人に殺意全開で襲い掛かるモンスターにそんなもの与えたら危ないと思うんだが。
「えっと、キューイ、みたいな感じじゃないかな」
「……それは、どういう?」
思わず砂浜の片隅で流木を積んで火を入れ、一人焚火で素潜りで得た魚を串焼きにしているキューイを見てしまった。というか、アイツ器用過ぎんだろ。
とはいえ、レーネの言いたい事がおおよそ、わかった。
「
神々の
つまり、地上で
「……で、その神は何をしたんですか?」
「うーんとね……簡単に言うと、その人が会いたいと想った人に会える様にしてあげたんだよ」
死した者との再会は決して叶わない。同じ魂を持つ者と会う事は出来ても、それは全くの別人。
精神を病んだ眷属達に対し、死んでしまった者達を再会させる事によって精神の復活を試みた。
「この島の中だけ、あのキノコの怪物に寄生される事で、少しの間だけ会いたい人と会える様にしてあげたんだよ」
「……
「うん。ぶっちぎりの
当然、
「そう、した。らしいね」
しかし、
「で、結局どうなったんですか?」
「うーんと、封印して放置」
……はぁ?
「いや、地上を害する気が一切ないみたいだったから、島ごと封印して放置らしいよ?」
そのモンスター、キノコの怪物は島にやってきた人々に幸せな夢、会いたい人との再会の幻覚を見せて、島の外に送り返す。という行動以外をとらなかった。
そのモンスターが何を考え、どういう理論で動いているのかは不明ではあるが、
「いや、とんだ爆弾仕込んでますね」
害が無いから放置でいいや、って……というか、なら何故この島にギルドが冒険者派遣したりしてんだよ。
「この件は一部、本当に一部の神様しか知らないんだって。ウェヌス様は面白そうだからって当時関わってた男神を何人か誑かして聞き出したって言ってたよ」
……ああ、そうか。そうだよな、レーネの主神って美の神だもんな。食えない性格してて当然か。
つまり、ほんの一部の神しか知らない、
「ギルドは何してんですか……」
「んー、多分、島の外に出たら忘れちゃうんだと思うよ」
この島に訪れた者達は総じて、普通に薬草採取を行って帰ってきた。と口にする。
「ギルド職員も皆知らないんだと思う」
「……ぁ、あー、なるほど」
もしかしたら、とは思うんだが。
その神様、っていうのから
そして、神ウラノスは、それを知っていて何も言わない、と。
しかし、正直言えばこの島に巣食うそのキノコの
「それに、この島を封鎖するとオラリオも混乱しちゃうだろうし」
「それは……あー、医療品の流通ですか」
この島は神が古今東西の薬効を持つ植物を集め、一つの生態系として完成させた島。
生態系さえ崩さなければ、最高峰の薬草がいくらでも手に入る良質な素材採取場だろう。
そして、悲しいかな、この島には定期的に冒険者等が派遣されて多量の薬草類の採取が行われている。それがいきなり途絶えたら、
要するに、害はない処か、島そのものは利益を齎してるから放置、と?
「ウェヌス様はそう言ってたねー。神ウラノスもそんな形で他の神を納得させてたみたいだしね」
もしこの島に巣食うキノコの怪物に対処するのであれば、島そのものを地上から消し去る他ない。しかし、この島の植生はただ消し飛ばすには惜し過ぎる、と……。
「はぁ、で? キノコが安全と言い張った理由は?」
「いくつかあるけど、ウェヌス様曰く、この島をつくった神様は自分と同じぐらい
「……はぁ、まあ、実際、危険な感じはしませんでしたしね」
第一級冒険者どころか、神にすら効果を齎す理由はわかった。
地上の
「なるほど、色々と理解はしました。したんですが……もう一つだけ、重要な事を聞かせてください」
「えっと、答えられる事なら?」
夕日に照らされ赤く染まった砂浜、バーベキューをする皆から少し離れた位置。
ベルとアイズさんの二人が木の枝でナマコを突きまわして、串刺しにし、掲げた。
『『ナマーコ、アハハハ、キモイデース!』』
「アレはなんですかね。神の趣味かなんかですかね?」
レーネの語った『神が眷属の為に
『ナマーコ!』とか『キモイデース』とか『バーベキュー♪』とか言って頭おかしくなったみたいになるのは、一体なぜだ? 神の趣味か?
「それはー、神のみぞ知る、的な……? ウェヌス様もその辺り説明してくれなかったし」
……で、もう一つ。
「私やレーネは平気みたいですが、これの理由は?」
「さぁ、心の強さ、というよりは…………」
────傷が深すぎたんだと思うよ?
そんな風に乾いた笑みを零すレーネを見てから、砂浜ではしゃぎ回るヘスティア様達を見やる。
「……レーネさん。あれってどれぐらいで戻りますかね」
「多分、二日、三日もあれば」
「じゃあ、あのアッパラパーな皆に囲まれて、後二日は過ごさないといけない訳ですか」
「だねぇー……」
会いたい人に会える楽園『ユージン島』。何処が? 地獄じゃないか。
「……レーネさん、今日はもう、寝ましょうか。明日は、薬草採取行きましょう」
「うん、と言いたいけど、私、昼間寝てるから眠くないなぁ~」
「あー、じゃあ私寝るんで、番をお願いします」
「わかった~」
そうか、この地獄で、正気を保っているのは俺とレーネの二人っきりか。
……逆に、俺達の方が狂ってるんじゃなかろうか?
「ねぇ、ミリア」
「なんですか?」
「この島を作った神様の眷属って、ちゃんと会いたい人に会えたのかな?」
…………さぁ、会えたかどうかはわからない。
何せ、ン百年前の出来事の話らしいからな。……でも、もしその話が本当ならば、会えたと思いたい。
見慣れた通りを袋を背負ってえっちらおっちら。
「ねぇ、ミリア。なんかすごく疲れてない? 大丈夫?」
「……え? いや、遊び疲れただけじゃないかしら?」
隣を歩くベルに二度、三度と心配されながら歩きつつ、あの島での出来事を思い返してみる。
普通に採取して、遊んで、はしゃいで……だけだったはずなのだ。少なくとも、そうであったはずなのに、違和感がしこりの様に頭の片隅に残っている。
加えて、なんかすっごい精神的に疲れた気がするのだ。慰安旅行に行ったはずなのに。
「キューイ関連で都市がにぎわってる所為ですよ。たぶん」
「ふぅん……あ、ここを曲がった所だったよね」
「ええ」
俺の他に、あの『ユージン島』に行って疲れ切っていたのはレーネぐらいだ。彼女の場合はリューさんに半殺しにされて殆ど寝ていたのが原因、にしてはなんか変な感じはするのだが。
結局、違和感の正体に辿り付けない内に目的地に到着。
扉を開けると、ドアベルがカランカランと涼やかな音を奏で、カウンターで談笑する女性たちの後ろ姿が見えた。
「それで、カサンドラったらまぁた『予知夢』がどうとかって」
「今度こそ本当だよ、信じてよぅ……」
「あー、はいはい。っと、おかえり、ベル、ミリア」
元【アポロン・ファミリア】幹部、ダフネ・ラウロスとカサンドラ・イリオンの二人の姿があった。
彼女らは【ヘスティア・ファミリア】の入団ではなく、代わりに【ミアハ・ファミリア】へと入団して、今やなくてはならない存在になっている。
まあ、主神のミアハ様の『ゴマすり』で借金がなかなか減らない事に気付いてからは乾いた笑みを浮かべる事が多い二人ではあるが。
「ただいま帰りました。ダフネさん、カサンドラさんもお久しぶりです」
「ただいま。薬草類の採取したモノ、持ってきたわ。
「わかった。薬草は……悪いんだけど、ダフネ、倉庫にお願い」
慣れた様に薬草の詰まった袋を受け取ったダフネさんが倉庫に仕舞いに行くのを見送りながら、ナァーザさんが手早く達成証明書を書き連ねていく。
その横で、カサンドラはベルの腕に縋りついて涙目で訴えはじめる。
「ベルゥ~」
「あ、あの、カサンドラさん? ど、どうしたんですか?」
「今朝、
「えっと、どんな夢なんですか?」
涙目の女の子に縋られて無下にも出来ずに話を聞き始めるベルを他所に、店の奥ですり鉢で薬草をすり潰すミアハ様の背中を見やった。
「ミアハ様、集中している所悪いんですけど、【ヘスティア・ファミリア】がきてますよ」
「ん? おお、すまない。調合に集中し過ぎていたな。おかえり、ミリア。『ユージン島』は楽しめたかな」
「ええ、綺麗な島でしたよ」
本当に綺麗、な……島、だった、と…………思う。思ってる、はずだ。
なんかあの島の事を考えるとやけに頭が痛くなるが、綺麗な島だったはずなのだ。少なくとも俺の記憶には『綺麗な島だった』と残っている。
「……どうした? 頭痛か? 丁度、頭痛薬を調合していた所だ。試しに」
「ミアハ様、それは店で商品として売る用で……」
「はっはっは、良いではないかナァーザ。それに、薬草採取をしてきてくれた功労者だぞ」
「……もう報酬は十二分に払ってますよ」
変わらないミアハ様とナァーザさんのやり取りに苦笑しつつ、ベルとカサンドラの話に耳を傾ける。
「それで、『異端茸』を庇って貴方が【
「え、えっと……い、いたん、きのこ?」
「それで、何も無い『島』で朽ちるのは寂しいからって、
「え……えぇ?」
……あの、カサンドラさんはいったい、何の話をしているので?
「それで、【
「は、はぁ……フィンさんが、そんな事……言う、かなぁ?」
「貴方はそれに『これは僕の獲物だっ! だから、手を出すな……!!』って!」
「えぇ!? キノコが僕の獲物ォッ!?」
「それで、真っ黒で巨大な火山が噴火して……オラリオが滅茶苦茶に!」
「えっ……火山? え、えぇっ?」
………………キノコ、ユージン島……うっ、頭が……。
真剣な表情で荒唐無稽な話をするカサンドラさんに対し、ベルが僅かに表情を引き攣らせている。倉庫から帰ってきたダフネさんがカサンドラさんの後頭部に手刀を落として黙らせた。
「あんまこの子の言う事は気にしなくていいよ。ただの妄言だし」
「も、妄言じゃないのにぃ~」
「あ、はは……」
ナァーザさんとそのやり取りを見届けてから、本題に入る。
「それで、ナァーザさん、都市の方はどうです? キューイ関連の話とか、なんか変化ありました?」
いや、まぁ……帰還時に都市入口に『美少女化した竜を見たい!』とか『ノーパンミリアちゃんは何処だぁあああッ!!』とか喚き散らす神々が居たから察しはつく、というか……考えたく無いんだけど。
「はぁ、ミリアも知っての通り。否定派は少ないよ」
「肯定派も少ないがな。っと、頭痛薬と水だ」
しれっと出された頭痛薬を飲みつつ、ミアハ様を見上げる。
「……ミリア、後で代金は払ってもらうから」
「これこれナァーザ、これは必要経費というやつだ」
「はぁ……」
もう恒例過ぎるやり取りに苦笑しつつ、ミアハ様に問いかけた。
「それで、肯定派も否定派も少ない、というと?」
「ああ、キューイ、そなたが連れている飛竜が人化した件について、肯定的な意見の神はおおよそ一割、否定的なのは五分と言ったところだ」
肯定派一割、否定派五分。じゃあ残りの八割五分は?
「七割が『面白ければ何でもいいや!』派であり、残る一割五分が様子見、と言ったところだな」
おいおい、神々の七割が面白ければオッケーって……。
いや、まぁ、娯楽に飢えた神々にとって、キューイの人化事件は娯楽の一環でしかなかったのだろう。それは、それで……。
「ああ、そうそう。ミリア・ノースリス、アンタに言いたい事があったんだわ」
「なんですか、ダフネさん」
「いやね、アンタが連れてた飛竜、あれが人化したって聞いたけど
後ろから割と真剣そうな表情で質問を飛ばしてきたダフネさんに肩を竦めて、本当だと伝えると彼女はまじまじと目を見開いて、カサンドラさんを見やった。
「嘘、じゃあカサンドラが言ってた妄言って本当の事だったの……!」
「だから言ったってば、本当に本当なんだって!」
「え、何の話ですか?」
困惑気味にベルが問いかけると、カサンドラさんは、ぱぁっ、と表情を明るくしてベルに告げた。
「
「はぁ、たまにはそういう事もあるでしょ。たまによ、た・ま・に」
「違うよぉ~! 予知夢だったのぉ~!」
どうして信じてくれないの~、と嘆くカサンドラの言葉に、ダフネさんやナァーザさんは慣れた様に肩を竦めた。
正直、信じがたいが、本当に予知夢だとしたら、彼女の言う【
………………いや、何がどう転んだら都市の冒険者すべてと敵対する事になるんだよ。
「あ、そういえば、近々、ラキア王国が攻めてくるらしいよ」
「あー、恒例のアレね」
ナァーザさんの言葉にダフネさんが頷き、嘆いていたカサンドラさんもあれかぁ、と納得した様に呟く。
『ラキア王国が攻めてくる』か、話には聞いていたが随分と気楽だな。いや、まあラキア王国の兵力とオラリオの戦力では戦いにならんのだから仕方ないが。
「あの、恒例のアレって、なんですか?」
「戦争よ、せ・ん・そ・う」
「えぇっ!?」
酷く驚いた様子でベルがきょろきょろと室内を見回す。
「戦争って、大変じゃないですか! 早く何処かに避難しないと……」
「……何言ってるの、ベル? 避難なんかしなくても平気だけど?」
「でも、戦争ですよ!」
狼狽した様子のベルを見て、ナァーザさんやダフネさんは首を傾げ、カサンドラさんがベルの腕をぽんぽんと叩いて落ち着かせ始める。
「あの、大丈夫ですよ……? ラキアの兵隊さん達よりオラリオの冒険者の方が強いですから」
「あー、最近都市に来たばかりなんだっけ。オラリオではね、ギルドが上位派閥を招集してラキアの襲撃を撃退するのよ。当然、【ロキ・ファミリア】の第一級冒険者も出るし」
なんなら、【アポロン・ファミリア】だって迎撃戦に参加する事だってあった。とダフネさんが肩を竦めるのを見て、ベルも此度の『戦争』はそこまで慌てる必要の無いものだと気付いたのか、恥ずかし気に頬を掻いた。
「あ、はは……そういえばそうですね。第一級冒険者が出るなら、心配なんかしなくても平気ですよね」
「まぁ、ダンジョンでモンスター相手にするより面倒臭いけどね」
「そうなんですか?」
隊列組んでようが、策を弄そうが、第一級冒険者なら都市外で恩恵を受けた者程度ならば蹴散らせる気がするんだが。
「ああ、殺しちゃ駄目、って言われるんですよ」
「あと、再起不能にもしちゃだめって」
手足を欠損させるほどの攻撃すらも禁止って……要するに全力を出せば簡単に蹴散らせる雑魚相手に加減に加減を重ねて戦わないといけないから、ダンジョンのモンスターを潰すよりも大変、と。
いや、まあ……わかるっちゃわかるが、それは面倒だな。
「特に魔法使いなんかは加減できないから、後方支援に回されるし」
「なんなら私はラキアの兵隊さんに回復魔法かける事の方が多かったです」
縦横無尽に駆けてはラキアの兵隊を蹴散らすヒュアキントス。そんな彼が半殺しにしてしまった兵達をカサンドラの範囲回復魔法で最低限死なない程度に回復させては、他の団員が回収。
捕虜としてオラリオに運び込んで、ラキア王国の神、アレスに対して降伏勧告を言い渡し、渋々とアレスがそれを飲む。というのが通例らしい。
「そ、それって面倒ですね」
「でしょう? ま、今の私達は借金地獄の底辺派閥。招集なんてかかるはずがないから楽だけどね」
「……あれ? でも【ヘスティア・ファミリア】の規模だとギルドから招集がかかりそうですけど」
カサンドラさんがふと呟く。
そう、カサンドラさんの言う通りだ。一応、俺達も対ラキア王国の戦力としてギルドに招集される
「問題無いですよ。というか、私とか特にですけど、招集はされないでしょうね」
「そうなんですか?」
「……アンタが出て行ったら、ラキア王国が可哀そうになるわ」
僅かに青褪めたダフネが頬を引き攣らせて俺を見下ろす。
城塞撃ち抜く一撃を連発出来る魔術師、とか過剰戦力過ぎるし、あんな一撃をラキア王国相手に振り回したら骨すら残さず消し飛ぶからなぁ。
当然、死者が出る可能性が高すぎるから招集はされない。と……。
「飛竜で強襲……も無いわね」
「あー……確かに、というかミリアが出て行ったらラキア王国、尻尾巻いて逃げるんじゃない?」
ナァーザさんが眠そうな目で此方を見下ろして────違う、眠そうな目、じゃなくて呆れた目だコレ。
「あぁ……確かに……ミリアさんって、モンスターを相手取るより、人と戦争してた方が似合ってそうですもんね」
「ああ、カサンドラもそう思う? 私もそう思うわ」
彼の戦争遊戯での活躍を思い出したらしいカサンドラとダフネの二人に畏怖の視線を向けられてしまった。
いや、まあ……確かに、というかその通りではあるんだがね。
元々の
「流石に全てを撃退は出来ませんって。魔力が足りなくなりますし」
「……それ、『魔力があればできます』って言ってない?」
「実際に出来そうなのが凄いと思うんですけど……」
「ミリア、
完全にドン引きして表情を引き攣らせたダフネさんと、感心した様に彼女の背に隠れるカサンドラさん。いや、まあ……
それと、ナァーザさんは隙を見て商品売りつけようとしないでくれませんかねぇ。
「いや、もしミリアが行くなら僕は止めますよ」
ベルが真剣な表情を浮かべて呟く。
「あんな、想いはもうしたくないし。ミリアにもさせたくありませんから」
真っ直ぐ決意に満ちた瞳を浮かべたベルを見て、ダフネさんは肩を竦め、カサンドラさんは小さく頭を下げた。ナァーザさんは……ドンッ、と
「ベル、安心してください。此度の一件で私達【ヘスティア・ファミリア】が招集される事は無いですよ」
「……そうなの?」
「ええ、ギルドには既に掛け合ってます。というか……」
ギルド長が目を血走らせて『お前は絶対に前に出るな! 都市内で大人しくしていろォッ!!』と吠え狂ったのだ。
なんか、
「ま、ともかく。キューイ関連の問題も『ラキア王国の進撃』がある間は静かになるでしょうし。暫くは休養がとれるでしょう」
「…………? 『ユージン島』に慰安旅行に行ってたんじゃないの?」
首を傾げるカサンドラさんに、笑顔を向けておく。
あの島から帰ってきて、しこりの様に残っていた父親への想いはすっきりした様な気はするが、休養がとれた、とは微塵も思えないのだ。
キノコ、ユージン島、二つの単語が耳に入るだけで頭痛がしはじめるし。なんかおかしな病気でも貰ってないだろうか……?
終わったデース! これで難関は突破デスヨ!
バーベキュー♪ バーベキュー♪ ……デカい肉、私も食べたいデス。
コラボ小説の方、更新しましたー。
濃ゆいメイドさんでした。
他にもコラボしても良いよ、と言う方が居ましたらTwitterまでお願いしますァ。
ダンまち×TS作品が徐々に増えてくれて私は嬉しいぞい!
この調子でどんどん増えろ増えろぉ~……さぁ、キノコに侵食されるみたいに、みんなもダンマチTS作品を書くのデース。